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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1167959
審判番号 不服2007-1082  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-12 
確定日 2007-11-14 
事件の表示 特願2004- 19154号「外科手術に使用する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-121874号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年9月6日(パリ条約による優先権主張1993年9月6日、アイルランド国)を国際出願日とする特願平7-508571号の一部を平成16年1月28日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月14日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「患者を開腹手術するにおいて、切開部を通して密閉された環境での体内へのアクセスを提供する外科手術用装置であって、外側リング、内側リング、外側リングと内側リング間に延在する入口部シール手段および円筒形のスリーブが取り付けられた内側リングを有することを特徴とする外科手術用装置。」
なお、平成18年7月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された「円筒形のスリーブおよび入口部シール手段」は、本願の明細書の段落【0022】の記載からみて外側リング(リング22)と内側リング(リング21)間に延在するのは「円筒形のスリーブ」ではなく「入口部シール手段」であることが明らかであり、さらに本願の明細書の段落【0020】及び【0022】の記載からみて「円筒形のスリーブ」は内側リング(リング21)に取り付けられることが明らかであるから、上記請求項1に記載された「円筒形のスリーブおよび入口部シール手段」は「入口部シール手段および円筒形のスリーブ」の誤記と認められるので、本願発明を上記のように認定した。

【2】引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第92/11880号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)明細書第1頁第4?23行
『1.発明の分野 本発明は、カテーテルを患者の体内に挿入したときの当該患者の体内からの体液の損失を制限し又は防止するために使用でき、又は、カテーテル内を通る流体の注入又は除去を制御するのに使用できる、カテーテルバルブのための装置に関する。
2.技術的背景 管、カテーテル、針、挿入シース等、患者の体内へ挿入されねばならない医療用器具には多くの種類がある。ここで使用されている“カテーテル“の用語は、患者の体内へ注入される流体が貫流する装置、又は、カテーテル、針又はその他の医療用器具を患者の体内へ挿入出来る例えば(限定的な意味ではない)、管、カテーテル、針、又は挿入シース等を含むような患者の体内からの体液の除去又は流出の潜在性がある装置を、その範囲に含むものである。』(『』内は、引用例のパテントファミリーである特表平6-505649号公報の記載を援用した訳文。同公報の第3頁右上欄第4?15行参照。以下、同様。)
(2)明細書第4頁第29行?第5頁第11行
『初めに図1を参照すると、本発明のカテーテルバルブは概略的に符号10にて示してある。単に図示目的のためにのみこのバルブ10は挿入シース12の端部に連結されているものとして示されている。図1に示されている特定の挿入シース12の場合においては、当該シース12は特に生体内血液酸素飽和装置を挿入する目的のために患者の大静脈へアクセスするため当該患者の右頚静脈へ挿入するように構成されている。またこの挿入シース12に関しては閉鎖物14が図示されている。この閉鎖物14は棒状の細長い部材16から構成され、一端(遠位端)にはチップ18が、又、他の一端(近位端)には把持手段20が接続されている。この閉鎖物14はシース10に対して安定性を付加し、かつ患者の静脈系内へのシース12の挿入を容易とする短く太い非外傷性のチップ18を提供している。』(第3頁右下欄第23行?第4頁左上欄第4行参照。)
(3)明細書第6頁第29行?第7頁第15行
『好ましい実施例においては図1?図4に示すように、バルブ本体の円形開口を収縮する手段は引き伸ばされた円筒形のエラストマースリーブ38から構成されている。このスリーブ38の一端42は回転可能なキャップ手段26の円筒形外方スリーブクランプ34と円筒形内方スリーブクランプ36との間に挟まれかつそこにしっかり保持されている。一方このエラストマースリーブ38の他端44はハブ手段24の円筒形外方スリーブクランプ30と円筒形内方スリーブクランプ32との間にしっかり挟まれかつそこに保持されている。これにより、円筒形外方スリーブクランプ34と円筒形内方スリーブクランプ36とを含むキャップ手段26が回転され、ハブ手段24の円筒形外方スリーブクランプ30と円筒形内方スリーブクランプ32とが固定状態に保持されているときには、エラストマースリーブ38の両端42、44の中間部が捩られ、該スリーブ38が設けてある開口28が閉じられる。こうして、図2及び図4に示すように、エラストマースリーブ38は閉鎖物の細長部材16上に巻き付き、流体密のシールを提供し、該閉鎖物の細長部材16周辺の空間における開口28を介して流体が流動することを阻止している。』(第4頁右上欄第4?18行参照)
(4)明細書第9頁第26?32行
『図3及び図4をさらに参照すると、円筒形外方スリーブクランプ30は、符号64で示す部分において傾斜し、円筒形の内方カラー66にて終わっている。円筒形の外方カラー68がこの内方カラー66上に嵌合しかつシース又はカテーテル状の装置12へハブ手段24を接合するよう円筒形の外方カラー68と内方カラー66との間にこのシース又はその他のカテーテル状の装置12の一端を把持するために使用される。』(第4頁右下欄第13?18行
(5)FIG.3?5には、エラストマースリーブ38がキャップ手段26とハブ手段24間に延在すること、及び挿入シース12がハブ手段24に取り付けられていることが図示されている。

上記記載事項および図示事項を総合すると、引用例には、
「患者の体内へ医療用器具を挿入したとき、流体密のシールを提供し、当該患者の体内からの体液の損失を制限し又は防止するために使用できるカテーテルバルブ10であって、キャップ手段26、ハブ手段24、キャップ手段26とハブ手段24間に延在するエラストマースリーブ38および挿入シース12が取り付けられたハブ手段24を有するカテーテルバルブ10。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

【3】対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「患者の体内へ医療用器具を挿入したとき、流体密のシールを提供し、当該患者の体内からの体液の損失を制限し又は防止するために使用できる」は、前者の「切開部を通して密閉された環境での体内へのアクセスを提供する」に相当しており、以下同様に、「キャップ手段26」は「外側リング」に、「ハブ手段24」は「内側リング」に、「エラストマースリーブ38」は「入口部シール手段」に、「挿入シース12」は「スリーブ」に、それぞれ相当している。
また、引用例の医療用器具には、上記記載事項(1)を参酌すると、外科手術を施す医療用器具も含まれることが明らかであるから、後者における「患者の体内へ医療用器具を挿入」するということと、前者における「患者を開腹手術」することとは、共に、患者を外科手術する点において、共通しており、後者の「カテーテルバルブ10」は「外科手術用装置」に、相当するといえる。
また、後者の「挿入シース12」は、引用例の上記記載事項(4)を参酌すると「円筒形の内方カラー66」と「円筒形の外方カラー68」との間に把持されるものであるから、「挿入シース12」の形状も円筒形であるといえる。

したがって、両者は、
「患者を外科手術するにおいて、切開部を通して密閉された環境での体内へのアクセスを提供する外科手術用装置であって、外側リング、内側リング、外側リングと内側リング間に延在する入口部シール手段および円筒形のスリーブが取り付けられた内側リングを有する外科手術用装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:患者を外科手術するのが、前者では、開腹手術であるのに対して、後者では、外科手術の部位が不明である点。

【4】判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は引用例の上記記載事項(1)を参酌すると、カテーテル等の医療用器具を患者の体内に挿入するためのカテーテルバルブに関するものであるが、カテーテル等の医療用器具を腹部に孔を開けて挿入し、外科手術することは、例えば特開平4-226643号公報(段落【0001】、【0006】等参照)、特開平5-161655号公報(段落【0003】、【0008】等参照)、特開平5-200042号公報(第2頁第1欄第49行?第2欄第12行等参照)にも記載されているように周知の事項であり、引用発明のカテーテルバルブを必要に応じてこのような用途に用いて上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明の効果も、引用発明および上記周知の事項から当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。

【5】むすび
したがって、本願発明は、引用発明および上記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-14 
結審通知日 2007-06-19 
審決日 2007-07-02 
出願番号 特願2004-19154(P2004-19154)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神山 茂樹鈴木 敏史  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 中田 誠二郎
増沢 誠一
発明の名称 外科手術に使用する装置  
代理人 山本 博人  
代理人 高野 登志雄  
代理人 有賀 三幸  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 村田 正樹  
代理人 中嶋 俊夫  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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