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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1167349
審判番号 不服2005-10625  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-09 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2000-170392「ガス測定用オンラインモニター装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月21日出願公開、特開2001-351569〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年6月2日の出願であって、平成17年5月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月9日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年7月7日付けで手続補正がなされ、その後、平成19年6月27日付けの審尋に対して、同年7月30日に回答が、同年8月29日に上申が、それぞれなされたものである。

II.平成17年7月7日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]独立特許要件違反
1.本件補正後の本願発明
(1)平成17年7月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、平成16年5月10日付けの手続補正による
「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段と、該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計と、複数の圧力の異なる室から成り前記イオン化した試料ガスを前記質量分析計に導く差動排気部とを備えた排ガス測定用オンラインモニター装置において、
前記イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室を有し、
前記試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室を有し、
成分が既知のガスが導入されるイオンドリフト室を有し、
当該試料ガス導入室は、前記イオン化室と前記イオンドリフト室との間に配置され、前記イオンドリフト室は、前記イオン化室と前記差動排気部との間に配置されることを特徴とするガス測定用オンラインモニター装置。」
が、
「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段と、該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計と、複数の圧力の異なる室から成り前記イオン化した試料ガスを前記質量分析計に導く差動排気部とを備えた排ガス測定用オンラインモニター装置において、
前記イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室を有し、
前記試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室を有し、
成分が既知のガスが導入されるイオンドリフト室を有し、
当該試料ガス導入室は、前記イオン化室と前記イオンドリフト室との間に配置され、前記イオンドリフト室は、前記イオン化室と前記差動排気部との間に配置され、
更に前記試料ガスが前記差動排気部へ流入しないよう、前記イオンドリフト室への前記既知のガスの導入量を前記差動排気部に流入する流量とほぼ同じとなるように調整する機構を備えたことを特徴とするガス測定用オンラインモニター装置。」
と補正された。

(2)本件補正は、試料ガスに関連して、「更に前記試料ガスが前記差動排気部へ流入しないよう、前記イオンドリフト室への前記既知のガスの導入量を前記差動排気部に流入する流量とほぼ同じとなるように調整する機構を備えた」という発明特定事項を付加したものである。

(3)したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

(4)そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-137025号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物を焼却した燃焼排ガスに含まれるダイオキシン類,クロロフェノール類,クロロベンゼン類の濃度を質量分析することにより求めようとする排ガスモニタシステムに関する。

(イ)【0027】図2に、本発明のモニタ装置の詳細な構成を示す。
【0028】煙道1には、排気ガス採取プローブ21が取り付けられ、ダスト処理部20まで排気ガス導入配管22aが接続されている。ダスト処理部20には、ダストフィルタ23と、必要に応じ塩化水素や硫化水素などの阻害物質を取り除く除去剤24が接続されている。ダスト処理部20からモニタ装置8までは、排気ガス導入管22bが接続されている。配管22は短いほど望ましい。
【0029】又、配管22やダスト処理部20は分析対象物質(クロロフェノール,クロロベンゼン,ダイオキシン等)の吸着や、酸・アルカリ等の腐食の影響を極力小さくするために保温材27が巻かれ、必要に応じヒータ26で加温し、熱電対25や温調器35で一定温度に保つ構造としている。本実施例では、排ガスの温度に近い値(150-240℃)に設定できるようにしている。更に、吸着や腐食,耐熱性の観点から、配管22の材質は内面鏡面仕上げをしたSUS-EP管を使用している。ダストフィルタ23は石英ウールが一般的で、除去剤24は分析対象物質の吸着が少なく塩化水素や硫化水素などの除去効率が高いCa(OH)2 を使用している。これらダストフィルタ23や除去剤24は容易に着脱可能としている。
【0030】モニタ装置8内の排気ガス導入管22bは直接送気ポンプ30に導いているが、一部をバイパス配管26にて大気圧化学イオン源40を通過させ、その後送気ポンプ30に導いている。それぞれの流路にはマスフローメータ28a,28bと絞り機構29a,29bを設け、一定の流量を維持するよう流量調節計33にて制御を行う。送気ポンプ30は大気圧化学イオン源40の前段に入れて排ガスを押し込む構造でも良いが、本実施例では排ガスに与える影響をなくすために吸引式のポンプを使用している。送気ポンプ30を通過後、排ガスはモニタ装置8外に排気している。
【0031】大気圧化学イオン源40には排気ガスが通過するイオン化室44があり、イオンを発生するためのコロナ放電電極42が設けられている。コロナ放電電極42は高圧電源48から負の電圧(-2から-7kV程度)が印加される。放電効率をよくするために引込み電極43(-50Vから-1kV程度)を設けることもある。
【0032】又、測定対象物質のイオン化を促進するために、酸素ボンベやドライエアーなどの酸素源34を設け、配管37を通してイオン化前室41に送り込む構造としている。ここでもマスフローメータ28cと絞り29cを備え、流量調節計33にて流量を調整している。尚、イオン化促進は、大気を導入し、大気中の酸素によって行うことも可能である。
【0033】イオン化室44のイオン化された物質が電界によって隔壁45の細孔46aを通り中間圧力部47に導かれるように隔壁45には0から-50Vの電圧をかけている。更に引き込みをよくするために2段細孔46b(電圧0から-10V)を設けている。中間圧力部47はイオンと共に導入されたほとんどの中性ガスを排気するために、1Torr程度の真空に排気する油回転ポンプ等の真空ポンプ57が設けられている。細孔を通過したイオン内の排除しきれなかった中性ガスを取り除くためにレンズ51が設けられ、導入されたイオンを質量対電荷比(m/z)に分けてイオン量を計測(質量分析)する質量分析計50が設けられている。質量分析計50には、四重極質量分析計(QMS)や磁場型質量分析計も使用することができる。しかし、高感度測定が可能なイオン蓄積型の質量分析計すなわちイオントラップを用いれば、更なる高感度モニタが達成できる。
【0034】本実施例ではイオントラップ52を用いて質量分析を行った。数秒以下の時間でイオントラップ52で溜め込んだイオンを掃引処理により測定したいイオンのみを吐き出し、そのイオンの電荷を増幅する電子増倍管53と長寿命化を図るためのフォトマルチプライヤ54を設けている。質量分析室55はターボ分子ポンプなどの真空ポンプ56により10-5Torr以上の高真空に維持されている。

(ウ)【0038】以下、本実施例の動作を説明する。
【0039】煙道1で試料採取プローブ21から採取された排ガスは、送気ポンプ30により吸引され配管22aを経てダストフィルタ23に導かれる。ここで排ガス中のダストやミストが除去された後、塩化水素などのイオン化の阻害物質を除去する除去剤24に導かれる。その後配管22bを経由してモニタ装置8に導かれる。大部分の排ガスは送気ポンプ30により吸引され排気するが、大気圧イオン化源40のごく近傍で排ガス導入配管22bから分岐してバイパス配管26を経由してイオン化室44に排ガスが導入される。ここでフィルタ処理部20や配管22,26は分析対象物質の吸着を最小限にするためと、水分の結露を避けるため、150-220℃程度に保温材27a,27bとヒータ26a,26bで保温されている。又、吸着を少なくするためには配管内での滞在時間を少なくすることが有効であるため、排ガス導入配管22bは可能な限り大流量を流す(本実施例では10-15l/min )。逆に、バイパス配管26は排ガス導入配管22bよりも流量が1桁近く減るように、且つ極力短くするようにした。イオン化室44への流量を減らしたのは分析装置40,50が長期にわたって連続運転するので、内部の汚れを極力抑えるためである。本装置は分析対象物質が極微量でも感度高く測定できるので、少流量でも問題はない。流量はマスフロー28a,28bにより測定できるので、その比によって分析対象物質の総量を知ることができる。
【0040】イオン化室44に導入された排ガスは、高圧電源48から印加されたコロナ放電電極42からの負のコロナ放電によりイオン化される。コロナ放電電極42には高圧電源48から負の高電圧(-2kVから-7kV程度)が印加され、コロナ放電電極50の先端からは引込み電極43に向かって大気中に負のコロナ放電が発生する。導入された排ガスは負のコロナ放電で生成した熱電子の照射を受け、ダイオキシン類,クロロフェノール類やクロロベンゼン類は速やかに熱電子を捕獲して負イオンとなる。一方、排ガス中の主成分である窒素,酸素,二酸化炭素,一酸化炭素,炭化水素等はこの負のコロナ放電ではイオン化されない。即ち、ダイオキシン類やクロロフェノール類,クロロベンゼン類は排ガス中に微量にしか存在しないにも関わらず、選択的にイオン化され高感度に検知されるようになる。これらを化学平衡式で表すと
O2+e- → O2- 一次イオン化
M+O2- → (M-H)- + HO2 二次イオン化
M:分析対象物質
となり、まずO2- イオンができた後、分析対象物質と反応することが分かる。但し、塩化水素(HCl)があるとClがイオンし易いため、次式のようにO2- イオンがCl- イオンになってしまい、分析対象物質のイオン化が阻害されてしまう。
【0041】O2- + HCl → Cl- + O2H
そのため、酸素源34からコロナ放電部に酸素を供給することによってO2-イオンを促進することにより分析対象物質のイオン化効率を上げることができる。新鮮なO2 を入れるため電極42の汚れ対策にもなる。
【0042】ほぼ大気圧下で生成したダイオキシン類等の負イオンは、イオン化室44と中間圧力部47の間の隔壁45に設けられた細孔46aから中間圧力部47に連続して導入される。ここでイオンは電界に導かれて細孔46a、更には二次細孔46bから質量分析部50に導入される。中間圧力部47は油回転ポンプ等の真空ポンプ57により1?10-1Torr程度の真空に排気され、イオンと共に中間圧力室47に導入された中性ガスはここで排気される。細孔を通過したイオン内の排除しきれなかった中性ガスは、電界をかけたレンズ51の軸をイオントラップ52の入射軸とずらすことによりイオントラップ52に入らないようにしている。
【0043】イオントラップ52に溜め込んだイオンをスキャンすることにより、必要な分析対象物質のイオンをイオントラップ52から摘出し電子増倍管53,フォトマルチプライヤ54で検知することができる。又、試料ガスは連続してイオン源に送られ、質量分析計にも常時生成したイオンが導入されるので、連続した測定が可能になる。更に、イオントラップ式の質量分析計の場合、測定するためのイオン溜め込み時間は数秒で、1回の測定スピードはmsオーダーなので、データ処理を含めても10秒/回以下の連続測定ができ、オンラインリアルタイム測定が可能となる。しかも、同時に多項目分析ができるので、ダイオキシン類,クロロフェノール類,クロロベンゼン類などの濃度を同時に測定することが可能となる。
【0044】質量分析室55はターボ分子ポンプなどの真空ポンプ56により10-5Torr以上の高真空に維持され、感度の高い測定が可能となっている。

(エ)図2には以下の図面が記載されている。

同図より、イオン化前室41にコロナ放電電極42が設けられていること、イオン化室44はイオン化前室41と中間圧力部47との間に配置されていること、が認められる。

(2)そうすると、引用例1には、
「コロナ放電電極42を有するイオン化前室41と、
排ガスが導入され排気されるイオン化室44と、
細孔46aと二次細孔46bとを有する中間圧力部47と、
高真空に維持され、導入されたイオンを質量分析する質量分析計50とを有し、
前記イオン化室44は前記イオン化前室41と中間圧力部47との間に配置された
オンラインリアルタイム測定が可能な排ガスモニタ装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(3)また、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開99/23686号パンフレット(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

FIG. 3 illustrates an apparatus in accordance with the present invention, which may be employed to obtain a mass spectrum. A sample source 20 (which may be a liquid or gaseous source) supplies sample to an ion source 22 which acts as a generation means and produces ions therefrom and directs them into an interface 24 region which may be supplied with inert curtain gas 26 as shown in U.S. Pat. No. 4,137,750. Ions passing through the gas curtain travel through an orifice in plate 25 to a differentially pumped region 28, at a pressure of about 2 Torr. The ions then pass through an orifice in a further plate 27. The interface region 24 and the differentially pumped region serve as direction means directing the ions into a quadrupole RF-only rod set Q0 in chamber 30, which is pumped to a pressure of about 8 milli-Torr. Rod set Q0 serves to transmit the ions onward with the removal of some gas. In addition, Q0, because of the relatively high pressure therein also serves to collisionally damp and cool the ions to reduce their energy spread, as described in U.S. Pat. No. 4,963,736.
(第7頁第30行から第8頁第11行)

(日本語訳:図3は、質量スペクトルを得るために用いられるこの発明の装置を示している。サンプル源20(液体またはガス源)は、サンプルをイオン源22に供給し、イオン源22は、イオン生成手段として機能し、そこからイオンを生成し、米国特許4,137,750に示されている不活性カーテンガス26が供給されているインタフェース領域24にイオンを導入する。ガスカーテンを通過したイオンは、プレート25の開口部を介して、圧力約2Torrの差動排気領域28に移動する。次に、イオンはプレート27の開口部をさらに通過する。インタフェース領域と差動排気領域は、チャンバ30内のRF電圧のみの四重極型ロッドセットQ0にイオンを導く導入手段として機能し、チャンバ30は約8mTorrの圧力に排気されている。ロッドセットQ0は、いくつかのガスを除去して、さらにイオンを通過させる。さらに、Q0は比較的高真空であるので、米国特許4,963,736に示すように、イオンの衝突を減らし冷却して、エネルギの広がりを低減する。)

(4)また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-230244号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)カーテンガスは、真空室6への採取に適しかつインターフエースプレート8の中央開口34からゆつくりと流れでる程度に過剰であるような充分な流量と、キヤリヤガスがインターフエースプレート8とオリフイスプレート10との間の空間へ入ることを防ぐのに充分な流量を与えられている。
(第4頁右下欄第20行から第5頁左上欄第7行)

(イ)第9図の実施例において、カーテンガスの流れは、オリフイス208から真空室210への流れに対抗するために少ないか、等しいかあるいは多いかの種々の状態で作動する。これらの状態のそれぞれの場合に利点がある。
(第8頁右下欄第12行から第16行)

(ウ)カーテンガス供給パイプ232からのカーテンガスが、ガス室198からオリフイス208へと流れる流れに匹敵するかあるいは僅かにこれより多い場合には、反応室214から真空室へのサンプルガスの流れは阻止されるがイオンは伝達されることになる。
(第9頁左上欄第10行から第15行)

3.対比
(1)本願補正発明は、上記「1.(1)」のとおり、
「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段と、該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計と、複数の圧力の異なる室から成り前記イオン化した試料ガスを前記質量分析計に導く差動排気部とを備えた排ガス測定用オンラインモニター装置において、
前記イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室を有し、
前記試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室を有し、
成分が既知のガスが導入されるイオンドリフト室を有し、
当該試料ガス導入室は、前記イオン化室と前記イオンドリフト室との間に配置され、前記イオンドリフト室は、前記イオン化室と前記差動排気部との間に配置され、
更に前記試料ガスが前記差動排気部へ流入しないよう、前記イオンドリフト室への前記既知のガスの導入量を前記差動排気部に流入する流量とほぼ同じとなるように調整する機構を備えたことを特徴とするガス測定用オンラインモニター装置。」
である。

(2)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「オンラインリアルタイム測定が可能な排ガスモニタ装置」は、本願補正発明の「排ガス測定用オンラインモニター装置」に相当する。

(イ)引用発明の「コロナ放電電極42」、「排ガス」は、それぞれ、本願補正発明の「針状電極」、「試料ガス」に、相当する。
そして、引用発明は、前記コロナ放電電極42からのコロナ放電により排ガスをイオン化するものであるから、この部分が本願補正発明の「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段」に相当する。
また、引用発明の「イオン化前室41」は前記コロナ放電電極42を有するのであるから、本願補正発明の「イオン化室」に相当し、同「イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室」の要件を具備する

(ウ)引用発明の「質量分析計50」は、本願補正発明の「質量分析計」に相当し、「高真空に維持され、導入されたイオンを質量分析する」ものであるから、本願補正発明の「該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計」の要件を具備する。

(エ)引用発明の「中間圧力部47」は、本願補正発明の「差動排気部」に相当し、「イオンを質量分析計50に導入する」ものであるから、本願補正発明の「イオン化した試料ガスを質量分析計に導く差動排気部」の要件を具備する。

(オ)引用発明の「イオン化室44」は、「排ガスが導入され排気される」ところであるから、本願補正発明の「試料ガス導入室」に相当し、同「試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室」の要件を具備する。
そして、引用発明の前記「イオン化室44」は、それぞれ本願補正発明の「イオン化室」と「差動排気部」に相当する「イオン化前室41」と「中間圧力部47」との間に配置されている。

(3)以上から、本願補正発明と引用発明とは、
「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段と、該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計と、前記イオン化した試料ガスを前記質量分析計に導く差動排気部とを備えた排ガス測定用オンラインモニター装置において、
前記イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室を有し、
前記試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室を有する、
ガス測定用オンラインモニター装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の差動排気部は「複数の圧力の異なる室から成」るのに対して、引用発明の中間圧力部47はその点が明確でない点、

[相違点2]本願補正発明は「成分が既知のガスが導入されるイオンドリフト室を有」し、「当該試料ガス導入室は、前記イオン化室と前記イオンドリフト室との間に配置され、前記イオンドリフト室は、前記イオン化室と前記差動排気部との間に配置され」るのに対して、引用発明では、前記イオンドリフト室に対応する構成を備えていない点、

[相違点3]本願補正発明は、「更に前記試料ガスが前記差動排気部へ流入しないよう、前記イオンドリフト室への前記既知のガスの導入量を前記差動排気部に流入する流量とほぼ同じとなるように調整する機構を備え」ているのに対して、引用発明では、前記既知のガスが導入されていない点。

4.判断
(1)[相違点1]について
引用発明で言う「中間圧力部47」のような、いわゆるスキマー部において、各段ごとに真空度を上げていくのは、例えば、特開平6-203791号公報(【0010】欄を参照)に示されているように、周知の構成であると認められる。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は当業者であれば容易に想到できたものといえる。

(2)[相違点2]について
イオン化部と質量分析部との間に成分が既知のガスを導入することは、例えば、引用例2や、特開平8-203468号公報(【0003】欄、図3を参照)に示されているように、試料ガスが質量分析計へ流入するのを防ぐための、いわゆるカーテンガスとして、周知の事項であると認められる。
そうすると、引用発明に対しても、イオン化前室41(本願補正発明の「イオン化室」に相当)と中間圧力部47(同「差動排気部」)との間に既知のガスを導入する室を設けることは、当業者であれば容易に想到できたものといえる。
また、そのように引用発明に前記既知のガスを導入する室を設ける場合には、同室とイオン化前室41(同「イオン化室」)との間にイオン化室44(同「試料ガス導入室」)が配置されることは明らかである。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は当業者であれば容易に想到できたものといえる。

(3)[相違点3]について
引用例2にはカーテンガスの流量については言及されていないが、カーテンガスは試料ガスが質量分析計へ流入するのを防ぐために用いられるものであるから、その機能を果たすために十分な流量を設定すればよいことは当業者には明らかであると認められる(例えば、引用例3を参照)。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の構成は当業者であれば容易に想到できたものといえる。

(4)そして、本願補正発明の作用効果も引用発明及び引用例2、3に記載された事項から当業者ができる範囲内のものである。

(5)してみれば、本願補正発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本件補正は、上記「II.」のとおり、却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年5月10日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「試料ガスを針状電極により生成するコロナ放電を用いてイオン化するイオン化手段と、該イオン化した試料ガス中の成分を分析する高真空域に配置した質量分析計と、複数の圧力の異なる室から成り前記イオン化した試料ガスを前記質量分析計に導く差動排気部とを備えた排ガス測定用オンラインモニター装置において、
前記イオン化手段を備える少なくとも一つのイオン化室を有し、
前記試料ガスが供給及び排出される試料ガス導入室を有し、
成分が既知のガスが導入されるイオンドリフト室を有し、
当該試料ガス導入室は、前記イオン化室と前記イオンドリフト室との間に配置され、前記イオンドリフト室は、前記イオン化室と前記差動排気部との間に配置されることを特徴とするガス測定用オンラインモニター装置。」
(以下、「本願発明」という。)

2.本願発明は、前記「II.1(1)」で認定した本願補正発明のうち、「更に前記試料ガスが前記差動排気部へ流入しないよう、前記イオンドリフト室への前記既知のガスの導入量を前記差動排気部に流入する流量とほぼ同じとなるように調整する機構を備えた」という発明特定事項を省いたものである。
してみれば、本願発明は、上記「II.」と同様の理由により、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-10 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-25 
出願番号 特願2000-170392(P2000-170392)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 濱田 聖司
辻 徹二
発明の名称 ガス測定用オンラインモニター装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
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