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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1167357
審判番号 不服2005-13097  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 平成 5年特許願第352359号「遊技機の板面突出部品取り付け構造」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月 1日出願公開、特開平 7-194775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月29日の出願であって、明細書および図面の記載からみて、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「筒体と、この筒体の外周部に設けられ径方向に弾性変形付勢される弾性変形部とを有する板面突出部品と、
この板面突出部品を軸方向に挿入抜去自在とするとともに軸回りに回動自在とする挿入凹部と、前記板面突出部品の所定回動位置で弾性変形部を係止し板面突出部品の回動による離脱にあたっては弾性変形部の外径の変更を要してこの外径の変更に伴う弾性変形部の付勢力増大によって板面突出部品の回動を阻止する回動阻止部とを有する取り付け基板と、
前記板面突出部品と取り付け基板との間に設けられ板面突出部品の前記所定回動位置で板面突出部品の軸方向の移動を阻止する軸方向移動阻止手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機の板面突出部品取り付け構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平1-71948号(実開平3-9780号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
▽記載事項1、「(1) 複数のランプを基板に実装し、該基板をパチンコ機の遊技盤に・・・取付けたことを特徴とするパチンコ機の発光表示装置。」(実用新案登録請求の範囲)
▽記載事項2、「第19図ないし第22図について、・・・、この発光表示装置1は、係合部7を備えたホルダ17と、ホルダ17に係合する基板15と、ランプ2とを主構成とする。ホルダ17は基板15に係合し、かつランプ2を支持するためのものである。ホルダ17は、円柱状に形成された係合部7の外側部に、一対の爪18,18を対向配置させている。一対の爪18,18は概略L字形状に形成され、ホルダ17の係合部7側を第21図に示した係合孔19に挿通させ、つまみ21を同図中、時計方向に回動させることによって、ホルダ17は基板15,すなわち係合孔19の開口部外縁に係合する(第20図参照。)。また、つまみ21を同図中、反時計方向に回動させることによって、ホルダ17と基板15との係合は解除される。」(第8頁第1?16行)、
▽記載事項3、「発光表示装置1は、基板15をパチンコ機3の所定部位に配置し、つまみ21を回動させることによって、ホルダ17と基板15とを直に係合または、この係合を解除することができる。」(第9頁第10?14行)、
▽記載事項4、「第5図および第6図は・・・ランプ2を第19図ないし第22図に示したホルダ17を介して基板15に実装している。・・・発光表示装置1は、・・・、ホルダ17を操作することによって、基板15を可変入賞装置27から取外すことなく、ランプ2を取外すことができるので、ランプ2の交換作業を容易に行なうことができる。」(第22頁第12行?第23第4行)、
▽記載事項5、「発光表示装置1をチューリップ形式の通常入賞口35に設けた場合を説明したが、これに限定されるものでなく、一般型の通常入賞口(・・・)35をはじめとして、入賞表示灯58、打ち止めランプ59、さらにはパチンコ機3の外枠(・・・)61および風車56などに設けるようにしてもよい。」(第32頁第18行?第33頁第4行)、

との記載が認められ、
また、上記摘記事項および第19?21図等より、ホルダ17は、円柱状に形成された係合部7の外側部に、一対の爪18,18を対向配置させ、一対の爪18,18は概略L字形状に形成され、ホルダ17の係合部7側を係合孔19に挿通させ、つまみ21を時計方向に回動させることによって、ホルダ17は基板15,すなわち係合孔19の開口部外縁に係合する。また、つまみ21を反時計方向に回動させることによって、ホルダ17と基板15との係合は解除されること(記載事項2)、ランプ2をホルダ17を介して基板15に実装していること等、また、第20図等から、ホルダ17を回して基板15に爪18を係合するためには、安定固定のために概略L字形状の爪18が基板15を少々押圧するように弾性を持たせることは自明のことであるから、概略L字形状の一対の爪18,18は、「円柱状係合部7の外側部に対向配置され軸方向に弾性変形付勢される」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第19?21図等より、発光表示装置1は、係合部7を備えたホルダ17と、ホルダ17に係合する基板15と、ランプ2とを主構成とし、ホルダ17の係合部7側を係合孔19に挿通させ、つまみ21を時計方向に回動させることによって、係合孔19の開口部外縁に係合し、つまみ21を反時計方向に回動させることによって、ホルダ17と基板15との係合は解除されること(記載事項2)等から、基板15の係合孔19は、「発光表示装置1を軸方向に挿入抜去自在とするとともに軸回りに回動自在とする」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第6・19?21図等より、発光表示装置1は、係合部7を備えたホルダ17と、ホルダ17に係合する基板15と、ランプ2とを主構成とし、ホルダ17は、円柱状に形成された係合部7の外側部に、一対の爪18,18を対向配置させており、一対の爪18,18は概略L字形状に形成され、ホルダ17の係合部7側を係合孔19に挿通させ、つまみ21を時計方向に回動させることによって、ホルダ17は係合孔19の開口部外縁に係合し、また、つまみ21を反時計方向に回動させることによって、ホルダ17と基板15との係合は解除されること(記載事項2)、発光表示装置1は、基板15をパチンコ機3の所定部位に配置し、つまみ21を回動させることによって、ホルダ17と基板15とを直に係合または、この係合を解除することができること(記載事項3)等から、基板15は、「発光表示装置1の所定回動位置で一対の爪18,18を係合し発光表示装置1の回動による係合の解除にあたってはつまみ21を反時計方向に回動させることによって発光表示装置1の回動を阻止する回動阻止部とを有する」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第6・19・20図等より、発光表示装置1は、係合部7を備えたホルダ17と、ホルダ17に係合する基板15と、ランプ2とを主構成とし、ホルダ17は基板15に係合し、ホルダ17は、係合部7の外側部に、一対の爪18,18を対向配置させており、一対の爪18,18は概略L字形状に形成され、ホルダ17の係合部7側を係合孔19に挿通させ、つまみ21を時計方向に回動させることによって、ホルダ17は基板15,すなわち係合孔19の開口部外縁に係合すること(記載事項2)等から、一対の爪18,18は、「発光表示装置1と基板15との間に設けられ発光表示装置1の所定回動位置で発光表示装置1の軸方向の移動を阻止する一対の爪18,18の屈曲先端部」を備えるものと認められる。
これらの記載から、引用例1には、

「円柱状係合部7と、この円柱状係合部7の外側部に対向配置され軸方向に弾性変形付勢される概略L字形状の一対の爪18,18とを有する発光表示装置1と、
この発光表示装置1を軸方向に挿入抜去自在とするとともに軸回りに回動自在とする係合孔19と、前記発光表示装置1の所定回動位置で一対の爪18,18を係合し発光表示装置1の回動による係合の解除にあたってはつまみ21を反時計方向に回動させることによって発光表示装置1の回動を阻止する回動阻止部とを有する基板15と、
前記発光表示装置1と基板15との間に設けられ発光表示装置1の前記所定回動位置で発光表示装置1の軸方向の移動を阻止する一対の爪18,18の屈曲先端部と、
を備えたパチンコ機3の発光表示装置1取り付け構造。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「円柱状係合部7」、「対向配置され」、「一対の爪18,18」、「発光表示装置1」、「係合孔19」、「係合」、「基板15」、「一対の爪18,18の屈曲先端部」および「パチンコ機3」は、本願発明における「筒体」、「設けられ」、「弾性変形部」、「板面突出部品」、「挿入凹部」、「係止」、「取り付け基板」、「軸方向移動阻止手段」および「遊技機」に相当すると認められる。
また、引用例1発明の「円柱状係合部7の外側部に対向配置され軸方向に弾性変形付勢される」と、本願発明の「筒体の外周部に設けられ径方向に弾性変形付勢される」は、「筒体の特定位置に設けられ特定方向に弾性変形付勢される」で共通し、
また、引用例1発明の「つまみ21を反時計方向に回動させることによって」と、本願発明の「弾性変形部の外径の変更を要してこの外径の変更に伴う弾性変形部の付勢力増大によって」は、「所定の条件によって」で共通する。
したがって、両者は、

「筒体と、この筒体の特定位置に設けられ特定方向に弾性変形付勢される弾性変形部とを有する板面突出部品と、
この板面突出部品を軸方向に挿入抜去自在とするとともに軸回りに回動自在とする挿入凹部と、前記板面突出部品の所定回動位置で弾性変形部を係止し板面突出部品の回動による離脱にあたっては所定の条件によって板面突出部品の回動を阻止する回動阻止部とを有する取り付け基板と、
前記板面突出部品と取り付け基板との間に設けられ板面突出部品の前記所定回動位置で板面突出部品の軸方向の移動を阻止する軸方向移動阻止手段と、
を備えた遊技機の板面突出部品取り付け構造。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:弾性変形部の構造において、本願発明では、「筒体の外周部に設けられ径方向に弾性変形付勢される」のに対し、引用例1発明では、本願発明のような構成となっていない点。

相違点2:板面突出部品の回動を阻止する取り付け基板の回動阻止部の所定の条件において、本願発明では、「板面突出部品の所定回動位置で弾性変形部を係止し板面突出部品の回動による離脱にあたっては弾性変形部の外径の変更を要してこの外径の変更に伴う弾性変形部の付勢力増大による」のに対し、引用例1発明では、「発光表示装置1の所定回動位置で一対の爪18,18を係合し発光表示装置1の回動による係合の解除にあたってはつまみ21を反時計方向に回動させる」ことであり、本願発明のような回動阻止部の構成条件となっていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について、パチンコ機分野において、一般的に、円筒体の外周部に設けられ径方向に弾性変形付勢される弾性爪体が周知であるから{例えば、実公昭47-40923号公報(第1頁2欄第9?13行、第1頁2欄第18?21行等、第2図等)、実願昭61-124555号(実開昭63-32579号)のマイクロフィルム(第6頁第8?11行、第7頁第7?12行等、第5図等)参照。}、引用例1発明の一対の爪18,18に代えて、上記周知技術を適用し、 本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点2について、円周方向に弾性部材がある回動体の移動規制において、一般的に、被回動体に回動体の所定回動位置で弾性部材を係止し回動体の回動による離脱にあたっては弾性部材の外径の変更を要してこの外径の変更に伴う弾性部材の付勢力増大による回動阻止部を設けることが周知{例えば、実願昭63-16881号(実開平1-121706号)のマイクロフィルム(第2頁第18行?第3頁第2行、第3頁第18?19行等、第6?9図等)、特開平4-32203号公報(第3頁左欄下段第9?13行、第4頁左欄上段第7?11行等、第2・3図等)参照。}であるから、引用例1発明の基板15の回動阻止部の構成条件に代えて、上記周知技術を適用して、本願発明の相違点2に係る構成条件とすることは、当業者が格別の発明力を要することなく、必要に応じて容易に想到し得るものである。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-05 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-26 
出願番号 特願平5-352359
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 林 晴男
土屋 保光
発明の名称 遊技機の板面突出部品取り付け構造  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  

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