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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65B |
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管理番号 | 1168008 |
審判番号 | 不服2005-9948 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-26 |
確定日 | 2007-11-15 |
事件の表示 | 特願2001-133891「食品包装容器または食品充填システムの殺菌方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-332018号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年5月1日の出願であって、平成17年4月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年6月27日付で明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成17年6月27日付の手続補正についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 平成17年6月27日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 【理由】 (1)本件補正 本件補正は、平成16年12月24日付で補正された明細書をさらに補正するものであり、補正前の特許請求の範囲の請求項5の 「食品包装容器表面または食品充填システムのライン配管、機器もしくは室内の表面にpHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温した状態で噴射、浸漬、噴霧等により接触させる殺菌剤接触手段を備えることを特徴とする食品包装容器または食品充填システムの殺菌装置。」を、 「食品包装容器表面または食品充填システムのライン配管、機器もしくは室内の表面にpHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を10℃を越え80℃以下に加温した状態で噴射、噴霧等により接触させる殺菌剤接触手段を備えることを特徴とする食品包装容器または食品充填システムの殺菌装置。」と補正して,請求項2とする補正を含んでいる。 上記補正中、「噴射、浸漬、噴霧等により接触させる」を「噴射、噴霧等により接触させる」とする補正は、補正前の請求項5で規定する殺菌手段から「浸積」による手段を除外することにより、請求項2に係る発明をさらに限定して特定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 そこで、補正後の請求項2に記載された事項によって特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)本願補正発明 補正後の本願請求項2の記載中、殺菌剤の加温範囲についての「10℃を越え80℃以下」の記載は、出願当初明細書に「40℃?80℃に加温して」と記載されていること、及び請求人が当審の審尋に対して提出した平成19年4月26日付回答書の「『50℃』を新請求項1及び2において『10℃』と誤記したので、これを『50℃』に戻す補正をしたい」旨の主張を参酌して、「50℃を越え80℃以下」の誤記と認め、補正後の本願請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)を、以下のとおりのものと認定する。 「食品包装容器表面または食品充填システムのライン配管、機器もしくは室内の表面にpHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温した状態で噴射、噴霧等により接触させる殺菌剤接触手段を備えることを特徴とする食品包装容器または食品充填システムの殺菌装置。」 (3)引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平7-291236号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (a)「63℃以上の温水を食品容器の少なくとも内面に接触させる温水殺菌工程と、過酸化水素、過酢酸、該過酢酸と過酸化水素との混合物、次亜塩素酸ソーダよりなる群から選ばれた殺菌薬剤を、該食品容器の少なくとも内面に接触させる薬剤殺菌工程とを組み合わせたことを特徴とする食品容器の殺菌方法。」(【請求項1】) (b)「本発明によって殺菌洗浄する食品容器としては、通常、PETボトルと略称されているポリエチレンテレフタレート製やポリオレフィン製などのプラスチックボトルなどのほか、食品を充填するための各種プラスチック容器、あるいはガラス製容器等が挙げられる。」(【0014】) (c)「以下に図1にしたがって、本発明に係る容器の殺菌方法を具体的に説明する。殺菌薬剤としては、オクソニアを用いた例を示す。図1は、本発明に係る容器としてのボトルの殺菌方法を実施するための一例を工程で示す概念図であり、1はベルトコンベア等によって構成されるボトル搬送装置、2はボトル温水殺菌域、3は密閉空間とされると共に、オクソニア供給用ノズルが配置されたボトル薬剤殺菌域、4は無菌水を噴出するノズルが配置されたリンス域、5は充填・密封域である。」(【0015】) (d)「ボトル温水殺菌域2で殺菌されたボトルは、……ボトル搬送装置1によってボトル薬剤殺菌域3に搬送される。このボトル薬剤殺菌域3では、オクソニア供給用ノズルより、ボトル内にオクソニアが満杯となるまで注入され(満注方式)、オクソニアがボトル内面全体に接触する。これによって、前記温水によっては、殺菌されない菌が殺菌され、ボトル内に充填される食品中で発育可能な全ての微生物が殺菌される。……なお、上記では、オクソニアによる殺菌を満注方式によって行っているが、タンク内にオクソニアを貯留しておき、該オクソニアにボトルを浸漬させても良く、あるいはボトル内面にオクソニアを噴霧してもよい。また、上記方法では、オクソニアによる殺菌をボトルの内面のみに行っているが、殺菌をより確実にするために、ボトルの外面にもオクソニアによる殺菌を行ってもよいことはもちろんである。」(【0017】) (e)「 以下、実施例によって本発明を説明する。 <実施例1> ……試験用ボトルとしては、内容量が1500mlのPET(ポリエチレンテレフタレート)製のものを使用した。 …… (2)薬剤殺菌条件 殺菌方式;試験用ボトル内に薬剤を満杯に注入する、満注方式 薬剤の種類;オクソニア 薬剤濃度;3% 薬剤温度;40℃ 殺菌時間;3分 …… <実施例4> 殺菌条件が、下記のものであること以外は、実施例1と同様にして試験用ボトルを殺菌し、殺菌効果を表3に示した。 殺菌方式;満注方式 薬剤の種類;次亜塩素酸ソーダ 薬剤濃度;100ppm 薬剤温度;50℃ 殺菌時間;3分 」(【0024】?【0027】) (f)「<比較例8> 温水殺菌を行うことなく、薬剤殺菌のみを実施例4と同様の条件下で行い、殺菌効果を表4に示した。」【0035】 上記の記載から、引用文献には、食品容器の殺菌方法を実現する殺菌装置として、次の発明(以下、「引用文献に記載された殺菌装置」という。)が記載されているものと認められる。 「食品容器の内面に次亜塩素酸ソーダを50℃で接触させる殺菌剤接触手段を有する食品容器の殺菌装置。」 (4)対比 本願補正発明と引用文献に記載された殺菌装置とを対比する。 引用文献に記載された殺菌装置の「食品容器」は、上記摘示記載(b)及び(e)から明らかなように、本願補正発明の「食品包装容器」を含んでいる。 また、引用文献に記載された殺菌装置において、殺菌用の薬剤として使用される「次亜塩素酸ソーダ」は、本願補正発明の「次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤」に相当し、上記摘示記載(d)において、「オクソニア」による殺菌について記載された、殺菌剤をボトル内面に接触する手段を満注方式に替えて「噴霧」としてもよいこと、そして、ボトル内面と同様に外面も殺菌剤により殺菌すること等は、いずれも引用文献にオクソニアによる殺菌と択一的に採用することができるとして記載された、次亜塩素酸ソーダによる殺菌に適用できることは明らかである。 そして、引用文献に記載された殺菌装置における薬剤温度の50℃は通常は加温した状態ということができるので、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 【一致点】 「食品包装容器表面に次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を加温した状態で噴霧により接触させる殺菌剤接触手段を備える食品包装容器の殺菌装置。」 【相違点1】 本願補正発明が、「pHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温した状態で(噴射、噴霧等により)接触させる」としているのに対し、引用文献に記載された殺菌装置は、薬剤のpHを規定しておらず、また、薬剤温度は50℃である点。 (5)判断 次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤の適用に際して、そのpHを中性付近に調整することは、本願出願前より広く行われており(原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-109887号公報、原査定で周知文献として提示された特開昭52-51042号公報、及び特開平11-169441号公報等参照)、pHとして「4?8」に調整することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 また、次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤の使用に当たり、加温状態で殺菌剤を適用することにより殺菌効果を高められることは、当該分野において技術常識ともいうべき事項であり、pHが中性付近に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温して使用することも、前掲の特開昭52-51042号公報及び特開平11-169441号公報にも示されているように、本願出願前より周知の技術的事項である。 これら周知の技術的事項を総合すれば、引用文献に記載された殺菌装置に使用される薬剤のpHを、中性付近の4?8に調整するとともに、50℃とされる薬剤温度を50℃を超え80℃以下とすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、当業者が殺菌すべき食品包装容器の態様、達成すべき殺菌の程度等に応じて適宜採用し得る程度の設計的事項にすぎないものであり、かつ、それにより当業者が予期し得ない作用・効果を生じるものでもない。 したがって、本願補正発明は、技術常識に鑑みれば、引用文献に記載された殺菌装置及び本願出願前より周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)補正却下のむすび 以上のとおり、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることのできないものであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 平成17年6月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成16年12月24日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1の記載は以下のとおりである(以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。)。 「食品包装容器表面または食品充填システムのライン配管、機器もしくは室内の表面に、pHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温した状態で接触させることを特徴とする食品包装容器または食品充填システムの殺菌方法。」 4.引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平7-291236号公報)に記載された事項は、上記「2.【理由】(3).引用文献」に摘示した(a)ないし(f)のとおりである。 これらの記載を総合すると、引用文献1には、食品容器の殺菌方法として、次の発明(以下、「引用文献に記載された殺菌方法」という。)が記載されているものと認められる。 「食品容器の内面に次亜塩素酸ソーダを50℃で接触させる薬剤殺菌域を有する食品容器の殺菌方法。」 5.対比 上記「2.【理由】(4)対比」での検討に基づけば、本願発明と引用文献に記載された殺菌方法とを対比した際の両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 【一致点】 「食品包装容器表面内の表面に、次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を加温した状態で接触させる食品包装容器の殺菌方法。」 【相違点2】 本願発明が、「pHが4?8に調整された次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を50℃を越え80℃以下に加温した状態で接触させる」としているのに対し、引用文献に記載された殺菌方法は、薬剤のpHを特定しておらず、また、薬剤温度は50℃である点 6.判断 上記の相違点2は、上記「2.【理由】(4)対比」に示した、本願補正発明と引用文献に記載された殺菌方法との相違点1のうち、次亜塩素酸含有塩素系殺菌剤を食品容器に接触させる態様(噴射、噴霧等)を省いたものに相当するから、本願発明の相違点2に係る構成は、上記「2.【理由】(5)判断」で述べたとおり、当業者が適宜になし得る程度の設計的事項にすぎないものである。 したがって、本願発明は、技術常識に鑑みれば、引用文献に記載された殺菌方法及び本願出願前周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-06 |
結審通知日 | 2007-09-11 |
審決日 | 2007-10-04 |
出願番号 | 特願2001-133891(P2001-133891) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65B)
P 1 8・ 575- Z (B65B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田村 耕作、白川 敬寛 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
関 信之 田中 玲子 |
発明の名称 | 食品包装容器または食品充填システムの殺菌方法および装置 |
代理人 | 原田 卓治 |
代理人 | 坂本 徹 |
代理人 | 原田 卓治 |
代理人 | 坂本 徹 |