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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1168018
審判番号 不服2005-16865  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-01 
確定日 2007-11-15 
事件の表示 平成 9年特許願第284792号「写真プリント作成方法およびシステム並びにそのためのプログラムを記憶した記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月31日出願公開、特開平10-200730〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年10月17日(優先権主張平成8年11月18日)の出願であって、平成17年7月27日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成17年6月27日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「フィルムに記録された写真画像を編集して写真プリントを作成する写真プリント作成方法において、前記写真画像の低解像度画像データを得て該低解像度画像データを所定の記録媒体に記録せしめ、前記記録媒体に記録された低解像度画像データを所定画面に表示することにより前記写真画像のトリミングおよび/またはレイアウトに係る位置指定を可能にするとともに、指定された位置を示す編集指示情報として、前記所定画面上でトリミングに係る位置指定が行なわれたときには前記低解像度画像データに対する相対位置座標を所定の記録媒体に記録し、前記所定画面上でレイアウトに係る位置指定が行なわれたときには作成しようとするプリント上での位置を表す位置座標を所定の記録媒体に記録し、前記記録媒体に記録された前記編集指示情報に基づいて、前記写真画像の高解像度画像データをトリミングおよび/またはレイアウトして前記写真プリントの作成を行うことを特徴とする写真プリント作成方法。」

3.引用例
[第1引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-95163号公報(以下、「第1引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「【0001】
【技術分野】この発明は現像所(現像,焼付サービスが可能な写真店等を含む)(ラボラトリィという)において好適に用いられるラボラトリィ・システム,顧客(ユーザ)の自宅,家庭等に置かれる再生機,およびこれらを用いたフイルム画像管理方法に関する。」

(b)「【0007】この発明によるフイルム画像の管理方法は,現像後のフイルムの画像を,撮像することにより,その画像を表わす原ディジタル画像データに変換し,原ディジタル画像データを,縮小画像を表わす縮小ディジタル画像データに変換し,縮小ディジタル画像データをユーザ用記録媒体に格納し,原ディジタル画像データをラボ用記録媒体にフイルムの識別コードとともに格納し,フイルムおよび縮小ディジタル画像データを格納したユーザ用記録媒体に上記識別コードを付与するものである。ラボ用記録媒体とはラボラトリィ用記録媒体を意味する。」

(c)「【0016】ラボラトリィに保存されているラボ用記録媒体にもユーザの持つフイルムやユーザ用記録媒体と同じ識別コードが原画像データに対応して記憶されている。ユーザから焼増を依頼されたときには,ユーザがたとえフイルムを持参しなくても,ラボ用記録媒体に格納された原ディジタル画像データを用いて写真のプリントを行うことができる。」

(d)「【0020】ユーザはユーザ用記録媒体に焼増のための注文データを格納して焼増の注文を行うことができる。この場合には,注文データをユーザ用記録媒体に格納するために後述する注文機能をもつ再生機が利用されるであろう。この再生機を用いると,注文データを通信回線(公衆回線等)を通して,ラボラトリィ・システムに伝送することができる。注文データのみ(またはこれに縮小画像データ等を加えたもの)の伝送であるから,伝送に要する時間が,原ディジタル画像データを伝送する場合に比べて,はるかに短くてすむ。また,ユーザはラボラトリィに足を運ばなくてもすむようになる。
【0021】好ましくは,原ディジタル画像データの特性に関するパラメータ・データをユーザ用記録媒体およびラボ用記録媒体の少くともいずれか一方に格納する。このパラメータ・データは写真の焼増処理において用いられる。画像データの特性が定量化されているので,常に同質の写真をプリントすることができるようになる。」

(e)「【0091】再生機(装置)は,一実施態様ではユーザ用ディスクに記録された縮小ディジタル画像データによって表わされる縮小画像を表示装置の表示画面に表示する単純な再生機である。他の実施態様では,縮小画像を表示する機能に加えて焼増の注文データを入力する機能をもつ。この場合には再生機は,注文機能をもつ再生機または単に注文機(装置)と呼ばれる。以下の説明ではこれらをすべて含めて単に再生機ということにする。
【0092】注文データには,ユーザ用ディスクに記録された画像データのうち焼増を希望する画像のフイルムを特定する番号(上述の識別コードにおける処理通し番号またはフイルム番号)およびそのフイルム内の駒の識別番号,焼増を希望する枚数,大きさ(サイズまたは拡大率等),トリミングに関する情報が含まれる。注文データは,一態様においてはユーザ用ディスクに記録される。他の態様では通信装置を通してラボラトリィ・システムに伝送される。」

(f)「【0147】図19から図23は再生機において注文データを作成するときの表示装置に表示される表示画面の例を示している。」

(g)「【0153】選択された駒について,図23に示すように,注文データと確認とを入力する画面が表示されるので,ユーザは枚数,サイズ,トリミング情報等を入力し,最後に確認することになる。
【0154】複数駒について注文する場合にはユーザは上記の動作を繰返すことになる。
【0155】このようにして入力された注文データはユーザ用ディスクの注文ファイルに格納される,または通信回線を通してラボラトリィ・システムに伝送される。」

(h)「【0194】原画像データはいわゆるハイビジョン用のものである。この原画像データを縦1/2 ,横 1/2 に縮小することにより標準画像データが得られる。この標準画像データをさらに縦 1/8 ,横 1/8 に縮小することにより縮小画像データが得られる。画像の縮小は間引き処理または複数の隣接画素ごとに平均化処理することにより行なわれる。この縮小処理はユーザ用ディスク記録装置13により行なわれる。これらの原(ハイビジョン用)ディジタル画像データ,標準画像データおよび縮小ディジタル画像データは,必要に応じて,データ圧縮された後にユーザ用ディスクに記録される。したがって,記録装置13には,必要に応じて,間引き回路(平均化回路),データ圧縮(伸張)回路が含まれる。間引き処理(平均化処理),データ圧縮(伸張)回路は記録装置13においてソフトウェアにより実行することもできるし,またコンピュータ・システム10Aにおいて実行するようにしてもよい。さらに,読取装置70においてフイルム1の送りピッチを変えることにより解像度の異なる画像データを得ることもできる。」

上記(a)ないし(h)の記載及び図面から、第1引用例には
「ラボラトリィ・システム及び再生機を用いたフィルム画像管理方法であって、現像後のフィルムの画像を撮像して、原ディジタル画像データに変換し、該原ディジタル画像データをラボ用記録媒体に格納し、前記原ディジタル画像データを、間引き処理等により縮小画像を表す縮小ディジタル画像データに変換し、該縮小ディジタル画像データをユーザ用記録媒体に格納し、前記再生機により、ユーザ用ディスク(ユーザ用記録媒体)に記録された縮小ディジタル画像データによって表される縮小画像を表示装置の表示画面に表示し、前記再生機により焼増の注文データを作成する際、注文データを入力する画面が表示され、ユーザによりトリミング情報等を含む注文データが入力されると、該注文データをユーザ用ディスクの注文ファイルに格納し、ユーザが焼増を依頼した場合、前記注文データに基づいて、前記ラボ用記録媒体に格納された原ディジタル画像データを用いて写真のプリントを行うことを特徴とするフィルム画像管理方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[第2引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-287268号公報(以下、「第2引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(i)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィルム等に撮影された高画質の画像が割り付けられた文書を作成する文書作成装置に関するものである。また、本発明は、フィルム等に撮影された高画質の画像が割り付けられた文書を出力する文書出力装置に関するものである。また、本発明は、フィルム等に撮影された高画質の画像が割り付けられた文書を作成し、出力する文書作成出力システムに関するものである。」

(j)「【0005】本発明は、上記問題を解決するもので、画像情報の割付けのための編集情報及び文書を可搬性の高い記憶媒体に効率良く記憶させる文書作成装置を提供することを目的とする。」

(k)「【0055】次に、図5、図6を用いてパソコン4上で動作するアプリケーションソフトウェアの機能について説明する。図5は、同アプリケーションソフトウェアが動作中に表示される画面の一例を示す図である。図6は、図5の「ファイル」60-aが選択されたときに表示されるプルダウンメニューを示す図である。」

(l)「【0061】図6において、「新規作成」60-cは、文書ファイルを新規に作成する場合に使用する。「開く」60-dは、文書作成中に別の文書ファイルを開く場合に使用する。「閉じる」60-eは、現在開いている文書ファイルを閉じる場合に使用する。「保存」60-fは、現在開いている文書ファイルを保存する場合に使用する。「新規保存」60-gは、現在開いている文書ファイルを別の名称で保存する場合に使用する。「割付」60-hは、フィルム画像を後述する割付エリア63(図5)に割り付ける場合に使用する。「ページ設定」60-iは、作成している文書の大きさ、方向等を指定する場合に使用する。「プリント」60-jは、作成した文書を出力する場合に使用する。「終了」60-kは、この文書作成ソフトを終了する場合に使用する。」

(m)「【0063】「画像入力エリア指定ツール」61-cは、文書の中にフィルム画像を割り付ける場合に使用するもので、マウス42を用いて文書中に割付エリア63を指定できるようになっている。このツールを選択し、マウス42のボタンを押したままドラッグすると、ボタンを押した点とカーソルの位置とを対向する頂点とする矩形の領域が指定可能になっている。割付エリア63の指定は、例えば画像を挿入する領域の左上にカーソルを移動し、マウス42のボタンを押したままドラッグして所望の矩形領域の位置でボタンを離すことにより行う。そして、「割付」60-h(図6)を選択すると、フィルム読取装置5で指定されるコマ番号に対応するフィルム画像の割付エリア63への割付けが指定される。」

(n)「【0092】表1に示すように、フィルム13には、画像情報、フィルムのID番号情報、コマ番号情報、トリミング位置情報、大きさ情報、画質調整情報等が、画像エリア131と磁気記録部132に格納されている。一方、フロッピーディスク11には、文字情報、使用するフィルム13のID番号情報、フィルム画像のコマ番号情報、フィルム画像のトリミング位置情報、出力するフィルム画像の大きさ情報及び割付エリア情報等が格納されている。」

(o)「【0113】そして、トリミング位置情報がRAM50bから読み出される。このトリミング位置情報は、トリミング処理(#340)においてRAM50bに格納されている。次に、このトリミング位置情報に基づいて変倍処理が行われ、カラーモニタ13の画像表示エリア141(図4)に変倍処理後の画像が表示されて(#325)、本サブルーチンを終了する。」

(p)「【0117】トリミング処理は、画像表示エリア141に入力画像が表示されている状態で行われ、この表示画像に対して#341?#344でトリミングを行う範囲が把握される。まず、マウス550による1回目のクリック操作が行われたかどうかが判別され(#341)、行われていなければ(#341でNO)、1回目のクリックが行われるまで待機する。そして、1回目のクリック操作が行われると(#341でYES)、そのクリック位置情報がRAM50bに格納される(#342)。
【0118】次に、マウス550による2回目のクリック操作が行われたかどうかが判別され(#343)、行われていなければ(#343でNO)、2回目のクリックが行われるまで待機する。そして、2回目のクリック操作が行われると(#343でYES)、そのクリック位置情報がRAM50bに格納される(#344)。
【0119】これらの2点の位置情報が、矩形の対角線のトリミング範囲の位置情報として認識される。そして、トリミングモードの解除処理が行われ(#345)、本サブルーチンを終了する。」

4.対比
(ア)引用発明は、現像後のフィルムの画像を撮像して、原ディジタル画像データに変換し、該原ディジタル画像データをラボ用記録媒体に格納しているから(前掲(b))、「フィルムに記録された写真画像」の処理に関するものであるといえる。
また、引用発明において、ユーザが焼増を依頼した場合、前記ラボ用記録媒体に格納された原ディジタル画像データを用いて写真のプリントを行っているから(前掲(c))、引用発明は、「写真プリントを作成する」ものであるといえる。
さらに、引用発明において、前記焼増を行う際の注文データには、トリミングに関する情報が含まれており(前掲(e))、トリミングは画像編集の一種であるから、引用発明は、「フィルムに記録された写真画像を編集して写真プリントを作成する」ものであるといえる。

(イ)引用発明は、ラボラトリィ・システム及び再生機を用いたフィルム画像管理方法に関するものであるが(前掲(a))、ディジタル画像データを用いた写真のプリントを行っているから(前掲(c))、「写真プリント作成方法」に関するものであるといえる。

(ウ)引用発明においては、原ディジタル画像データを、縮小画像を表す縮小ディジタル画像データに変換し、該縮小ディジタル画像データをユーザ用記録媒体に格納している(前掲(b))。
ここで、縮小画像データを得る際の画像の縮小は間引き処理等により行われ(前掲(h))、間引き処理された画像は、原画像に対して解像度が低くなっているといえるから、前記縮小ディジタル画像データは、本願発明の「低解像度画像データ」に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の「写真画像の低解像度画像データを得て該低解像度画像データを所定の記録媒体に記録せしめ」ることに相当する構成を備えている。

(エ)引用発明の再生機は、ユーザ用ディスク(ユーザ用記録媒体)に記録された縮小ディジタル画像データによって表される縮小画像を表示装置の表示画面に表示しており(前掲(e))、本願発明の「記録媒体に記録された低解像度画像データを所定画面に表示すること」に相当する構成を備えている。

(オ)引用発明の再生機は、焼増の注文データを入力する機能を有しており(前掲(e))、前記再生機により注文データを作成する際、注文データを入力する画面が表示され、ユーザによりトリミング情報等を含む注文データが入力されると、該注文データをユーザ用ディスクの注文ファイルに格納しており(前掲(f)、(g))、したがって、引用発明は、「写真画像のトリミングに係る指定を可能にする」ものであるといえる。

(カ)引用発明において、再生機により作成された注文データは、ユーザ用ディスクの注文ファイルに格納される(前掲(g))。
また、前記注文データに含まれているトリミング情報は、本願発明の「編集指示情報」に相当する。
したがって、引用発明は、「編集指示情報」を「所定の媒体に記録し」ているといえる。

(キ)引用発明において、ユーザが焼増を依頼した場合、ラボ用記録媒体に格納された原ディジタル画像データを用いて写真のプリントを行っており(前掲(c))、前記原ディジタル画像データは、本願発明の「写真画像の高解像度画像データ」に相当する。
さらに、引用発明において、前記焼増を行う際の注文データには、トリミングに関する情報が含まれており(前掲(e))、前記注文データは、ユーザ用ディスクの注文ファイルに格納される(前掲(g))。
したがって、引用発明は、本願発明の「記録媒体に記録された編集指示情報に基づいて、写真画像の高解像度画像データをトリミングして写真プリントの作成を行う」ことに相当する構成を備えている。

以上を踏まえ、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「フィルムに記録された写真画像を編集して写真プリントを作成する写真プリント作成方法において、前記写真画像の低解像度画像データを得て該低解像度画像データを所定の記録媒体に記録せしめ、前記記録媒体に記録された低解像度画像データを所定画面に表示することにより前記写真画像のトリミングに係る指定を可能にするとともに、編集指示情報を所定の記録媒体に記録し、前記記録媒体に記録された前記編集指示情報に基づいて、前記写真画像の高解像度画像データをトリミングして前記写真プリントの作成を行うことを特徴とする写真プリント作成方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明が、「写真画像のトリミングおよび/またはレイアウトに係る位置指定を可能にする」ものであり、「指定された位置を示す」「編集指示情報に基づいて、写真画像の高解像度画像データをトリミングおよび/またはレイアウトして写真プリントの作成を行」っているのに対し、引用発明においては、ユーザが行うトリミング処理の具体的内容、及びトリミング情報の内容が明らかでなく、また画像データのレイアウトに係る位置指定が行われていない点。

[相違点2]
本願発明が、「指定された位置を示す編集指示情報として、前記所定画面上でトリミングに係る位置指定が行なわれたときには前記低解像度画像データに対する相対位置座標を所定の記録媒体に記録し、前記所定画面上でレイアウトに係る位置指定が行なわれたときには作成しようとするプリント上での位置を表す位置座標を所定の記録媒体に記録し」ているのに対し、引用発明においては、ユーザ用ディスクの注文ファイルに格納される注文データに含まれるトリミング情報の内容について明らかでなく、また画像データのレイアウトに係る位置指定が行われていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1について]
画像処理装置において、対象となる画像を表示装置に表示し、画面上でトリミングの範囲を規定する位置を入力することにより、前記画像のトリミング処理を行うことは、当業者に周知の技術である。
例えば、第2引用例には、カラーモニタの画面表示エリアに表示された入力画像に対してマウスによるクリック操作を行い、2回のクリック位置をトリミング範囲の位置情報として認識する技術が記載されている(前掲(o)、(p))。
また、画像処理装置において、画面上で画像のレイアウト位置を指定することも、当業者に周知の技術である。
例えば、第2引用例には、文書の中にフィルム画像を割り付ける場合、画面上でマウスを操作して、画像を挿入する領域の位置を指定することにより、割付エリアを指定する旨記載されており(前掲(k)、(l)、(m))、本願発明の「写真画像のレイアウトに係る位置指定」に相当する技術が開示されている。
引用発明は、再生機においてユーザが入力したトリミング情報を含む注文データをユーザ用ディスクの注文ファイルに格納し、該注文データに基づいた焼増、すなわち原ディジタル画像データを用いた写真のプリントを行っており(前掲(c)、(d)、(f)、(g))、引用発明に上記各周知技術を適用して、再生機の画面上でマウス等によりトリミング及びレイアウトに係る位置を指定する処理を行い、該指定により得られた位置情報に基づくトリミング及びレイアウト処理を原ディジタル画像に施して、写真プリントを行う構成とすることは、当業者が困難なくなし得たものである。
したがって、引用発明において、「写真画像のトリミングおよび/またはレイアウトに係る位置指定を可能にする」とともに、「指定された位置を示す」「編集指示情報に基づいて、写真画像の高解像度画像データをトリミングおよび/またはレイアウトして写真プリントの作成を行う」構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
画像処理装置において、画面上に表示された画像のトリミング処理、及びレイアウト処理を行い、これらの処理により得られた位置情報を所定の記録媒体に記録することは、当業者に周知の技術である。
例えば、第2引用例には、モニタの画面上に表示された画像に対するトリミング処理、及び割付エリアの指定等を行い、得られた編集情報としてのトリミング位置情報、及び画像の割付エリア情報等をフロッピーディスクに格納する技術が開示されている(前掲(j)?(p))。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-298035号公報、及び特開平5-225289号公報にも、画像のトリミング処理及びレイアウト処理により得られた位置情報を記録媒体に記録することが記載されている。
引用発明においても、再生機においてユーザが入力したトリミング情報を含む注文データをユーザ用ディスクの注文ファイルに格納しており(前掲(f)、(g))、引用発明に上記周知技術を適用して、再生機の画面上でマウス等によりトリミング及びレイアウトに係る位置を指定する処理を行い、該指定により得られた位置情報をユーザ用ディスク等の記録媒体に格納する構成とすることは、当業者が困難なくなし得たものである。
そして、前記トリミング及びレイアウトに係る位置を指定し、記録媒体に格納する位置情報を、トリミングの場合は縮小ディジタル画像データによって表される縮小画像の相対位置座標とし、レイアウトの場合は焼増によりプリントされる写真プリント上の位置座標とすることは、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。
以上を踏まえると、引用発明において、「指定された位置を示す編集指示情報として、前記所定画面上でトリミングに係る位置指定が行なわれたときには前記低解像度画像データに対する相対位置座標を所定の記録媒体に記録し、前記所定画面上でレイアウトに係る位置指定が行なわれたときには作成しようとするプリント上での位置を表す位置座標を所定の記録媒体に記録」する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、これらの相違点を総合的に考慮しても、本願発明は当業者が想到し難い格別のものであるとすることはできず、また本願発明の奏する作用効果も、第1引用例及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-06 
結審通知日 2007-09-11 
審決日 2007-09-27 
出願番号 特願平9-284792
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 曽我 亮司  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 井上 健一
伊知地 和之
発明の名称 写真プリント作成方法およびシステム並びにそのためのプログラムを記憶した記憶媒体  
代理人 佐久間 剛  
代理人 柳田 征史  

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