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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1167361
審判番号 不服2005-17447  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-12 
確定日 2007-11-08 
事件の表示 特願2002-374488「荷電ビーム装置、荷電ビーム照射方法、パターン形状計測方法および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日出願公開、特開2004-207032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年12月25日の出願であって、平成17年8月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年9月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年10月11日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月11日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年10月11日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び5は、平成17年4月26日付の手続補正による
「【請求項1】パターンの形状情報から前記パターンのエッジ位置を検出するエッジ位置検出手段と、
荷電ビームを照射する領域としての照射領域を前記パターンの形状に応じて前記パターンのエッジおよびその周辺領域に設定する照射領域設定手段と、
荷電ビームにより走査される走査面における荷電ビームの照射位置を指定する照射位置情報信号を、前記照射領域内で隣接する照射位置が連続して指定されることを避けて順々に出力する照射位置情報出力手段と、
出力された前記照射位置情報信号に対応する照射位置に荷電ビームを照射する照射制御手段と、
を備える荷電ビーム装置。
【請求項5】前記照射領域は、前記パターンのエッジ位置を中心に一定の幅を有する帯状の領域である、請求項1または2に記載の荷電ビーム装置。」
から、
「【請求項1】パターンの形状情報から前記パターンのエッジ位置を検出するエッジ位置検出手段と、
前記パターンの形状の複雑度を評価するパターン形状評価手段と、
荷電ビームを照射する領域としての照射領域を前記パターンのエッジおよびその近傍領域に設定する照射領域設定手段と、
荷電ビームにより走査される走査面における荷電ビームの照射位置を指定する照射位置情報信号を、前記照射領域内で隣接する照射位置が連続して指定されることを避けて順々に出力する照射位置情報出力手段と、
出力された前記照射位置情報信号に対応する照射位置に荷電ビームを照射する照射制御手段と、
を備える荷電ビーム装置であって、
前記照射領域設定手段は、前記照射領域の形状およびサイズの少なくともいずれかを、
前記パターン形状評価手段により評価された複雑度に応じて局所的に変化させることを特徴とする、荷電ビーム装置。
【請求項5】前記照射領域に対する前記荷電ビームの照射回数は、前記照射領域を構成するピクセル毎に前記複雑度に応じて決定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の荷電ビーム装置。」
に補正された。

・理由1
新規事項について:
審判請求時に補正された請求項1に記載された事項である「照射領域の形状およびサイズの少なくともいずれか」を、「評価された複雑度に応じて局所的に変化させる」ことは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、その記載から自明な事項でもない。
したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(「当初明細書」と呼称する。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、同法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
すなわち、当初明細書には、【0027】段落に「画素領域の形状およびサイズは、測定や観察の目的に応じてその都度設定することができる。…照射領域の幅は、一定に限定されるものではない。例えば、パターン形状が角部を多く含むような複雑な場合や、単なる直線のように単純な場合においては、それぞれ狙いとするパターンの形状に応じて照射領域を調整するような照射領域設定方法を用いることにより、ビーム照射の最適化を図ることが可能である。」と記載されているが、当該段落の記載では、画素領域(「照射領域」に対応。)の形状およびサイズが、パターン形状ごとに設定されるものであるのか、一個のパターン形状に対して局所的に設定されるものであるのかが明確に記載されていないため、当該段落には、照射領域の形状またはサイズを「局所的に変化」させる構成とすることが記載されているとはいえない。
さらに、当該段落には、複雑度に応じて照射領域の形状またはサイズを決定することは何ら記載されていない。
また、当初明細書の【0038】段落には、「パターンエッジ位置情報から局所的なパターン形状の複雑さを評価し、複雑な箇所のエッジ位置情報を出力する。これにより得られた、パターン形状で複雑な箇所に相当する照射位置(x,y)に対して、メインコンピュータ22は、ランダムに照射する回数を複数回に設定し、または照射時間を長くするなどの制御を実行する。これにより、検出される信号量が増加してS/Nが高い画像を得ることができる」ことが記載されているが、当該段落には、上記複雑な箇所に相当する照射位置に対して、局所的に照射領域の形状およびサイズを変化させることは、記載も示唆もされていない。
また、当初明細書の請求項6、15には、「照射領域の形状およびサイズのうち少なくとも一つは、前記パターンのエッジの局所的な形状に応じて前記パターンのエッジ点ごとに設定される」との記載があるが、当該請求項に係る発明は、照射領域の形状およびサイズを、局所的に変化させるものに限定するものでない。
そして、上記記載箇所以外に、当該補正の根拠とされるべき記載は当初明細書にはない。
したがって、照射領域の形状およびサイズの少なくともいずれかを、複雑度に応じて局所的に変化させることは、当初明細書には、記載も示唆もされていない。
なお、審判請求の理由において、出願人は、「このような構成により、例えばパターンの角部や曲線部、穴形状など、高いS/Nが要求される部位では大きな照射領域を設定することにより充分な精度を確保し、この一方、例えば直線など、形状が単純であるためにS/Nがそれほど高くなくても精度が確保できる部位では小さな照射領域を設定するので(【0037】段落)、本来はトレードオフの関係にあるスループットおよび歩留りの双方を向上させることができるという効果を奏するものである。」と主張しているが、【0037】段落には、パターン形状と照射領域の形状の対応関係は記載されておらず、上記主張は、本願の発明の詳細な説明および図面にその根拠を置くものではないため、採用できない。
したがって、上記補正は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内の事項ではない事項を含むから、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

・理由2
補正の目的について:
請求項5についての補正は、「荷電ビームの照射回数」を、ピクセル毎に変化させることが特定された。
しかしながら、補正前の特許請求の範囲には、荷電ビームの照射回数に関しては何らの限定もされていないため、当該補正は、請求項に係る発明を特定するために必要な事項の限定には該当しない。
そして、当該補正が、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正および不明りょうな記載の釈明のいずれにも該当しないことも明らかである。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

・理由3
独立特許要件について:
補正後の請求項1の「近傍領域」とは、エッジの周囲のどの程度の大きさまでを指すのかが明確でないので、照射領域をどの程度に取ればよいかが明確でなく、補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

・むすび
上記理由1、理由2及び理由3により、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年10月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年4月26日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「パターンの形状情報から前記パターンのエッジ位置を検出するエッジ位置検出手段と、
荷電ビームを照射する領域としての照射領域を前記パターンの形状に応じて前記パターンのエッジおよびその周辺領域に設定する照射領域設定手段と、
荷電ビームにより走査される走査面における荷電ビームの照射位置を指定する照射位置情報信号を、前記照射領域内で隣接する照射位置が連続して指定されることを避けて順々に出力する照射位置情報出力手段と、
出力された前記照射位置情報信号に対応する照射位置に荷電ビームを照射する照射制御手段と、
を備える荷電ビーム装置。」

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例
引用例1. 特開2002-6479号公報
引用例2. 特開平5-151921号公報

(1).1 引用例1の記載内容
【特許請求の範囲】の【請求項3】には、
「【請求項3】マスク設計パターンの輪郭に許容精度を加えた外周と許容精度を減じた内周に挟まれる帯状の検査領域を記憶する記憶手段と、荷電粒子線を微小なスポットビームにするビーム形成手段と、少なくとも、所望位置に荷電粒子線が照射されるようにするマスク移動手段、または、所望位置に荷電粒子線をマスクに走査する荷電粒子線走査手段のどちらか一方を含み、前記記憶された帯状の検査領域に基づいて、前記マスク移動手段と荷電粒子線走査手段を制御する制御手段と、マスクからの2次電子、反射荷電粒子または透過荷電粒子を検出する荷電粒子検出手段と、2次電子、反射荷電粒子または透過荷電粒子から検出される転写マスクパターンの輪郭の座標と前記帯状の検査領域の座標を比較する比較演算手段と、前記転写マスクパターンの輪郭の座標が、前記帯状の検査領域外にある場合に欠陥と判断する欠陥判断手段を少なくとも備えてなることを特徴とするマスク検査装置。」
と記載されている。

【0001】段落には、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造等において使用される荷電粒子線露光用マスクの検査方法及び検査装置に関するものである。」
と記載されている。

【0013】?【0018】段落には、
「【0013】
【発明の実施の形態】…図1は、本発明の帯状の検査領域の概念を示す説明図である。帯状の検査領域は、マスクの設計パターンを基に予め作成しておくが、この際、製造するマスクに要求される精度を設計パターンの輪郭に加味して設定する。図1(a)に示すような設計パターン1の寸法Aについて許容精度を±Bとした場合、帯状の検査領域は図1(b)に示すように、寸法A+Bを含むラインを外周とし、寸法A-Bを含むラインを内周とする帯状のパターンになる。この帯状のパターン部分にのみ、荷電粒子線照射を行う。
【0014】次に、図2(a)に示すように、描画形成された転写マスクパターン3に対し、帯状の検査領域…に荷電粒子線を照射する…。
【0015】次に、本発明のマスク検査方法の操作手順を…説明する。先ず、マスク設計パターンの輪郭に許容精度を加えた外周と許容精度を減じた内周からなる帯状の検査領域を設定する工程(a)、前記帯状の検査領域にのみ、荷電粒子線を照射する工程(b)が行われる。

【0018】次に、本発明によるマスク検査装置を、その実施形態に基づいて説明する。…予め、マスク設計パターンの輪郭に設計精度を加味して形成された帯状の検査領域は、記憶装置18に記憶される。…」
と記載されている。

【0019】段落には、
「【0019】次に、現在の転写マスク10の位置から自動的に荷電粒子線の照射範囲が計算され、電子線制御装置14と荷電粒子銃7によって微小なスポットビームに形成された荷電粒子線8を転写マスク10に照射する。…」
と記載されている。

(1).2 引用例2の記載内容
【特許請求の範囲】の【請求項1】には、
「【請求項1】電子ビームによって走査される走査平面における電子ビームの照射位置を指定する位置情報信号を、互いにランダムに照射位置を指定するように順々に出力する位置情報出力手段と、この出力された位置情報信号に対応する照射位置に電子ビームを照射する照射制御手段とを備えることを特徴とする電子ビーム照射装置。」
と記載されている。

【0001】段落には、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子ビーム照射装置に係り、特に、電子ビームによって走査される走査平面の電子ビームの照射位置を指定して電子ビームを照射する電子ビーム照射装置に関する。」
と記載されている。

【0010】段落には、
「【0010】そこで本発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解消し、チャージアップを防ぐことができ、良好なS/Nの画像を得ることのできる電子ビーム照射装置および方法を提供することである。」
と記載されている。

【0017】段落には、
「【0017】
【作用】電子ビームは走査平面における照射位置を連続して照射することなく、ランダムな順番で、あるいは走査平面の隣接する照射位置を連続して照射しないように予め定めた順番で、照射されるので、チャージアップを防ぐことができる。」
と記載されている。

【0034】段落には、
「【0034】この位置情報信号は隣接する照射位置を連続して指定しないように与えられる。さらに、この位置情報信号は電子ビームの照射された走査平面11に電子が蓄積することを抑制するように、走査平面を構成する電気伝導領域と電気非伝導領域との分布に応じて適切に配列されている。」
と記載されている。

(1).3 引用例1に記載された発明
上記(1).1 引用例1の記載内容から、引用例1には、
「マスク設計パターンの輪郭に帯状の検査領域を記憶する記憶手段と、荷電粒子線をビームにするビーム形成手段と、所望位置に荷電粒子線でマスクを走査する荷電粒子線走査手段を含み、前記記憶された帯状の検査領域に基づいて、荷電粒子線走査手段を制御する制御手段を備えてなるマスク検査装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア.引用発明の「マスク設計パターン」、「マスク設計パターンの輪郭」、「ビーム」、「帯状の検査領域」及び「荷電粒子線走査手段を制御する制御手段」は、本願発明の「パターン」、「パターンのエッジ」、「荷電ビーム」、「パターンのエッジ及びその周辺領域」及び「照射制御手段」に相当する。
イ.引用例1の【0013】段落には、「帯状の検査領域は、マスクの設計パターンを基に予め作成しておく」との記載があるから、引用発明は、明示的記載がないものの、「パターンの形状情報からパターンの輪郭(エッジ)を検出するエッジ位置検出手段を有していることが明らかである。
ウ.引用例1の【0014】段落の記載「帯状の検査領域…に荷電粒子線を照射する」を参照すると、引用発明の「帯状の検査領域」は、本願発明の「照射領域」に相当する。
エ.引用例1の【0018】段落の「マスク設計パターンの輪郭に設計精度を加味して形成された帯状の検査領域は、記憶装置18に記憶される」との記載、【0019】段落の記載「自動的に荷電粒子線の照射範囲が計算され、電子線制御装置14と荷電粒子銃7によって微小なスポットビームに形成された荷電粒子線8を転写マスク10に照射する」との記載から、引用発明は、明示的記載がないものの、「パターンのエッジおよびその周辺領域に設定する照射領域設定手段」及び「荷電ビームにより走査される走査面における荷電ビームの照射位置を指定する照射位置情報信号に対応する照射位置に荷電ビームを照射する照射制御手段」を有することが明らかである。
オ.引用発明は、「荷電粒子線でマスクを走査する」から、「荷電ビーム装置」であるといえる。

そうすると両者は、
「パターンの形状情報から前記パターンのエッジ位置を検出するエッジ位置検出手段と、
荷電ビームを照射する領域としての照射領域を前記パターンの形状に応じて前記パターンのエッジおよびその周辺領域に設定する照射領域設定手段と、
荷電ビームにより走査される走査面における荷電ビームの照射位置を指定する照射位置情報信号に対応する照射位置に荷電ビームを照射する照射制御手段と、
を備える荷電ビーム装置。」
において一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明が、「照射領域内で隣接する照射位置が連続して指定されることを避けて順々に出力する照射位置情報出力手段」を有するのに対し、引用発明には当該記載がない点。

(3)判断
相違点1について検討する。
荷電ビーム装置において、被照射体に荷電ビームを連続的に走査すると、被照射体に荷電が蓄積して荷電ビームが適切に照射されない現象が生じるので、この不都合を解消するため、被照射体に荷電ビームを非連続的に走査することは周知手段(例えば、周知手段として原審の拒絶の理由において引用した引用例2(【0017】、【0034】段落)及び特開平6-124681号公報(【0007】、【0008】段落)等参照)である。
上記周知手段を引用発明に適用することは、ビームを連続照射することによる不都合を解消するため、当業者が当然試みることにすぎず、また、上記周知手段を引用発明に適用することに阻害要因がないから、相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知手段から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知手段に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、平成19年8月28日付審尋回答書において、補正案を提示しているが、その内容を検討しても特段のものは認められない。

(4)むすび
そうすると、本願発明は、引用発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-13 
結審通知日 2007-09-14 
審決日 2007-09-26 
出願番号 特願2002-374488(P2002-374488)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也渡戸 正義  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 濱田 聖司
辻 徹二
発明の名称 荷電ビーム装置、荷電ビーム照射方法、パターン形状計測方法および半導体装置の製造方法  
代理人 箱崎 幸雄  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 川崎 康  
代理人 吉武 賢次  
代理人 吉元 弘  
代理人 橘谷 英俊  

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