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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C30B |
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管理番号 | 1168727 |
審判番号 | 不服2005-5348 |
総通号数 | 97 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-03-30 |
確定日 | 2007-11-29 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 65316号「単結晶引上装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 2日出願公開、特開平 9-227288〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年2月27日の出願であって、平成16年8月3日に拒絶理由を発送し、その指定期間内である同年9月30日付けで手続補正書及び意見書が提出されたが、平成17年2月24日に拒絶査定され、これに対し、平成17年3月30日付けに拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成16年9月30日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 チャンバー内に設置され且つ融液原料を収容するルツボと、チャンバー外に設置され且つ粒状原料を収容する原料タンクと、この原料タンク内の粒状原料を前記ルツボに供給する原料供給管とを備えた単結晶引上装置において、前記原料タンクに収容された粒状原料の表面を平坦化する整粒機構を取りつけ、該整粒機構のうち粒状原料に直接接触する部分の材質を粒状原料と同じ材質、石英ガラス、シリコンのいずれかとする、ことを特徴とする単結晶引上装置。」 3.引用例および記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1:特開平5-105576号公報(以下、「引用例1」という。)及び、同様に原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2:特開平6-154582号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項がそれぞれ記載されている。 3-1.引用例1:特開平5-105576号公報 (1)「【請求項1】特にシリコンからなる高純度単結晶半導体棒(3)を不活性ガスの下で融液(2)から製造する装置であって、融液用主加熱装置(6)を有するるつぼ(1)と回転懸架部を有する引上げ装置(4)とからなるものにおいて、・・・、b)給送機構(23)と補助るつぼ(11)に至る給送管(18)とを有する固体追加装填物(20)用貯蔵容器(19)、・・・を特徴とする装置。」(特許請求の範囲) (2)「・・・この課題は更に、主るつぼ内の融液量がほぼ一定に留まるよう、引上げ操作中に消費された液体形状のシリコン量を補助るつぼから追加装填し、固体シリコンを貯蔵容器から補助るつぼ内に追加装填してそこで溶解させることを特徴とする高純度シリコン棒るつぼ引上げ法によって解決される。」(段落【0012】) (3)「以下、図1に示した実施例を基に本発明装置を例示する。・・・主るつぼ1内に半導体融液2があり、この融液から単結晶3は普通回転式の懸架・引上げ装置4により引上げられる。・・・・引上げ装置全体は槽ハウジング7内にあり、・・・・補助るつぼは融液14を主るつぼ1内に導くことのできる排出管13と・・・固体半導体材料20を入れた貯蔵容器19に至る給送管18と排気管21とを有する。・・・そして貯蔵容器19はハウジング26で囲撓してある。・・・」(段落【0014】) (4)「給送管15、18を通して補助るつぼ11にドーパント及び多結晶シリコンが装入される。更になおるつぼハウジング10から排気管21が延びている。排気管と給送管は、好ましくは、耐熱性で被晶析半導体材料を汚染しない成形可能且つ容易に加工可能な材料から作製してある。特にシリコン又は石英が用いられる。・・・」(段落【0018】) (5)「本来の反応室7の外側に、望ましくは石英等の非汚染材料から実施した固体粒質貯蔵容器16、19がある。・・・」(段落【0021】) 3-2.引用例2:特開平6-154582号公報 (1)「【請求項4】上記容器搬送ラインにおける原料供給ユニットよりも出口側に、容器内で中央側に盛り上がりを生じている原料粉体の表面を平坦にすべく、容器をほぼ水平面内で揺動させる揺動ユニットがさらに設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の粉体の充填および回収装置。」(特許請求の範囲) (2)「請求項4記載の粉体の充填および回収装置においては、揺動ユニットにおいて容器をほぼ水平面内で揺動させる操作が行われ、これにより、原料供給ユニットから容器内に中央側で盛り上がりを生じた状態で原料粉体が供給された場合でも、盛り上がりを生じている部分に、これを側方へと移動させる力が作用して、原料粉体の表面が平坦化される。」(段落【0019】) (3)「このような粉体表面のならしを、従来のすり切り操作で行った場合には、容器から溢れる粉体が周囲に飛散し易い。また、容器を振動させて表面のならしを行うことも考えられるが、この場合には、特に原料粉体が微粉のときには、表面粉体が上下におどるのみで、横方向の移動、すなわち、平坦化を生じにくい。」(段落【0020】) (4)「このような従来のすり切り操作や振動によるならし操作に比べ、上記では、盛り上がりを生じている表面側の粉体に、これを横方向へと移動させる力が作用して平坦化が行われる。したがって、容器の内容積に見合う量の原料粉体を原料供給ユニットから供給した後に上記の揺動ユニットに送ることによって、上記のような効率的なならし操作により、粉塵の飛散を伴わずに、高い充填率での容器への原料粉体の充填状態とすることができる。」(段落【0021】) 4.当審の判断 4-1.対比 引用例1の摘示事項(4)及び(5)から、引用例1には、多結晶シリコンの原料である固体半導体材料を入れた貯蔵容器を、原料と同じ材質の石英、シリコン等の非汚染材料から作製することが記載されていると云える。 また、引用例1の摘示事項(1)の「シリコンからなる高純度単結晶半導体棒(3)を不活性ガスの下で融液(2)から製造する装置であって、融液用主加熱装置(6)を有するるつぼ(1)と回転懸架部を有する引上げ装置(4)とからなる」の記載及び摘示事項(3)の「主るつぼ1内に半導体融液2があり、この融液から単結晶3は普通回転式の懸架・引上げ装置4により引上げられる。・・・・引上げ装置全体は槽ハウジング7内にあ」るという記載より、高純度単結晶を引き上げて製造しているから、引用例1の装置は、「高純度単結晶半導体棒引上装置」であると云える。 そうすると、これらの記載及び摘示事項(2)を、本願発明の記載振りに則して整理すると、引用例1には、 「槽ハウジング内に設置され且つ融液を収容する主るつぼと槽ハウジング外に設置され且つ固体半導体材料を収容する貯蔵容器と、この貯蔵容器内の固体半導体材料を前記主るつぼに供給する給送管とを備えたシリコンからなる高純度単結晶半導体棒引上装置において、多結晶シリコン等の固体半導体材料を入れた貯蔵容器を固体半導体材料と同じ材質の石英、シリコン等の非汚染材料から作製すること」(以下、「引用発明1」という)が記載されていると云える。 そこで、本願発明と引用発明1とを比較検討すると、引用発明1の「槽ハウジング」、「融液」、「主るつぼ」、「固体半導体材料」、「貯蔵容器」、「給送管」、「高純度単結晶半導体棒引上装置」は、それぞれ本願発明の「チャンバ-」、「融液原料」、「ルツボ」、「粒状原料」、「原料タンク」、「原料供給管」、「単結晶引上装置」に相当する。 そうすると、両者は、「チャンバ-内に設置され且つ融液原料を収容するルツボと、チャンバ-外に設置され且つ粒状原料を収容する原料タンクと、この原料タンク内の粒状原料を前記ルツボに供給する原料供給管とを備えた単結晶引上装置」で一致し、次の点で相違すると云える。 相違点1:本願発明は、「原料タンクに収容された粒状原料の表面を平坦化する整粒機構を取りつけ」ているのに対して、引用発明1では、上記構成を具備していない点 相違点2:本願発明は、「整粒機構のうち粒状材料に直接接触する部分の材質を粒状材料と同じ材質、石英ガラス、シリコンのいずれかとする」のに対して、引用発明1は、「固体半導体材料を入れた貯蔵容器を固体半導体材料と同じ材質の石英、シリコン等の非汚染材料から作製」している点。 4-2.判断 そこで、上記の相違点1について検討する。 本願発明は、「単結晶引上装置において、原料タンクおよびホッパ-内の原料充填率を上げ、これらの容積を最大限に有効利用することによって、装置のコンパクト化を図ろうとするもの」(明細書の段落【0015】)であり、そのために、「原料タンクに収納された粒状原料の表面を平坦化する整粒機構を取りつけた」(明細書の段落【0016】)ものであるが、原料タンクおよびホッパーの原料充填率を上げることは、単結晶引上装置に限らず、粉粒体原料を容器に充填する技術一般で解決すべき課題といえる。 そして、引用例2の摘示事項(1)乃至(4)よれば、引用例2には、「高い充填率とするために、揺動ユニットを用いて容器内での中央側に盛り上がりを生じている原料粉体の表面を平坦にする」ことが記載されているから、この「揺動ユニット」は、本願発明の「整粒機構」に相当するものと云える。 してみると、高い充填率を得るために、容器内に収容された原料粉体の盛り上がりを平坦化する整粒機構は、引用例2に記載されるように公知であるから、引用発明1の貯蔵容器における固体半導体材料の充填率を上げるために引用例2に記載の整粒機構を取り付けることは、当業者が容易になし得ることである。 また、このことによる効果も格別なものであるとは、云えない。 次に、相違点2について検討する。 本願発明は、「整粒機構のうち粒状原料に直接接触する部分の材質を粒状原料と同じ材質とすれば、CZ法によって単結晶を製造する場合に、これらからの不純物汚染を防止することができる。」(段落【0019】)の記載から、不純物汚染を防止するために、「整粒機構のうち粒状材料に直接接触する部分の材質に粒状材料と同じ材質」を用いていることがわかる。 そして、引用発明1においても、非汚染のために原料と接触する部分に原料と同じ材質を用いており、不純物汚染防止のために原料と直接接触する部分に原料と同じ材質を用いることは、当然のことであるから、引用発明1の貯蔵容器に整粒機構を取り付ける場合に、整粒機構のうち固体半導体材料と直接接触する部分に同じ材料を用いることは、当業者が容易になし得ることである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-27 |
結審通知日 | 2007-10-02 |
審決日 | 2007-10-15 |
出願番号 | 特願平8-65316 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C30B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮澤 尚之 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
廣野 知子 斉藤 信人 |
発明の名称 | 単結晶引上装置 |
代理人 | 好宮 幹夫 |