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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1168294 |
審判番号 | 不服2005-9856 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-26 |
確定日 | 2007-11-22 |
事件の表示 | 特願2001-257124「紙製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月12日出願公開、特開2003- 72769〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
<1>手続の経緯 本件は、平成13年8月28日の出願であって、請求項1、2に対して拒絶理由が通知され、平成16年3月8日に手続補正がなされたが、該補正された請求項1に対して拒絶理由が通知され、平成16年9月29日に手続補正がなされたが、平成17年4月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、審判請求書の手続補正書(方式)の提出と共に同年6月23日に明細書の手続補正(以下、「本件補正」という)がなされたものである。 <2>平成17年同年6月23日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年同年6月23日付の手続補正を却下する。 [理 由] <2-1>補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1が補正されるが、補正後の請求項1に係る発明は、次の通りである。 「【請求項1】材料に紙を用いて形成されたひも掛け具基材に片面側へ突出するよう厚み方向の段差を設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、前記ひも掛け具基材の厚み方向の段差の突出高さが0.1mm?2.5mmで外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、前記ひも掛け具基材の前記段差の突出面側に、溶融状態のホットメルト接着剤を噴射して塗布し、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに、加熱加圧によるホットメルト接着剤の溶融により接着固定し、この時、一方のひも掛け具基材は、容器と段差の突出面間に掛けひもの一端側を挟み込んだ状態でホットメルト接着剤により接着固定して掛けひも付きのひも掛け具基材とした紙製容器。」(以下、「補正発明」という) <2-2>補正の目的について 上記補正は、本件補正前、すなわち平成16年9月29日に手続補正に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「厚み方向の段差」という記載を、 「厚み方向の段差の突出高さが0.1mm?2.5mmで」と補正することによって限定を付加すると共に、該補正に伴い、 同「(この段差)の外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け」を、上記数値限定の後に続けるように順序を入れ替えて、 すなわち、上記本件補正前の請求項1に記載された、 「厚み方向の段差を、この段差の外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、」という記載を、 「厚み方向の段差を設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、前記ひも掛け具基材の厚み方向の段差の突出高さが0.1mm?2.5mmで外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、」 と補正したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 <2-3>独立特許要件について そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 <2-3-1>引用例 原査定の拒絶の理由には本出願前に頒布された次の刊行物が引用されている。 引用例:特開平10-24938号公報 上記引用例には、図面を引用して、次の記載がある。 <引用例>特開平10-24938号公報 記載a: 「【特許請求の範囲】【請求項1】 基材と、この基材よりも小径の両面粘着テープを、該基材片面の略中央部において、両者の間に掛けひもの一端を挟み込んだ状態で貼着した 垂れ蓋開閉用ひも掛け具。 【請求項2】 基材と、この基材よりも小径の両面粘着テープを、該基材片面の略中央部で貼着した請求項1記載の掛けひもを有する側の部材と組み合わせて使用される掛止具。 【請求項3】 請求項1記載の掛けひもを有する側の部材と、請求項2記載の掛止具との組み合せからなる垂れ蓋開閉用ひも掛止具。」 記載b: 「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、大型封筒、書類袋、或いは段ボール箱等における垂れ蓋(フラップ又は折り曲げ蓋)を開閉するための垂れ蓋開閉用ひも掛け具に関する。」 記載c: 「【0016】図3(イ)(ロ)は、ひも掛け具を構成する掛けひもを有する側の部材Aの更に他の例を示し、厚み方向に段差を設けた円形状の基材1の片面に掛けひも3を介在させて、該基材1の面積よりも小さい面積を有する円形状の両面粘着テープ2を貼り合わせた構造を有している。 【0017】 図3(ハ)(ニ)は、上記部材Aの掛けひも3を巻き付ける為に使用される掛止具Bの更に他の例を示し、厚み方向に段差を設けた円形状の基材1の片面に、該基材1の面積よりも小さい面積を有する円形状の両面粘着テープ2を貼り合わせた構成になっている。 【0018】前記した部材Aや掛止具Bに使用される基材1の材質は特に限定されず、自由に選択することができる。かかる基材1の材質としては例えば紙やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどから構成される各種プラスチックフィルム、フィルム合成紙やファイバー法合成紙などの合成紙、布などがある。 【0019】中でも、封筒や書類袋などの容器の材質が紙の場合には、ひも掛け具の基材1を紙にすることにより、使用済の容器を焼却処理したり紙を再生処理する場合にひも掛け具を容器から取り外して分離する必要がなく便利である。」 記載d: 「【0021】また、図3に示した様に、基材1の厚み方向に段差を設けた形状とすることにより、掛けひも3を部材に巻き易くすることができるという利点がある。このような段差は、基材1をプレス機で加工することによって形成することができ、通常、0.1mm?2.0mmの段差が形成されるように基材がプレス加工される。 ・・・・・ 【0023】次に基材1に貼り合わせられる両面粘着テープ2としては、不織布、合成樹脂系やゴム系等の発泡体シート、プラスチックフィルム等の支持体の両面にアクリル系、ゴム系、ホットメルト系等の粘着剤を塗布した構成のもの、あるいは、支持体が無い粘着剤層のみの構成のものなどがある。」 記載e: 「【0027】両面粘着テープ2の大きさ(径)は、掛けひも3の巻き易さの点から、基材1の大きさ(径)よりも小さいことが必要となる。また、部材の容器への接着強度と巻き易さのバランスの点からは、下記の式1で計算される基材1の最大径と両面粘着テープ2の最大径(形状が円形の場合は最大径は直径となる)の比率が39%?82%であることが好ましい。 ・・・・・ 【0029】基材1の最大径と両面粘着テープ2の最大径の比率が39%よりも小さくなると、部材の容器に対する接着強度が小さくなり、繰り返し使用時に部材が容器から剥がれることがある。また、基材1の最大径と両面粘着テープ2の最大径の比率が82%よりも大きくなると掛けひも3を部材に巻き付ける部分の面積が小さくなり過ぎて、掛けひも3の巻き付け性が低下し、巻き付けた掛けひも3が部材から取れ易くなる。」 記載f: 「【0031】この発明のひも掛け具に使用される掛けひもを有する側の部材Aは、基材1の片面の略中央部に、掛けひも3の一端を介在させた状態で両面粘着テープ2を貼り合わせることによって作製される。そして、基材1に貼り合わせた両面粘着テープ2の反対側の粘着層は書類袋や段ボール箱等の容器に部材を固定する為に使用される。 ・・・・・ 【0033】一方、部材Aと組み合わせて使用される掛止具Bは、基材1片面の略中央部に両面粘着テープ2のみを貼り合わせることによって作製される。 ・・・・・ 【0035】この発明のひも掛け具は、例えば図4に示す書類袋4の場合、掛けひも3を有する側の部材Aを書類袋の垂れ蓋5の中央部に両面粘着テープ層を下側にして貼り付け、書類袋本体の背面上端部の上記部材Aに対応する位置に掛けひも3を巻き付ける為の防止具Bを固定する。 【0036】掛けひも3を掛止具Bの両面接着テープ層の厚みによって生じた書類袋と基材との隙間に巻き付けさらに、掛けひも3の余長を部材Aの両面接着テープ層の厚みによって生じた書類袋と基材との隙間に巻き付けて垂れ蓋を閉鎖する。」 記載g: 「【0043】【発明の効果】この発明のひも掛け具は、上記構成により、ひも掛け具の製造が簡略化されるので、生産性を向上させることができる。また、ひも掛け具の容器への固定が容易になるので、書類袋作製時のひも掛け具の固定作業を自動化させることができるようになる。」 記載h: 第3図において、段差の突出面側に貼り付けられている両面接着テープの最大径は、段差の突出面(円形)と同径であることが、示唆されている。 <2-3-2>補正発明と引用例記載のものとの対比・判断 引用例記載の「容器」は、補正発明の「(紙製)容器」に相当し、 引用例記載の「基材」は、補正発明の「ひも掛け具基材」に相当し、 引用例記載の「段差」は、補正発明の「段差」に相当するので、 補正発明と引用例記載の発明とは、 「材料に紙を用いて形成されたひも掛け具基材に片面側へ突出するよう厚み方向の段差を設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、前記ひも掛け具基材の厚み方向の段差の外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、前記ひも掛け具基材の前記段差の突出面側に、ホットメルト系粘着材を設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに、ホットメルト系粘着材により接着固定し、この時、一方のひも掛け具基材は、容器と段差の突出面間に掛けひもの一端側を挟み込んだ状態でホットメルト系粘着材により接着固定して掛けひも付きのひも掛け具基材とした紙製容器」 の点で、一致するが、次の点で相違する。 <相違点1> ひも掛け具基材の厚み方向の段差の突出高さが、補正発明においては、「0.1mm?2.5mm」であるのに対し、引用例記載の発明では、「0.1mm?2.0mm」(【0021】)である点。 <相違点2> ひも掛け具基材の前記段差の突出面側において、 補正発明では「溶融状態のホットメルト接着剤を噴射して塗布し、加熱加圧によるホットメルト接着剤の溶融により接着固定したもの」であるのに対し、 引用例記載の発明では、ホットメルト系両面粘着テープを用いて「(封筒などの容器にひも掛け具を)固定」するものである点。 <2-3-3>相違点について検討 次に、上記相違点について検討する。 <相違点1について> 「ひも掛け具基材の厚み方向の段差の突出高さ」を、「0.1mm?2.5mm」にしたことは、引用例記載の発明の「0.1mm?2.0mm」に比べ、格段の作用・効果の差異も認められず、当業者が必要に応じて容易に採用しうる設計上の変更である。 <相違点2について> 引用例記載の発明の両面粘着テープにおいても、「ホットメルト系等の粘着材」を用いたものである。 補正発明は、ホットメルト系接着剤により接着固定したものであるが、 ホットメルト系接着剤も、加熱して「溶融状態」になった状態で噴射して塗布し、さらに、該塗布された接着剤を加熱加圧によるホットメルト接着剤の溶融により接着固定することは、本出願前の当該技術分野において周知(「接着技術の新展開 日常生活支える技術」柳原栄一著、工業調査会発行(1985年9月10日発行)、第18頁(「(4)ホットメルト系」の項)、第30?31頁(図2.10とその説明) 参照)である。 そうすると、ひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに、加熱加圧によるホットメルト接着剤の溶融により接着固定して、補正発明の構成にしたことは、当業者が容易になし得ることである。 そして、補正発明の作用効果も、引用例記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。そのことによる効果も、これらのものから予測可能なものである。 したがって、補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 <2-4>むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 <3>本願発明について 平成17年6月23日付の本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年9月29日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 材料に紙を用いて形成されたひも掛け具基材に片面側へ突出するよう厚み方向の段差を、この段差の外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、前記ひも掛け具基材の前記段差の突出面側に、溶融状態のホットメルト接着剤を噴射して塗布し、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに、加熱加圧によるホットメルト接着剤の溶融により接着固定し、この時、一方のひも掛け具基材は、容器と段差の突出面間に掛けひもの一端側を挟み込んだ状態でホットメルト接着剤により接着固定して掛けひも付きのひも掛け具基材とした紙製容器。」(以下、「本願発明」という) <3-1>引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記<2ー3>に記載したとおりである。 <3-2>対比・判断 本願発明は、前記<2>で検討した補正発明から「ひも掛け具基材」の「厚み方向の段差」の限定事項である「(厚み方向の段差の)突出高さが0.1mm?2.5mm」である構成を省くと共に、それに伴い、文章の順序が入れ替えてあったのを元に戻して、 上記補正発明における「厚み方向の段差を設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、前記ひも掛け具基材の厚み方向の段差の突出高さが0.1mm?2.5mmで外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から82%の範囲となるようプレス加工によって設け、」を、本件補正前の 「厚み方向の段差を、この段差の外径がひも掛け具基材の最大径に対して39%から 82%の範囲となるようプレス加工によって設け、このひも掛け具基材を紙製容器の垂れ蓋と本体のそれぞれに接着し、一方ひも掛け具基材を掛けひも付きとした紙製容器において、」に戻したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記補正発明が、前記<2-3>に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の 発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 <3-3>むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-15 |
結審通知日 | 2007-02-20 |
審決日 | 2007-03-05 |
出願番号 | 特願2001-257124(P2001-257124) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D) P 1 8・ 121- Z (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武内 大志、窪田 治彦 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 西村 綾子 |
発明の名称 | 紙製容器 |
代理人 | 玉利 冨二郎 |
代理人 | 立川 登紀雄 |