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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1168539
審判番号 不服2007-12808  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-07 
確定日 2007-11-29 
事件の表示 特願2006-222851「半導体集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-351034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は、平成2年8月3日(特願平1-324928号に基づく国内優先権主張、平成元年12月15日)に出願した特願平2-205006号の一部を、平成9年8月1日に新たな出願(特願平9-207542号)とし、その一部を、平成16年1月19日に新たな出願(特願2004-9976号)とし、その一部を、平成17年2月14日に新たな出願(特願2005-35997号)とし、さらに、その一部を、平成18年8月18日に新たな出願としたものであって、平成18年9月19日付けで出願審査請求書が提出されると共に手続補正がなされ、原審において同年12月25日付けで拒絶理由が通知され、平成19年3月12日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ、同年3月30日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成19年5月7日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年6月6日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月19日付け、平成19年3月12日付け、および同年6月6日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載から見て、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え、
前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行う半導体集積回路において、
動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックとの二つの論理条件で複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路を備え、
動作命令に応答して対応する機能回路ブロックを動作させること、
前記クロック制御回路は、前記機能回路ブロックの動作終了後にクロックの供給を停止することを特徴とする半導体集積回路。」

3.引用例
原審の平成18年12月25日付けの拒絶理由において引用した、特開昭63-26716号公報(昭和63年2月4日公開、以下、「引用例」という。)には次の事項が記載されている。

(あ)「〔発明が解決しようとする問題点〕
上述した従来の中央処理装置は、プログラム実行中か、スタンバイ状態かで、クロックを制御している。従って、一部の機能が動いている場合でも全部のブロックにクロックを供給しているので、プログラム実行中の消費電力が大きいという欠点がある。
本発明の目的は、中央処理装置がプログラム実行中に於いても、不必要なブロックへのクロックの供給を停止させることにより消費電力の低減を行うことにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の中央処理装置は、スタンバイ回路と、命令デコーダ回路と、クロック分配回路とを備え、前記クロック分配回路は、スタンバイ回路を介してクロック生成回路から供給されるクロックと、命令デコーダ回路から出力される信号を受けて、中央処理装置の各機能別ブロックにクロックを出力することを特徴とする。」(第2頁左上欄2行?20行)

(い)「命令レジスタ106に入った命令は、命令デコーダ回路105で各機能別制御信号115と、どの機能ブロックにクロックが必要か判別した制御信号117とを出力する。クロック分配回路104は、スタンバイ回路102を介してクロック生成回路101から供給されるクロック112と、制御信号117とを受けて、命令動作に必要な機能ブロックにだけクロックを供給する。」(第2頁右上欄9行?16行)

(う)「例えば、汎用レジスタ内転送命令、演算命令、シリアル入出力命令及びスタンバイ命令に於いての実施例と従来例のクロック供給状況の対比表を以下に示す。
(対比表の記載省略)
但し、表中の数字は、第1図及び第2図の各ブロックを表わし、○,×はクロック供給の有無を表わしている。」(第2頁右上欄17行?左下欄3行)

上記(あ)および第1図の記載から、引用例に記載されたものは、中央処理装置であって、複数のブロックを備えていることがわかる。
そして、上記(い)における「命令レジスタ106に入った命令は、命令デコーダ回路105で各機能別制御信号115と、どの機能ブロックにクロックが必要か判別した制御信号117とを出力する。」の記載から、引用例に記載されたものは、命令デコーダ回路から各ブロックに各機能別制御信号を出力しているが、この機能別制御信号により各ブロックは、命令に対応した機能を実行することは当業者にとって明らかである。
そうすると、引用例に記載された中央処理装置は、命令に対応した機能を実行する複数のブロックを備えていることがわかる。

また、上記(い)(う)および「対比表」の記載から、引用例に記載された中央処理装置は、命令毎に、かつ、命令に対応したブロック毎にクロックを供給していることがわかる。そして、命令に対応してあるブロックにクロックを供給する必要がない場合は、クロックの供給を停止していることがわかる。加えて、命令に対応した動作を行った後には、次の命令の動作を行うことから、ブロックが命令に対応した機能を実行した後には、クロックの供給を停止していることがわかる。

さらに、上記(い)および第1図の記載から、引用例に記載された中央処理装置は、命令デコーダの出力である制御信号と、スタンバイ回路を介してクロック回路から供給されるクロックとを受けて、命令動作に必要なブロックにだけクロックを供給するクロック分配回路を備えていることがわかる。

上記(あ)?(う)、第1図および「対比表」の記載から、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

命令に対応した機能を実行する複数のブロックを備え、
命令毎に、かつ、命令に対応したブロック毎にクロックを供給・停止を行う中央処理装置において、
命令デコーダの出力である制御信号と、スタンバイ回路を介してクロック回路から供給されるクロックとを受けて、命令動作に必要なブロックにだけクロックを供給するクロック分配回路を備え、
命令に対応してブロックを動作させること、
前記クロック分配回路は、前記ブロックの前記ブロックが命令に対応した機能を実行した後にクロックの供給を停止することを特徴とする中央処理装置。

4.対比
引用発明と本願発明を対比すると

引用発明の「命令」「ブロック」は、本願発明の「動作命令」「機能回路ブロック」に相当する。そうすると、引用発明の「命令に対応した機能を実行する複数のブロックを備え」ることは、本願発明の「動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え」ることに相当する。

加えて、引用発明の「命令毎に、かつ、命令に対応したブロック毎にクロックを供給・停止を行う」ことは、本願発明の「前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行う」ことに相当する。
そして、引用発明の「中央処理装置」も、本願発明の「半導体集積回路」も、ともに、「動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え、
前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行う」ことには変わりないことから、両者は、動作命令に対応した動作を行うものである点で共通する。

さらに、引用発明の「命令デコーダ」は、本願発明の「動作命令を解釈する回路」に相当するから、引用発明の「命令デコーダの出力である制御信号」は、本願発明の「動作命令を解釈する回路の出力」に相当する。
また、引用発明では「スタンバイ回路を介してクロック回路から供給されるクロック」を「クロック分配回路」は受けているが、このクロックは、「中央処理装置」の各ブロックに供給されるクロックであるから、本願発明の「メインクロック」に相当する。
そして、引用発明の「クロック分配路」は、「命令動作に必要なブロックにだけクロックを供給」しているが、このことは、複数のブロックへのクロック供給の有無を制御していることであるから、引用発明の「命令動作に必要なブロックにだけクロックを供給するクロック分配回路」は、本願発明の「複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路」に相当する。
そうすると、引用発明の「命令デコーダの出力である制御信号と、スタンバイ回路を介してクロック回路から供給されるクロックとを受けて、命令動作に必要なブロックにだけクロックを供給するクロック分配回路を備え」ることと、本願発明の「動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックとの二つの論理条件で複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路を備え」ることは、動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックから複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路を備えることで共通する。

さらに、引用発明の「命令に対応してブロックを動作させること」および「前記クロック分配回路は、前記ブロックの前記ブロックが命令に対応した機能を実行した後にクロックの供給を停止すること」は、本願発明の「動作命令に応答して対応する機能回路ブロックを動作させること」および「前記クロック制御回路は、前記機能回路ブロックの動作終了後にクロックの供給を停止すること」に相当する。

してみると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え、
前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行うものにおいて、
動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックから複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路を備え、
動作命令に応答して対応する機能回路ブロックを動作させること、
前記クロック制御回路は、前記機能回路ブロックの動作終了後にクロックの供給を停止することを特徴とするもの。

一方、両者は次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明と引用発明は「動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え、前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行うもの」である点では共通するが、この「動作命令に対応した機能を実行する複数の機能回路ブロックを備え、前記動作命令毎に、かつ、前記動作命令に対応した機能回路ブロック毎にクロックの供給・停止を行うもの」が、本願発明においては「半導体集積回路」であるのに対して、引用発明においては「半導体集積回路」であるのか不明である点。

(相違点2)
本願発明と引用発明は「動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックから複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路」を具備する点で共通するが、この「クロック制御回路」において、本願発明が「動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックとの二つの論理条件で複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御」しているのに対して、引用発明は「二つの論理条件」で制御しているのかどうか不明である点。

5.相違点についての当審判断
(相違点1)について
特開昭63-126018号公報に、
「[産業上の利用分野]
この発明は、半導体集積回路技術さらには多機能論理LSIに適用して特に有効な技術に関し、例えば複数の周辺回路を内蔵したシングルチップ・マイクロコンピュータに利用して有効な技術に関する。」(第1頁右下欄2行?7行)、
「第1図は、本発明が適用されたシングルチップマイコンの一実施例を示すもので、同図に示されている各回路ブロックは、単結晶シリコン基板のような一個の半導体チップ上に形成される。
この実施例のシングルチップマイコンは、特に制限されないが、プログラムに従って内部の実行ユニット等を制御するマイクロプロセッサ(以下CPUと称する)1と、このCPU1の動作プログラム等が格納されたプログラムROM2、主にCPU1の作業領域を提供するRAM(ランダム・アクセス・メモリ)3、リロードタイマもしくはフリーランニングカウンタやインプットキャプチャレジスタおよびアウトプットコンベアレジスタを有するプログラマブルタイマ等からなるタイマ回路4、外部の装置との間でシリアル通信を行うシリアル・コミュニケーション・インタフェース回路5およびパラレル入出カポ-ト6a?6d等から構成され、これらの回路は内部アドレスバス7aおよび内部データバス7bを介して互いに接続されている。」(第2頁右下欄3行?第3頁左上欄2行)
と記載されているように、CPUを半導体集積回路として半導体チップ上に形成することは周知の技術である。
そして、CPUはCentral Processing Unitの略であり、中央処理装置を意味していることは明らかであるから、引用発明の「中央処理装置」を半導体集積回路とすることは、当業者にとって格別なことではない。

(相違点2)について
実願昭61-49917号(実開昭61-185124号)のマイクロフィルムに、
「具体的に、クロック信号を制御している第2図クロック信号回路6の回路図を第3図に示す。16は選択用ゲート回路であるANDゲート、17はクロック信号発生回路である。このクロック信号発生回路17の出力を選択用ゲートであるANDゲート16全てに入力しておき、解読したマイクロ命令により、必要なANDゲートのもう一方の入力端子に選択命令である論理レベル「1」を入力する事により、動作をさせる必要のある電子回路ブロックにのみクロック信号を供給することができる。」(第5頁13行?第6頁3行)
と記載されているように、ブロックへのクロック供給の有無を制御するために、マイクロ命令を解読した結果とクロックを、ゲート回路であるAND回路に入力することは、周知の技術である。
引用発明のクロック分配回路の制御を、「命令デコーダの出力である制御信号」と、「スタンバイ回路を介してクロック回路から供給されるクロック」をゲート回路であるAND回路の入力とすることにより制御し、引用発明の「クロック分配回路」を「動作命令を解釈する回路の出力とメインクロックとの二つの論理条件で複数の機能回路ブロックへのクロック供給の有無を制御するクロック制御回路」とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明および周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-26 
結審通知日 2007-10-02 
審決日 2007-10-15 
出願番号 特願2006-222851(P2006-222851)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔須田 勝巳  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 小田 浩
橋本 正弘
発明の名称 半導体集積回路  
代理人 筒井 大和  

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