ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1168119 |
審判番号 | 不服2004-11477 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-07 |
確定日 | 2007-11-12 |
事件の表示 | 平成11年特許願第109089号「スロットマシン用のメダル受皿」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月24日出願公開、特開2000-296205〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年4月16日の出願であって、平成14年2月12日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成15年5月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年7月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成16年4月27日付けで平成15年7月17日付けの手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月7日に拒絶査定不服審判が請求され、同年7月5日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年7月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年7月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「スロットマシンの筐体の遊技メダル払い出し口の下方に位置して、前記遊技メダル払い出し口から払い出された遊技メダルがたまり込むメダル受皿において、 前記メダル受皿は、遊技メダル払い出し口から払い出されたメダルを受けるメダル受け部と、その手前側の立設壁の一部がメダル受皿の正面から遊技者方向に向かって方形状に突出する突出移し口とを備え、 前記メダル受け部の底と、前記突出移し口の底とは、連続して水平に形成され、 前記突出移し口の周囲には、その端縁から立設する突出移し口用傾斜壁が形成され、 前記突出移し口用傾斜壁は、前記メダル受皿の周囲に同一高さで立設する立設壁の高さを基準として、前記突出移し口用傾斜壁以外の立設壁の高さよりも小さくし、 前記突出移し口用傾斜壁の上端面は、手前側に向かって下り傾斜するように形成されていることを特徴とするスロットマシン用のメダル受皿。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「遊技者方向に突出する突出移し口」について「メダル受皿の正面から遊技者方向に向かって方形状に突出する突出移し口」との限定を付加し、同じく「前記メダル受け部の底には、前記メダル受け部が連続して水平に延び」について「前記メダル受け部の底と、前記突出移し口の底とは、連続して水平に形成され」と誤記の訂正を行い、また同じく「前記メダル受皿の周囲に立設する立設壁」について「前記メダル受皿の周囲に同一高さで立設する立設壁」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-295874号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、 【0002】【従来の技術】従来、この種のコインゲーム機のコイン皿はゲーム機本体の下部前面に設けられて、コイン払出装置からのコインを受け入れるようになっている。そしてコインが溜ったときやゲームを終えるときはコイン皿のコインを何回も指で掻き寄せて、コイン皿の前側壁を乗り越えさせて別の運搬用容器に移し替えている。このために、コイン皿はコインを取り出し易くするように周壁を低く、つまり浅く作られていてコインを収容できる容量が限られていた。 【0005】また、前記容器体の内底面を凹凸面に形成することで、コイン皿に収容されて内底面に接するコインの少なくとも一部が内底面から浮き上がって指先に掛かり易くし、ゲーム中に残り少なくなったコインを取り出す際に指で掻き出し易くした。 【0006】前記容器体の一側壁に他の容器にコインを移し替え易くする湾曲部を設けるのが好ましい。 【0007】・・・スロットマシンのゲーム機本体1には上部に3個のリール2,2,2が横並びに配列され、その下方にコイン投入口3とスタートレバー4及び3個のストップボタン5,5,5が配置される。そして、ゲーム機本体1の下部中央にコイン払出装置6から払出されるコインの払出口6aが設けられ、このコイン払出口6aの下方にコイン皿7が設けられる。 【0008】しかして、該コイン皿7は図3に示すように上面が開口した箱状の支持枠体8とコイン払出装置6から払い出されたコインを受け入れる容器体9とから構成され、支持枠体8に容器体9が着脱自在に形成される。・・・ 【0009】一方前記支持枠体9(「容器体9」の誤記と認められる。)は、四方側壁18a?18dと底壁19とから上面で開口した長方形の箱状に形成され、容器体9の上端面は支持枠体8の上端面とほぼ合致するように形成される。そして、左右側壁18b,18dの外側面で容器体9の開口面より下部に把持部20,20を水平に突設している。これらの把持部20,20は後側壁18cに向う先端部の上面と外側面をそれぞれテーパ面20a,20aとして先細状に形成し前記嵌合溝14,14に嵌め易くしている。又、底壁19の内底面を図6に示すように凸部21aと凹部21bとを交互に設けた凹凸面21に形成している。なお、凸部21aと凹部21bのピッチは図6に示すようにコインCの直径より小さく設定することで、内底面に接するコインCの少なくとも一部が確実に浮き上がって指先Fが掛かり易く、コインCが容易に掻き寄せることができるようにしている。 との記載が認められる。 また、図6から容器体9の四方側壁18a?18dの上端面は、手前側に向かって下り傾斜するように形成されているものと認められる。 摘記した上記の記載及びこれらの記載並びに図面からの認定によれば、引用文献1には、 「スロットマシンのゲーム機本体1のコイン払出口6aの下方に設けられ、コインが収容されるコイン皿7において、 前記コイン皿7は、コイン払出口6aから払い出されたコインを受け入れる容器体9と、その一側壁に他の容器にコインを移し替え易くする湾曲部を設け、 前記容器体9の内底面は凹凸面21に形成してコインCを容易に掻き寄せることができ、 前記容器体9の四方側壁18a?18dの上端面は、手前側に向かって下り傾斜するように形成されているスロットマシンのコイン皿7。」 の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。 次に、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-90901号(実開昭58-195371号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、 「従来、金銭受皿は円形か矩形の、柄の無いフライパンのような形状であったので、色々工夫加工をしても硬貨を4,5枚以上一度に取上げにくいものであった。 本案はその欠点をなくす為になされたもので、図面について説明すれば、(1)は受皿面であり、(2)は側面、その側面に硬貨の取出し易い幅及び形状をした取上げ口(3)を少し側面(2)より突き出して設ける。 本案はこのような構造であるから、受皿面(1)の上にある硬貨は取上げ口(3)にかき寄せてくれば、相当な数の硬貨でも1回で取上げられる。」(明細書第1頁第9?20行) との記載が認められる。 ここで、(1) 、(2)及び (3)は、丸付き数字の1、2及び3を示す。 さらに、図面から、取上げ口(3)は、側面(2)より方形状に突出していることが見てとれる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「ゲーム機本体1」は、本願発明の「筐体」に相当し、以下同様に、 「コイン払出口6a」は「遊技メダル払い出し口」に、 「設けられ」は「位置して」に、 「コインが収容される」は「遊技メダル払い出し口から払い出された遊技メダルがたまり込む」に、 「コイン皿7」は「メダル受皿」に、 「コインを受け入れる」は「メダルを受ける」に、 「容器体9」は「メダル受け部」に、 「側壁」は「立設壁」に、 「内底面」は「底」に、それぞれ相当する。 以上を総合すると、両者は、 「スロットマシンの筐体の遊技メダル払い出し口の下方に位置して、前記遊技メダル払い出し口から払い出された遊技メダルがたまり込むメダル受皿において、 前記メダル受皿は、遊技メダル払い出し口から払い出されたメダルを受けるメダル受け部を備えているスロットマシン用のメダル受皿。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願補正発明は、「手前側の立設壁の一部がメダル受皿の正面から遊技者方向に向かって方形状に突出する突出移し口を備え」、「突出移し口の周囲には、その端縁から立設する突出移し口用傾斜壁が形成され」、「突出移し口用傾斜壁は、前記メダル受皿の周囲に同一高さで立設する立設壁の高さを基準として、前記突出移し口用傾斜壁以外の立設壁の高さよりも小さくし」、「突出移し口用傾斜壁の上端面は、手前側に向かって下り傾斜するように形成されている」という構成を有しているのに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。 [相違点2]本願補正発明は、「メダル受け部の底と、前記突出移し口の底とが、連続して水平に形成され」ているのに対し、引用発明の「容器体9の内底面」(「メダル受け部の底」に相当)は凹凸面に形成されている点。 (4)判断 [相違点1について] 上記(2)に記載したとおり、金銭受皿において、側面の一部に硬貨を取り上げやすくするために、方形の取上げ口(本願補正発明の「方形状に突出する突出移し口」に相当)を受皿の側面の一部に備えることが、引用文献2に開示されている。 そして、引用文献2の金銭受皿と引用発明のコイン皿7とは、いずれもコイン類を取り扱う装置である点で共通しており、引用発明においても、コインを取り出す際に指で掻き出し易くする構成(上記(2)に摘記した段落0005、0009を参照)を有するとともに、コインを移し替え易くする湾曲部を容器体9の一側壁に設けているので、該一側壁の一部に引用文献2に開示されるような方形の取上げ口を設けることは、スロットマシンの分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に想到し得る。 さらに、他の相違点についても、以下のことが言える。 a.突出移し口がメダル受皿の正面から遊技者方向に向かって突出する点は、遊技者がコインを掻き出し易くしようとすれば、容器体9に取上げ口を設けるに際して、該取上げ口をコイン皿7の正面から遊技者方向に向かって突出させるのが、当業者によって普通に行われる設計的事項であるので、格別のことではない。 b.容器体9の一側壁の一部に引用文献2に開示された態様の取上げ口を設ければ、該取上げ口の周囲に、その端縁から容器体9の内底面に至る壁(以下、「取上げ口壁」という。本願補正発明の「その端縁から立設する突出移し口用傾斜壁」に相当する。)が形成されることは明らかである。 c.前記取上げ口を、どのような大きさ及び形のものにするかは、引用文献2に「硬貨の取出し易い幅及び形状をした取上げ口(3)を少し側面(2)より突き出して設ける」(上記(2)の摘記事項の一部)と記載されているように、容器体9に取上げ口を設けるに際して、コインの取り出し易さを考慮して決定される事項であり、前記取上げ口壁の構成もそれに付随して決まるものである。 そして、コインを取り出し易くするには、上記(2)で摘記した引用文献1の段落0002にも記載されるように、周壁を低くする必要があることが従来知られているとともに、図6及び摘記した段落0009の記載等から分かるように、引用発明はコインを取り出し易くするために、容器体9の四方側壁18a?18dの上端面を、手前側に向かって下り傾斜する構成も有しているから、この構成を前記取上げ口の部分のみに適用して、前記四方側壁18a?18dの高さは同一高さとするとともに、前記取上げ口壁の高さを前記四方側壁18a?18dの高さよりも小さくし、前記取上げ口壁の上端面を手前側に向かって下り傾斜するように形成することは、当業者が適宜実施し得る設計的事項である。 なお、メダル受皿の周囲に立設する立設壁の高さを同一高さとしたものも、例えば、実開昭63-3881号公報(特に、第1、3図参照)や実開平3-5475号公報(特に、第2、3図参照)に記載されるように、従来スロットマシンの分野において周知のものである。 [相違点2について] 引用文献2の図面から分かるように、金銭受皿の底面は取上げ口部分の底面も含めて面一となっており、逆に面一でなければコインが引っかかったりして使いづらいものになると考えられるので、引用発明に取上げ口を設ける場合に、容器体9の内底面と取上げ口部分の底面とを連続した面とすることは、当業者が当然行うことである。 また、引用発明の「容器体9の内底面」は凹凸面に形成されているが、これは上記(2)に摘記した段落0005、0009の記載から分かるように、コインを取り出す際に指で掻き出し易くするためのものであって、平面状の底面を改良した構成であるから、引用発明において、その凹凸面をなくし単なる水平面とすることは、当業者にとって何ら困難なことではない。 以上のとおりであるから、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年7月5日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成15年7月17日付けの手続補正は平成16年4月27日付けの補正の却下の決定により却下されているので、本願の請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)、平成14年4月12日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「スロットマシンの筐体の遊技メダル払い出し口の下方に位置して、前記遊技メダル払い出し口から払い出された遊技メダルがたまり込むメダル受皿において、 前記メダル受皿は、遊技メダル払い出し口から払い出されたメダルを受けるメダル受け部と、その手前側の立設壁の一部が遊技者方向に突出する突出移し口とを備え、 前記メダル受け部の底には、前記メダル受け部が連続して水平に延び、 前記突出移し口の周囲には、その端縁から立設する突出移し口用傾斜壁が形成され、 前記突出移し口用傾斜壁は、前記メダル受皿の周囲に立設する立設壁の高さを基準として、前記突出移し口用傾斜壁以外の立設壁の高さよりも小さくし、 前記突出移し口用傾斜壁の上端面は、手前側に向かって下り傾斜するように形成されていることを特徴とするスロットマシン用のメダル受皿。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1、2及びそれらの記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願の請求項1に係る発明は、上記「2.(1)」で検討した本願補正発明の「メダル受皿の正面から遊技者方向に向かって方形状に突出する突出移し口」という構成を「遊技者方向に突出する突出移し口」として、「メダル受皿の正面から」及び「方形状に」の限定事項を省き、同じく「前記メダル受け部の底と、前記突出移し口の底とは、連続して水平に形成され」という構成を誤記のある「前記メダル受け部の底には、前記メダル受け部が連続して水平に延び」という構成とし、さらに同じく「前記メダル受皿の周囲に同一高さで立設する立設壁」という構成を「前記メダル受皿の周囲に立設する立設壁」として、「同一高さで」の限定事項を省いたものである。 そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加し、誤記の訂正をしたものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-31 |
結審通知日 | 2007-09-06 |
審決日 | 2007-09-27 |
出願番号 | 特願平11-109089 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼川 康史 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
土屋 保光 川島 陵司 |
発明の名称 | スロットマシン用のメダル受皿 |
代理人 | 黒田 博道 |