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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1168708
審判番号 不服2004-6663  
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2007-11-29 
事件の表示 特願2003-271211「口息清涼剤およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月 3日出願公開、特開2005- 29513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成15年7月7日に特許出願されたものであって、拒絶理由通知に応答して平成16年2月2日付けで手続補正がなされたが、平成16年2月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成16年4月1日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年5月6日付けで手続補正がされたものである。

2.平成16年5月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年5月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は特許請求の範囲についてなされたものであり、そのうち請求項1については、補正前(平成16年2月2日付け手続補正書参照)の、
「親油性液状清涼剤および当該液状清涼剤を被包する軟質膜材からなる口息清涼剤であって、当該親油性液状清涼剤が、親水性甘味料と親油性液状乳化剤との液状混合物を含む、ことを特徴とする口息清涼剤。」

「液状混合物を含む親油性液状清涼剤および当該液状清涼剤を被包する軟質膜材からなり、かつ当該液状混合物が、親油性液状乳化剤と当該親油性液状乳化剤によって当該液状清涼剤に対する可溶化が促された親水性甘味料とからなる、ことを特徴とする口息清涼剤。」
と補正するものである。

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「親水性甘味料」について、「当該親油性液状乳化剤によって当該液状清涼剤に対する可溶化が促された」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)を以下に検討する。

(2)引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開平11-79964号公報(以下、引用例1という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「第1ソフトカプセル1の内部に1つの第2ソフトカプセル2を内包した多重ソフトカプセル10であって、前記第1ソフトカプセル1および第2ソフトカプセル2がいずも内容物として口臭除去効果を有する成分3および4を封入し、前記第2ソフトカプセルが胃溶性であることを特徴とする口臭除去用多重ソフトカプセル」(請求項1)
(b)「口腔内口臭除去効果を有する第1ソフトカプセル内の成分によって、服用後、直ちに口腔内の口臭除去が達成できる(口臭除去即効性効果)。このような第1ソフトカプセル皮膜および/またはカプセル内包成分は、呈味成分も含んでおり、それによって、口腔内で溶出したときに苦味等の刺激が緩和されるため、嗜好性が上がる。」(段落番号【0008】)
(c)「呈味成分とは、甘味料、酸味料および苦味料を意味し、具体的には、例えば、甘味料としては、アスパルテーム、ステビア、サッカリンナトリウム、ソーマチンが、・・使用し得る。」(段落番号【0011】)
(d)「本発明の多重ソフトカプセルの第1および第2ソフトカプセル皮膜1および2を形成するための基材としては、例えば、ゼラチン、寒天、またはこれらの混合物が挙げられるが、ソフトカプセル皮膜を形成できるものであれば、特にこれらに限定されない。」(段落番号【0010】)
(e)「本発明の多重ソフトカプセルにおいて、第1ソフトカプセル内に封入する内容物は、食用植物油脂および口腔内において口臭除去効果を有する物質を含んで成る。前記食用植物油脂は、香味調整および安定性向上のために添加するものであって、例えば、ヤシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ゴマ油、ナタネ油、グレープ種子油、およびこれらの混合物が挙げられる。また、口腔内において口臭除去効果を有する物質としては、例えば、レモンオイル、ペパーミントオイル、パセリ油、シャンピニオンエキス、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、ヨモギ焙煎抽出物、リンゴ抽出物、柿抽出物、ジンジャーエキス等、およびそれらの混合物が挙げられる。」(段落番号【0015】)
(f)「図2において、予め、各内容物充填液および各皮膜液を調製した。次に、第2ソフトカプセル内容物充填液11'をC方向から第1ノズル11へ供給し、第2ソフトカプセル皮膜液12'をD方向から第2ノズル12へ供給し、第1ソフトカプセル内容物充填液13'をA方向から第3ノズル13へ、更に第1ソフトカプセル皮膜液14'をB方向から最も外側の第4ノズル14へそれぞれ供給して、各環状孔先端部から同時に押し出し、この四相複合ジェットを冷却液15中に放出して本発明による多重ソフトカプセル20を得る。」(段落番号【0023】)

また、表1には、第1ソフトカプセル内容物充填液の組成として、レモンオイル、ペパーミント、香料:L-メントール、ウィンターグリーンオイル、ワニラオイル、甘味料:アスパルテーム、食用植物油脂:ヤシ油が記載され、当該組成で成分を混合することにより第1ソフトカプセル内容物充填液を調製し、ゼラチンを含有する第1ソフトカプセル被膜液、第2ソフトカプセル被膜液及び第2ソフトカプセル内容物充填液と共にシームレスカプセル製造機のノズルから同時に押し出すことにより、ソフトカプセルを得たことの記載がある。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-222555号公報(以下、引用例2という。)には、以下の事項が記載されている。

(g)「本発明は、圧縮錠剤中のフレーバー、甘味料およびそれらの混合物のような味覚に影響する成分の口腔内への即時供給および時間指定供給の両方を示す菓子錠剤に関する。」(段落番号【0001】)
(h)「生物付着性物質/疎水性組成物内に含有されるカプセル化された第2のフレーバー成分を調製するためには、先ず脂肪、ワックスまたはそれらの混合物をその融点まで加熱し、その後撹拌しながら温度を約65?75℃に維持する。得られた溶融物に乳化剤を添加し、デリバリーシステムが甘味料を含有するように調製する場合は、甘味料も同様にそこに添加する。」(段落番号【0021】)
(i)「次に乳化されたフレーバー油を溶融疎水性/生物付着性成分に添加し、撹拌して均質な混合物を形成し、次にこれを噴霧凝結して固体粒子を形成する。」(段落番号【0024】)
(j)適当な甘味料は以下の限定しない例、即ち・・サッカリンおよびその種々の塩・・ジペプチド甘味料例えばアスパルテーム、・・また合成甘味料である・・スクラロース・・およびソーマチン(タリン)も意図される。(段落番号【0056】)

また、表2には部分水添大豆油、グリセロールモノステアレート、及びフレーバー油(ペパーミント)を含有するカプセル化フレーバーが記載されている。

(3)対比
上記の引用例1の表1の組成を有するカプセルは
「第1ソフトカプセルの内部に1つの第2ソフトカプセルを内包した多重ソフトカプセルであって、第1ソフトカプセルの内容物充填液として、レモンオイル、ペパーミント、香料:L-メントール、ウィンターグリーンオイル、ワニラオイル、甘味料:アスパルテーム、食用植物油脂:ヤシ油を封入した口臭除去用多重ソフトカプセル」であると認められる。(以下これを「引用発明」という。)
引用発明の第1ソフトカプセルの被膜及び、第1ソフトカプセル中の第1カプセル内容物充填液中のアスパルテームはそれぞれ本願補正発明の「軟質膜材」、「親水性甘味料」に相当する。また、上記第1カプセル内容物充填液中のレモンオイル、ペパーミント、L-メントール、ウィンターグリーンオイルは本願補正明細書(段落【0023】)において親油性液状清涼剤で用いられる清涼化剤として例示の成分である。
引用発明においてはレモンオイル、ペパーミントは、口腔内において口臭除去効果を有する(記載(e))とされているが、これらは清涼化剤に相当する成分でもあることから、口臭除去と共に、清涼感をヒトの口腔や気管に付与する作用も当然に奏するものである。
ところで、本願補正明細書(段落【0022】)には「本発明で使用する「親油性液状清涼剤」の語は、本発明の口息清涼剤において清涼感をヒトの口腔内や気管内に付与するための構成要素であって、清涼化剤、香料、親水性甘味料、親油性液状乳化剤および食用油脂を含む。」と記載されている。
そうすると、引用発明の充填液は、上記の「口息清涼剤において清涼感をヒトの口腔内や気管内に付与するための構成要素」という意味においては本願補正発明の「親油性液状清涼剤」に相当すると言いうるものであり、当該充填液は、清涼化剤、香料、親水性甘味料および食用油脂を含む液状の混合物であるから、「液状混合物を含む親油性液状清涼剤」とも言うことができる。
さらに、本願補正発明の口息清涼剤はその中に第2のソフトカプセルが存在することが特に排除されているものではないことを考慮すると、両者は
「液状混合物を含む親油性液状清涼剤および当該液状清涼剤を被包する軟質膜材からなり、かつ液状混合物が親水性甘味料を含む口息清涼剤。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明では、液状混合物が、親油性液状乳化剤と当該親油性液状乳化剤によって親油性液状清涼剤に対する可溶化が促されている親水性甘味料とからなるのに対し、引用発明では、親油性液状乳化剤についての記載がない点。

(4)判断

上記相違点について検討する。
引用例1には、ソフトカプセル内容物充填液をノズルから押し出すことによりソフトカプセルを製造したこと(記載(f)、段落【0026】)が記載されているが、均質なカプセルを連続的に製造するためには、充填液中において配合成分は均一に分散または溶解している必要があることは自明である。そして、一般に製剤に他成分との相溶性が低い成分を配合しようとする場合、予め可溶化や分散化等の処理を施すことは本願出願日前の当業者に周知の事項であったと認められる。
例えば引用例2には、脂肪カプセル状香料を製造する際に、親油性の基剤中に乳化剤と共に甘味料等を混合すること(記載(h))や、表2には乳化剤として親油性乳化剤であるグリセロールモノステアレートが記載されている。このほか、カプセル充填液として清涼剤や親水性甘味料、油脂、親油性乳化剤であるレシチンや蔗糖脂肪酸エステルを配合する例は広く知られている(特開平5-238954号公報、国際公開第98/42316号、米国特許第5900251号明細書など)。
その上で引用例1に記載された口臭除去用ソフトカプセルを見ると、カプセル充填液中にはヤシ油やレモンオイル、L-メントール等の親油性成分と共にアスパルテームが配合されており、アスパルテームが他の油性成分との相溶性が低く溶解性に劣ることはその化学構造から当業者に明らかであるから、カプセル充填前に充填液を均質化する目的で、親油性液状乳化剤によりアスパルテームの油性成分への溶解を促すことは当業者が容易に想到しえたことである。

請求人は、引用例1には親油性液状清涼剤中の構成成分間の相互作用についての記述、言及がなく、親水性甘味料と親油性液状乳化剤とからなる液状混合物を用いることは何ら開示も示唆もされていない旨主張するが、上記のとおり油性物質に対して溶解性の低い成分を親油性液状乳化剤(親油性界面活性剤ともいう。)で可溶化することがカプセル状口息清涼剤の分野においても周知である以上、当該主張は採用することができない。

そして、親油性液状乳化剤の添加により、あとの成分の混和が円滑になり、さらに甘味料が十分に可溶化することで濃厚な風味が拡散するという本願補正発明の効果も、引用例1、引用例2から当業者が予測する範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年5月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?16に係る発明は、平成16年2月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明という」)は以下のとおりのものである。

「親油性液状清涼剤および当該液状清涼剤を被包する軟質膜材からなる口息清涼剤であって、当該親油性液状清涼剤が、親水性甘味料と親油性液状乳化剤との液状混合物を含む、ことを特徴とする口息清涼剤。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「当該親油性液状乳化剤によって当該液状清涼剤に対する可溶化が促された」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-26 
結審通知日 2007-10-02 
審決日 2007-10-18 
出願番号 特願2003-271211(P2003-271211)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 穴吹 智子
弘實 謙二
発明の名称 口息清涼剤およびその製造方法  
代理人 古川 安航  
代理人 角田 嘉宏  

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