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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 G01M |
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管理番号 | 1167896 |
審判番号 | 無効2005-80337 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2005-11-25 |
確定日 | 2007-10-09 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2050323号「自動車自動運転ロボットの制御方法」の特許無効審判事件についてされた平成18年9月12日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年行ケ第10473号、平成18年12月28日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2050323号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 平成 3年 1月16日 本件特許出願 平成 8年 5月10日 特許権設定登録(特許第2050323号) 平成17年 8月 5日 訂正審判請求(訂正2005-39140号) 平成17年 9月21日 訂正認容審決 平成17年11月25日 本件無効審判請求(無効2005-80337号) 平成18年 1月25日 訂正請求書 平成18年 2月20日 答弁書 平成18年 5月22日 訂正拒絶理由通知書 平成18年 6月20日 意見書及び補正書 平成18年 9月12日 審決(特許第2050323号発明の特許を無効とする。) 平成18年10月17日 審決取消訴訟(平成18年(行ケ)10473号) 平成18年10月17日 訂正審判請求(訂正2006-39171号:みなし訂正請求により取下) 平成18年12月28日 知財高裁において審決取消決定(特許庁が無効2005-80337号事件について平成18年9月12日にした審決を取り消す。) 平成19年 4月 5日 みなし訂正請求書を送付 平成19年 5月 9日 弁駁書 平成19年 6月18日 答弁書 2.訂正の適否について 2-1.訂正の内容 特許法第134条の3第5項の規定により、「訂正の請求」とみなされた訂正審判の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項a 請求項1において、「モータによってそれぞれ駆動される」とあるのを、「自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット本体に設けられ、モータによってそれぞれ駆動される」と訂正する。 (2)訂正事項b 請求項1において、「において、前記モータへの電流を」とあるのを、「において、自動的に前記モータへの電流を」と訂正する。 (3)訂正事項c 請求項1において、「前記モータへの電流を制御しながら」とあるのを、「前記モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否 (1)訂正事項aについて 訂正事項aは、請求項1の記載中の「2つのアクチュエータ」が「自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット本体に設けられ、」に限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件明細書の段落【0010】には「5は自動車1の運転席6(図4参照)に人間が座るときと同じようにして座席シートに適宜の手段で固定される運転ロボット本体で、この運転ロボット本体5には、図4(A),(B)にも示すように、アクセルペダル7A,ブレーキペダル7B,クラッチペダル7Cをそれぞれ踏込み操作するためのペダル用アクチュエータ部8A, 8B, 8Cと、変速レバー9のシフトグリップ9aを把持してそのシフト位置を切換え操作するための変速レバー用アクチュエータ部10が設けられている。」と記載されているから、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1に記載された事項により特定される発明の目的の範囲内で行うものであるから、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。 (2)訂正事項b及びcについて 訂正事項b及びcは、請求項1の記載中の「前記モータへの電流を制御しながら、」を「自動的に前記モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら、」と訂正するものであるが、この訂正は、モータへの電流の制御が「自動的に」行われることを明確にし、また、モータへの電流の制御の内容を「シフト位置変更動作時の電流よりも少なく」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、本件明細書の段落【0017】には「さて、変速レバー9の位置を自動学習する方法について、図6を参照しながら説明する。」と記載され、その記載に続いて、段落【0020】【0023】【0026】【0028】【0029】【0037】に、DCサーボモータに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータの発生トルクを低減してアクチュエータを移動することが記載されており、これらの記載の前には、モータへの電流に関して、段落【0014】に「ところで、この種の運転ロボットにおける変速レバー9のシフト位置変更は、X軸アクチュエータ部 10XにおけるDCサーボモータ 13XおよびY軸アクチュエータ部 10YにおけるDCサーボモータ 13Yに対して所定の電流を流すことにより、アクチュエータ13X, 13Yの位置を各エンコーダ12X, 12Yによって検出し、この検出出力信号を位置指令信号と突き合わせ、検出出力と位置指令との偏差をP制御(Proportional control)するようにしている。」と記載されているのみであるから、段落【0020】等の、DCサーボモータに対する電流供給量を少なくするとは、シフト位置変更動作時の電流より少なくすることを意味することが明らかである。したがって、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1に記載された事項により特定される発明の目的の範囲内で行うものであるから、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。 (3)請求人は、平成19年5月9日付け弁駁書において、「今回の訂正により、『モータへの電流を制御しながら』の『制御』の文言が削除され、『モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら』と表現が変更された。訂正前の記載では、能動的に『電流を制御』する場合のみが特許請求の範囲に含まれるのに対し、訂正後の記載では、能動的に『電流を制御』せずとも、結果的に電流が『シフト位置変更動作時の電流よりも少なく』なる場合も特許請求の範囲に含まれることとなる。従って、この訂正が、実質上特許請求の範囲を変更し、又は拡張するものに該当することは明らかである。」と主張している。 しかし、国際特許分類第7版の「G05 制御・調整」の(注)/(索引)に「“制御”とは,手段を問わず変量に影響をあたえること,例.その向きまたは値を変えること(それを零にまたは零から変化させることも含む),それを一定に保つこと,その変化範囲を制限すること,を意味する」とあるように、「制御」とは、「自動制御」に限らず、「手段を問わず変量に影響をあたえること,例.その向きまたは値を変えること」も含むものであるから、「制御」に代えて「モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なく」としたことが、実質上特許請求の範囲を変更し、又は拡張するとはいえない。 (4)以上のとおりであるから、みなし訂正請求における訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書並びに同条第5項において準用する同法126条第3項及び第4項の各規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.無効審判請求について 3-1.本件特許発明 上記のように訂正を認めるので、本件特許発明は、みなし訂正請求によって訂正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット本体に設けられ、モータによってそれぞれ駆動される2つのアクチュエータによってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動可能な変速レバーを備えた自動車自動運転ロボットにおいて、自動的に前記モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら前記変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させるようにしたことを特徴とする自動車自動運転ロボットの制御方法。」 3-2.無効審判請求人の主張の要点 請求人は次の甲第1号証?甲第12号証を提出した。 甲第1号証:野口ほか「モード運転用ロボット」、自動車技術、第43巻第11号、第58?64頁(1989年11月1日発行) 甲第2号証:特開昭58-180327号公報 甲第3号証:特開平2-190280号公報 甲第4号証:特開昭62-165208号公報 甲第5号証:特開昭61-193206号公報 甲第6号証:実願昭61-170360号(実開昭63-76488号)のマイクロフィルム 甲第7号証:特開昭61-206007号公報 甲第8号証:特開昭57-14908号公報 甲第9号証:戸田孝、中村修照、寺嶋正之共著「図解制御用小型モータの活用」、学校法人東京電機大学、第12?15頁(1989年3月20日第1版1刷発行) 甲第10号証:岡田養二、長坂長彦共著「サーボアクチュエータとその制御」、株式会社コロナ社、第1?5,64,65頁(1985年11月20日初版第1刷発行) 甲第11号証:山田博著「モータと回路技術」、工学図書株式会社、第98,99頁(1989年9月25日初版発行) 甲第12号証:特公平7-43296号公報(※ただし、本件特許公報である) そして、請求人は、訂正後の発明は、甲第1号証、甲第2号証及び周知技術(甲第6?8号証)に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と主張している。(平成19年5月9日付け弁駁書) 3-3.被請求人の主張の要点 (平成19年6月18日付け答弁書) 本件発明のポイントは、自動車運転席の座席シートという不安定な部位に取り付けられた自動車自動運転ロボットにおいて、シフト位置の自動学習機能、すなわちシフト位置のラーニング機能を設け、その自動学習時の電流を、シフト位置変更時の電流より少なくすることにある。 ロボット本体が自動車の座席シートという不安定なものに設置されている自動車自動運転ロボットでは、自動学習時に、電流(あるいはトルク)を通常試験におけるシフト位置変更動作時のときのような大きなものにすると、変速レバーが移動端にまで到達しても、ロボット本体が不安定なことから、さらにアクチュエータが動き、ロボット本体を傾けるような過剰な力が加わってしまう。そして、位置決めの基準となるロボット本体が傾いた状態でのその操作位置をシフト位置として記憶してしまうことから、誤学習のおそれが非常に大きいという特有の課題が生じるのであるが、本件発明によれば、自動学習時に電流低減することによって係る問題を鮮やかに解決することができるのである。 これに対し、甲各号証には、自動車自動運転ロボット(甲第1号証)であるとか、シフト位置を自動学習する構成(甲第2号証)であるとか、駆動電流を低減する構成(甲第6号証?甲第8号証)といった各構成要素が、それぞれ分散して記載されているに過ぎない。すなわち、甲各号証(甲第1、第2、第6?第8号証)には、座席シートに固定された自動車自動運転ロボットにおいてシフト位置の自動学習時に駆動電流乃至トルクを低減させる構成は一切記載されていないし、また、甲各号証記載の発明から、座席シートに固定された自動車自動運転ロボットにおいて確実なシフト位置学習ができる、という本件発明の格別な効果を得ることはできない。 3-4.引用例 3-4-1.甲第1号証:野口ほか「モード運転用ロボット」、自動車技術、第43巻第11号、第58?64頁(1989年11月1日発行) 請求人が提出した甲第1号証には、「モード運転用ロボット」に関する発明が記載されており、図面とともに以下の記載がある。 (甲1a)「1.はじめに シャシダイナモ上における完成車両の各種モード運転によるエミッション・燃費試験の自動化の要求が益々高まっている。自動化の目的は、省力化はもちろんであるが、運転の再現性の向上、低温、低圧化等の悪環境下での無人運転、長時間の無人運転などである。 この目的のために近年、油圧や空気圧およびDCモータを用いた各種の自動運転用ロボットが開発され、モード試験に使用されつつある。」(第58頁左欄第1?9行) (甲1b)「2.1.システム構成 本システムの全体の構成を図1に示す。このうち本ロボットは、主制御部(図2)とアクチュエータ部(ロボット本体と呼び図3に示す)から成る。主制御部は2個のCPU(i8088)とCRT,キーボード端末,サーボドライブ回路および電源から成る。CPUのうち1個は制御用であり、他の1個はマンマシンインターフェース用の操作用CPUである。アクチュエータ部はアクセル,ブレーキ,クラッチの各ペダルを操作するDCサーボモータ各1個とギヤをX,Y,Z軸に操作するDCモータがある(計6個のDCモータ)。」(第59頁右欄第2?15行) (甲1c)「2.2.機能 本ロボットドライバの仕様を表1に示す。本システムは完成車両の運転席に人間の代わりにロボットが座って運転するというコンセプトであるので、ロボットの着脱は15分程度の短時間で行え、ロボットは運転席にフラップで締め付けて固定するという簡単な構造を取っている。図4に、運転席にセットされたロボットの写真を示す。」(第59頁右欄第20行から第60頁左欄第5行) (甲1d)「(2)ティーチングとラーニング ロボットを車にセットする場合は必ずティーチングを行う。図7に示すティーチング画面でロボットのギヤシフトアクチュエータ(X,Y,Z軸)を手動リモコンを使って操作し、各変速位置を学習させる。変速位置をすべて学習させると、次にラーニングモードに移る。ラーニングモードではアクチュエータが各ペダルに触れる位置と最大踏込位置を自動的に学習する。さらに、アクセルペダルの踏込量とニュートラルでのエンジン回転数の関係を学習し、ブレーキペダルの踏込量と操作量の関係も学習する。クラッチペダルについては接続開始点も学習する。シフトレバーについてはティーチングで学習した位置を順次復習する。以上によって、ロボットは対象車種に対するギヤ位置、アクセル等のペダル位置に対して学習したことになる。」(第60頁右欄第5?19行) また、図3及び図4には、自動車の運転席の座席シートに自動運転用ロボットを取り付けた図が示されている。 したがって、上記(甲1a)?(甲1d)の記載、及び図面の記載を参照すれば、甲第1号証には、 「自動車の運転席の座席シートに固定される運転用ロボット本体に設けられ、DCモータによってそれぞれ駆動される2つのアクチュエータによってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動可能なシフトレバーを備えたモード運転用ロボット」が記載されており、このモード運転用ロボットに対して、「ロボットのギヤシフトアクチュエータ(X,Y,Z軸)を手動リモコンを使って操作し、シフトレバーの各変速位置を学習させる制御方法」(甲第1号証記載の発明)が記載されていると認められる。 3-4-2.甲第2号証:特開昭58-180327号公報 請求人が提出した甲第2号証には、「自動変速機用位置制御装置」が記載されており、図面とともに以下の記載がある。 (甲2a)「本発明は、自動変速機用位置制御装置に関し、・・・内燃機関用車輌用の変速機の変速レバーに連結されたアクチュエータを制御ユニットからの制御信号に従って駆動し、変速レバーを所望の位置に切換えるようにした自動変速機用位置制御装置に関する。」(第1頁右下欄第5?10行) (甲2b)「本発明の目的は、・・・従来装置における上述の位置決め調整の手間を省略することができる、学習機能を備えた自動変速機用位置制御装置を提供することにある。」(第2頁左上欄第18行?右上欄第1行) (甲2c)「第1図には、本発明による自動変速装置の概略構成図が示されている。自動変速装置1は変速レバー2を含む変速機3と、該変速レバー2に夫々連結されこの変速レバー2をシフト方向(SF)及びこれと直角のセレクト方向(SE)に移動させるための油圧アクチュエータ4,5とを備え、油圧アクチュエータ4,5にはシフト位置センサ6及びセレクト位置センサ7が夫々連結されている。」(第2頁左下欄第7?15行) (甲2d)「第2図には、上述の学習プログラムによる学習動作の基本的動作が示されている。その基本動作は、変速レバー2の移動通路の形状及びその位置を測定するために、変速レバー2を移動通路の少なくとも幅方向に移動させ、移動通路の両側の位置に応じた電圧信号V1,V2を検出する作業の繰返しである。 即ち、第2図のa位置に変速レバー2があったとすると、先ず、変速レバー2をシフト方向にb→c→d→eの如く移動させ、この点における移動通路の幅を知り、その移動通路の両側からの中心位置fを算出する。次に、シフト方向の位置を上記fの位置に固定し、変速レバー2をセレクト方向に動かし、その位置をg→h→i→jとし、このセレクト方向の許容幅の値からニュートラル位置kを求める。ニュートラル位置kが求められたならば、変速レバー2をこの位置kに位置決めした後、セレクト方向にl→m→nと動かし、その移動範囲の中心地oを算出し、値oが先に算出したfの値と実質的に同一であることを確認する。以後、同様な手法により、1速,2速,・・・の各ポジション位置A,B,C,D,E,R、並びに移動通路の他の部分の幅の位置を測定し、変速レバー2の各ポジション及び変速レバー2の移動通路の幅のパターンデータを得、これらのデータをメモリ13にストアする。以後の変速レバー2の位置決め操作は、このメモリ13にストアされたデータに基づいて行なわれる。この例に示された学習動作は、イニシャルデータセットを行なう場合に適用できるものであり、このプログラムを用いると変速レバー2の位置制御に必要な全てのデータが制御装置の学習プログラムの実行により自動的に得られるので、組立時の調整が不要となり、製造工程での工数を著しく減少させることができ、コストの低減を期待することができる。」(第3頁右上欄第6行?左下欄第20行、※注:(甲2d)の原記載では、小文字の英文字a?oは全て「○」で囲まれている) (甲2e)「本発明によれば、上述の如く、変速レバーをシフト及びセレクト操作する場合の移動路を学習によって自動的に決定し、移動通路の許容幅内において常に適切な移動路を選んでギアチェンジを行なえる。」(第5頁左上欄第7?11行) 上記(甲2a)?(甲2e)の記載からみて甲第2号証には、 「2つの油圧アクチュエータ4、5によってセレクト方向(SE)およびシフト方向(SF)にそれぞれ移動可能な変速レバー2を備えた自動変速機用位置制御装置」が記載されており、その自動変速機用位置制御装置においては、「油圧を制御しながら前記変速レバー2をセレクト方向(SE)およびシフト方向(SF)にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させる方法」が記載されているものと認められる。 3-5.対比・判断 本件特許発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明における「シフトレバー」が本件特許発明の「変速レバー」に相当することが明らかであり、また、甲第1号証記載の「モード運転用ロボット」は、本件特許発明と同様にシャシダイナモメータを利用した車両の走行性能試験に用いるものであるから、甲第1号証記載の発明の「モード運転用ロボット」は本件特許発明の「自動車自動運転ロボット」に相当するものである。 また、甲第1号証記載の発明における「ロボットのギヤシフトアクチュエータ(X,Y,Z軸)を手動リモコンを使って操作し、シフトレバーの各変速位置を学習させる」は、本件特許発明の「変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を学習させる」に当たるものである。 したがって、両者は「自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット本体に設けられ、モータによってそれぞれ駆動される2つのアクチュエータによって、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動可能な変速レバーを備えた自動車自動運転ロボットにおいて、前記変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を学習させるようにした自動車自動運転ロボットの制御方法。」である点で一致するが、 変速レバーのシフト位置の学習について、本件特許発明が、「自動的にモータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら、」前記変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動して「その可動範囲を確認して」その操作位置を記憶させることより、変速レバーのシフト位置を「自動的に」学習させるようにしているのに対して、甲第1号証記載の発明は、手動で変速レバーのシフト位置を学習するものであって、甲第1号証にはこの構成が記載されていない点で相違していると認められる。 この相違点について検討する。 変速レバーのシフト位置を自動的に学習する点に着目すると、甲第2号証には、本件特許発明及び甲第1号証記載の発明と同様に車両に設置され、変速レバーの位置を自動的に制御する自動変速機用位置制御装置が記載されており、上記の摘記事項(甲2a)?(甲2e)に示したように、そのような自動変速機用位置制御装置において、「2つのアクチュエータを制御して変速レバーをX軸方向およびY軸方向(甲2号証におけるセレクト方向(SE)およびシフト方向(SF))にそれぞれ移動し、その可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させる方法」が記載されている。 甲第1号証記載の発明では、変速レバーの位置は手動的な学習である「ティーチング」によって学習しているが、アクチュエータが、アクセル、ブレーキ、クラッチの各ペダルに触れる位置と最大踏込位置は自動的な学習である「ラーニング」で学習するものであり、アクセル、ブレーキ、クラッチに限らず、自動車自動運転ロボットが操作する「変速レバー」についても、「自動的に位置を学習させる」という課題があることは明らかである。 そして、甲第1号証及び甲第2号証に記載されている発明は、ともに車両の運転席に設置され、変速レバーの位置を自動的に制御する装置に関するものであるから、共通の技術分野に属するということができる。 してみると、甲第1号証に記載の自動車自動運転ロボットにおいて、変速レバーのシフト位置の学習に、甲第2号証に記載の変速レバーの操作位置の学習の技術を用いて、変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。 そして、甲第2号証の上記摘記事項(甲2d)に記載されているように、学習動作時には変速レバーを移動通路に順次当てながら位置を測定するものであり、変速レバーに強いトルクを加えると位置ずれやひいては移動通路等の破損を生じる恐れもあるから、学習動作時に変速レバーに加えるトルクを少なくする必要があることは当業者に明らかである。他方、シフト位置変更動作時には、予め変速レバーを移動する位置が決まっているのであるから、変速レバーに加えるトルクを大きくして迅速に変速レバーを移動させることも明らかである。さらに、学習時と同様のロボットのティーチング時に、駆動するモータへの供給電流値を下げトルクを小さくすることも周知の事項である(実願昭61-170360号(実開昭63-76488号)のマイクロフィルム(甲第6号証)、特開昭61-206007号公報(甲第7号証)、特開昭57-14908号公報(甲第8号証)参照)。してみると、甲第2号証に記載の変速レバーの操作位置の学習の技術を甲第1号証記載の自動車自動運転ロボットに用いる際に、自動的にモータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら学習させるようにすることは、当業者が当然に採用する事項である。 そして、本件特許発明の作用効果も、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明並びに上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。 3-6.被請求人の主張について 被請求人は、上記3-3.に記載したように、「ロボット本体が自動車の座席シートという不安定なものに設置されている自動車自動運転ロボットでは、自動学習時に、電流(あるいはトルク)を通常試験におけるシフト位置変更動作時のときのような大きなものにすると、変速レバーが移動端にまで到達しても、ロボット本体が不安定なことから、さらにアクチュエータが動き、ロボット本体を傾けるような過剰な力が加わってしまう。そして、位置決めの基準となるロボット本体が傾いた状態でのその操作位置をシフト位置として記憶してしまうことから、誤学習のおそれが非常に大きいという特有の課題が生じるのであるが、本件発明によれば、自動学習時に電流低減することによって係る問題を鮮やかに解決することができるのである。」と主張している。 しかし、本件明細書には、自動的にモータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくすることによる作用効果は記載されておらず、ましてや、被請求人が主張する、ロボット本体を自動車の座席シートに設置することによる課題や、その際に、電流(あるいはトルク)を通常試験におけるシフト位置変更動作時のときより小さくすることにより、誤学習を防止できるという作用効果についても何ら記載されていない。 また、「自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット」と記載されているように、本件特許発明においては、運転ロボットは自動車の座席シートに固定されているのであるから、運転ロボットが必ずしも不安定であるというものでもない。 被請求人の主張は、明細書の記載に基づかないものであって、採用することはできない。 3-7.むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 自動車自動運転ロボットの制御方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】自動車の運転席の座席シートに固定される運転ロボット本体に設けられ、モータによってそれぞれ駆動される2つのアクチュエータによって、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動可能な変速レバーを備えた自動車自動運転ロボットにおいて、自動的に前記モータへの電流をシフト位置変更動作時の電流よりも少なくしながら、前記変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させるようにしたことを特徴とする自動車自動運転ロボットの制御方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、シャシダイナモメータの回転ドラム上に駆動輪を載せて自動車を走行させて、自動車の動的な走行性能試験を室内で行う実車走行シミュレート運転において、自動車を自動運転する自動車自動運転ロボットの制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、自動車の動的な走行性能試験のため、シャシダイナモメータによって実車走行シミュレート運転が行われており、近時、この実車走行シミュレート運転に、油圧や空気圧あるいはDCモータなどによって複数のアクチュエータを個々に駆動し、このアクチュエータによってアクセルペダル,ブレーキペダル,クラッチペダルなどの踏込み操作や、変速レバーの切換えを行えるようにした自動車自動運転ロボット(以下、運転ロボットと云う)が用いられるようになってきている。 【0003】 ところで、自動車を運転する場合、アクセルペダル,ブレーキペダルおよびクラッチペダルの踏込み操作の他、変速時には変速レバーを切換え操作する必要があるが、前記運転ロボットに変速レバーのシフト位置を学習させるのに、従来は、変速レバーを駆動するためのアクチュエータをオペレータが手動で動かし、変速レバーが入っている位置を目視によって確認して、運転ロボットにその座標を記憶させることによって、シフト位置を学習させるようにしていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来技術によれば、前記シフト位置の教え込みに熟練を要し、手間がかかる他、教え方が拙いと変速が上手く行われないことがあった。 【0005】 本発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的とするところは、運転ロボットに対して変速レバーのシフト位置を、誰でも簡単に、しかも、確実に教え込むことができるロボットの制御方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明においては、モータによってそれぞれ駆動される2つのアクチュエータによってX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動可能な変速レバーを備えた自動車自動運転ロボットにおいて、前記モータへの電流を制御しながら前記変速レバーをX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバーのシフト位置を自動的に学習させるようにしている。 【0007】 【作用】 上記制御方法においては、運転ロボットに一定の手順で変速レバーの操作位置を確認させて学習させるため、誰でも簡単に、しかも、確実に教え込むことができ、教え込みの失敗がない。 【0008】 【実施例】 以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。 【0009】 先ず、図3は本発明に係る運転ロボットの制御方法が適用される運転ロボットの構成を示すブロック図で、この図において、1は走行性能試験に供される自動車で、その駆動輪2をシャシダイナモメータ3のローラ4上に当接載置した状態で配置されている。 【0010】 5は自動車1の運転席6(図4参照)に人間が座るときと同じようにして座席シートに適宜の手段で固定される運転ロボット本体で、この運転ロボット本体5には、図4(A),(B)にも示すように、アクセルペダル7A,ブレーキペダル7B,クラッチペダル7Cをそれぞれ踏込み操作するためのペダル用アクチュエータ部8A,8B,8Cと、変速レバー9のシフトグリップ9aを把持してそのシフト位置を切換え操作するための変速レバー用アクチュエータ部10が設けられている。 【0011】 すなわち、前記ペダル用アクチュエータ部8A,8B,8Cは例えばDCサーボモータ11A,11B,11Cによってそれぞれ個別に駆動されるように構成してあり、また、図示してないが、各ペダル用アクチュエータ部8A,8B,8Cにはそれぞれ近接スイッチおよび位置検出のためのエンコーダが設けてある。 【0012】 前記変速レバー用アクチュエータ部10は、図2に示すように、シフトグリップ9aを把持して変速レバー9をY軸方向(両矢印Yで示す方向)に移動させるためのY軸アクチュエータ部10Yと、このY軸アクチュエータ部10Y全体をY軸方向と直交するX軸方向(両矢印Xで示す方向)に移動させるためのX軸アクチュエータ部10Xとからなる。そして、Y軸アクチュエータ部10Yは、エンコーダ12Yを備えたDCサーボモータ13Yと、ボールねじ14Yとかみ合うと共にシフトグリップ9aを把持するY軸アクチュエータ15Yと、DCサーボモータ13Yとボールねじ14Yとを機械的に接続するカップリング16Yとからなり、X軸アクチュエータ部10Xは、エンコーダ12Xを備えたDCサーボモータ13Xと、ボールねじ14Xとかみ合うと共にY軸アクチュエータ部10Yを載置したベース部17と機械的に連結されたX軸アクチュエータ15Xと、DCサーボモータ13Xとボールねじ14Xとを機械的に接続するカップリング16Xとからなる。なお、18はガイド部材であり、また、図4(A)において、19はハンドルである。 【0013】 再び、図3において、20は前記シャシダイナモメータ3,運転ロボット本体5を制御する制御部で、制御用CPUとマンマシンインターフェイス用操作CPUとからなるCPU部21と、サーボドライバ回路22と、電源部23とからなる。そして、24はCRT&入力キーボード、25はリモコン、26はティーチング用ペンダントである。 【0014】 ところで、この種の運転ロボットにおける変速レバー9のシフト位置変更は、X軸アクチュエータ部10XにおけるDCサーボモータ13XおよびY軸アクチュエータ部10YにおけるDCサーボモータ13Yに対して所定の電流を流すことにより、アクチュエータ13X,13Yの位置を各エンコーダ12X,12Yによって検出し、この検出出力信号を位置指令信号と突き合わせ、検出出力と位置指令との偏差をP制御(Proportional control)するようにしている。また、前記DCサーボモータ13X,13Yには、既に説明しているように、それらの一端にエンコーダ12X,12Yがそれぞれ設けられているので、これによって、DCサーボモータ13X,13Yの回転角度がそれぞれ検出され、これらのDCサーボモータ13X,13Yとそれぞれ連結されているボールねじ14X,14Yの移動量がエンコーダ12X,12Yの回転回数と角度から求めることができ、したがって、X軸アクチュエータ部10XおよびY軸アクチュエータ部10Yの移動量が判り、変速レバー9のシフトグリップ9aの位置〔座標位置(Xij,Yij)〕が検出できる。なお、この実施例では、シフトグリップ9aがN(ニュートラル)位置にあるときを(X00,Y00)としている。 【0015】 そこで、本発明に係る運転ロボットの制御方法においては、DCサーボモータ13X,13Yへの電流を制御しながら変速レバー9をX軸方向およびY軸方向にそれぞれ移動してその可動範囲を確認してその操作位置を記憶させることにより、変速レバー9のシフト位置を自動的に学習させるようにしており、そのため、変速レバー用アクチュエータ部10の制御系は例えば図1に示すように構成される。この図において、27はP制御系、28は切換えスイッチ、29はサーボアンプ、30は制限電流指令信号aに基づいてDCサーボモータ13X,13Yへの電流を制限する電流制限器、31はエンコーダ12X,12Yの出力に基づいて検出位置信号bを出力する位置信号変換器、32はDCサーボモータ13X,13Yに設けられた速度センサからの出力に基づいて検出速度信号cを出力する速度信号変換器、33は近接センサの出力dやシフトパターン(後述する)eに基づいて速度指令信号fを発する移動・速度指令発生器、34は位置指令信号gと検出位置信号bとの突き合わせ点、35は速度指令信号fと検出速度信号cとの突き合わせ点である。 【0016】 図5はマニュアルトランスミッション車におけるシフトパターンを示し、変速レバー9はこれらのシフトパターンの溝にガイドされるようにして移動するのである。そして、この図において、(A)は3速、(B)?(D)は4速、(E)および(F)は5速、(G)?(H)は6速、(I)は7速のそれぞれシフトパターンを示している。 【0017】 さて、変速レバー9の位置を自動学習する方法について、図6を参照しながら説明する。 【0018】 〔1〕シフトパターン(A),(F),(H),(I)の場合 【0019】 (0)図6(A)において、変速レバー9がN(ニュートラル)位置にあるとき、クラッチペダル7Cを踏むと共に、シフトグリップ9aの位置(X00,Y00)を読み込む。 【0020】 (1)変速レバー用アクチュエータ部10のY軸アクチュエータ15Yによってシフトグリップ9aを把持し、DCサーボモータ13Xに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Xの発生トルク(以下、単にトルクと云う)を低減してX軸アクチエータ15XをN位置から左方へ移動する。 【0021】 (1a)変速レバー9の移動が不可能となった点のX座標X01を記憶する。 【0022】 (2)X01-Δ1となる位置に変速レバー9を移動する。つまり、変速レバー9を右方に若干移動する。 【0023】 (3)前記DCサーボモータ13Yに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Yのトルクを低減して変速レバー9を前記(2)における位置から後方(Y軸を下方)へ移動する。 【0024】 (3a)変速レバー9のY軸方向の移動が不可能となった点のY座標Y01を記憶する。 【0025】 (4)Y01+Δ2となる位置に変速レバー9を移動する。 【0026】 (4a)DCサーボモータ13Xに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Xのトルクを低減して変速レバー9を左方に移動し、停止した位置のX座標をXLとして記憶し、次いで、同様にしてDCサーボモータ13Xのトルクを低減して変速レバー9を右方に移動し、停止した位置のX座標をXRとして記憶する。 【0027】 (4b)X11=(XL+XR)/2,D1=(XL-XR)でそれぞれ求められるX11,D1を記憶すると共に、変速レバー9をX11の位置に移動する。 【0028】 (4c)DCサーボモータ13Yに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Yのトルクを低減して変速レバー9をY軸後方に移動し、変速レバー9のY軸方向の移動が不可能となった点のY座標Yijを記憶する。 【0029】 (5)DCサーボモータ13X,13Yに対する電流供給量をそれぞれ少なくすることにより、DCサーボモータ13X,13Yのトルクを低減して変速レバー9をX軸を右方に動かしながらY軸を前方に移動する。 【0030】 (5a)X軸アクチュエータ15Xが停止後、急に移動を開始できる点の座標を(X12,Y12)および(X10,Y10)として記憶する。 【0031】 (6)Y軸アクチュエータ15Yが停止してもX軸アクチュエータ部10XおよびY軸アクチュエータ部10Yに対する指令を続行する。 【0032】 (6a)Y軸アクチュエータ15Yが前方に移動を開始したらX軸アクチュエータ部10Xに対する速度指令を1/4にする。 【0033】 (6b)Y軸アクチュエータ15Yが急に加速を開始したら、そのときの座標を(X21,Y21)として記憶し、X軸アクチュエータ部10Xに対する速度指令をもとに戻す。 【0034】 (7)変速レバー9のX座標がX21-Δ1となったら、X軸アクチュエータ部10Xに対する速度指令をゼロにする。 【0035】 (7a)Y軸アクチュエータ15Yが停止したら、そのY座標をY02として記憶する。 【0036】 (8)Y02-Δ2となる位置に変速レバー9を移動する。 【0037】 (8a)DCサーボモータ13Xに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Xのトルクを低減して変速レバー9をX軸を左方に移動し、停止した位置をXLとして記憶し、次いで、同様にしてDCサーボモータ13Xのトルクを低減して変速レバー9をX軸を右方に移動し、停止した位置をXRとして記憶する。 【0038】 (8b)X22=(XL+XR)/2,D2=(XL-XR)でそれぞれ求められるX22,D2を記憶すると共に、変速レバー9をX22の位置に移動する。 【0039】 (8c)変速レバー9をY軸前方に移動し、変速レバー9のY軸方向の移動が不可能となった点のY座標Y22を記憶する。 【0040】 ここで、シフトパターン(A)の場合には、(9)変速レバー9をY軸後方へ動かす。 【0041】 (9a)変速レバー9のY座標がY02以下となったら、X座標がX21+Δとなるように変速レバー9を移動する。 【0042】 また、シフトパターン(F),(H),(I)の場合には、(9)DCサーボモータ13X,13Yに対する電流供給量をそれぞれ少なくすることにより、DCサーボモータ13X,13Yのトルクを低減して変速レバー9を右方に動かしながらY軸を後方に移動させる。 【0043】 (9a)X軸アクチュエータ15Xが停止後、急に移動を開始できる点の座標を(X24,Y24)として記憶し、X軸アクチュエータ15XをX21+Δに移動する。 【0044】 さらに、(10)Y軸アクチュエータ15Yが停止したらX軸アクチュエータ15Xを右方に移動する。 【0045】 (10a)Y軸アクチュエータ15Yが後方に移動を開始したら、そのときの座標を(X31,Y31)として記憶し、X軸アクチュエータ15Xに対する速度指令をもとに戻す。 【0046】 (11)X軸アクチュエータ15Xの座標がX22になったら、X軸アクチュエータ15Xに対する速度指令をゼロとする。 【0047】 (11a)Y軸アクチュエータ15Yが停止したら、そのY座標をY03として記憶する。 【0048】 (12)Y軸アクチュエータ15YをY03+Δ3となるように移動する。 【0049】 (12a)DCサーボモータ13Xに対する電流供給量を少なくすることにより、DCサーボモータ13Xのトルクを低減してX軸アクチュエータ15Xを左方に移動し、停止する座標をXLとして記憶し、次いで、右方に移動し、停止する座標をXRとして記憶する。 【0050】 (12b)X33=(XL+XR)/2,D3=(XL-XR)でそれぞれ求められるX33,D3を記憶すると共に、変速レバー9をX33の位置に移動する。 【0051】 (12c)変速レバー9をY軸後方に移動し、変速レバー9のY軸方向の移動が不可能となった点のY座標Y33を記憶する。X23=X32=(X22+X33)/2,Y23=Y32=(Y22+Y33)/2でそれぞれ求められるX23,X32,Y23,Y32を記憶する。 【0052】 (13)前記(5)?(5a)と同様の手順で、(X34,Y34),(X35,Y35)を得る。 【0053】 (14)前記(6)?(6b)と同様の手順で、(X43,Y43),(X42,Y42)のデータを得る。 【0054】 (15)前記(7)?(7a)と同様の手順で、Y04を決める。 【0055】 (16)前記(8)?(8c)と同様の手順で、X44,Y44,D4を決める。 【0056】 (17)前記(9)?(9a)と同様の手順で、(X46,Y46)のデータを決める。 【0057】 (18)前記(10)?(10a)と同様の手順で、(X53,Y53)のデータを決める。 【0058】 (19)前記(11)?(11a)と同様の手順で、Y05を決める。 【0059】 (20)前記(12)?(12c)と同様の手順で、(X55,Y55),D5を決め、(X45,Y45),(X54,Y54)も決める。 【0060】 (21)前記(13)?(20)と同様の手順で、(X56,Y56),(X65,Y65),(X66,Y66),D6,(X57,Y57),(X75,Y75),(X77,Y77),D7,(X67,Y67),(X76,Y76)を決める。 【0061】 (22)トップの座標が決まったら、X,Y座標をトップとその前のシフト位置の中間点に移動する。 【0062】 (22a)次いで、X座標をトップと2段下の値との間の1/2の位置XTN{=(XTT+XT-2,T-2)/2}に移動し、Y座標を前後に移動し、前側停止座標YFT、後側停止座標YRTを求める。 【0063】 (22b)さらに、X座標を1stと3rdの値との間の1/2の位置X1N{=(X11+X33)/2}に移動し、前側停止座標YF1、後側停止座標YR1を求める。 【0064】 (22c)Y00=(YFT+YRT+YF1+YR1)/4,D0={(YFT-YRT)+(YF1-YR1)}/2,X00=(X1N+XTN)/2でN位置を決定し、変速レバー9を(X00,Y00)に移動する。 【0065】 (23)上記(1)?(22)で得たデータを(X00,Y00)を原点とした座標系に変換し、シフト位置の座標の読み取りも(0,0)に変換する。 【0066】 〔2〕シフトパターン(B),(E)の場合 【0067】 (24)変速レバー9を左方に移動し、前記(1),(1a),(2)の手順で移動し、X01を決める。 【0068】 (25)変速レバー9を前方に移動し、前記(3a)の手順でY01を決める。 【0069】 (26)Y01-Δ2となる位置に変速レバー9を移動し、前記(4a),(4b)の手順でX11,D1を決める{(8)?(8b)参照}。 【0070】 (27)変速レバー9を前方に移動し、Y11を決める{(8c)参照}。 【0071】 (28)その後、前記(9),(9a)以後の手順で各座標を決める。 【0072】 〔3〕シフトパターン(C),(D),(G)の場合 【0073】 (29)変速レバー9を左方に移動し、前記(1),(1a),(2)の手順で移動し、X01を決める。 【0074】 ここで、シフトパターン(C)の場合には、(30)変速レバー9を前方に移動して、20cm以上移動できることを確認し、移動できないときは、Y軸アクチュエータ15Yを前方に移動する指令を続けると共に、X軸アクチュエータ15Xを右方に移動し、前記(6),(6a),(6b)の手順で(X01,Y01)を決める。 【0075】 また、シフトパターン(D),(G)の場合は、(30)変速レバー9を後方に移動して、20cm以上移動できることを確認し、移動できないときは、Y軸アクチュエータ15Yを後方に移動する指令を続けると共に、X軸アクチュエータ15Xを右方に移動し、前記(9),(9a)の手順で(X01,Y01)を決める。 【0076】 (31)X01-Δとなる位置に変速レバー9を移動し、前記(25a)以後の手順で各座標を決める。 【0077】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明においては、運転ロボットに対して一定の手順で変速レバーのシフト位置を確認させながら学習させるため、熟練者でなくても誰にでも確実に教え込ませることができる。そして、誰が操作しても同一の結果が得られるため、教え込みの失敗がなく、従って、変速を確実に行うことができ、所望の走行性能試験を行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る運転ロボットの制御方法において用いる変速レバー用アクチュエータ部の制御系の構成を示すブロック図である。 【図2】 前記変速レバー用アクチュエータ部の機械的構成を示す平面図である。 【図3】 前記制御方法が適用される運転ロボットの構成を示すブロック図である。 【図4】 運転ロボット本体の概略的な構成を示し、図4(A)は側面図、図4(B)は平面図である。 【図5】 マニュアルトランスミッション車におけるシフトパターンを示す図である。 【図6】 動作説明図である。 【符号の説明】 9…変速レバー、13X,13Y…モータ、15X,15Y…アクチュエータ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-08-29 |
結審通知日 | 2007-08-14 |
審決日 | 2006-09-12 |
出願番号 | 特願平3-15766 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(G01M)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 村田 尚英、小林 邦雄、石井 良和 |
特許庁審判長 |
高橋 泰史 |
特許庁審判官 |
黒田 浩一 後藤 時男 |
登録日 | 1996-05-10 |
登録番号 | 特許第2050323号(P2050323) |
発明の名称 | 自動車自動運転ロボットの制御方法 |
代理人 | 西村 竜平 |
代理人 | 角田 敦志 |
代理人 | 西村 竜平 |
代理人 | 國分 孝悦 |
代理人 | 角田 敦志 |
代理人 | 小野 亨 |
代理人 | 大須賀 晃 |
代理人 | 佐藤 明子 |
代理人 | 桂巻 徹 |
代理人 | 伊原 友己 |
代理人 | 佐藤 明子 |
代理人 | 伊原 友己 |
代理人 | 南林 薫 |