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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1168207
審判番号 不服2005-3699  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-03 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 平成10年特許願第214428号「高表面強度化粧材」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月15日出願公開、特開2000- 43204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年7月29日の出願であって、平成16年10月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月16日に意見書が提出されたところ、平成17年1月25日付けで拒絶査定がされ、その後、同年3月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
結着剤樹脂中に該結着剤樹脂よりも高硬度の粉粒体が分散されてなる耐磨耗性樹脂層が基材の表面に設けられてなる化粧材において、前記耐磨耗性樹脂層の厚さtが、下式
t≦50μm
の範囲内であり、且つ、前記粉粒体の平均粒径Dが、前記耐磨耗性樹脂層の厚さtに対して、下式
0.5t≦D≦1.5t
の範囲内にあり、且つ、前記粉粒体の内、下式
0.5D≦d≦1.5D
で表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が60%以上であることを特徴とする高表面強度化粧材。」

3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定は、本願は、平成16年10月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものである、としている。
そして、その理由3の概要は、次のとおりのものである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

<理由3>
・請求項1-4について:出願3
出願3の出願当初の明細書又は図面の、請求の範囲、0019-0020を特に参照のこと。

引 用 文 献 等 一 覧
3.特願平10-116360号(特開平11-302578号)」

4.引用例に記載の事項
これに対して、平成16年10月12日付け拒絶の理由で引用した、本願の出願日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願平10-116360号(特開平11-302578号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の記載がある。

ア.「【請求項1】 基材上に、架橋性のバインダー成分と該バインダー成分に対して3?30重量%の球状粒子を含む耐摩耗性塗料の塗膜を形成してなる塗装品であって、上記粒子は、上記架橋性のバインダー成分が単独で架橋した塗膜より硬度が高く、かつ、上記粒子を除く塗膜の塗膜厚をtとしたとき、全粒子の60重量%以上が0.5t?1.5tの間にあるように、上記粒子の粒度分布が調整されてなることを特徴とする塗装品。
【請求項2】 基材と、耐摩耗性塗膜との間に印刷層を設けることを特徴とする請求項1記載の塗装品。」(請求項1?2)

イ.「【発明の属する技術分野】本発明は、耐摩耗性に優れる塗装品に関する。詳しくは、家具および建築物の床面、壁面等の内装およびドアなどに使用される化粧材に関する。」(段落【0001】)

ウ.「【発明の実施の形態】本発明の塗装品の断面図を図1に示す。即ち、塗装品1は、基材2の表面に耐摩耗性塗膜3を形成したものであり、耐摩耗性塗膜3は、架橋性のバインダー成分4と硬度球状微粒子5を含む耐摩耗性塗料を架橋せしめた塗膜である。また、第2の発明に係る塗装品の断面図を図2に示す。即ち、第2の発明に係る塗装品は、図2に示すように基材2と耐摩耗性塗膜3との間に印刷層6を設けたものである。」(段落【0007】)

エ.「高硬度球状微粒子5は、上述の架橋性バインダー成分中に分散せしめるものであり、架橋性バインダー成分のみを架橋せしめた場合の塗膜の硬度より硬度が高いことが必要である。・・・高硬度球状微粒子5のうち、無機質のものとしては、α-アルミナ、ジルコニア・・・等が挙げられ、中でα-アルミナが好ましい。」(段落【0019】)
オ.「(実施例1?5、比較例1?3)表1に示す組成A?Cに表2に示す高硬度微粒子を所定量添加し、電子線架橋性の耐摩耗性塗料を得、木目柄を印刷した基材に各電子線架橋性の耐摩耗性塗料を架橋後の高硬度微粒子を除く塗膜の膜厚が20μになるように塗装し、塗装品を形成した。・・・得られた塗装品について、耐摩耗性試験を行いその結果を表2に示した。」(段落【0028】)

カ.段落【0029】の表1には、組成Aがポリエステル系ウレタンアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパンアクリレート及びビスフェノール(EO)変性ジアクリレートからなる電子線架橋性塗料であることが記載されている。

キ.段落【0030】の表2には、実施例1として、塗料組成物中の架橋性バインダー成分が組成Aであり、高硬度球状微粒子の、種類がαアルミナ1、平均粒子径が21μ、10-30μ存在量が92重量%であることが記載されている。

5.対比・判断
(1)本願発明と先願明細書に記載された発明
先願明細書には、上記ア、ウより、基材上に、架橋性のバインダー成分と球状粒子を含む耐摩耗性塗料の塗膜を形成してなる塗装品であって、上記粒子は、上記架橋性のバインダー成分が単独で架橋した塗膜より硬度が高く、かつ、上記粒子を除く塗膜の塗膜厚をtとしたとき、全粒子の60重量%以上が0.5t?1.5tの間にあるように、上記粒子の粒度分布が調整されてなる塗装品が記載され、上記イより、塗装品は化粧材に使用されること、上記エより、高硬度球状微粒子は、架橋性バインダー成分中に分散せしめることが記載されていると認められる。
また、塗装品の具体的な実施例である、上記オ?キには、高硬度球状微粒子として、平均粒子径が21μ、10-30μ存在量が92重量%であるαアルミナを用い、高硬度微粒子を所定量添加した、架橋性バインダー成分である電子線架橋性の耐摩耗性塗料を高硬度微粒子を除く塗膜の膜厚が20μになるように塗装した塗装品が記載されている。
してみると、先願明細書には、「架橋性バインダー成分中に該架橋性のバインダー成分より硬度が高い高硬度微粒子を分散した耐摩耗性塗料の塗膜を基材上に形成した化粧材において、前記耐摩耗性塗料の塗膜の膜厚tが20μであり、且つ、前記高硬度微粒子の平均粒子径Dが21μであり、且つ、前記微粒子の内、10-30μ存在量が92重量%である耐摩耗性化粧材」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本願発明と先願発明との対比
そして、先願発明の「架橋性バインダー成分」、「高硬度微粒子」、「耐摩耗性塗料の塗膜」、「耐摩耗性化粧材」は、それぞれ本願発明の「結着剤樹脂」、「高硬度の粉粒体」、「耐磨耗性樹脂層」、「高表面強度化粧材」に相当し、また、先願発明の「膜厚tが20μ」、「Dが21μ」は、本願発明の「t≦50μm」、「0.5t≦D≦1.5t」を満たすものであるから、両者は、
「結着剤樹脂中に該結着剤樹脂よりも高硬度の粉粒体が分散されてなる耐磨耗性樹脂層が基材の表面に設けられてなる化粧材において、前記耐磨耗性樹脂層の厚さtが、下式
t≦50μm
の範囲内であり、且つ、前記粉粒体の平均粒径Dが、前記耐磨耗性樹脂層の厚さtに対して、下式
0.5t≦D≦1.5t
の範囲内にあることを特徴とする高表面強度化粧材。」
の点において一致し、次の点で一応相違している。
(相違点)
粉粒体の粒径分布が、本願発明においては、「粉粒体の内、0.5D≦d≦1.5Dで表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が60%以上である」のに対し、先願発明においては、粒径dの10-30μ存在量が92重量%であること、すなわち、10μ、30μは、平均粒径Dの21μに対して、0.476D及び1.428Dに相当するから、結局、先願発明は、「粉粒体の内、0.476D≦d≦1.428Dで表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が92%である」点において相違している。

(3)相違点についての検討
先願発明において、粒径dが0.476D≦d<0.5D及び1.428D<d≦1.5Dの範囲に存在する粉粒体の存在量については不明であるが、先願発明の粉粒体の粒度分布において、0.5D≦d≦1.5Dで表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が60%以上でない、すなわち、60%未満であるという条件を満たすためには、0.476D≦d<0.5Dの存在量をA(重量%)及び1.428D<d≦1.5Dの存在量をB(重量%)とすると、(A-B)>32(重量%)となり、Aは少なくとも32重量%必要となる。
平均粒径Dが21μを保ち、0.476D?0.5Dのような極めて狭い範囲に32重量%以上存在するような粒度分布を有する粉粒体は、極めて特殊であり、通常の製造方法では製造することができず、また、先願明細書にそのような特殊な粒度分布を有する旨の記載もないことからみて、後者の平均粒径Dが21μの粉粒体においても、0.476D≦d<0.5Dの範囲に存在する粉粒体の存在量が32%以上である可能性はあり得ないといえる。
であるならば、先願発明においても、「粉粒体の内、0.5D≦d≦1.5Dで表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が60%以上である」ものと認められるから、該相違点は、実質的な差異とはいえない。

(4)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、この点について、「前記粉粒体の内、0.5D≦d≦1.5Dで表される範囲の粒径dの成分の粉粒体全体に占める重量比が60%以上であるとする粉粒体の統計上の分散度合を限定しているものではない」と主張する。
しかし、請求人は、この主張について、何ら合理的な理由を述べてはいない。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記他の特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-21 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願平10-214428
審決分類 P 1 8・ 161- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 井上 彌一
鴨野 研一
発明の名称 高表面強度化粧材  

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