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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1168697
審判番号 不服2003-7665  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-02 
確定日 2007-11-29 
事件の表示 特願2001- 31895「ゲーム進行制御プログラム、ゲーム用サーバ及びゲーム進行制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月20日出願公開、特開2002-233664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成13年2月8日の特許出願であって、平成15年4月1日付で拒絶査定がなされ、平成15年5月2日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において平成19年2月21日付で平成15年5月2日付の手続補正を却下すると同時に拒絶理由が通知され、平成19年4月27日付で意見書と手続補正書が提出されたものである。

そして、平成19年4月27日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、その請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりと認められ、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「プレーヤチームとコンピュータ制御または対戦相手によるチームとがゲーム媒体としてのボールキャラクタを介して攻撃と守備とを交互に行って野球ゲームを進行させるゲーム進行制御プログラムであって、コンピュータに、モニタ画面に投手キャラクタ、打者キャラクタ及び複数のキャラクタを含むゲーム画像を表示させる機能と、
プレーヤからの第1ボタンと第2ボタンとの少なくとも2つのボタンを有するマウスに対する移動操作及びボタン操作による指示内容の入力を受け付ける機能と、
プレーヤチームが守備側であるときは、球種の選択及び牽制する塁の選択を前記マウスの移動操作によって同時に行わせる機能と、
前記球種の選択及び牽制する塁の選択の後、前記第1ボタンと第2ボタンとに対する互いに異なるボタン操作に対応して、前記投手キャラクタの投球行動としてのピッチング動作と牽制動作の一方を選択的に行わせる機能とを実現させるためのゲーム進行制御プログラム。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
(1)引用例1について
当審の拒絶の理由に引用された特開2000-176171号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊技者の代わりにビデオ画面上のプレイキャラクタに疑似体験(ロールプレイング)させることのできるビデオゲーム装置,ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体に関するものである。」

・記載事項2
「【0002】
【従来の技術】従来、遊技者がビデオ画面上のプレイキャラクタとして疑似体験を行うロールプレイングゲームとして、プレイキャラクタが野球ゲームの投手である場合に、その野球の投手のプレイ記録を表示する場面を含むものが知られている。このプレイ記録から遊技者は自分の投球時のくせを知ることができた。」

・記載事項3
「【0006】この構成によれば、ビデオ画面に複数のメニューが表示され、操作部はそのうちから所望のメニューを選択指示する。すると、この選択指示されたメニューに対応する行動内容が実行される。プレイキャラクタが野球ゲームの打者であるとき、この打者に打撃内容が打撃指示手段より指示されると、この打撃指示内容と上記行動内容の指示結果とに基づいて打撃内容が打撃判定手段により判定され、上記打撃判定内容が打撃記憶手段により記憶され、上記打撃記憶手段から打撃判定内容が打撃記録表示手段により読み出されて上記表示器に表示される。このようにして、遊技者が画面上のプレイキャラクタとしての野球の打者に実際のプレイにより近い疑似体験を行わせることができるので、ゲームはリアリティ感に溢れ、興趣に富むものとなるとともに、その打撃記録から遊技者のくせを容易に知ることができる。」

・記載事項4
「【0008】このゲームシステム1は、ゲーム機本体と、ゲーム画面を表示する表示器であるテレビジョンモニタ(以下「モニタ」という。)2と、ゲームの音声を出力するための増幅回路3及びスピーカ4と、画像データ、音データ並びにプログラムデータからなるゲームプログラムの記録された記録媒体5とからなる。記録媒体5は、例えば上記ゲームプログラムやオペレーティングシステムのプログラムデータの記憶されたROM等がプラスチックケースに収納された、いわゆるROMカセットや、光ディスク、フレキシブルディスク等である。
【0009】ゲーム機本体は、CPU6にアドレスバス、データバス及びコントロールバスからなるバス7が接続され、このバス7に、RAM8、インターフェース回路9、インターフェース回路10、信号処理プロセッサ11、画像処理プロセッサ12、インターフェース回路13、インターフェース回路14がそれぞれ接続され、インターフェース回路10に操作情報インターフェース回路15を介してコントローラ16が接続され、インターフェース回路13にD/Aコンバータ17が接続され、インターフェース回路14にD/Aコンバータ18が接続されて構成される。
【0010】ここで、上記RAM8、インターフェース回路9及び記録媒体5でメモリ部19が構成され、上記CPU6、信号処理プロセッサ11及び画像処理プロセッサ12で、ゲームの進行を制御するための制御部20が構成され、上記インターフェース回路10、操作情報インターフェース回路15及びコントローラ16で操作入力部21が構成され、上記モニタ2、インターフェース回路13及びD/Aコンバータ17で画像表示部22が構成され、上記増幅回路3、スピーカ4、インターフェース回路14及びD/Aコンバータ18で音声出力部23が構成される。」

・記載事項5
「【0013】コントローラ16は、外部から操作可能な操作部として、スタートボタン16a、Aボタン16b、Bボタン16c、十字キー16d、スティック型コントローラ16e、左トリガボタン16f、右トリガボタン16g、C1ボタン16h、C2ボタン16i、C3ボタン16j、C4ボタン16k及び奥行きトリガボタン16nを有し、各ボタンに対する操作内容に応じた操作信号をCPU6に送出するものである。
【0014】スティック型コントローラ16eは、ジョイスティックとほぼ同一構成になっている。すなわち、直立したスティックを有し、このスティックの所定位置を支点として前後左右を含む 350°方向に亘って傾倒可能な構成で、スティックの傾倒方向及び傾倒角度に応じて、直立位置を原点とする左右方向のX座標及び前後方向のY座標の値が、インターフェース回路15,10を介してCPU6に送出されるようになっている。」

・記載事項6
「【0017】即ち、ゲームシステム1が、家庭用として構成されている場合においては、モニタ2、増幅回路3及びスピーカ4は、ゲーム機本体とは別体となる。また、ゲームシステム1が、業務用として構成されている場合においては、図1に示されている構成要素はすべて一体型となっている1つの筐体に収納される。
【0018】また、ゲームシステム1が、パーソナルコンピュータやワークステーションを核として構成されている場合においては、モニタ2は、上記コンピュータ用のディスプレイに対応し、画像処理プロセッサ12は、記録媒体5に記録されているゲームプログラムデータの一部若しくはコンピュータの拡張スロットに搭載される拡張ボード上のハードウェアに対応し、インターフェース回路9,10,13,14、D/Aコンバータ17,18、操作情報インターフェース回路15は、コンピュータの拡張スロットに搭載される拡張ボード上のハードウェアに対応する。また、RAM8は、コンピュータ上のメインメモリ若しくは拡張メモリの各エリアに対応する。」

・記載事項7
「【0021】電源スイッチ(図示省略)がオンにされ、ゲームシステム1に電源が投入されると、CPU6が、記録媒体5に記憶されているオペレーティングシステムに基づいて、記録媒体5から画像データ、音データ及びプログラムデータからなるゲームプログラムを読み出す。読み出されたゲームプログラムの一部若しくは全部は、RAM8に格納される。
【0022】以降、CPU6は、RAM8に記憶されているゲームプログラム、並びにゲームプレーヤがコントローラ16を介して指示する内容に基づいて、ゲームを進行する。即ち、CPU6は、ゲームプレーヤーによるコントローラ16に対する操作内容に応じてコントローラ16から送出される操作信号に基づいて、適宜、描画や音出力のためのタスクとしてのコマンドを生成する。」

・記載事項8
「【0027】本ビデオゲームは、遊技者によるコントローラ16に対する操作に従って、主人公であるプロ野球選手(プレイキャラクタ)が打者としてスタメン出場し、その打撃成績がプレイ終了後に知らされるというものである。
【0028】ペナント又はリーグモードで各チームからスタメン出場する選手等は、図8に示すように、選手登録されている。そして、スタメン選手は攻撃側にあっては、図9に示すように、打者としてバッターボックスに立ち、相手投手からの投球を待っている。あるいは、走者として塁にでている。この時のキャッチャーミットの位置が画面の上部中央に表示されている。また、走者がいる場合には、その走者が画面の上部左右に表示されている。そして、打者は、投球されたボールが、自分の待っているゾーンにはこないと判断した場合にはバットを振らないが、図10,図11に示すように、投球されたボールが、自分の待っているゾーンにくると判断した場合には強振し、あるいは、ミート打する。
【0029】守備側にあっては、同図に示すように、投手としてマウンドに立ち、相手打者に向かって投球する。あるいは、野手としてそれぞれの守備位置に分散している。」

・記載事項9
「【0033】(守備ポジション別)投・ピッチャー,捕・キャッチャー,一・ファースト,二・セカンド,三・サード,遊・ショート,左・レフト,中・センター,右・ライト(打撃結果別)安・安打,2・2塁打,3・3塁打,本・ホームラン,ギ・犠牲バント,ス・スクイズ,犠・犠牲フライ,ゴ・ゴロ,併・併殺打,飛・フライ,邪・ファールフライ,直・ライナー,野・フィルダースチョイス,失・エラー(特殊な打撃記録)走本・ランニングホームラン,四球・フォアボール,死球・デッドボール,振逃・三振振り逃げ,敬球・敬遠のフォアボール,ギ野・犠牲バントとフィルダースチョイスが重なった(スクイズの場合を含む),ギ失・犠牲バントとエラーが重なった(スクイズの場合を含む),三振・見逃し三振,空振・空振り三振,犠失・犠牲フライとエラーが重なった次に、打撃記録方法について説明する。
【0034】1つの記録を、記録結果(安打,本塁打,バント,フライ,ゴロ),打球方向(各守備ポジション別),打球ポイント(真芯,芯,その他が各々ミート打ちか強振に対応)のデータに分けて記憶しておく。その記憶を、操作コントローラ16のスティック型コントローラ16e等の方向キーの上下で、全打席,右打席,左打席を選択し、方向キーの左右で、全て、安打,ホームラン,バント,フライ,ゴロを選択し、スイング情報以外の項目がカーソルの示すデータを表示する。」

以上の記載事項1?記載事項9及び図1?図12の記載および通常の野球を前提としたコンピュータと操作手段を用いた野球ゲームの常識に基づけば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。
「野球ゲームのゲームプログラムであって、パーソナルコンピュータやワークステーションにおいて、モニタ2に、ピッチャー、打者およびキャッチャー、内野手、外野手からなるプレイキャラクタを表示し、
遊技者がコントローラ16の操作を行うことにより遊技を行う野球ゲームのゲームプログラム。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

(2)引用例2について
当審の拒絶の理由に引用された実況パワフルプロ野球○5 パーフェクトガイド、発行:コナミ株式会社、発行年月日:1998年4月23日初版発行、6頁?9頁(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「1Aタイプ
十字キー:野手の移動、球種やコースの指定、ミートカーソルの移動、塁の指定に使う。
3Dスティック:野手の移動や、投球時の球種・コースの決定、ミートカーソルの移動、走塁時の塁の指定。
Cボタン:守備 投球時は牽制とバンドシフトの指定。守備時には送球するときに使用する。」(6頁、第1章 パワプロ5を満喫するキー基本操作)

・記載事項2
「第1段目:投球に使用。十字キー、3Dスティックで球種を決めAで投球。投球後、十字キー、3Dスティックでコースを決める。
第2段目:投球するときのけんせい球と、守備のときの送球に使用する。Cボタンはそれぞれ、右が一塁、上が二塁、左が三塁、下が本塁に対応している。慌てて押し間違えて、別の塁に投げてしまわないように注意しよう。
第3段目:RボタンとCボタンを同時に押すと、守備シフトを変更する事ができる。RとCの右・上は外野の守備位置を変更させ、RとCの下・左は内野の守備位置を代える。また、単独でCの下を押すと内野はバントシフトを取る。」(7頁、守備の表)

・記載事項3
「2タイプB
十字キー:野手の移動、球種やコースの指定、ミートカーソルの移動、塁の指定に使う。
3Dスティック:野手の移動や、球種・コースの選択、ミートカーソルの移動と塁の指定のさいに使用。
Cボタン:守備 投球時は牽制とバンドシフトの指定。守備時には送球するときに使用する。」(8頁)

・記載事項4
「第1段目:3Dスティック、十字キーで球種を選んでAで投球。モーションにはいると3Dスティック、十字キーでコースを決定できる。
第2段目:野手が捕球したボールを各塁に送球するボタン。右が一塁、上が二塁、左が三塁、下が本塁に対応している。また、何も押さずに送球(Aボタンのみ)すると一塁に送られる。
第3段目:投球のさい、塁上に走者がいるときに限りけん制球を投げることができる。右が一塁、上が二塁、左が三塁、下が本塁に対応している。」(9頁、守備の表)

以上の記載事項1?記載事項4及び6頁と8頁のコントローラの絵およびコンピュータと操作手段を用いた野球ゲームの常識によれば、引用例2には次の技術事項が記載されていると認められる。

「守備時において、投球を行う際には、十字キーと3Dスティックを操作して予め球種を選択し、Aボタンを操作して投球を指示し、十字キーと3Dスティックを操作して投球コースを選択して投球を行うようにするとともに、けん制を行う際には、十字キーと3Dスティックを操作して予め球種を選択し、Aボタンを操作して投球を指示し、けん制する塁を選択するCボタンもしくはBボタンを操作してけん制する塁を選択してけん制するようにした野球ゲーム用のコントローラ」(以下、「引用例2に記載された技術事項」という。)

3.対比
引用例1に記載された発明と本願発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「野球ゲームのゲームプログラム」は本願発明の「野球ゲームを進行させるゲーム進行制御プログラム」およびに「ゲーム進行制御プログラム」に相当している。以下同様に、「パーソナルコンピュータやワークステーションにおいて」は「コンピュータに」に、「モニタ2」は「モニタ画面」に、「投手」は「投手キャラクタ」に、「打者」は「打者キャラクタ」に、「キャッチャー、内野手、外野手」は「複数のキャラクタ」に、「ゲームプレーヤおよび遊技者」は「プレーヤ」にそれぞれ相当している。

また、引用例1に記載された発明のコントローラ16と本願発明のマウスは、キャラクタに対してそれぞれ異なる指示を選択的に行い得る操作手段として共通することは明らかである。
さらに、引用例1に記載された発明について、以下の(1)?(4)のことがいえる。

(1)実質的具備事項1
引用例1の記載事項1の「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、遊技者の代わりにビデオ画面上のプレイキャラクタに疑似体験(ロールプレイング)させることのできるビデオゲーム装置,ビデオゲームのプレイ制御方法及びその方法が記録された可読記録媒体に関するものである。」なる記載およびコンピュータとコントローラを用いたビデオゲーム装置における野球ゲームの常識に基づけば、野球ゲームは、プレーヤチームとコンピュータ制御または対戦相手のチームとがボールキャラクタを介して攻撃と守備を交互に行って進行させるものであって、攻撃側チームが打者キャラクタ、守備側チームが投手キャラクタ、捕手キャラクタ、内野手キャラクタおよび外野手キャラクタから構成され、また、引用例1に記載された発明の「ゲームプログラム」は本願発明の「ゲーム進行制御プログラム」に相当しているのであるから、引用例1に記載された発明のゲームプログラムは、「プレーヤチームとコンピュータ制御または対戦相手によるチームとがゲーム媒体としてのボールキャラクタを介して攻撃と守備とを交互に行って進行するゲーム進行制御プログラム」と言い換えることができる。
したがって、引用例1に記載された発明は、「プレーヤチームとコンピュータ制御または対戦相手によるチームとがゲーム媒体としてのボールキャラクタを介して攻撃と守備とを交互に行って進行するゲーム進行制御プログラム」を実質的に具備しているということができる。

(2)実質的具備事項2
上記実質的具備事項1において示したように、引用例1に記載された発明において、攻撃側チームが打者キャラクタ、守備側チームが投手キャラクタ、捕手キャラクタ、内野手キャラクタおよび外野手キャラクタから構成され、モニタ2の画面にそれら各種キャラクタがゲーム画像として表示されるものであって、そのような表示機能を有することも自明のことであり、また、引用例1に記載された発明の「モニタ2」は本願発明の「モニタ画面」に相当しているのであるから、引用例1に記載された発明は、「モニタ画面に投手キャラクタ、打者キャラクタ及び複数のキャラクタを含むゲーム画像を表示する機能」なる構成を実質的に具備しているということができる。

(3)実質的具備事項3
引用例1の記載事項5の「【0013】コントローラ16は、外部から操作可能な操作部として、スタートボタン16a、Aボタン16b、Bボタン16c、十字キー16d、スティック型コントローラ16e、左トリガボタン16f、右トリガボタン16g、C1ボタン16h、C2ボタン16i、C3ボタン16j、C4ボタン16k及び奥行きトリガボタン16nを有し、各ボタンに対する操作内容に応じた操作信号をCPU6に送出するものである。【0014】スティック型コントローラ16eは、ジョイスティックとほぼ同一構成になっている。すなわち、直立したスティックを有し、このスティックの所定位置を支点として前後左右を含む 350°方向に亘って傾倒可能な構成で、スティックの傾倒方向及び傾倒角度に応じて、直立位置を原点とする左右方向のX座標及び前後方向のY座標の値が、インターフェース回路15,10を介してCPU6に送出されるようになっている。」なる記載およびコントローラを用いた野球ゲームに関する常識に基づけば、コンピュータに、遊技者からのスティック16e、十字キーやボタンを有するコントローラ16に対する操作により、各種キャラクタへの指示内容の入力を受け付けるようにしているものであり、そのような機能を有することは自明のことであり、また、引用例1に記載された発明の「ゲームプレーヤおよび遊技者」は本願発明の「プレーヤ」に相当しているのであるから、引用例1に記載された発明は、「プレーヤからの操作手段に対する異なる操作による指示内容の入力を受け付ける機能」を実質的に具備しているということができる。

(4)実質的具備事項4
上記実質的具備事項3において示したように、遊技者が操作手段であるコントローラ16のスティック16eを前後左右方向に操作することにより、各種キャラクタに対して異なる指示のいずれか一方の選択を行うことができるとともに、その異なる指示について同時の選択を行うことができるものであり、そのような機能を有することは自明のことであるから、引用例1に記載された発明は、「異なる指示の何れか一方の選択を、操作手段の操作によって同時に行わせる機能と、操作手段に対する互いに異なる操作に対応して、キャラクタの2つの動作の何れか一方を選択的に行わせる機能」を実質的に具備しているということができる。

以上の共通事項と実質的具備事項を勘案すれば、本願発明と引用例1に記載された発明は、

「プレーヤチームとコンピュータ制御または対戦相手によるチームとがゲーム媒体としてのボールキャラクタを介して攻撃と守備とを交互に行って野球ゲームを進行させるゲーム進行制御プログラムであって、コンピュータに、
モニタ画面に、投手キャラクタ、打者キャラクタ及び複数のキャラクタを含むゲーム画像を表示させる機能と、
プレーヤからの操作手段に対する異なる操作による指示内容の入力を受け付ける機能と、
異なる指示の何れか一方の選択を、操作手段の操作によって同時に行わせる機能と、
操作手段に対する互いに異なる操作に対応して、キャラクタの2つの動作の何れか一方を選択的に行わせる機能と
を実現させるためのゲーム進行制御プログラム。」の点で一致し、以下の相違点1?相違点3の点で相違していると認められる。

<相違点1>
プレーヤからの操作手段に対する異なる操作による指示内容の入力を受け付ける機能が、本願発明においては、第1ボタンと第2ボタンとの少なくとも2つのボタンを有するマウスを操作手段として用いるとともに、そのマウスに対するボタン操作とマウスの移動操作とにより実現されているのに対して、引用例1に記載された発明においては、操作手段として上下左右方向に操作可能なスティック16e、十字キーや各種ボタンを有するコントローラ16を用いるものであって、コントローラ16のスティック16e、十字キーや各種ボタンへの操作のみにより実現されている点。

<相違点2>
操作手段の操作によって同時に行わせる機能が、本願発明においては、プレーヤチームが守備側であるときは、球種の選択および牽制する塁の選択をマウスの移動操作によって実現されるのに対して、引用例1に記載された発明においては、プレーヤチームが攻撃側であるときは、打席の選択および打撃の選択をコントローラ16の操作により実現されている点。

<相違点3>
本願発明が、球種の選択及び牽制する塁の選択の後、マウスの第1ボタンと第2ボタンとに対する互いに異なるボタン操作に対応して、投手キャラクタの投球行動としてのピッチング動作と牽制動作の一方を選択的に行わせる機能を有しているのに対して、引用例1に記載された発明は、球種の選択および牽制の塁の選択を行うか否か明示されておらず、上下左右方向に操作可能なスティック16e、十字キーや各種ボタンを有するに対する互いに異なる操作に対応して、打者キャラクタの打席の選択動作と打撃種類の選択動作の一方を選択的に行う機能を有するものであって、投手キャラクタの投球行動の選択を行う機能を明示していない点。

4.判断
上記相違点について、検討する。
<相違点1についての検討>
操作手段としてのマウスはポインティングデバイスの1つであって、平面上において、前後左右に滑らせながら使い、その動きに連動して、画面上のマウスポインターが移動し、マウスには左右にそれぞれボタンが設けられ、マウスのボタンを押すことでコンピュータに命令を与えることができることは、マウスが有する基本機能(マウスは、パソコン用の操作手段として多用され、その基本機能はよく知られたものであるが、必要であれば、特開平11-85354号公報の【0004】【0005】および図5、特開平10-124280号公報の【0075】、特開2001-5985号公報(公開日2001年1月12日)の【0048】?【0052】、アスキーデジタル用語辞典、マッキントッシュ用語事典、Glossary Help等を参照されたい。)である上、特開平11-249694号公報、特開平11-244541号公報および特開平10-283494号公報等に見られるように、操作手段としてコントローラ、キーボードやマウスは互いに代用可能であることが、コンピュータと操作手段を用いて行う野球ゲームの技術分野において周知技術(以下、「周知技術」という。)である。
また、代用可能な操作手段として上記周知技術であるマウスは、1)左右のボタンに対してそれぞれ別にボタン操作を行い、かつ、マウスの移動操作を行って、他の操作指示することができるものであること、2)平面上において、前後左右に滑らせながら使い、その動きに連動して、画面上のマウスポインターが移動するものであって、ボタンを押しつつマウスを滑らせながら複数の項目を選択することにより、複数の操作指示することができるものであること、3)操作をする者の意図に従う操作の結果が得られるように、マウスを含む操作手段における操作の動きが、ほぼ比例するように連動することになることは操作手段の趣旨から見て当然のことであるから、操作手段としてのマウスは、マウスの移動操作の速度とマウスのボタン操作により選択された画面上におけるキャラクタ、楕円等の図面等の移動や拡大、図形変形等の速度とを略比例するように、操作指示することができるものであること、以上の1)?3)の機能を有していることは明らかである。
そして、引用例1に記載された発明と周知技術は、コンピュータとコントローラを用いる野球ゲーム技術分野において関連するのであるから、相互に利用することに格別の困難性が見いだせない。
そうすると、引用例1に記載された発明の操作手段の一種であるコントローラ16に代えて、周知技術である操作手段として代用可能なマウスを採用して、プレーヤからの操作手段に対する異なる操作による指示内容の入力を受け付ける機能を、第1ボタンと第2ボタンとの少なくとも2つのボタンを有するマウスに対するボタン操作とマウスの移動操作により実現するようにすること、すなわち本願発明の上記相違点1に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のものということができる。

<相違点2についての検討>
引用例2に記載された技術事項のコントローラは、守備時において、投球を行う際には、十字キーと3Dスティックを操作して予め球種を選択し、Aボタンを操作して投球を指示し、十字キーと3Dスティックを操作して投球コースを選択して投球を行うようにするとともに、けん制を行う際には、十字キーと3Dスティックを操作して予め球種を選択し、Aボタンを操作して投球を指示し、けん制する塁を選択するCボタンもしくはBボタンを操作してけん制する塁を選択してけん制するようにしたものである。
また、引用例1の図9?図12、および記載事項9の【0033】【0034】にも示されているように、i)プレーヤがコントローラを操作してゲームを行うこと、ii)ゲーム画面上に打者、投手、捕手、野手、走者、ボール、バット等はそれぞれキャラクタとして表示されること、iii)プレーヤ側もコンピュータ側もチームを構成して野球ゲームを行うこと、iv)守備を行っているチームが守備側チームであること、v)プレーヤが攻撃と守備を交互に行って野球ゲームを行うこと、およびvi)投手の投球行動が、ストレート、カーブ、シュート、スライダー、カーブ、シンカー、フォーク等の球種とからなる投球と、走者のいる塁へ牽制するために投げる牽制球に大別されること、以上のi)?vi)は、通常の野球を前提としたコンピュータと操作手段を用いた野球ゲームの技術常識にすぎない。
さらに、引用例2に記載された技術事項は、野球ゲームにおいて、プレーヤチームが守備側であるときに、プレーヤは球種の選択もしくは牽制の中から、所望に応じて球種の選択と牽制球のいづれか一方を選択的に操作するものであって、プレーヤの意図に基づき、球種が選択された場合には、複数の球種の中から所望の球種を選択する操作を行い、牽制が選択された場合には、牽制を希望する塁を選択する操作を行った上で、投手は投球もしくは牽制を行うものである。このように、引用例2に記載されたコントローラにおいても、プレーヤの意図に応じた投球行動を行うためには、プレーヤが操作手段であるコントローラに対してその意図に応じたボタンやスティック等への選択操作の組合せ・手順に基づいて選択操作を行う必要があることは明らかなことである。
また、引用例2に記載された技術事項の「投手」は「投手キャラクタ」と言い換えできることは、上記ii)に示したとおりであり、同様に、引用例2に記載された技術事項の「ストレート、カーブ、シュート、スライダー、カーブ、シンカー、フォーク等の球種からなる投球」は「ピッチング」と言い換えできることも明らかである。
したがって、引用例2に記載された技術事項は、「プレーヤチームが守備側であるときは、コントローラの操作により、球種の選択を行う機能と、牽制する塁を選択する機能と行う機能と、AボタンとCボタンとに対する互いに異なるボタン操作に対応して、投手キャラクタの投球行動としてのピッチング動作と牽制動作の一方を選択的に行う機能とを実現し得る野球ゲーム用のコントローラ」と言い換えることができる。(以下、「引用例2に記載された発明」という。)

なお、本願発明において、牽制球を所望の塁に投球する場合において、事前に球種が選択されていることになるが、牽制球を投球する際に、事前に球種が選択されていることに、格別の意義を見出し得ないことは、通常の野球を前提とする野球ゲームの常識から見て明らかなことである。
そして、上記相違点1において示したように、引用例1に記載された発明の操作手段の一種であるコントローラ16に代えて、操作手段の代用手段として周知技術であるマウスを採用することに、格別の困難性はない。
してみると、プレーヤチームが守備側であるときに、投球する球種の選択もしくは希望する塁への牽制は、それぞれが必要とする選択操作からなる組合せ・手順を操作することにより実現し得る上、その選択操作の種々の組合せ・手順において、必要となる選択操作を同時に行う場合と、個別の選択操作を段階的に行う場合でも、プレーヤが希望する機能を実現し得る点で格別の相違が生じる訳ではないので、操作手段において上記必要となる機能を実現させるために、何れかの選択操作を同時に行うような選択操作を含むような選択操作の組合せ・手順とすることは、野球ゲームの操作手段に限らず一般的な操作手段において設計事項に過ぎないということができる。
そうすると、引用例1に記載された発明の操作手段であるコントローラ16に、引用例2に記載された発明のコントローラの機能を適用する際に、代用可能な操作手段として周知技術であるマウスを採用することにより、プレーヤチームが守備側で、マウスの操作対象が投手キャラクタであるときに、操作手段であるマウスの移動操作によって球種の選択および牽制する塁の選択を同時に行うような機能を持たせるようにすること、すなわち本願発明の上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が必要に応じてなし得る程度の設計事項にすぎないということができる。

<相違点3について>
上記相違点1において示したように、引用例1に記載された発明の操作手段の一種であるコントローラ16に代えて、操作手段の代用手段として周知技術であるマウスを採用することに、格別の困難性はない。
また、引用例2に記載された発明のコントローラは、プレーヤチームが守備側であるときは、コントローラの操作により、球種の選択を行う機能と、牽制する塁を選択する機能と行う機能と、AボタンとCボタンとに対する互いに異なるボタン操作に対応して、投手キャラクタの投球行動としてのピッチング動作と牽制動作の一方を選択的に行う機能とを実現し得るものである。
そして、野球ゲームの操作手段に限らず一般的な操作手段において、必要となる機能を実現させるために、何れかの選択操作を同時に行うような選択操作を含むような選択操作の組合せ・手順とすることが設計事項に過ぎないことについて、上記相違点2において示したとおりであるから、同様の理由により、球種の選択動作と牽制する塁の選択操作の同時選択の後に、投手キャラクタの投球行動として、ピッチング動作を選択する選択操作と牽制動作を行う選択操作を個別的に行うことも、設計事項に過ぎないということができる。
したがって、引用例1に記載された発明の操作手段であるコントローラ16に、引用例2に記載された発明のコントローラの機能を適用する際に、代用可能な操作手段として周知技術であるマウスを採用することにより、プレーヤチームが守備側で、マウスの操作対象が投手キャラクタであるときに、球種の選択及び牽制する塁の選択の後、マウスの第1ボタンと第2ボタンとに対する互いに異なるボタン操作に対応して、投手キャラクタの投球行動としてのピッチング動作と牽制動作の一方を選択的に行わせるようにすること、すなわち本願発明の上記相違点3に係る構成となすことは、当業者が必要に応じてなし得る程度のことということができる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、本願発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
以上のとおり、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-27 
結審通知日 2007-10-01 
審決日 2007-10-15 
出願番号 特願2001-31895(P2001-31895)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 小田倉 直人
中槙 利明
発明の名称 ゲーム進行制御プログラム、ゲーム用サーバ及びゲーム進行制御方法  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  

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