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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1168182
審判番号 不服2003-11321  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 特願2000-239219「遊技機の特別図柄表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月19日出願公開、特開2002- 52170〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 一.手続の経緯
本願は、平成12年8月7日の出願であって、平成15年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月18日付けで手続補正がなされたものである。

二.平成15年7月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正内容
本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、本件補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

・本件補正前の請求項1乃至5
「【請求項1】 始動入賞口への球の入賞で複数の図柄の変動を開始し、停止した複数の図柄が設定図柄に揃うことにより遊技者に有利な大当り遊技を行い、上記停止図柄が設定図柄以外の場合には遊技者に不利な外れ遊技を行う遊技機の特別図柄表示装置において、上記図柄をデータで電気的に可変表示する図柄表示器と、図柄表示器を1つのまとまりとして振動させる駆動機構とを備えたことを特徴とする遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項2】 図柄表示器とは別に定置される固定表示器と、図柄表示器の振動の動作状況に合わせて固定表示器の画像表示を変化させる制御装置とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項3】 固定表示器の表示画面を所定形状で縁取りする1つのキャラクタの外形を表わす定形意匠部と、固定表示器の画像表現を1つのキャラクタの状況変化として可変表示制御する制御装置とを備え、全体的に前側より見て1つのキャラクタとして遊技者に見せ得る形態に形成されたことを特徴とする請求項2記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項4】 定形意匠部が遮光性の有る有色な合成樹脂による外側意匠部と、その外側意匠部で縁取りされた透視性の有る合成樹脂による内側意匠部とで形成され、固定表示器で可変表示される画像が内側意匠部を経由して前側から見える形態である一方、上記外側意匠部および内側意匠部の前面が前側に突出したことを特徴とする請求項3に記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項5】 図柄表示器の図柄の表示状況に合わせて駆動機構を制御する駆動回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の遊技機の特別図柄表示装置。」

・本件補正後の請求項1乃至5
「【請求項1】 遊技盤における前面のガイドレールで囲まれた内側に形成された遊技領域に、センター役物として設けられる遊技機の特別図柄表示装置において、固定表示器と可動表示ユニットと定形意匠部と制御装置とを備え、遊技盤の遊技領域に形成された開口に固定表示器の画像表示体と可動表示ユニットの画像表示体とを配置し、定形意匠部が開口周りの遊技盤の前面より前側に突出し、固定表示器の画像表示体に表示された表情画像が遊技盤の前側より開口を介して視認し得るように固定表示器が当該開口周りの遊技盤に取り付けられ、固定表示器の画像表示体に表示された表情画像が遊技盤の前側より視認し得るように定形意匠部が固定表示器の画像表示体の前面を縁取りして遊技盤に取り付けられ、可動表示ユニットの画像表示体に変動表示された後に停止表示される図柄が遊技盤の前側より視認し得るように可動表示ユニットが上記開口周りの遊技盤に駆動機構を介して振動するように取り付けられ、この可動表示ユニットの画像表示体が定形意匠部の可動する把持部で支えられ、制御装置が可動表示ユニットの画像表示体で停止表示される図柄と固定表示器の画像表示体で表示される表情画像と可動表示ユニットの振動とで遊技状況を表現するように可動表示ユニットに対する図柄表示と固定表示器に対する表情画像表示と可動表示ユニットの振動とを制御することを特徴とする遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項2】 可動表示ユニットを振動する制御が、可動表示ユニットの画像表示体で変動表示から停止表示に移行する図柄の動きと可動表示ユニットの振動とを対応させることを特徴とする請求項1記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項3】 固定表示器が上部に配置され、可動表示ユニットが下部に配置されたことを特徴とする請求項1記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項4】 定形意匠部の可動表示ユニットを支える把持部が可動表示ユニットと一緒に振動することを特徴とする請求項1記載の遊技機の特別図柄表示装置。
【請求項5】 定形意匠部の固定表示器を縁取りする部分が、固定表示器の画像表示体の前面を覆う透視性の有る合成樹脂により形成された顔面を現わした形状の内側意匠部と、内側意匠部の周囲を縁取る遮光性の有る有色な合成樹脂により髪型を表現した形状に形成された外側意匠部とを備えたことを特徴とする請求項4記載の遊技機の特別図柄表示装置。」

2.補正の適否
そこで、補正の適否について検討する。
本件補正前の請求項1に記載された「遊技機の特別図柄表示装置」は「始動入賞口への球の入賞で複数の図柄の変動を開始し、停止した複数の図柄が設定図柄に揃うことにより遊技者に有利な大当り遊技を行い、上記停止図柄が設定図柄以外の場合には遊技者に不利な外れ遊技を行う」との限定がなされたものであったが、本件補正後の請求項1の「遊技機の特別図柄表示装置」は、その限定が省かれている。
また、本件補正前の請求項2及び5は本件補正前の請求項1を引用して記載され、本件補正前の請求項3は本件補正前の請求項2を引用して記載され、本件補正前の請求項4は本件補正前の請求項3を引用して記載されたものであるが、上記限定を省くような記載は認められない。
したがって、「遊技機の特別図柄表示装置」になされた上記限定事項を省く本件補正後の請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1乃至5のいずれを減縮するものでもない。

よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮に該当しないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に該当せず、また、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明とも認められないから、同項第4号に該当せず、さらに、同項第1号又は同項第3号のいずれにも該当しないことは明らかである。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

三.本願発明について
1.本願発明
平成15年7月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、平成15年1月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、「二.1.」において、本件補正前の請求項1として記載したので、ここでは再掲しない。

2.引用刊行物記載事項
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物である特開平11-262565号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0015】図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面を示す正面図である。遊技者が図示しない打球操作ハンドルを操作すれば、パチンコ玉が1つずつ遊技盤1の前面に形成されている遊技領域2内に打込まれる。遊技領域2には、複数種類の識別情報を可変表示可能な、回転ドラムを用いた可変表示装置3が設けられているとともに、始動口10が設けられている。この始動口10内に入賞したパチンコ玉は、それぞれ始動入賞玉検出器(始動口スイッチ)11により検出される。なお、可変表示装置としては回転ドラムを用いたものに限らず、液晶表示装置や、CRTなどを用いたものであってもよい。
【0016】始動口スイッチ11の検出信号に基づき、可変表示装置3の回転ドラム4a,4b,4c上に構成される各図柄表示部が可変開始される。可変表示装置3には、回転ドラム4a,4b,4cによって3行×3列のマトリクス状に配列された9つの図柄を表示可能であり、ドラムランプ7b,7e,7hにより背後から照明されている。各図柄表示部は、可変表示中は所定の複数個の図柄を順次回転表示する。そして、通常は所定時間の経過後に、まず左端の回転ドラム4aが停止し、その後右端の回転ドラム4cが停止、最後に中央の回転ドラム4bが停止する。なお、停止時の順序は可変表示装置3の可変表示制御の内容により変化する場合がある。
【0017】停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せになれば、可変入賞球装置12の開閉板14が開成して遊技者にとって有利な第1の状態となり、所定の遊技価値が付与可能な状態となる。……」

「【0023】一方、可変入賞球装置12は、通常時においては開口部13が開閉板14によって閉鎖されてパチンコ玉が開口部13に入賞できない遊技者にとって不利な第2の状態になっている。しかし、開閉板14が開成することにより、パチンコ玉が開口部13に入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態となる。……」

「【0062】次に時刻t6 において中可変表示部の図柄が停止表示されるとともに、すべての可変表示部において変動パターンEの変動が開始される。この可変表示状態が図8(d)に示されている。すなわち、中可変表示部に「キング」が停止表示されることにより、可変表示結果が「外れ」となる。外れの停止表示がなされることにより、遊技者の大当りに対する期待感が瞬時に消滅し、遊技者はその遊技結果に落胆することとなる。しかしながら、外れの結果が停止表示されると同時に全可変表示部が振動表示されることにより、遊技者は再び可変表示がなされるのではないかという期待感を抱くことになり、遊技者の視線が可変表示部4に集中させられることになる。」

上記記載事項及び図面によれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「始動口10内にパチンコ玉が入賞したことにより複数種類の識別情報を可変表示可能な回転ドラム4a,4b,4c上に構成される各図柄表示部が可変開始され、停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せになれば、遊技者にとって有利な第1の状態となり、所定の遊技価値が付与可能な状態となり、通常時においては遊技者にとって不利な第2の状態になっている遊技機の可変表示装置3において、
外れの結果が停止表示されると同時に全可変表示部が振動表示されることにより、遊技者は再び可変表示がなされるのではないかという期待感を抱くことになり、遊技者の視線が可変表示部4に集中させられることになる遊技機の可変表示装置3。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「始動口10」は、本願発明の「始動入賞口」に相当し、以下同様に、「パチンコ玉」は「球」に、「予め定められた特定の識別情報の組合せ」は「設定図柄」に、「第1の状態」は「大当たり遊技」に、「可変表示装置3」は「特別図柄表示装置」にそれぞれ相当する。

また、引用発明は、停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せになれば、遊技者にとって有利な第1の状態となり、所定の遊技価値が付与可能な状態となり、通常時においては遊技者にとって不利な第2の状態になっているものであるから、停止図柄が設定図柄以外の場合には遊技者に不利な外れ遊技を行うものといえる。

さらに、引用発明は、全可変表示部が振動表示されるものであるのに対して、本願発明は、図柄表示器を1つのまとまりとして振動させるものであるから、引用発明と本願発明とは、図柄を1つのまとまりとして振動させるものである点で共通するといえる。

したがって、両者は
「始動入賞口への球の入賞で複数の図柄の変動を開始し、停止した複数の図柄が設定図柄に揃うことにより遊技者に有利な大当り遊技を行い、上記停止図柄が設定図柄以外の場合には遊技者に不利な外れ遊技を行う遊技機の特別図柄表示装置において、
図柄を1つのまとまりとして振動させる遊技機の特別図柄表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明は、図柄をデータで電気的に可変表示する図柄表示器と、図柄表示器を1つのまとまりとして振動させる駆動機構とを備えたものであるのに対して、引用発明は、図柄を1つのまとまりとして振動させるものの、各図柄表示部が可変表示可能な回転ドラム4a,4b,4c上に構成されるものであるから、図柄表示器が図柄をデータで電気的に可変表示されるものではなく、図柄表示器を振動させる駆動機構を備えたものではない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
パチンコ機のような遊技機の技術分野において、図柄をデータで電気的に可変表示する図柄表示器を1つのまとまりとして作動させる駆動機構を備えたものは、例えば、実願平2-57893号(実開平4-15983号)のマイクロフィルム(あたかもキャラクター体18であるキングコングが吠えながら表示ボックス19を上方に持ち上げるような感じを遊技者に与える、明細書第9頁第19行目?同第10頁第2行目参照。)、特開平6-7509号公報(【0034】……表示器7a,7b,7cの……全体を上下に波立たせて、特異な運動形態を発生させ、遊技盤3上で躍動感のある遊技形態を生じさせる……)、及び、特開平7-68031号公報(【0025】……揺動モータ45が駆動されて特別図柄表示器35a?35cが左右に1往復揺動される。この特別図柄表示器35a?35c全体の揺動動作が本実施例の要部を構成する制御であり、このように制御することにより、最初の特別図柄表示器35aの停止時から通常の特定識別情報の組合せよりも大きな価値を付与可能な特別識別情報の組合せが成立するかもしれないという遊技者の期待感を盛り上げることができる。)に記載されているように周知技術であって、この周知技術を引用発明のドラムに代えて適用して、図柄表示器を振動させるように構成することは当業者が容易になし得るものである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-20 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願2000-239219(P2000-239219)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠太田 恒明  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 藤田 年彦
川島 陵司
発明の名称 遊技機の特別図柄表示装置  
代理人 宮園 純一  

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