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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1168228
審判番号 不服2005-15379  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-11 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 平成11年特許願第242544号「画像読取システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月16日出願公開、特開2001- 69293〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成11年8月30日の出願であって、平成17年7月4日に拒絶査定がされ、これに対して平成17年8月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年9月12日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年9月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成17年9月12日付けの補正を却下する。

[理由]

1.当該補正後の特許請求の範囲

当該補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりのものである。
(以下、審判請求時補正請求項1とする。)

【審判請求時補正請求項1】 コンピュータと、前記コンピュータにネットワークを介して接続されたスキャナとを含む画像読取システムにおいて、
前記コンピュータと前記スキャナの共有フォルダを前記コンピュータに作成する手段と、前記共有フォルダのリンクを生成する手段と、前記生成したリンクを前記スキャナに移動する手段とを具備し、
前記コンピュータは、作成した共有フォルダ内に設定ファイルを格納し、
前記スキャナは、さらに、選択されたリンクを介して前記設定ファイルを参照する手段と、前記設定ファイルに基づいて処理を行う手段と、を具備することを特徴とする画像読取システム。

2. 当該補正前の特許請求の範囲

これに対し、当該補正前の特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲を平成17年3月25日付けで補正したものであって、その請求項1から5は以下の通りである。

【請求項1】 コンピュータと、前記コンピュータにネットワークを介して接続されたスキャナとを含む画像読取システムにおいて、
前記コンピュータは、前記コンピュータと前記スキャナの共有フォルダを作成する手段と、前記共有フォルダのリンクを生成する手段と、前記生成したリンクを前記スキャナに移動する手段とを具備し、
前記スキャナは、画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備することを特徴とする画像読取システム。
【請求項2】 請求項1に記載の画像読取システムにおいて、
前記コンピュータは、作成した共有フォルダ内に設定ファイルを格納し、
前記スキャナは、さらに、選択されたリンクを介して前記設定ファイルを参照する手段と、前記設定ファイルに基づいて処理を行う手段と、を具備することを特徴とする画像読取システム。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の画像読取システムにおいて、
前記スキャナは、前記選択されたリンクに読み取られた画像を格納する手段が、前記リンクに前記画像を格納する際に、パスワードを問い合わせ、パスワードが合致しないと、格納を行わないことを特徴とする画像読取システム。
【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載の画像読取システムにおいて、
前記共有フォルダは、プリンタのスプールフォルダであることを特徴とする画像読取システム。
【請求項5】 コンピュータとスキャナの共有フォルダを作成する手段と、前記共有フォルダのリンクを生成する手段と、前記生成したリンクを移動する手段とを具備するコンピュータにネットワークを介して接続され、
画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段と、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備することを特徴とするスキャナ。

3. 当該補正の適否

当該審判請求時補正請求項1と補正前の全ての請求項を対比するに、審判請求時補正請求項1は、補正前の請求項1を補正前の請求項2の内容で限定するとともに、補正前の請求項1の構成要件であった「前記スキャナは、画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備し」を削除するものである。
すなわち、当該補正は、発明の構成要件であるスキャナを「画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備」するものから、「選択されたリンクを介して前記設定ファイルを参照する手段と、前記設定ファイルに基づいて処理を行う手段と、を具備」するものに変更するものである。
補正前の請求項に係る発明は、全ての請求項において、スキャナが「画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備」することを構成要件としているから、当該要件を欠くことにより、当該補正は、補正前の特許請求の範囲各項に記載されている「読み取られた画像を格納する」発明を、「読み取られた画像を設定ファイルに基づいて処理をする」という異なった新たな発明に内容を変更するものとなる。

これは、当該補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号で規定する補正の要件を満たすものではないから、同条同項の規定に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成17年9月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項5までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められる。
そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。

【請求項1】 コンピュータと、前記コンピュータにネットワークを介して接続されたスキャナとを含む画像読取システムにおいて、
前記コンピュータは、前記コンピュータと前記スキャナの共有フォルダを作成する手段と、前記共有フォルダのリンクを生成する手段と、前記生成したリンクを前記スキャナに移動する手段とを具備し、
前記スキャナは、画像を読み取る手段と、前記リンクの少なくとも一つを選択する手段、前記読み取られた画像を前記選択されたリンクに格納する手段とを具備することを特徴とする画像読取システム。
(以下、これを本願発明とする。)

2.引用例に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(特開平11-98218号公報;公開日平成11年4月9日)には、以下の(ア)から(オ)の事項が図面とともに記載されている。

(ア)【請求項1】 相手装置に対してデータ転送を行うデータ転送装置であって、
前記相手装置に対しデータ転送宛先の返送を要求する要求手段と、この要求手段での要求に対し返送された前記宛先を表示する表示手段と、この表示手段に表示された宛先の中から所望の宛先を選択する選択手段と、この選択手段で選択された宛先に対しデータ転送を行う転送手段とを含むことを特徴とするデータ転送装置。

(イ)【請求項7】 前記データ転送宛先とは前記相手装置のディレクトリ構造に関する情報であることを特徴とする請求項1?6いずれかに記載のデータ転送装
置。

(ウ)【0004】
一方、特開平9-37013号公報開示のデータ転送装置は、利用者の識別情報をイメージスキャナから入力し、これに対応するディレクトリにデータを転送するというものである

(エ)【0031】
ユーザはキーボード330により宛先表示を指示する(図2のA)。
【0032】
本発明によるデータ転送装置は、その指示を受けるとネットワークボード310を使ってディレクトリ構造要求コマンド(図2のB)を相手装置200に対し発行する。相手装置200はこれに対しディレクトリ構造通知コマンド(図2のC)を発行し自分のディレクトリ構造を回答する。
【0033】
本発明によるデータ転送装置は、そのコマンドを受信するとこれをディスプレイ320に表示する。ユーザが本表示を見てデータ転送する相手先を選択し、キーボード330によりこれを入力すると(図2のE)、ネットワークボード310は相手装置200に対し蓄積先ディレクトリを通知(図2のF)する。
【0034】
さらにユーザが転送するデータをキーボード330により指定すると(図2のG)、本発明によるデータ転送装置は、ユーザに指定されたデータをフロッピィディスクドライブから獲得し、これをランダムアクセスメモリ350に蓄積する。
【0035】
その後、本発明によるデータ転送装置はネットワークボード310を使って、相手装置200に対しデータ本体を転送(図2のH)する。

(オ)【0047】
次に、第3実施例について説明する。図6は本発明の第2実施例の構成図である。尚、図1と同様の構成部分及び信号線については同一番号を付し、その説明を省略する。
【0048】
図6を参照すると、本発明の第3の実施例は、イメージスキャナ500で実現されており、このイメージスキャナ500はローカルエリアネットワークボード510と、液晶表示部520と、タッチパネル操作部530と、画像データ読取部540と、ランダムアクセスメモリ550と主制御部560を含んでいる。
【0049】
即ち、このイメージスキャナ500は画像データ読取部540で画像データを読取り、その画像データをネットワークボード510より伝送線S6を介して相手装置200へ転送するものである。

これらの記載を総合すれば、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。

(カ)「相手装置と、相手装置にネットワークを介して接続されたスキャナとを含む画像読取システムにおいて、
相手装置は、スキャナからの要求に基づいて、装置自身のディレクトリ構造に関する情報をスキャナに送り、
スキャナは、画像を読み取る手段と、読み取った画像情報の転送先ディレクトリを選択する手段、読み取られた画像を選択されたディレクトリに転送する手段とを具備することを特徴とする画像読取システム。 」
(以下、刊行物2に記載の発明という。)

3. 対比・判断

本願発明と刊行物2に記載された発明を対比する。

本願発明における「リンク」は、画像情報を格納するディレクトリを示すものであるから、刊行物2に記載された発明における「転送宛先」に相当し、本願発明における「格納」は情報を所望のディレクトリに記憶させることであるから、刊行物2に記載された発明における「転送」に相当する。
また、供給フォルダのリンクをスキャナに移動することは、転送宛先をスキャナに送ることと等価である。

してみれば、両者は次の(サ)の点において一致し、(シ)(ス)の点において一応の相違がある。

一致点
(サ)「相手装置と、相手装置にネットワークを介して接続されたスキャナとを含む画像読取システムにおいて、
相手装置は、選択可能な複数のリンクをスキャナに送るものであり、
スキャナは、画像を読み取る手段と、読み取った画像情報のリンクを選択する手段、読み取られた画像を選択されたリンクに格納する手段とを具備することを特徴とする画像読取システム。 」

相違点
(シ)本願発明において「相手装置」は「コンピュータ」であるのに対し、刊行物2に記載の発明では、単に「相手装置」とあるだけである点。
(ス)本願発明では、コンピュータが「共有フォルダを作成し、共有フォルダのリンクを生成してスキャナに移動する」ものであるのに対し、刊行物2に記載の発明では、「共有フォルダの作成」「リンクの移動」について、そのようには明示されていない点。

相違点について検討する。
(シ’)スキャナをネットワークを介してコンピュータと接続して多様に使用することは周知である。また、刊行物2に記載の発明において、要求を受けて転送宛先を返送する機能を有する装置としては、コンピュータが第一に想定される。刊行物2には、転送装置から見た場合の相手先を単に相手装置と表記しているだけであって、相手装置をコンピュータを解することが自然である。
したがって、スキャナで読み取った画像の情報を格納する相手装置がコンピュータであることは実質的な相違点ではない。

(ス’)刊行物2に記載された発明は、相手装置のディレクトリに情報を転送、すなわち格納するものであるから、これはスキャナと相手装置が当該ディレクトリを共用していることに他ならない。情報処理技術として、複数の装置でデータを共用する場合に、共有フォルダを用いてデータを共用することは周知技術であるから、情報を共用するための手段として共有フォルダを用いることは当業者容易に想考し得ることである。
そして、刊行物2に記載の発明は、相手装置がディレクトリ構造に関する情報を転送宛先としてスキャナに返送しているのであるから、既に共用できるディレクトリ構造(前述のように共用フォルダに相当)が存在していなければならず、相手装置はディレクトリ構造(共用フォルダに相当)を作成する手段を当然有することになる。

なお、刊行物2には、「転送宛先はスキャナからの要求に応じて返送される」と記載されているが、要求があってから送るか(返送するか)、転送先を(要求がなくても)予め送っておくようにすることは論点ではない。刊行物2には「転送宛先をスキャナに送る」内容の発明が記載されている。

してみれば、上記相違点はいずれも想到し難い格別のものであるとすることはできない。また、該相違点の効果についてみても、格別顕著なものがあるともいえない。

したがって、本願発明は、刊行物2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から請求項5に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-19 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願平11-242544
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 加藤 恵一
伊知地 和之
発明の名称 画像読取システム  
代理人 吉田 研二  
代理人 石田 純  

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