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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1168203
審判番号 不服2004-26356  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-27 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 平成 7年特許願第206644号「化粧板」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 4日出願公開、特開平 9- 29919〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年7月20日の出願であって、平成16年7月7日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成16年11月26日付けで拒絶査定がされた後、同年12月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年1月26日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において平成19年4月12日付けで審尋がなされ、これに対して、平成19年6月15日に回答書が提出されたものである。

2.本願発明について
上記平成17年1月26日付けの手続補正は、特許請求の範囲の請求項2において引用する「請求項2」を「請求項1」に補正するものであり、特許法第17条の2第4項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものであるから、該手続補正は、適法になされたものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成17年1月26日に補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「木質系基材の一方の面に化粧シートを積層し、他方の面に、2枚の薄葉紙をポリオレフィン系樹脂の押出コート層を介して接着してなる紙質系シートが積層されていることを特徴とする化粧板。」

3.原審で通知された拒絶理由
原審の平成16年7月7日付けの拒絶理由通知書に記載された拒絶理由は、本願発明1は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるという理由を含むものである。
引用された刊行物
1.特開平6-280376号公報
2.特開昭57-31571号公報

4.刊行物の記載
刊行物1(特開平6-280376号公報)
(1-1)「表面側より表層木質繊維層、中層木質単板層、中層木質繊維層および裏層木質単板層の順で積層一体化されてなる基板の表面に、化粧シートが貼着されると共に、前記基板の裏面に、ポリエチレンシートを芯としてその表裏にクラフト紙を積層してなる防湿シートが貼着されてなることを特徴とする建築用板。」(【請求項2】)
(1-2)「また、特にマンション等の建設現場でコンクリート下地上に直貼りされる床材として用いられる場合、コンクリートの一次硬化が完了して十分な強度を有するものとなった後も、コンクリート自体は高含水状態であるため、この水分が床材基板の裏面側に吸収されて裏面側を膨張させる傾向があるのに対し、表面側には一般に表面塗装が施された化粧シートが貼着されているため、表面側からの水分吸収はほとんどなされない。従って、床材の表面側と裏面側との膨張率が異なり、床材の幅方向において裏面側を凸とする反りが発生するという問題がある。この問題は、コンクリート下地への直貼り施工の場合に限らず、床材を施工した環境において湿度が上昇することによって大なり小なり発生するものである。」(段落【0004】)
(1-3)「そこで本発明は、寸法安定性が良好であり、特に合板の代替品として使用し得る新規な積層板を基板とした場合にも優れた寸法安定性を有する建築用板を提供することを目的として鋭意工夫の末に完成されたものである。」(段落【0005】)
(1-4)「このような防湿シートは、ポリエチレンシートの表裏面に各々クラフト紙を積層した後、加熱圧着して熱融着することによって得られる。」(段落【0016】)
(1-5)「基板における裏層木質単板層への水分吸収が芯層のポリエチレン層によって防止されると共に、ポリエチレンシートの表裏面にクラフト紙層が存在することで基板裏面への接着剤による接着強度が良好となるため、一般的なラミネータ装置により簡単に貼着することができる。また、施工下地への接着剤塗布により十分に下地面との接着強度を得ることができる。」(段落【0017】)
(1-6)「本発明による建築用板は、基板の表面に化粧シートが貼着されてなるものにおいて裏面に防湿シートが貼着されているため、水分吸収による膨張率が表裏において実質的に均衡され、反りの発生が防止される。」(段落【0023】)
(1-7)「基板の裏面に貼着される防湿シートは、ポリエチレンシートを芯としてその表裏にクラフト紙が積層一体化されてなる3層構造のものであり、芯層のポリエチレンシートによる防水効果に加えて、表裏面におけるクラフト紙が基板裏面および下地面に対する良好な接着強度を発揮する。」(段落【0027】)

刊行物2(特開昭57-31571号公報)
(2-1)「薄手の原紙の表面に柄の印刷とトツプコートを施したプレコート紙の裏面に、アンカ-コ-トを介してプラスチツクフイルムの押出しコーテイングおよびもう1枚の原紙とのラミネートを行なつてなる印刷紙を、基材上に貼り合わせて構成した化粧材。」(特許請求の範囲第1項)
(2-2)「原紙が一般薄葉紙および紙間強化紙を代表とする20?35g/m2原紙であつて、同種または異種の原紙をラミネートしてなる印刷紙を用いた特許請求の範囲第1項の化粧材。」(特許請求の範囲第2項)
(2-3)「化粧材の一種であるラミネート化粧材は、通常、薄葉紙、紙間強化紙など、チタン白入りのものも含めて、『20?35g/m2 、原紙』
とよばれる比較的薄手の原紙に絵柄を印刷し、トツプコートを施してつくつたプレコート紙を、合板やパーテイクルボードのような基材に貼り合わせて構成している。」(第2頁左上欄第3?9行)
(2-4)「上記の構成が実現する限り、製造の手順は任意に変更できる。たとえば、トツプコートは印刷紙を基材上に貼り合わせた後に行なう、いわゆるアフタ-コートであつてもよく、従つてここでトツプコートとは、オーバープリント加工を意味し、プレコート紙には、原紙に印刷をした状態であつて後にトツプコートを施す予定のものを包含する。」(第2頁右上欄第9?15行)
(2-5)「押出しコーテイング用のプラスチツクはポリエチレンが代表的であるが、これは化粧材に耐水性を与えることが主な狙いであるから、その役割を果たすことができドライラミネーション可能なものなら、何でも使用できる。ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体などがその例である。」(第2頁左下欄第11?17行)
(2-6)「本発明によるときは、まず製造工程において、印刷紙が丈夫であるから貼り合わせ作業が容易であつて、かつシワが生じることが少なく、生産性および歩留まりの両面で有利になる。製品化粧材は、積層されたプラスチツクフイルムおよび少なくとももう1枚の原紙の存在により、隠蔽力が十分であり、目やせのない良好な仕上がり感を示す。耐水性も格段に高まり、従来品のように印刷紙を通して基材中に水分が入り、パーテイクルボードをふくれさせるおそれなど無い。」(第2頁右下欄第8?17行)
(2-7)「実施例・・・製品は印刷紙の隠蔽性が十分でチツプパターンの目立たない、良好な仕上がり感を与えた。耐水性を調べるため、印刷面に対して煮沸水蒸気を4時間にわたつて吹き当てる湿熱テストをしたが、全く変化は認められなかつた。」(第3頁左上欄第1行?同頁右上欄第7行)

5.刊行物1に記載された発明
「表面側より表層木質繊維層、中層木質単板層、中層木質繊維層および裏層木質単板層の順で積層一体化されてなる基板の表面に、化粧シートが貼着されると共に、前記基板の裏面に、ポリエチレンシートを芯としてその表裏にクラフト紙を積層してなる防湿シートが貼着されてなることを特徴とする建築用板。」(摘示1-1)及び「このような防湿シートは、ポリエチレンシートの表裏面に各々クラフト紙を積層した後、加熱圧着して熱融着することによって得られる。」(摘示1-4)の記載からみて、刊行物1には、
「表面側より表層木質繊維層、中層木質単板層、中層木質繊維層および裏層木質単板層の順で積層一体化されてなる基板の表面に、化粧シートが貼着されると共に、前記基板の裏面に、ポリエチレンシートの表裏面に各々クラフト紙を積層した後、加熱圧着して熱融着することによって得られた、ポリエチレンシートを芯としてその表裏にクラフト紙を積層してなる防湿シートが貼着されてなることを特徴とする建築用板。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

6.本願発明1と引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「表面側より表層木質繊維層、中層木質単板層、中層木質繊維層および裏層木質単板層の順で積層一体化されてなる基板」は、本願発明1の「木質系基材」に相当し、本願発明1におけるポリオレフィン系樹脂として、本願明細書の段落【0011】に、ポリエチレンが例示され、段落【0017】の実施例においてはポリエチレンフイルムが用いられており、また、引用発明も化粧シートが貼着された建築用板であることから、化粧板と言い得るものと解される。
そうしてみると、本願発明1と引用発明とは、
「木質系基材の一方の面に化粧シートを積層し、他方の面に、2枚の紙をポリエチレン層を介して接着してなる紙質系シートが積層されていることを特徴とする化粧板。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
ア.紙質系シートに用いられる紙が、本願発明1においては、「薄葉紙」であるのに対し、引用発明においては、「クラフト紙」である点、及び
イ.紙質系シートが、本願発明1においては、2枚の紙をポリエチレンの「押出しコートコート層を介して接着」することにより得られたものであるのに対し、引用発明においては、「ポリエチレンシートの表裏面に各々クラフト紙を積層した後、加熱圧着して熱融着することによって得られ」たものである点
(以下、これらの相違点をそれぞれ「相違点ア」、「相違点イ」という。)

7.相違点の判断
相違点アについて検討する。
引用発明においては、紙質系シートにおける紙として、「クラフト紙」を用いている。しかしながら、刊行物1には、「ポリエチレンシートの表裏面にクラフト紙層が存在することで基板裏面への接着剤による接着強度が良好となるため、一般的なラミネータ装置により簡単に貼着することができる。また、施工下地への接着剤塗布により十分に下地面との接着強度を得ることができる。」(摘示1-5)及び「芯層のポリエチレンシートによる防水効果に加えて、表裏面におけるクラフト紙が基板裏面および下地面に対する良好な接着強度を発揮する。」(摘示1-7)と記載されているが、クラフト紙以外の紙を用いた場合の得失について記載はないことから、引用発明においては、表裏面に紙を用いることにより、木質基材との紙との親和性や、下地材と紙との親和性により接着強度が良好になるものと解され、特に紙として「クラフト紙」を選択したことにより、基板表面や下地面との接着強度が向上するものとは解することはできない。
そして、木質系基材であるパーテイクルボードに薄用紙間にプラスチックフィルムの押し出しコーティングをした積層紙を積層することで、化粧材の製造工程でシワを生じさせることなく、また、製品化粧材の隠蔽力を十分なものとし、耐水性を高めさせ、基材中に水分が入り、パーテイクルボードをふくれさせるおそれないようにすることは、刊行物2に記載されており(摘示2-1,2-3及び2-6)、引用発明において、同様な目的を達成するために、クラフト紙に代えて、薄葉紙を用いてみることは当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明1においても、明細書段落【0015】に「熱可塑性樹脂層42の表裏面に薄葉紙41、43が存在することで木質系基材3裏面への接着剤による接着強度が良好となるため、一般的なラミネータ装置により簡単に貼着することが出来る。又、施工下地への接着剤塗布により十分に下地面との接着強度を得ることができる。」旨記載しているように、引用発明と同様に、表裏面に紙を用いることにより、木質基材との紙との親和性や、下地材と紙との親和性により接着強度が良好になるものと解され、特に紙として「薄葉紙」を選択したことにより、基板表面や下地面との接着強度が向上したものとも認められない。

次に相違点イについて検討する。
熱可塑性樹脂層を構成成分として用いる積層体の製造方法としては、接着剤を用いるドライラミネーションや、加熱圧着による熱融着や、押出しラミネーションなどが本出願前一般的に行われており、樹脂や、製造工程の利便性等を考慮して、当業者が適宜選択するものであるが、刊行物2には、「薄手の原紙の表面に柄の印刷とトツプコートを施したプレコート紙の裏面に、アンカ-コ-トを介してプラスチツクフイルムの押出しコーテイングおよびもう1枚の原紙とのラミネートを行なつてなる印刷紙を、基材上に貼り合わせて構成した化粧材。」(摘示2-1)、「原紙が一般薄葉紙および紙間強化紙を代表とする20?35g/m2原紙」(摘示2-2)であること、及び「代表的なプラスチツクフイルムがポリエチレンであ」(摘示2-5)ることが記載されており、また、「トツプコートは印刷紙を基材上に貼り合わせた後に行なう、いわゆるアフタ-コートであつてもよく、従つてここでトツプコートとは、オーバープリント加工を意味し、プレコート紙には、原紙に印刷をした状態であつて後にトツプコートを施す予定のものを包含する。」(摘示2-4)ことが記載されていることから、刊行物2には、柄の有無は別にして、薄葉紙にトツプコートを施し、またはトツプコートを施していない、プレコート紙の裏面にアンカ-コ-トを介してポリエチレンフイルムの押出しコーテイング及びもう1枚の薄葉紙とのラミネートを行うことにより積層体を得ることが記載されていることになり、結局、2枚の薄葉紙をポリエチレンの押出しコート層を介して接着することが記載されているということができる。そうしてみると、引用発明においても、2枚の紙、特に薄葉紙をポリエチレン層を介して接着積層するに際し、ポリエチレンフィルムと加熱圧着して熱融着することに代えて、ポリエチレンの押出しコーテイングを採用することは当業者が容易になし得ることである。

請求人は、薄葉紙を用いて押出しコートにより紙質系シートを製造したことによる効果について、意見書及び回答書において、概略次のように主張する。
刊行物1に記載の両面に紙を備えた3層構成のシートは、紙と熱可塑性樹脂からなるフィルムと紙とをサーマルラミネーションで積層するものであり、サーマルラミネーション法で積層されたものは、3層を接着させる必要性から300℃前後ないしそれ以上の加熱温度からなる加熱ロール間を通すことにより積層されるために、積層された製品は熱可塑性樹脂フィルムの溶融による伸長と固化時の収縮により、全体的に波打った外観を呈するが、本願発明では2枚の紙間に加熱溶融押出しされた熱可塑性樹脂は冷却ロールで瞬時に冷却されるため、極めて平滑性に優れた外観を呈すること、紙が薄葉紙の場合には、サーマルラミネーション法で接着強度を考慮して積層すると、熱と圧により紙割れが発生する虞があるが、本願発明では紙割れが起こることはないこと、特にクラフト紙よりも薄い薄葉紙の場合では、熱ラミネーション法では表面が波打ち平滑性に欠けるが、押出しコーテイング法では2枚の紙間に加熱溶融押出しされた樹脂は冷却ロールで瞬時に冷却されるため平滑性に優れ、物として外観的にも異なり、本発明では、薄葉紙を用いていることからも、ラミネーション法ではなく押出しコーティング法を採用しないと表面平滑性に欠けることになる。

しかしながら、刊行物2においても、薄葉紙と薄葉紙の間にポリエチレンを加熱溶融押出しすることにより積層体を得ており、そして、この積層体を用いた製品化粧材は、隠蔽性が十分で、目やせのない、チツプパターンの目立たない、良好な仕上がり感を示すことが記載されている(摘示2-6、2-7参照)。刊行物2には、上記積層体が、化粧シートの部分であるため、隠蔽性や目やせのないこと、チツプパターンが目立たないことについて述べているものの、化粧シート部分において、仕上がり感が良好ということは、具体的に述べていないが、当然に、その表面は平滑であり、紙割れも起きていないということを示唆しているものと解される。
そうしてみると、薄葉紙と薄葉紙の間にポリエチレンを押出しコーティングした積層体に紙割れが起こらず、表面平滑性に優れていることも、当業者が予期できる効果であり、格別顕著な効果であるともいうことができない。
なお、本願発明1における化粧板は外気の湿度や水分により反りが生じることがないという効果は、摘示1-2、1-3及び1-6に記載されているように、引用発明も有している効果であり、本願発明1と引用発明との一致点により奏されるものである。

したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものである。

8.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、請求項2乃至4に係る発明を検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2007-09-19 
結審通知日 2007-09-27 
審決日 2007-10-11 
出願番号 特願平7-206644
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 進深草 祐一  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 井上 彌一
鈴木 紀子
発明の名称 化粧板  
代理人 金山 聡  

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