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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60H
管理番号 1168431
審判番号 不服2007-12434  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-27 
確定日 2007-11-22 
事件の表示 平成10年特許願第 63404号「空気通路切替装置および車両用空調装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月21日出願公開、特開平11-254944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月13日の出願であって、平成19年3月27日付けで拒絶査定がなされ(平成19年4月3日発送)、これに対し、同年4月27日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年4月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年 4月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「空気通路(22、23、18’、20’)の開口面に沿って摺動するスライドドア(26)と、 前記スライドドア(26)の摺動方向と平行に延びるように、前記スライドドア(26)の少なくとも2箇所に設けられたギヤ(26c、26d)と、 前記スライドドア(26)の回転駆動装置(33)と、前記回転駆動装置(33)により回転駆動される回転軸(29)と、前記回転軸(29)の少なくとも2箇所に設けられ、前記ギヤ(26c、26d)とかみ合う連結ギヤ(30、31)とを備え、前記回転軸(29)と前記2箇所の連結ギヤ(30、31)とが一体成形され、前記2箇所の連結ギヤ(30、31)は、それぞれの歯が相互の円周方向に対して合致して設けられており、前記回転駆動装置(33)は、出力軸(34)と、この出力軸(34)により回動する扇ギヤ(35)とを有し、この扇ギヤ(35)とかみ合う駆動側ギヤ(32)を前記回転軸(29)に一体成形で設けたことを特徴とする空気通路切替装置。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「回転駆動装置」について「前記回転駆動装置(33)は、出力軸(34)と、この出力軸(34)により回動する扇ギヤ(35)とを有し、この扇ギヤ(35)とかみ合う駆動側ギヤ(32)を前記回転軸(29)に一体成形で設けた」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法法第126条第5項に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-59965号(実開昭63-168105号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ「1)インテークケースに設けられた内気導入口と外気導入口をドアにより選択的に切換え、これらの導入口から選択空気をファンにより吸入する車輌用空調装置のインテークユニットにおいて、前記内気導入口と外気導入口を、同形状に形成して同一平面上に並設する一方、前記ドアを、一の導入口を閉塞できる面積を有する平板状に形成するとともに、モータアクチュエータによりギアを介して双方の導入口に亘りスライド可能にインテークケース内に設けたことを特徴とする車輌用空調装置のインテークユニット。」(実用新案登録請求の範囲1))

ロ「ドアケース部1Bは、第2図に示すように箱状に形成され、内部のドア室2が上記ファン吸込口に連通しており、図中上面には内気導入口5および外気導入口6が設けられている。・・・(中略)・・・。上記ドアケース部1B内には、スライド式の平板状のドア9が設けられている。このドア9は、導入口5,6のうち一方の導入口のみを閉塞できるように、導入口よりも僅かに大きい面積に形成され、」(第5頁第9行?第6頁第3行)

ハ「更に、ドア9の上記溝10内に遊嵌される両縁部の下面には、上記溝方向に沿うラック歯9A,9Aが形成されており、これら両側のラック歯9A,9Aは、それぞれ、ギア12又は13に噛合している。各ギア12,13は、ドアケース部1Bの導入口5と6との中間部の下方に、それぞれ配設され、ドアケース部1Bに両端部が支承された軸14に軸着されている。軸14の一端側はドアケース部1Bから外方に突出し、この突出部にはドアケース部1Bに固定されたモータアクチュエータ17が連結されている。」(第6頁第15行?第7頁第6行)

ニ「そして、モータアクチュエータ17の正逆回転により、ギア12と13が回動し、これに噛合するラック歯9A,9Aを介してドア9が導入口5,6に亘って往復移動することができ、」(第7頁第7?11行)

そして、上記「ニ」の「モータアクチュエータ17の正逆回転により、ギア12と13が回動し、」の記載、及び第2図、第4図の記載からみて、引用発明1は、モータアクチュエータの回転を軸に伝達するギヤを具備するものと理解できる。

以上イ?ニの記載及び図面によると、引用例1には、
内気導入口5と外気導入口6の導入口に亘り、スライド可能なドア9と、 該ドア9のスライド方向と平行に延びるように、両縁部の下面に形成されたラック歯9A,9Aと、前記ドア9を往復移動するモータアクチュエータ17と、前記モータアクチュエータ17により正逆回転する軸14と、
前記軸14の両側に設けられ、前記ラック歯9A,9Aと噛合するギア12,13と、を備え、各ギア12,13は、前記正逆回転する軸14に軸着され、さらに、モータアクチュエータ17の回転を伝達するギアを備える車輌用空調装置のインテークユニット(以下「引用発明1」という。)
が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-193645号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

・「空気通路開口部(36a、36b)が設けられているパネル状の空気通路開口面(36)と、前記空気通路開口面(36)に対して略平行に摺動可能に設けられ、前記空気通路開口部(36a、36b)の開口面積を調整するスライド式ドア(30)と、前記スライド式ドア(30)に設けられ、前記空気通路開口部(36a、36b)の外周部全周に対応して繋がった形状の弾性部材(30b)とを備え、前記スライド式ドア(30)が前記空気通路開口部(36a、36b)に対応する位置にあるときは、前記弾性部材(30b)の先端側全周が、前記弾性部材(30b)の内側または外側へ撓むように、前記空気通路開口面(36)において、前記空気通路開口部(36a、36b)の前記外周部全周にわたって密着することを特徴とする空気通路開閉装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・「スライド式エアミックスドア30は、図3、4に示すように、ポリプロピレンからなる平板状の基板30aと、この基板30aの外周縁部に口の字状に突出して一体成形されたシール用の弾性部材30bとを有している。この弾性部材30bはポリプロピレン系のエラストマゴムにて成形されている。
そして、基板30aのうち、弾性部材30bとは反対側の面に駆動機構35の樹脂製(例えば、ポリプロピレン)のギヤ30cが一体成形されている。図4において、30dはギヤ30cのギヤピッチ線を示す。このギヤ30cは、ラック状のギヤであって、その両端部は略円弧状に湾曲している。具体的には、ギヤ30cの中央部の高さXに対してギヤ30cの両端部が高さcだけ高くなるように形成されている。」(段落【0022】)

・「軸39の突出端部には、円形ギヤ41が一体に連結されており、この円形ギヤ41には扇形ギヤ42(図2も参照)が噛み合っており、この扇形ギヤ42の回転中心部は軸受43にて回転可能に支持されている。さらに、扇形ギヤ42の外周側の所定位置に、操作ピン44が一体に設けられており、この操作ピン44には図示しない操作機構からの操作力が伝達される。例えば、手動操作機構のケーブル、あるいはサーボモータのようなアクチュエータを用いた電動操作機構を操作ピン44に連結するようになっている。」(段落【0028】)

・「そして、上記手動操作機構に加わる手動操作力をケーブルを介して操作ピン44に伝達して、操作ピン44を回動させるようになっている。ここで、上記手動操作機構の手動操作力によりケーブルを介して操作ピン44を回動させる機構の代わりに、空調用制御装置により自動制御されるサーボモータなどのアクチュエータにより操作ピン44を回動させる機構を用いてもよい。」(段落【0031】)

以上の記載及び図面によると、引用例2には、
空気通路開口面36に沿って摺動するスライド式ドア30と、スライド式ドア30の摺動方向と平行に延びるように、該ドア30に設けられたギア30cと、該ドア30を駆動させるサーボモータなどのアクチュエータと、該アクチュエータにより回転する軸39と、前記軸39と噛合する円形ギア38とを備え、駆動機構は、操作ピン44と、この操作ピン44により回動する扇形ギヤ42とを有し、この扇形ギヤ42とかみ合う円形ギヤ41は前記軸39に一体に連結されている空気通路開閉装置(以下「引用発明2」という。)
が記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「内気導入口5と外気導入口6の導入口」は本願補正発明の「空気通路の開口面」に相当し、以下同様に「亘り」は「沿って」に、「スライド可能なドア9」は「摺動するスライドドア」に、「ラック歯9A,9A」は「ギヤ」に、「ドア9を往復移動するモータアクチュエータ17」は「スライドドアの回転駆動装置」に、「正逆回転する軸14」は「回転駆動される回転軸」に、「両側」は「2箇所」に、「ラック歯9A,9Aと噛合するギア12,13」は「ギヤとかみ合う連結ギヤ」に、「モータアクチュエータ17の回転を伝達するギア」は「駆動側ギヤ」に、「車輌用空調装置のインテークユニット」は「空気通路切替装置」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
空気通路の開口面に沿って摺動するスライドドアと、
前記スライドドアの摺動方向と平行に延びるように、前記スライドドアの少なくとも2箇所に設けられたギヤと、前記スライドドアの回転駆動装置と、前記回転駆動装置により回転駆動される回転軸と、前記回転軸の少なくとも2箇所に設けられ、前記ギヤとかみ合う連結ギヤとを備えるとともに、回転軸と連動する駆動側ギヤを有する空気通路切替装置
の点で一致し、
次の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、回転駆動装置は、出力軸と、この出力軸により回動する扇ギヤとを有するのに対し、引用発明1では、該構成を具備しない点。

[相違点2]
本願補正発明では、回転軸と2箇所の連結ギヤとが一体成形され、扇ギヤとかみ合う駆動側ギヤとを回転軸に一体成形で設けるとともに、2箇所の連結ギヤは、それぞれの歯が相互の円周方向に対して合致して設けられているのに対し、引用発明1では、回転軸と2箇所の連結ギヤとが軸着され、さらに駆動装置の回転を伝えるギヤを備えるものである点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。

引用発明2の「空気通路開口面36」は、本願補正発明の「空気通路の開口面」に相当し、同様に、「スライド式ドア30」は「スライドドア」に、「ギヤ30c」は「ギヤ」に、「サーボモータなどのアクチュエータ」は「回転駆動装置」に、「円形ギヤ38」は「連結ギヤ」に、「軸39」は「回転軸」に、「扇形ギヤ42」は「扇ギヤ」に、「円形ギヤ41」は「駆動側ギヤ」に、「操作ピン44」は「出力軸」に、「空気通路開閉装置」は「空気通路切替装置」に、それぞれ相当している。

そうすると、引用発明2は、空気通路の開口面に沿って摺動するスライドドアと、前記スライドドアの摺動方向と平行に延びるように、前記スライドドアに設けられたギヤと、前記スライドドアの回転駆動装置と、前記回転駆動装置により回転駆動される回転軸と、前記回転軸に設けられ、前記ギヤとかみ合う連結ギヤとを備え、前記回転駆動装置は、出力軸と、この出力軸により回動する扇ギヤとを有し、この扇ギヤとかみ合う駆動側ギヤを回転軸と連動させた空気通路切替装置であるといえる。

また、引用発明2は、引用発明1と同様、空気通路の切替装置に属するものである。

そうすると、引用発明1において、回転駆動装置を、出力軸と、この出力軸により回動する扇ギヤとを有するものとした点は、必要に応じ、引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

次に、相違点2について検討する。
複数の部材を一体成形で設けるようにすることは、製造工程の簡略化を図る観点から、従来周知の技術であり、当業者であれば、格別の困難もなく想到し得ることである。

また、2箇所の連結ギヤを用いた機構において、それらの位相を考慮することは、従来周知の技術である(例えば、特開平2-271146号公報、特開平8-249785号公報参照。)。

そうすると、引用発明1において、回転軸と2箇所の連結ギヤとを軸着することに代えて一体成形で設けるとともに、その際、2箇所の連結ギヤは、それぞれの歯が相互の円周方向に対して合致して設けるようにした点は、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、扇ギアとかみ合う駆動側ギヤと回転軸とを一体成形で設けた点は、必要に応じ、当業者であれば、引用発明2および周知技術から容易に想到し得たことである。

したがって、引用発明1において、回転軸と2箇所の連結ギヤとが一体成形され、扇ギヤとかみ合う駆動側ギヤとを回転軸に一体成形で設けるとともに、2箇所の連結ギヤは、それぞれの歯が相互の円周方向に対して合致して設けられているものとした点は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、本願補正発明の奏する作用効果をみても、各引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年4月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願の平成18年10月16日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「空気通路(22、23、18′、20′)の開口面に沿って摺動するスライドドア(26)と、前記スライドドア(26)の摺動方向と平行に延びるように、前記スライドドア(26)の少なくとも2箇所に設けられたギヤ(26c、26d)と、前記スライドドア(26)の回転駆動装置(33)と、 前記回転駆動装置(33)により回転駆動される回転軸(29)と、前記回転軸(29)の少なくとも2箇所に設けられ、前記ギヤ(26c、26d)とかみ合う連結ギヤ(30、31)とを備え、前記回転軸(29)と前記2箇所の連結ギヤ(30、31)とが一体成形され、前記2箇所の連結ギヤ(30、31)は、それぞれの歯が相互の円周方向に対して合致して設けられていることを特徴とする空気通路切替装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「回転駆動装置」の限定事項である「前記回転駆動装置(33)は、出力軸(34)と、この出力軸(34)により回動する扇ギヤ(35)とを有し、この扇ギヤ(35)とかみ合う駆動側ギヤ(32)を前記回転軸(29)に一体成形で設けた」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-21 
結審通知日 2007-09-25 
審決日 2007-10-09 
出願番号 特願平10-63404
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60H)
P 1 8・ 121- Z (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 一正  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
佐野 遵
発明の名称 空気通路切替装置および車両用空調装置  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  

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