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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1168659 |
審判番号 | 不服2005-24803 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-22 |
確定日 | 2007-11-26 |
事件の表示 | 特願2001-169711「油井管用ねじ継手」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月18日出願公開、特開2002-364786〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年6月5日の出願であって、平成17年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月22日に審判請求がなされるとともに平成18年1月17日付けで手続補正がなされ、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。 「鋼中にCrが0.08質量%以上、Moが0.02質量%以上含有されるCr-Mo鋼を使用した油井管用ねじ継手であって、 該ねじ継手のピン(雄)ねじ及びボックス(雌)ねじの両方のねじ表面が、双方の平均表面粗さRaの和が7.3μm以下の凹凸加工が施された表面と、その上に形成されたリン酸塩系の皮膜とからなることを特徴とする油井管用ねじ継手。」(以下「本願発明」という。) 上記補正は、請求項1を削除し請求項2を新たな請求項1とするとともに、明りょうでない記載の釈明を目的としたものと認められる。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-65754号公報(平成13年3月16日公開、以下、「引用例1」という。)には、「油井管用ねじ継手」に関する発明が開示されており、そこには、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0005】しかし、メタルシール部およびねじ部には高面圧が作用するため、特に、高温条件下ではゴーリングが発生しやすく、APIの規格には、継手締結後に177℃×24Hrの耐熱試験を実施した後、締め戻し-再度締め付けを行っても気密性が保たれていることが要求されている。 【0006】そこで、上記要求に応じるため、従来より種々の対策案が提示されている。例えば、特開平5-117870公報にはねじ継手の表面に平均粗さ20?60μmの凹凸加工を施した後、燐酸塩化成処理被膜を形成する方法が、また、特開平6-10154公報にはメタルシール部の表面最大粗さと表面処理被膜層の厚さを規定して表面処理する方法が、特開平5-149485公報にはピンまたはボックス表面に分散めっき層を形成したねじ継手が、特開平2-885593公報には表面粗さを20?50μmに加工したメタルシール部にセラミックス塗装を施す方法が、特開平8-233164公報や特開平9-72467公報にはボックスまたはピンの接触表面に二硫化モリブデン粉末を分散混合した樹脂被膜を形成したねじ継手が、それぞれ提示されている。」 ・「【0020】(ト)少なくともピンあるいはボックスのいずれか一方のねじ無し金属接触部に燐酸塩化成処理被膜を形成し、更にその上に上記Ti-Oを骨格とする無機高分子化合物の被膜を形成することにより焼き付きが抑制される。」 ・「【0022】(リ)燐酸塩化成処理被膜を形成するねじ無し金属接触部の表面粗さはRmaxで3?15μmとし、潤滑被膜の膜厚は5?30μmとすることにより耐焼付き性が向上する。 【0023】本発明は、上記知見に基づいて完成されたもので、その要旨は以下の通りである。 (1)ねじ部とねじ無し金属接触部をそれぞれ有するピンとボックスとから構成され、炭素鋼製またはCr含有量が10重量%未満の低合金鋼製のねじ継手において、ボックスとピンの少なくともいずれか一方のねじ無し金属接触部に燐酸塩化成処理被膜を形成させ、更に、該燐酸塩化成処理被膜上に二硫化モリブデンおよび/または黒鉛を分散混合したTi-Oを骨格とする無機高分子化合物の潤滑被膜を形成したことを特徴とする油井管用ねじ継手。」 ・「【0032】ねじ無し金属接触部(以下、単に金属接触部ともいう)はねじ部に比べ接触面圧が高く過酷な潤滑状態にあり、また、ねじ継手はピンとボックスとを相互にねじ込んで締結するため、少なくともピンとボックスのいずれかの一方の金属接触部に潤滑被膜を形成することにより耐焼付き性を向上させることができる。なお、材料強度が高く、ねじ部にも高い接触面圧が作用するねじ継手では、焼付きが発生しやすくなるため、金属接触部に加え更にねじ部にも潤滑被膜を形成することが望ましい。」 ・「【0048】また、本発明は、燐酸塩の被膜を形成する際に、予め下地処理としてブラスティング加工を施し、下地の表面粗さをRmaxで3?15μmにするのが望ましい。ブラスティング加工を施すことにより、表面に活性な新生面が現れ、燐酸塩被膜の密着性が強固になり燐酸塩被膜の耐剥離性が向上する。ブラスティング加工は、公知のサンドブラスト法、ショットブラスト法やグリッドブラスト法などでよく、サンド、ショット、グリッドやカットワイヤーなどの硬質材を高速で吹き付ける方法により行うことができる。 【0049】表1に示す成分組成の炭素鋼製、Cr-Mo鋼製および5Cr鋼製のねじ継手(外径:7インチ、肉厚:0.408インチ)のボックスやピンのねじ部と金属接触部の双方に各種の下地処理や被膜形成などの表面処理を施した。表2、3に表面処理条件を示す。なお、同表に示す比較例は樹脂被膜を形成した、あるいはコンパウンドグリスを塗布したものである。」 また、表1には、Cr-Mo鋼としてCrが0.95重量%、Moが0.18重量%含有されるものを用いることが記載されており、表2には、本発明例5として、ピン、ボックスとも下地処理をRmaxで3μmのサンドブラストとし、潤滑被膜をTi-O、MoS2で被膜厚8μmとした例が記載されている。 これらの記載によると、引用例1には、 「鋼中にCrが0.95重量%、Moが0.18重量%含有されるCr-Mo鋼を使用した油井管用ねじ継手であって、該ねじ継手のピンねじ及びボックスねじの両方のねじ表面が、表面粗さRmaxが3μmのサンドブラスト加工が施された表面と、その上に形成された燐酸塩被膜と潤滑被膜とからなる油井管用ねじ継手。」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、後者における「Crが0.95重量%」、「Moが0.18重量%」はそれぞれ、前者における「Crが0.08質量%以上」、「Moが0.02質量%以上」に相当する。また、後者における「サンドブラスト加工」は前者における「凹凸加工」に相当し、後者において、ピンねじ及びボックスねじ両方のねじ表面の、「表面粗さRmaxが3μmのサンドブラスト加工が施された表面」は、Rmaxが3μmなので平均表面粗さは3μm以下となり、双方の平均表面粗さRaの和は6μm以下となるので、後者における「双方の平均表面粗さRaの和が7.3μm以下の凹凸加工が施された表面」に相当する。また、後者における「燐酸塩被膜と潤滑被膜」と前者における「リン酸塩系の皮膜」とは、「リン酸塩系の皮膜を含む被膜」である点で共通する。 したがって、両者は、「鋼中にCrが0.08質量%以上、Moが0.02質量%以上含有されるCr-Mo鋼を使用した油井管用ねじ継手であって、該ねじ継手のピン(雄)ねじ及びボックス(雌)ねじの両方のねじ表面が、双方の平均表面粗さRaの和が7.3μm以下の凹凸加工が施された表面と、その上に形成されたリン酸塩系の皮膜を含む被膜とからなる油井管用ねじ継手」である点で一致し、次の点において相違する。 [相違点] 「リン酸塩系の皮膜を含む被膜」について、本願発明においては、「リン酸塩系の皮膜」であるのに対して、引用例1記載の発明においては、「燐酸塩被膜と潤滑被膜」である点。 4.判断 引用例1には「燐酸塩の被膜を形成する際に、予め下地処理としてブラスティング加工を施し、下地の表面粗さをRmaxで3?15μmにするのが望ましい。ブラスティング加工を施すことにより、表面に活性な新生面が現れ、燐酸塩被膜の密着性が強固になり燐酸塩被膜の耐剥離性が向上する。」と記載されており、また、引用例1に従来例として提示され、本願明細書にも従来例として提示されている特開平5-117870号公報に記載されたものもそうであるように、油井管継手の表面にリン酸塩系の被膜を形成してゴーリングを防止することは周知技術であることを考慮すれば、引用例1記載の発明において、被膜を「リン酸塩系の皮膜」とし、本願発明のようにすることが、当業者にとって格別に想到困難なことであるとは認められない。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された事項、および周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-07 |
結審通知日 | 2007-08-28 |
審決日 | 2007-09-10 |
出願番号 | 特願2001-169711(P2001-169711) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上原 徹 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
渋谷 善弘 丸山 英行 |
発明の名称 | 油井管用ねじ継手 |
代理人 | 溝上 満好 |
代理人 | 溝上 哲也 |
代理人 | 岩原 義則 |