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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09J |
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管理番号 | 1167914 |
審判番号 | 不服2005-16024 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-22 |
確定日 | 2007-11-07 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第524469号「多官能性モノマー」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月15日国際公開、WO96/24644、平成11年 1月 6日国内公表、特表平11-500152〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、1996年2月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年2月10日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、以下のような手続の経緯のものである。 ・平成14年12月27日に手続補正書を提出 ・平成16年8月18日付けで拒絶理由を通知 ・平成17年5月13日付けで拒絶査定 ・平成17年8月22日に拒絶査定に対する審判請求 ・平成17年9月9日に手続補正書を提出 ・平成18年6月22日付けで拒絶理由を通知 第2 本願発明について 本願発明は、平成14年12月27日付け及び平成17年9月9日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 一般式 【化1】 (式中、 Rが水素またはメチル基であり、 XがOまたはNHであり、 Yが 【化2】 であり、xが1から4の整数であり、 Bが 【化3】 であり、xが前記と同じに定義され、Eは単結合、OまたはOC(O)であり、Zが 【化4】 であり、R1およびR3は独立に水素またはメチル基である) により表される多官能性モノマー。」 第3 前置審査における拒絶理由の概要 前置審査において、平成18年6月22日付けの拒絶理由通知書で、以下の内容を含む拒絶理由が通知された。 (1)本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 記 刊行物A 特開昭61-112161号公報 (平成18年6月22日付け拒絶理由通知書中の刊行物1) 刊行物B 特開昭63-107954号公報 (平成18年6月22日付け拒絶理由通知書中の刊行物3) 刊行物C 特開昭63-212586号公報 (平成18年6月22日付け拒絶理由通知書中の刊行物4) 第4 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号の検討 平成18年6月22日付けの拒絶理由通知書で引用した、刊行物A、B及びCについて検討する。 (1)刊行物A(特開昭61-112161号公報)に記載された発明 ア 刊行物Aには、以下の記載がある。 (ア)「本発明に用いるモノマー(II)の例 ・・」(3ページ左上欄?同右上欄) (イ)「次に本発明における共重合体樹脂の製造例を示す。 〔製造例-1〕・・この中にドデシルメタクリレート190g、メタクリル酸10g、モノマーII(1)10g及びアゾビスイソブチロニトリル6gよりなる溶液を・・滴下した後、前記温度で更に・・攪拌して重合反応を行ない重合率・・で粘度・・の樹脂分散液を得た。」(5ページ左上欄) (ウ)「〔製造例-3〕・・次にこれにラウリルメタクリレート300g、N-ビニルピリジン5g、モノマーII(2)、25g及び過酸化ベンゾイル3gよりなる溶液を・・滴下後、前記温度で・・攪拌して重合反応を行ない、重合率・・で粘度・・粒径・・の樹脂分散液を得た。」(5ページ左上欄?同右上欄) (エ)「〔製造例-5〕・・この中に2-エチルへキシルメタクリレート150g、グリシジルメタクリレート15g、モノマーII(3)20gメチルメタクリレート40g及びラウロイルパーオキサイド6.3gよりなる溶液を滴下した後、更に前記温度で・・攪拌して重合反応を行ない、重合率・・で粘度・・粒径・・の樹脂分散液を得た。」(5ページ右上欄) イ 刊行物Aに記載された発明について 上記摘記(ア)は、刊行物Aにおいて用いられるモノマーIIの化学構造式について記載したものであり、そして、上記摘記(イ)?(エ)は、それぞれモノマーII(1)、モノマーII(2)及びモノマーII(3)で表される化合物を用いて重合を行い、樹脂分散液を得たというものである。 そうしてみると、刊行物Aには、 「式 により表されるモノマー」 の発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されている。 ウ 対比 そこで、本願発明と刊行物A発明とを対比すると、本願発明の一般式【化1】において「Rが水素であり、XがOであり、Yが-(CH2)x-でxが2であり、Bが-(CH2)xEでxが1でEが単結合であり、Zが-CR1=CHR3でR1が水素でR3が水素であるモノマー」は、刊行物A発明のモノマーのうち(1)の式で表される化合物に相当するものである。 同様に、本願発明の一般式【化1】において「Rがメチル基であり、XがOであり、Yが-(CH2)x-でxが2であり、Bが-(CH2)xEでxが1でEが単結合であり、Zが-CR1=CHR3でR1が水素でR3が水素であるモノマー」は、刊行物A発明のモノマーのうち(2)の式で表される化合物に、同「Rがメチル基であり、XがOであり、Yが-(CH2)x-でxが1であり、Bが-(CH2)xEでxが1でEが単結合であり、Zが-CR1=CHR3でR1が水素でR3が水素であるモノマー」は、刊行物A発明のモノマーのうち(3)の式で表される化合物に、それぞれ相当するものである。 また、上記モノマー(1)?(3)は、その化学構造中にエチレン性不飽和基を2つ有するものであることからみて、「多官能性モノマー」であることは明らかである。 したがって、刊行物A発明であるモノマー(1)?(3)は、本願発明の一般式【化1】で表されるモノマー化合物群に包含されるものであるから、刊行物A発明と本願発明との間に差異はない。 エ 刊行物Aについての結論 以上のとおりであるから、本願発明は刊行物Aに記載された発明である。 (2)刊行物B(特開昭63-107954号公報)に記載された発明 ア 刊行物Bには、以下の記載がある。 (ア)「本発明は分子中にアクリロイル基とメタクリロイル基とを併せて有しかつウレタン結合をも有するアクリル/メタクリル酸混成エステル、同エステルを重合成分とする光硬化型樹脂組成物に関するもので、同エステルは熱硬化性及び光硬化性等のラジカル重合性を具備しており、前記組成物は・・接着その他の多くの分野において常用されるものである。・・」(1ページ右下欄) (イ)「実施例1 2-ヒドロキシエチルアクリレート44.9部(重量部、以下同じ)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.05部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.02部をフラスコに仕込み、60℃で攪拌しながら、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート60部をゆっくり・・滴下しながら反応させ、更に、2時間60℃で反応させた。反応の完了は仕込み原料が消失したことを赤外吸収スペクトル(IR)で確認して確かめた。 この反応液にトルエン100部を加えてから、水100部で洗滌し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下にトルエンを蒸留して、淡黄色の液体として、エステルA98部を得た。その粘度は約・・でIRは図1に示すとおりであり、このエステルAは下記の化学式で示されるものであった。 」(4ページ左上欄?同右上欄) イ 刊行物Bに記載された発明について 上記摘記(ア)は、アクリル/メタクリル酸混合エステルを重合成分として用いて光硬化型樹脂組成物を構成することについて記載したもので、さらに、摘記(イ)は、アクリル/メタクリル酸混合エステルとして用いられる化合物「エステルA」を具体的に得る方法について記載したものである。 そうしてみると、刊行物Bには、 「式 により表されるモノマー」 の発明(以下、「刊行物B発明」という。)が記載されている。 ウ 対比 そこで、本願発明と刊行物B発明とを対比すると、本願発明の一般式【化1】において「Rがメチルであり、XがOであり、Yが-CH2CH2NH-であり、Bが-(CH2)xEでxが2でEがOC(O)であり、Zが-CR1=CHR3でR1が水素でR3が水素であるモノマー」は、刊行物B発明の式で表されるモノマー(上記摘記(イ)中の化学式で表される化合物)に相当するものである。 また、刊行物B発明のモノマーは、その化学構造中にエチレン性不飽和基を2つ有するものであることからみて、「多官能性モノマー」であることは明らかである。 したがって、刊行物B発明であるモノマーは、本願発明の一般式【化1】で表されるモノマー化合物群に包含されるものであるから、刊行物B発明と本願発明との間に差異はない。 エ 刊行物Bについての結論 以上のとおりであるから、本願発明は刊行物Bに記載された発明である。 (3)刊行物C(特開昭63-212586号公報)に記載された発明 ア 刊行物Cには、以下の記載がある。 (ア)「オーバーコート層の形成 中間層上にポリエステルアクリレートプレポリマー(商品名・・)80部、下記の構造を有するウレタンアクリレート20部を乾燥塗布量が5g/m2となるように塗布し、エレクトロンカーテン型電子線照射装置・・で3Mradの照射線量で処理して樹脂成分を硬化させ電子線硬化樹脂のオーバーコート層を有する感熱記録体を得た。 」(8ページ左上欄?同右上欄) イ 刊行物Cに記載された発明について 上記摘記(ア)は、特定の構造を有するウレタンアクリレートをモノマーとして配合したオーバーコート層を形成する樹脂組成物を、電子線照射装置で処理して硬化させることについて記載したものである。 そうしてみると、刊行物Cには、 「式 により表されるモノマー」 の発明(以下、「刊行物C発明」という。)が記載されている。 ウ 対比 そこで、本願発明と刊行物C発明とを対比すると、本願発明の一般式【化1】において「Rがメチルであり、XがOであり、Yが-CH2CH2NH-であり、Bが-(CH2)xEでxが2でEがOC(O)であり、Zが-CR1=CHR3でR1が水素でR3が水素であるモノマー」は、刊行物C発明の式で表されるモノマー(上記摘記(ア)中の化学式で表される化合物)に相当するものである。 また、刊行物C発明のモノマーは、その化学構造中にエチレン性不飽和基を2つ有するものであることからみて、「多官能性モノマー」であることは明らかである。 したがって、刊行物C発明であるモノマーは、本願発明の一般式【化1】で表されるモノマー化合物群に包含されるものであるから、刊行物C発明と本願発明との間に差異はない。 エ 刊行物Cについての結論 以上のとおりであるから、本願発明は刊行物Cに記載された発明である。 2 特許法第29条第1項第3号についてのまとめ 以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された上記刊行物A、B又はCに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-11 |
結審通知日 | 2007-06-12 |
審決日 | 2007-06-26 |
出願番号 | 特願平8-524469 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(C09J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 泰之、本堂 裕司 |
特許庁審判長 |
柳 和子 |
特許庁審判官 |
鈴木 紀子 安藤 達也 |
発明の名称 | 多官能性モノマー |
代理人 | 福本 積 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 鶴田 準一 |