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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16K
審判 全部無効 2項進歩性  F16K
管理番号 1169187
審判番号 無効2005-80088  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2007-10-31 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3307921号発明「流体システム内の流れの方向を変更する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3307921号の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
1.本件特許第3307921号の請求項1?12に係る発明についての出願は、平成7年9月18日(パリ条約による優先権主張平成6年9月16日、米国)に出願した特願平7-238598号の一部を、平成13年10月19日に新たな特許出願としたものであって、平成14年5月17日にその発明について特許の設定登録がなされた。
2.これに対して審判請求人(以下、「請求人」という。)は、平成17年3月22日に、本件特許の請求項1?12に係る発明の特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める審判を請求した。
3.被請求人は、平成17年7月7日に、審判事件答弁書と平成18年1月11日付けの新たな訂正請求により取り下げられたものとみなされるものとなった訂正請求書を提出し、請求人は、平成17年8月15日に、審判事件弁駁書を提出した。
4.これに対して当審より、請求人と被請求人のそれぞれに対し、平成17年9月28日(発送日17年10月3日)に、職権審理結果通知書と無効理由通知書をそれぞれ通知したところ、被請求人は、その指定期間内の平成18年1月11日に、意見書を提出するとともに新たな訂正請求書を提出して訂正を求めている。

【2】訂正請求の可否
1.訂正の要旨
平成18年1月11日付けの訂正請求書による訂正請求は、明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(但し、下線部は訂正箇所を示す。)。

訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1を、「(a)高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとをこれらのポートが開口している弁座を介して弁室に連通させ、(b)第1および第2位置間で前記弁座に対して移動するように前記弁室内に弁部材を配置し、(c)前記弁部材を前記弁座上の第1位置において前記弁座に着座密封係合させる方向に前記弁部材に差圧力を加え、(d)前記弁部材が前記第1位置に着座しているときに、前記低圧ポートを弁部材流通路を介して前記第1システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記弁室を介して前記第2システム・ポートに連通させることによって、システムを通るシステム流体を一方向に向け、(e)前記弁部材が離座できるように前記差圧力の向きを変更し、(f)前記弁部材が前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、(g)前記第1位置から第2位置まで、前記弁部材が前記弁座から離れた経路に沿って、前記偏椅力に応答して前記弁部材を移動させ、(h)前記弁部材を前記第2位置において前記弁座と係合するように押し付けるために前記差圧力を再現し、(i)前記弁部材が前記第2位置に着座しているときに、前記低圧ポートを前記弁部材流通路を介して前記第2システムに連通させるとともに、前記高圧ポートと前記第1システム・ポートとを前記弁室を介して連通させることによって、システムを通る流体流れ方向を変更し、前記差圧力の向きを変更する工程(e)、前記偏椅力を作用させる工程(f)、および前記弁部材を移動させる工程(g)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる、ことを特徴とする流体システム内の流れの方向を変更する方法。」と訂正する。

訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項3を、「高圧ポートを第1システム・ポートに連通させるとともに低圧ポートを第2システム・ポートに連通させ、また前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させることを交互に行うことにより変更弁を作動させる方法であって、(a)前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるように弁部材を第1位置に配置させること、(b)第1の弁部材圧力領域を前記低圧ポートに連通させるとともに、対向する第2の弁部材圧力領域をより大きい圧力に連通させることによって、前記弁部材にまたがって第1の圧力差を形成すること、(c)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の連通がほぼ阻止されるように、前記第1位置において前記弁部材を弁座面に強制的に着座させること、(d)前記圧力差を実質的に変えるように前記第1及び第2圧力領域を連通させること、(e)前記弁部材を前記弁座面との係合から外れるように離座させること、(f)前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かすこと、および(g)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの連通がほぼ阻止されるように、前記第2位置において前記弁部材を弁座面に着座させること、を含み、前記第1および第2圧力領域を連通させる工程(d)、前記弁部材を離座させる工程(e)、および前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かす工程(f)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記変更弁を作動させる方法。」と訂正する。

訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項4において、「請求項3に記載の方法。」とあるのを、「請求項2に記載の方法。」と訂正する。

訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項5を、「前記弁部材を離座させる工程(e)は、前記弁部材を回転軸の方向に移動することを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。」と訂正する。

訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項6において、「前記方法は、・・・を含むことを特徴とする前記方法。」とあるのを、「前記方法は、前記弁部材が前記第1位置と前記第2位置との間で移動する場合に、(a)前記弁部材を前記弁座から軸方向に離反させて離座させるステップと、(b)前記弁部材を前記弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、(c)前記弁部材を前記移動した位置において軸方向に移動させて前記弁座に着座させるステップと、を含み、前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。」と訂正する。

訂正事項7) 特許請求の範囲の請求項7において、「請求項6に記載の方法。」とあるのを、「請求項5に記載の方法。」と訂正する。

訂正事項8) 特許請求の範囲の請求項8を、「前記ステップ(a)では前記正味の差圧力の向きを変更し、前記ステップ(c)では該差圧力を再現するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の方法。」と訂正する。

訂正事項9) 特許請求の範囲の請求項9を削除する。

訂正事項10) 特許請求の範囲の請求項10において、「前記方法は、・・・を含むことを特徴とする前記方法。」とあるのを「前記方法は、前記弁部材を前記第1位置と前記第2位置の間で移動させる際に、(a)前記差圧力の向きを変更して前記弁部材を前記弁座から軸方向に移動させるステップと、(b)前記圧力差から実質的に開放された状態で前記弁部材をハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、(c)前記移動した位置において前記差圧力を再現させて前記弁部材を前記弁座に着座させるステップと、を含み、前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。」と訂正する。

訂正事項11) 特許請求の範囲の請求項11を削除する。

訂正事項12) 特許請求の範囲の請求項12において、「請求項10に記載の方法。」とあるのを、「請求項8に記載の方法。」と訂正する。

訂正事項13) 特許請求の範囲の請求項3?8、10、12の項番を繰り上げ、【請求項2】、【請求項3】、【請求項4】、【請求項5】、【請求項6】、【請求項7】、【請求項8】、【請求項9】と訂正する。

訂正事項14) 特許明細書の段落【0017】において「前記弁部材を離座できるように差圧力を解消させ、」とあるのを「前記弁部材を離座できるように差圧力の向きを変更し、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1)について
訂正事項1)は、イ:請求項1の各工程に符号を付す、ロ:「差圧力を解消し」との記載を「差圧力の向きを変更し」と訂正する、ハ:「前記回転バルブ部材38を前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、」との記載を「前記回転バルブ部材38が前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、」と訂正する、ニ:「流体流れ方向を変更する、」を「流体流れ方向を変更し、前記差圧力の向きを変更する工程(e)、前記偏椅力を作用させる工程(f)、および前記弁部材を移動させる工程(g)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる、」と訂正する、ものであるが、イの訂正は、請求項1の各工程に符号を付すことにより、請求項1における限定事項を明確化するものであり、ロの訂正は、「差圧力を解消し」との記載を「差圧力の向きを変更し」と訂正することにより、特許明細書の発明の詳細な説明の記載との齟齬を解消するものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、ハの訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。さらに、ニの訂正は、工程(e)?(g)が「単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項ハについては、特許明細書の【0037】,【0049】,【0050】,【0054】,【0065】,【0066】,【0069】に記載されているから、この訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2),9),11)について
訂正事項2),9),11)は、請求項2,9,11を削除するものであり、特許請求の範囲の減縦を目的とするものであるといえ、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。

(3)訂正事項3)について
訂正事項3)は、イ:請求項3の各工程に符号を付す、ロ:「係合から外れるように動かす」との記載を「係合から外れるように離座させる」と訂正し、「弁部材を第2位置に」との記載を「弁部材を離座させた状態で第2位置に」と訂正する、ハ:「着座させること、を含む」を「着座させること、を含み、前記第1および第2圧力領域を連通させる工程(d)、前記弁部材を離座させる工程(e)、および前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かす工程(f)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」と訂正する、ものであるが、イの訂正は、請求項3の各工程に符号を付すことにより、請求項3における限定事項を明確化するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また。ロの訂正は、「係合から外れるように動かすこと」を「係合から外れるように離座させる」と限定し、「弁部材を第2位置に整列するように動かす」を「弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かす」と限定するものであり、また、ハの訂正は、工程(e)?(g)が、「単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことを限定するものであるから、これらの訂正は、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項ロ、ハについては、特許明細書の【0037】,【0049】,【0050】,【0054】,【0065】,【0066】,【0069】に記載されているから、これらの訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4),7),12)について
訂正事項4),7),12)は、請求項2,9,11の削除に伴い、請求項3,10,12をそれぞれ請求項2,8,9に繰り上げることによって生じる引用請求項番号の齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5)について
訂正事項5)のうち、「請求項4」を「請求項3」とする訂正は、請求項2の削除に伴い、請求項3を請求項2に繰り上げることによって生じる引用請求項番号の齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 また、「前記弁部材を前記弁座面との係合から外れるように動かす工程」を「前記弁部材を離座させる工程」とする訂正は、該工程が「離座」であることを限定するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項については、特許明細書の【0037】,【0049】,【0050】,【0054】,【0065】,【0066】,【0069】に記載されているから、この訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6)について
訂正事項6)は、イ:請求項6の各ステップに符号を付す、ロ:「他方の位置まで移動させる」との記載を「前記第1位置と前記第2位置との間を移動させる」と訂正する、ハ:「着座させるステップと、を含む」を「着座させるステップと、を含み、前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」と訂正する、ものであるが、イの訂正は、請求項6の各ステップに符号を付すことにより、請求項6における限定事項を明確化するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、ロの訂正は、「他方の位置まで」を「前記第1位置と前記第2位置との間」と限定するものであり、また、ハの訂正は、ステップ(a)および(b)が、「単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことを限定するものであるから、これらの訂正は、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項ロ、ハについては、特許明細書の【0037】,【0049】,【0050】,【0054】,【0065】,【0066】,【0069】に記載されているから、これらの訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項8)について
訂正事項8)のうち、「請求項6」を「請求項5」とする訂正は、請求項2の削除に伴い、請求項3を請求項2に繰り上げることによって生じる引用請求項番号の齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、「差圧力を解消し」を「差圧力の向きを変更し」とする訂正は、これにより、特許明細書の発明の詳細な説明の記載との齟齬を解消するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(8)訂正事項10)について
訂正事項10)は、イ:請求項10の各ステップに符号を付す、ロ:「差圧力を解消して」との記載を「差圧力の向きを変更して」と訂正する、ハ:「他方の位置まで移動させる」との記載を「前記第1位置と前記第2位置との間を移動させる」と訂正する、ニ:「着座させるステップと、を含む」を「着座させるステップと、を含み、前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」と訂正する、ものであるが、イの訂正は、請求項10の各ステップに符号を付すことにより、請求項10における限定事項を明確化するものであり、ロの訂正は、「差圧力を解消して」との記載を「差圧力の向きを変更して」と訂正することにより、特許明細書の発明の詳細な説明の記載との齟齬を解消するものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。また、ハの訂正は、「他方の位置まで」を「前記第1位置と前記第2位置との間」と限定するものであり、また、ニの訂正は、ステップ(a)および(b)が「単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことを限定するものであるから、これらの訂正は、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項ハ、ニについては、特許明細書の【0037】,【0049】,【0050】,【0054】,【0065】,【0066】,【0069】に記載されているから、この訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項13)について
訂正事項13)は、請求項2,9,11の削除に伴って、請求項3?8、10、12の項番を、それぞれ請求項2?9に繰り上げるもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(10)訂正事項14)について
訂正事項14)は、訂正事項1),8),10)による特許請求の範囲の訂正によって生じる、特許明細書の発明の詳細な説明と特許請求の範囲との齟齬を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものといえ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正請求の適否についての結論
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、これを認容する。

【3】本件発明
特許第3307921号の請求項1?9に係る発明(以下、「本件発明1?9」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】 (a)高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとをこれらのポートが開口している弁座を介して弁室に連通させ、
(b)第1および第2位置間で前記弁座に対して移動するように前記弁室内に弁部材を配置し、
(c)前記弁部材を前記弁座上の第1位置において前記弁座に着座密封係合させる方向に前記弁部材に差圧力を加え、
(d)前記弁部材が前記第1位置に着座しているときに、前記低圧ポートを弁部材流通路を介して前記第1システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記弁室を介して前記第2システム・ポートに連通させることによって、システムを通るシステム流体を一方向に向け、
(e)前記弁部材が離座できるように前記差圧力の向きを変更し、
(f)前記弁部材が前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、
(g)前記第1位置から第2位置まで、前記弁部材が前記弁座から離れた経路に沿って、前記偏椅力に応答して前記弁部材を移動させ、
(h)前記弁部材を前記第2位置において前記弁座と係合するように押し付けるために前記差圧力を再現し、
(i)前記弁部材が前記第2位置に着座しているときに、前記低圧ポートを前記弁部材流通路を介して前記第2システムに連通させるとともに、前記高圧ポートと前記第1システム・ポートとを前記弁室を介して連通させることによって、システムを通る流体流れ方向を変更し、
前記差圧力の向きを変更する工程(e)、前記偏椅力を作用させる工程(f)、および前記弁部材を移動させる工程(g)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる、ことを特徴とする流体システム内の流れの方向を変更する方法。
【請求項2】 高圧ポートを第1システム・ポートに連通させるとともに低圧ポートを第2システム・ポートに連通させ、また前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させることを交互に行うことにより変更弁を作動させる方法であって、
(a)前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるように弁部材を第1位置に配置させること、
(b)第1の弁部材圧力領域を前記低圧ポートに連通させるとともに、対向する第2の弁部材圧力領域をより大きい圧力に連通させることによって、前記弁部材にまたがって第1の圧力差を形成すること、
(c)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の連通がほぼ阻止されるように、前記第1位置において前記弁部材を弁座面に強制的に着座させること、
(d)前記圧力差を実質的に変えるように前記第1及び第2圧力領域を連通させること、
(e)前記弁部材を前記弁座面との係合から外れるように離座させること、
(f)前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かすこと、および
(g)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの連通がほぼ阻止されるように、前記第2位置において前記弁部材を弁座面に着座させること、を含み、
前記第1および第2圧力領域を連通させる工程(d)、前記弁部材を離座させる工程(e)、および前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かす工程(f)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記変更弁を作動させる方法。
【請求項3】 前記弁部材を動かす工程(f)は、前記弁部材を前記第1位置と整列する状態から前記第2位置と整列する状態に回転させることを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項4】 前記弁部材を離座させる工程(e)は、前記弁部材を回転軸の方向に移動することを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】 高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法であって、
前記方法は、前記弁部材が前記第1位置と前記第2位置との間で移動する場合に、
(a)前記弁部材を前記弁座から軸方向に離反させて離座させるステップと、
(b)前記弁部材を前記弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、
(c)前記弁部材を前記移動した位置において軸方向に移動させて前記弁座に着座させるステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。
【請求項6】 前記ステップ(a)および(b)において、前記弁部材を前記弁座から離座させるために、該弁部材に作用する正味の差圧力の向きを変更すること特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】 前記ステップ(a)では前記正味の差圧力の向きを変更し、前記ステップ(c)では該差圧力を再現するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】 高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法であって、
前記方法は、前記弁部材を前記第1位置と前記第2位置の間で移動させる際に、
(a)前記差圧力の向きを変更して前記弁部材を前記弁座から軸方向に移動させるステップと、
(b)前記圧力差から実質的に開放された状態で前記弁部材をハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、
(c)前記移動した位置において前記差圧力を再現させて前記弁部材を前記弁座に着座させるステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。
【請求項9】 前記所定の角度は、約90度であることを特徴とする請求項8に記載の方法。」

【4】請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1?12に係る発明を無効にする、との審決を求め、その理由として、(1)本件特許の請求項1、3?12に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、これらの特許は無効にされるべきである、(2)本件特許の請求項2は、特許法第36条第6項第1、2号の規定に違反する、と主張し、証拠方法として甲第1号証(米国特許第2,855,000号明細書)、甲第2号証(特開昭61-48684号公報)、甲第3号証(特開昭61-38282号公報)、甲第4号証(特開平4-341668号公報)、及び甲第5号証(実願平2-22088号(実開平3-114681号)のマイクロフィルム)を提出し、さらに甲第1号証(抄訳)を提出している。

【5】被請求人の主張
一方、被請求人は、本件特許の請求項1、3?12に係る発明は、いずれも甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明から当業者が容易になしえたものでなく、特許法第29条第2項の規定に該当するものでないことは明らかである、また、平成18年1月11日付けの訂正請求により請求項2は削除されたから、これにより特許法第36条第6項第1、2号違反については解消された、旨主張している。

【6】当審で通知した無効理由の概要
当審において通知した平成17年9月28日付けの職権審理による無効理由の概要は、以下のとおりである。
1.本件の請求項3,4に係る発明は、下記刊行物1に記載された発明であるから、本件の請求項3,4に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、本件の請求項1,5?12に係る発明は、下記刊行物1,2に記載された発明と下記各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1,5?12に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。したがって、本件の請求項1,3?12に係る発明についての特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
2.本件の請求項1?5,7?10に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号、又は第2号の規定に違反してされたものであるから、本件の請求項1?5,7?10に係る発明についての特許は特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

刊行物1:米国特許第2,855,000号明細書(甲第1号証)
刊行物2:特開昭61-48684号公報(甲第2号証)

〔以下、蒸気圧縮冷凍システム等に用いられる四方弁において、弁の開閉位置の切り換えをポート面から離された状態で行うことの周知例として〕
刊行物3:特開昭61-38282号公報(甲第3号証)
刊行物4:特開昭63-34381号公報
〔以下、回転バルブの弁部材を移動させるのに、これを正逆方向にそれぞれ90゜回転させるようにすることの周知例として〕
刊行物5:実願平2-22088号(実開平3-114681号)のマイクロフィルム(甲第5号証)

【7】当審で通知した無効理由についての当審の判断
1.特許法第36条第6項第1、2号違反について
平成18年1月11日付けの訂正請求が認容されたことにより、請求項2,9,11は削除され、請求項1,3?5,7,8,10,12は訂正されたから、これにより特許法第36条第6項第1号違反については解消された。

2.特許法第29条第2項違反について
(1)刊行物の記載事項
(1-1)刊行物1には、「REVERSE FLOW VALVE」(流れ切換弁)に関して、審判請求人が甲第1号証(抄訳)として提出した上記刊行物1の抄訳における摘記事項A)?G)が、第1?3図とともに記載されている。

上記A)?G)の記載と、併せて第1?3図を参酌すれば、上記刊行物1の流れ切換弁は、冷凍又は空気調和システムのような流体システムに使用される流れ切換え四方弁であって、ケーシング10に設けられたヘッダ16が、圧縮機の高圧側に連通する高圧導管26のポートと、圧縮機の低圧側に連通する低圧導管28のポートと、冷凍システムの凝縮器及び蒸発器のような2つの熱交換器に連通する第1,第2のシステム側導管30,32のポートとを有する室(弁室)をケーシング10内に規定するとともに、各導管のポートが第1図におけるヘッダ16の上面(以下、「ヘッダ16上面」という。)を介して該弁室に開口しているものと認められ、ケーシング10内には、該ヘッダ16上面の開口部に対して移動する回転バルブ部材38が配置され(この場合、ヘッダ16上面開口部の回転バルブ部材38と対面する部分が弁座として機能することは自明である。)、該回転バルブ部材38は、単一の手動回転ノブ80,動作シャフト78,均等化選択弁54,ストッパ60,62,バネ64等で構成された回動機構における手動回転ノブ80の1回の駆動操作(人力による1回の駆動力の付与)によって偏倚力が与えられ、これにより、低圧導管28のポートを回転バルブ部材38の流通路(室42)を介して第1のシステム側導管30のポートに連通させるとともに、高圧導管26のポートを前記室(室44:室44は後述するように室11とポート52で連通している。)を介して前記第2のシステム側導管32のポートに連通させてシステム流体を一方向に向ける第1位置と、低圧導管28のポートを前記流通路(室42)を介して第2のシステム側導管32のポートに連通させるとともに高圧導管26のポートを前記室を介して第1のシステム側導管30のポートに連通させてシステム流体を反対方向に向ける第2位置(第3図の位置)との間で、流路を交互に変えるよう、ヘッダ16上面にほぼ平行に回転移動できるものと認められる。
また、回転バルブ部材38には、室44内の高圧を室11から回転バルブ部材38に作用させるためのポート52が形成され、これにより、室11内に露出する回転バルブ部材38の第2の圧力領域が、低圧導管28のポートに連通する室42内の、該第2の圧力領域と対向する部分に存在する第1の圧力領域よりも大きい圧力と連通され、前記回転バルブ部材38にまたがって第1の圧力差が形成されることにより、回転バルブ部材38を確実に着座させるように作用する差圧力(以下、「正味の差圧力」ともいう。)が回転バルブ部材38に与えられるようになっており、これにより、前記第1位置または第2位置において、高圧導管26のポートと前記低圧導管28のポートとの間の連通がほぼ阻止されるようになっているものと認められる。
またさらに、回転バルブ部材38には、ポート52より大径で常時は均等化選択弁54によって閉じられたポート68が、前記第1および第2圧力領域を連通させて前記圧力差を実質的に変える(差圧力を減ずる)ために設けられているものと認められる。
そして、回転バルブ部材38を第1位置から第2位置へ移動させる方法は、先ず、手動回転ノブ80に1回の駆動操作を与えて動作シャフト78から均等化選択弁54に偏倚力を与えると、最初に均等化選択弁54がバネ64に抗して回動し、これによりポート68が開いて室11内が低圧となり、回転バルブ部材38に作用する上記差圧力が減少して回転バルブ部材38の移動が容易となった後、均等化選択弁54がさらに回動してストッパ60に係合し、これにより、ストッパ60を介して回転バルブ部材38に上記偏倚力が与えられ、該偏倚力により回転バルブ部材38がヘッダ16上面の弁座部分から横方向に離座し、ケーシング10の軸を中心に所定角度だけ回転して第1位置から第2位置まで移動し(これまでの動作は、すべて単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われている。)、次に、手動回転ノブ80からの上記偏倚力を解除することにより、均等化選択弁54がばね64で引張られてポート68を閉じ、これにより、回転バルブ部材38を確実に着座させるように作用する差圧力が、再び回転バルブ部材38に与えられるようになっているものと認められ、また、第2位置から第1位置への移動も同様の操作で行われるものと認められる。
したがって、上記刊行物1には、
「(a)高圧導管26のポートと、低圧導管28のポートと、第1,第2のシステム側導管30,32のポートとをこれらのポートが開口している弁座を介して弁室に連通させ、
(b)第1および第2位置間で前記弁座に対して移動するように前記弁室内に回転バルブ部材38を配置し、
(c)前記回転バルブ部材38を前記弁座上の第1位置において前記弁座に着座密封係合させる方向に前記回転バルブ部材38に差圧力を加え、
(d)前記回転バルブ部材38が前記第1位置に着座しているときに、前記低圧導管28のポートを回転バルブ部材38の流通路を介して前記第1のシステム側導管30のポートに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートを前記弁室を介して前記第2のシステム側導管32のポートに連通させることによって、システムを通るシステム流体を一方向に向け、
(e)前記回転バルブ部材38が離座できるように前記差圧力を減少させ、
(f)前記回転バルブ部材38が前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、
(g)前記第1位置から第2位置まで、前記偏倚力に応答して前記回転バルブ部材38を移動させ、
(h)前記回転バルブ部材38を前記第2位置において前記弁座と係合するように押し付けるために前記差圧力を再現し、
(i)前記回転バルブ部材38が前記第2位置に着座しているときに、前記低圧導管28のポートを前記流通路を介して前記第2システムに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートと前記第1のシステム側導管30のポートとを前記弁室を介して連通させることによって、システムを通る流体流れ方向を変更し、
前記差圧力を変更する工程(e)、前記偏椅力を作用させる工程(f)、および前記弁部材を移動させる工程(g)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われる、流体システム内の流れの方向を変更する方法。」の発明(以下、「刊行物1の第1の発明」という。)、及び
「高圧導管26のポートを第1のシステム側導管30のポートに連通させるとともに低圧導管28のポートを第2のシステム側導管32のポートに連通させ、また前記高圧導管26のポートを前記第2のシステム側導管32のポートに連通させるとともに前記低圧導管28のポートを前記第1のシステム側導管30のポートに連通させることを交互に行うことにより切換弁を作動させる方法であって、
(a)前記低圧導管28のポートを前記第1のシステム側導管30のポートに連通させるように回転バルブ部材38を第1位置に配置させること、
(b)回転バルブ部材38の第1の圧力領域を前記低圧導管28のポートに連通させるとともに、対向する第2の圧力領域をより大きい圧力に連通させることによって、前記回転バルブ部材38にまたがって第1の圧力差を形成すること、
(c)前記高圧導管26のポートと前記低圧導管28のポートとの間の連通がほぼ阻止されるように、前記第1位置において前記回転バルブ部材38を弁座面に強制的に着座させること、
(d)前記圧力差を実質的に変えるように前記第1および第2圧力領域を連通させること、
(e)前記回転バルブ部材38を前記弁座との係合から外れるように離座させること、
(f)前記回転バルブ部材38を第2位置に整列するように動かすこと、および
(g)前記高圧導管26のポートと前記低圧導管28のポートとの連通がほぼ阻止されるように、前記第2位置において前記回転バルブ部材38を弁座面に着座させること、を含み、
前記第1および第2圧力領域を連通させる工程(d)、前記弁部材を弁座面との係合から外れるように動かす工程(e)、および前記弁部材を第2位置に整列するように動かす工程(f)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われる前記切換弁を作動させる方法。」の発明(以下、「刊行物1の第2の発明」という。)、及び
「高圧導管26のポートと、低圧導管28のポートと、第1,第2のシステム側導管30,32のポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなすヘッダ16上面を介して該室に開口しているケーシング10と、第1位置と第2位置との間で前記ヘッダ16上面にほぼ平行に移動できるように前記ケーシング10内に配置された回転バルブ部材38と、を有し、前記回転バルブ部材38は、前記第1位置においては、前記低圧導管28のポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートを前記第2のシステム側導管32のポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧導管28のポートを前記第2のシステム側導管32のポートに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートを前記第1のシステム側導管30のポートに連通させるようになっており、また前記回転バルブ部材38は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧導管28のポート間の連通を阻止するようになっており、前記回転バルブ部材38は、前記高圧導管26のポートと前記低圧導管28のポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該回転バルブ部材38を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向切換弁の制御方法であって、
前記方法は、前記回転バルブ部材38が前記第1位置と前記第2位置との間で移動する場合に、
(a)前記回転バルブ部材38に加わる差圧力を減少させるステップと、
(b)前記回転バルブ部材38を前記差圧力が減少した状態でケーシング10の軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、
(c)前記回転バルブ部材38を前記移動した位置において前記差圧力を再現するステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われる前記方法。」の発明(以下、「刊行物1の第3の発明」という。)、及び
「高圧導管26のポートと、低圧導管28のポートと、第1および第2のシステム側導管32のポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなすヘッダ16上面を介して該室に開口しているケーシング10と、第1位置と第2位置との間で前記ヘッダ16上面にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された回転バルブ部材38と、を有し、前記回転バルブ部材38は、前記第1位置においては、前記低圧導管28のポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートを前記第2のシステム側導管32のポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧導管28のポートを前記第2のシステム側導管32のポートに連通させるとともに、前記高圧導管26のポートを前記第1のシステム側導管30のポートに連通させるようになっており、また前記回転バルブ部材38は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧導管28のポート間の連通を阻止するようになっており、前記回転バルブ部材38は、前記高圧導管26のポートと前記低圧導管28のポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該回転バルブ部材38を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法であって、
前記方法は、前記回転バルブ部材38を前記第1位置と前記第2位置の間で移動させる際に、
(a)前記差圧力を減少させるステップと、
(b)前記差圧力を減少させた状態で前記回転バルブ部材38をケーシング10の軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間移動させるステップと、
(c)前記移動した位置において前記差圧力を再現させて前記回転バルブ部材38を前記弁座に着座させるステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われる前記方法。」の発明(以下、「刊行物1の第4の発明」という。)が記載されているものと認める。

(1-2)刊行物2には、「ロータリー式多位置弁」に関して第1?6図とともに以下の事項が記載されている。
H)「本発明は圧力流体の流路切換並びに流量制御などに用いうる弁に関し、特に新規なステップ式電磁駆動装置を利用したロータリー弁に関する。」(第1頁右下欄1?3行)
I)「本発明の目的は、ソレノイドを利用したステップ式電磁アクチュエータを使用し、ロータリーピストン型弁体を流体圧によってポート面から浮かせ、次いでアクチュエータによって回転させ、その後流体圧によってポート面に圧着させるという新しい作動方式を採用することによって達成される。
すなわち、本発明の弁は回転軸位置に流体通路を設けたロータリーピストン型主弁体と、該主弁体の底面が接するポート面の中心軸位置に少くとも低圧ポートを設けたボディと、プランジャが軸線方向に吸引されることにより軸線のまわりに回転力が生ずるように構成された電磁式アクチュエータとが同軸に結合され、前記流体通路の上面開口端と前記プランジャの先端に設けられたニードルとがパイロット弁構造を形成していて、パルス信号により主弁体がステップ的に回転するに先立って前記パイロット弁が主弁体上面の圧力を解除することにより主弁体の上下にかかる圧力を逆転して主弁体をポート面から浮上させるように構成されたものである。」(第2頁左上欄20行?右上欄20行)
J)「本発明の弁は、前述のように構成されているので、通常流体圧が掛かっているときは、ピストン型主弁体全体がボディ底面のポート面に押圧されるようになっているが、電気的パルス信号によりアクチュエータが作動しプランジャが引上げられると、先づニードル弁体が上ってパイロット弁が開き、主弁体上面の空間が低圧ポートと連通するので主弁体上面の圧力が解除され、主弁体下部にかかる流体圧力が主弁体を押し上げる。それに続いてプランジャに設けられたピンはプランジャの周囲に設けられたガイドの歯の斜面部に導かれてプランジャを回転させ、このときの回転力は主弁体の上部に設けられたアクチュエータとの結合部に伝えられ、浮上した主弁体を回転させる。パルス信号が終ると主弁体と同時にパイロット弁も再び閉じられるので、供給ポートから主弁体の周りのピストンリングの隙間を漏洩してその上面空間に廻った高圧流体は逃げを失う結果、主弁体はボディ底面のポート面に一層押圧されるに至る。
このようにして、主弁体はパルス数に応じてガイドの歯の数だけ回転することになるが、主弁体下部はボディの底面あるいは側面に設けられたポートの数や配置に応じて、これらの一部または全部を塞ぐことが可能な形に形成されているので、主弁体が回転するに応じてポートが順次絞られまた閉止され、あるいはポートが切換えられることになる。」(第2頁右下欄11行?第3頁左上欄17行)
K)「第1図に、本発明に係る多位置弁を三方切換弁として利用した例を示す。
ボディ1の底部側方に供給ポート2A、底面に切換ポート2Bおよび2C、さらに底面中央に低圧側ポート2Dが設けられ、ピストン型主弁体3が弁室内に回転可能に嵌合している。
ボディ1の上方に取り付けられたソレノイド4の中心空間には、プランジャばね6によって常時下方に押圧されているプランジャ5が挿入されている。プランジャ5の下部には、プランジャを横に貫いてピン7が設けられており、・・・ピン7の突出した部分は主弁体3の上部に設けられた結合部であるすり割り溝10に遊動自在に係合していて、プランジャ5の回転運動のみが主弁体3に伝えられるようになっている。(第2図)
ピン7の動きを制限し、上下運動を回転運動に転換するための上ガイド8および下ガイド9は、プランジャ5の下部を取り巻いてボディ1の上部内側に取り付けられており、ガイドの対向する部分が鋸歯状に形成されている。」(第3頁右上欄3行?左下欄5行)
L)「上述のように構成された電磁式アクチュエータのプランジャ5の下端にはニードル弁体12がニードル弁ばね13によって下方に押されるように取り付けられてあり、一方主弁体3にはその回転軸にそって上面から下面まで貫通して流体通路11が設けられている。そして、流体通路11の上端部とニードル弁体12とでパイロット弁が構成されている。主弁体3にはピストンリング14が嵌めてあり、圧力流体が主弁体上面へ漏洩するのを制限しながら主弁体の浮上および回転を妨げないようになっている。15はベアリングボールで、主弁体3の浮き上り量を僅少に抑え、かつ主弁体が浮き上った状態で回転するのを円滑にするために設けられている。」(第3頁左下欄18行?右下欄11行)
M)「このように構成された弁に電気パルス信号が与えられると、プランジャ5がソレノイド4に吸引され、ニードル弁体12も引かれてパイロット弁が開く。そのため主弁体3の上面の圧力は除かれ、主弁体下部にかかる圧力流体が主弁体を浮かせて、ポート面と主弁体下面との隙間を流体が流れるようになる。このことがピストンリング14およびボールの効果とも相俟って主弁体3を非常に軽く回転させるのに役立っている。次に信号が切れてプランジャ5が復帰すると、主弁体上面のパイロット弁が閉じると同時に主弁体も閉じ、次いでピストンリング14の周囲から洩れる流体が主弁体の上面に廻って上部空間の圧力を高めるので、主弁体をボディの底面に更に押し付け、ポート面からの流体の漏洩を止めることになる。」(第4頁左上欄5?19行)

上記H)?M)の記載と、併せて第1,2,5,6図を参酌すれば、上記刊行物2の第1図のロータリー式多位置弁は、高圧ポートである供給ポート2Aからの流体を、ロータリーピストン型の主弁体3を回転させることにより切換ポート2B,2Cに選択的に供給するための切換弁(三方切換弁)であって、各弁位置(動作位置)におけるポート面からの流体の漏洩を止めるため、供給ポート2Aからの圧力流体を、主弁体3に嵌められたピストンリング14を介して主弁体3上面に漏洩させ、主弁体3の上下面に圧力差(差圧力)を与えることによって、主弁体3をボディの底面に押し付けるとともに、主弁体3に低圧側ポート2Dに連通する流体通路11を設け、第1の弁位置から第2の弁位置までの弁位置切り換え時に、流体通路11の上端部とニードル弁体12とで構成されたパイロット弁を開いて主弁体3上面の高圧領域を低圧ポート側の低圧領域と連通させ、これにより主弁体3に作用する差圧力の向きを逆にして、主弁体3を弁座面との係合から外れるように浮上させ、プランジャ5とピン7とガイド8,9とから構成された回動機構により、主弁体3に偏倚力を作用させて主弁体3を第1の弁位置から第2の弁位置まで移動させ、パイロット弁を閉じることにより、主弁体3の上下面に最初の差圧力を与えて再着座させるようにしたもの、即ち、主弁体3の弁位置の移動を、差圧力を解消して前記主弁体3を前記弁座から軸方向に移動させるステップと、前記圧力差から実質的に開放された状態で、回動機構からの偏倚力により、前記主弁体3をハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて第2の弁位置まで移動させるステップと、前記移動した位置において前記差圧力を再現させて前記主弁体3を弁座に着座させるステップとによって行っているものと認められる。

したがって、上記刊行物2には、
「高圧ポートからの流体を、弁部材を回転させることにより切換ポートに選択的に供給する切換弁であって、各弁位置におけるポート面からの流体の漏れを防止するために、弁部材が、各弁位置において該弁部材を確実に着座させるように作用する差圧力を受けるようになっている切換弁の制御方法において、弁部材が離座できるように前記差圧力を逆転させ、弁部材を第1の弁位置から第2の弁位置まで動くように偏倚力を作用させ、第1の弁位置から第2の弁位置まで弁部材が弁座から離れた経路に沿って弁部材を移動させ、弁部材を第2の弁位置において弁座と係合するように押し付けるために最初の差圧力を再現するようにする方法」の発明(以下、「刊行物2の発明」という。)が記載されているものと認める。

(2)本件発明1に対する判断
(2-1)本件発明1と刊行物1の第1の発明との対比
本件発明1と刊行物1の第1の発明とを対比すれば、刊行物1の第1の発明の「高圧導管26のポート」は本件発明1の「高圧ポート」に相当し、以下同様に、刊行物1の第1の発明の「低圧導管28のポート」は本件発明1の「低圧ポート」に、「第1および第2のシステム側導管30,32のポート」は「第1および第2システム・ポート」に、「回転バルブ部材38」は「弁部材」にそれぞれ相当している。また、回転バルブ部材38(弁部材)が離座できるように、「差圧力を減少」させることは、「差圧力を変更」する限りにおいて、「差圧力の向きを変更」することと異ならない。
したがって、本件発明1と刊行物1の第1の発明は、
「(a)高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとをこれらのポートが開口している弁座を介して弁室に連通させ、
(b)第1および第2位置間で前記弁座に対して移動するように前記弁室内に弁部材を配置し、
(c)前記弁部材を前記弁座上の第1位置において前記弁座に着座密封係合させる方向に前記弁部材に差圧力を加え、
(d)前記弁部材が前記第1位置に着座しているときに、前記低圧ポートを弁部材流通路を介して前記第1システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記弁室を介して前記第2システム・ポートに連通させることによって、システムを通るシステム流体を一方向に向け、
(e)前記弁部材が離座できるように前記差圧力を変更し、
(f)前記弁部材を前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、
(g)前記第1位置から第2位置まで、前記偏倚力に応答して前記弁部材を移動させ、
(h)前記弁部材を前記第2位置において前記弁座と係合するように押し付けるために前記差圧力を再現し、
(i)前記弁部材が前記第2位置に着座しているときに、前記低圧ポートを前記弁部材流通路を介して前記第2システムに連通させるとともに、前記高圧ポートと前記第1システム・ポートとを前記弁室を介して連通させることによって、システムを通る流体流れ方向を変更する方法。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
a)本件発明1では、弁部材が離座できるように差圧力の向きを変更し、弁部材が弁座から離れた経路に沿って第1位置から第2位置まで移動するようにしているのに対し、刊行物1の第1の発明では、弁部材が離座できるように差圧力を減少させてはいるものの、向きを変更させているものではなく、さらに、弁部材が弁座から離れた経路に沿って第1位置から第2位置まで移動するようにも構成していない点。
b)本件発明1では、工程(e)、(f)、(g)を、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行うようにしているのに対し、刊行物1の第1の発明では、このような工程を単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行っている点。

(2-2)相違点の検討
1)相違点a)に関して
刊行物2には、高圧ポートからの流体を、弁部材を回転させることにより切換ポートに選択的に供給する切換弁であって、各弁位置におけるポート面からの流体の漏れを防止するために、弁部材が、各弁位置において該弁部材を確実に着座させるように作用する正味の差圧力を受けるようになっている切換弁の制御方法において、弁部材が離座できるように前記差圧力を逆転させ、弁部材を第1の弁位置から第2の弁位置まで動くように偏倚力を作用させ、第1の弁位置から第2の弁位置まで弁部材が弁座から離れた経路に沿って弁部材を移動させ、弁部材を第2の弁位置において弁座と係合するように押し付けるために最初の差圧力を再現するようにする方法が記載されている。そして、冷凍又は空気調和システムに用いられる四方弁において、弁位置の切り換えを、弁を浮上させた状態で行うことは刊行物3,4にみられるように周知技術であるとともに、刊行物1の第1の発明の回転バルブ部材38(弁部材)が、各ポート52,68の径と各受圧面の面積の選び方によって、ヘッダ16上面の弁座から浮上しうることは当業者において自明であるから、この発明を刊行物1の第1の発明に適用することには何ら困難性は認められない。
してみれば、上記刊行物1の第1の発明において、弁部材が離座できるように差圧力を減少させる代わりにこれを逆転、すなわち向きを変更させ、弁部材が弁座から離れた経路に沿って第1位置から第2位置まで移動するように構成することは、上記刊行物1の第1の発明に刊行物2の発明を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。
2)相違点b)に関して
弁の駆動を単一のソレノイドの励磁に基づいて行わせることは、例えば刊行物2?4にみられるように従来周知技術であるから、動作手段として、単一の手動回転ノブに代えて単一のソレノイドを用い、これに励磁による駆動操作を与えることは、当業者が必要に応じて容易に行い得たものというべきである。

そして、本件発明1が奏する作用効果は、刊行物1の第1の発明と刊行物2の発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
よって、本件発明1は、刊行物1の第1の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明2に対する判断
(3-1)本件発明2と刊行物1の第2の発明との対比
本件発明2と刊行物1の第2の発明とを対比すれば、刊行物1の第2の発明の「高圧導管26のポート」は本件発明3の「高圧ポート」に相当し、以下同様に、刊行物1の第2の発明の「第1システム側導管30のポート」は本件発明2の「第1システム・ポート」に、「低圧導管28のポート」は「低圧ポート」に、「第2のシステム側導管32のポート」は「第2システム・ポート」に、「切換弁」は「変更弁」に、「回転バルブ部材38」は「弁部材」に、回転バルブ部材38の「第1の圧力領域」は「第1の弁部材圧力領域」に、同じく「第2の圧力領域」は「第2の弁部材圧力領域」にそれぞれ相当している。また、本件発明2における「弁部材を弁座面との係合から外れるように離座させる」は、弁部材を弁座面との係合から外れるように、すなわち弁座面から離れるように離座させるもので、刊行物1の第2の発明の「弁部材を弁座との係合から外れるように(横方向に)離座させる」ものとは異なるが、「弁部材を弁座との係合から外れるように離座させ」ている限りにおいて、刊行物1の第2の発明と異なるものでない。
したがって、本件発明2と刊行物1の第2の発明は、
「高圧ポートを第1システム・ポートに連通させるとともに低圧ポートを第2システム・ポートに連通させ、また前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させることを交互に行うことにより変更弁を作動させる方法であって、
(a)前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるように弁部材を第1位置に配置させること、
(b)第1の弁部材圧力領域を前記低圧ポートに連通させるとともに、対向する第2の弁部材圧力領域をより大きい圧力に連通させることによって、前記弁部材にまたがって第1の圧力差を形成すること、
(c)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の連通がほぼ阻止されるように、前記第1位置において前記弁部材を弁座面に強制的に着座させること、
(d)前記圧力差を実質的に変えるように前記第1および第2圧力領域を連通させること、
(e)前記弁部材を前記弁座との係合から外れるように離座させること、
(f)前記弁部材を第2位置に整列するように動かすこと、および前記高圧ポートと前記低圧ポートとの連通がほぼ阻止されるように、前記第2位置において前記弁部材を弁座面に着座させること、を含む前記変更弁を作動させる方法。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
a)本件発明2では、弁部材を弁座面との係合から外れるように離座させ、離座させた状態で第2位置に整列するように動かしているのに対し、刊行物1の第2の発明では、弁部材(回転バルブ部材38)を弁座面との係合から外れるように動かし、第2位置に整列するように動かしててはいるものの、弁座面から離座させ、その状態で第2位置に整列するように動かしているものではない点。
b)本件発明2では、工程(d)、(e)、(f)を、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行うようにしているのに対し、刊行物1の第1の発明では、このような工程を単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行っている点。

(3-2)相違点の検討
1)相違点a)に関して
刊行物2には、高圧ポートからの流体を、弁部材を回転させることにより切換ポートに選択的に供給する切換弁であって、各弁位置におけるポート面からの流体の漏れを防止するために、弁部材が、各弁位置において該弁部材を確実に着座させるように作用する正味の差圧力を受けるようになっている切換弁の制御方法において、弁部材が離座できるように前記差圧力を逆転させ(すなわち、弁座面から離座させ)、弁部材を第1の弁位置から第2の弁位置まで動くように偏倚力を作用させ、第1の弁位置から第2の弁位置まで弁部材が弁座から離れた経路に沿って(すなわち、弁座面から離座した状態で)弁部材を移動させ、弁部材を第2の弁位置において弁座と係合するように押し付けるために最初の差圧力を再現するようにする方法が記載されており、「2.(2)1)」で前述したのと同様の理由により、この発明を刊行物1の第2の発明に適用することには何ら困難性は認められない。
してみれば、上記刊行物1の第2の発明において、弁部材(回転バルブ部材38)を第1位置から第2位置まで移動させるにあたり、弁部材(回転バルブ部材38)を弁座面から離座させ、その状態で第2位置に整列するように動かすことは、上記刊行物1の第2の発明に刊行物2の発明を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。
2)相違点b)に関して
弁の駆動を単一のソレノイドの励磁に基づいて行わせることは、例えば刊行物2?4にみられるように従来周知技術であるから、動作手段として、単一の手動回転ノブに代えて単一のソレノイドを用い、これに励磁による駆動操作を与えることは、当業者が必要に応じて容易に行い得たものというべきである。

そして、本件発明2が奏する作用効果は、刊行物1の第2の発明と刊行物2の発明と上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
よって、本件発明2は、刊行物1の第2の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明3に対する判断
本件発明3は、本件発明2において、弁部材を動かす工程(f)が、弁部材を第1位置と整列する状態から第2位置と整列する状態に回転させることを含むようにしたものであるが、弁部材(回転バルブ部材38)を動かす工程を、弁部材を第1位置と整列する状態から第2位置と整列する状態に回転させることを含むようにすることは刊行物1の第2の発明でも行われている。
よって、本件発明3は、刊行物1の第2の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明4に対する判断
本件発明4は、本件発明3において、弁部材を離座させる工程(e)が、弁部材を回転軸の方向に移動することを含むようにしたものであるが、弁部材を離座させる工程を、弁部材を回転軸の方向に移動することを含むようにように構成することは刊行物2の発明の発明でも行われているから、本件発明4のように、弁部材を離座させる工程を、弁部材を回転軸の方向に移動することを含むようにように構成することは、上記刊行物1の第2の発明に刊行物2の発明を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。
よって、本件発明4は、刊行物1の第2の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明5に対する判断
(6-1)本件発明5と刊行物1の第3の発明との対比
本件発明5と刊行物1の第3の発明とを対比すれば、刊行物1の第3の発明の「高圧導管26のポート」は本件発明5の「高圧ポート」に相当し、以下同様に、刊行物1の第3の発明の「低圧導管28のポート」は本件発明6の「低圧ポート」に、「第1および第2のシステム側導管30,32のポート」は「第1および第2システム・ポート」に、「ヘッダ16上面」は「室壁」に、「ケーシング10」は「ハウジング」に、「回転バルブ部材38」は「弁部材」に、「流れ方向切換弁」は「流れ方向変更弁」にそれぞれ相当している。
したがって、本件発明5と刊行物1の第3の発明は、
「高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
弁部材が第1位置と第2位置との間で移動する場合における本件発明6の制御方法は、弁部材を弁座から軸方向に離反させて離座させるステップ(a)と、弁部材を弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップ(b)と、弁部材を移動した位置において軸方向に移動させて弁座に着座させるステップ(c)と、を含み、ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われるのに対し、刊行物1の第3の発明の制御方法は、弁部材(回転バルブ部材38)に加わる差圧力を減少させるステップ(a)と、弁部材を差圧力が減少した状態でハウジング(ケーシング10)の軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップ(b)と、弁部材を移動した位置において差圧力を再現するステップ(c)と、を含み、ステップ(a)および(b)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われるものである点。

(6-2)相違点の検討
上記刊行物2には、高圧ポートからの流体を、弁部材を回転させることにより切換ポートに選択的に供給する切換弁であって、各弁位置におけるポート面からの流体の漏れを防止するために、弁部材が、各弁位置において該弁部材を確実に着座させるように作用する正味の差圧力を受けるようになっている切換弁の制御方法において、弁部材が離座できるように前記差圧力を逆転させ(すなわち、弁部材を弁座から軸方向に離反させて離座させ)、弁部材を第1の弁位置から第2の弁位置まで動くように偏倚力を作用させ、第1の弁位置から第2の弁位置まで弁部材が弁座から離れた経路に沿って(すなわち、該離座した状態で)弁部材を移動させ、弁部材を第2の弁位置において弁座と係合するように押し付けるために最初の差圧力を再現するようにする方法が記載されており、「2.(2)1)」で前述したのと同様の理由により、この発明を刊行物1の第3の発明に適用することには何ら困難性は認められない。
また、弁の駆動を単一のソレノイドの励磁に基づいて行わせることは、例えば刊行物2?4にみられるように従来周知技術であるから、動作手段として、単一の手動回転ノブに代えて単一のソレノイドを用い、これに励磁による駆動操作を与えることは、当業者が必要に応じて容易に行い得たものである。
してみれば、上記刊行物1の第3の発明において、弁部材(回転バルブ部材38)が第1位置と第2位置との間で移動する場合における制御方法を、弁部材(回転バルブ部材38)を弁座から軸方向に離反させて離座させるステップ(a)と、弁部材(回転バルブ部材38)を弁座から離座した状態でハウジング(ケーシング10)の軸を中心に所定角度だけ回転させて他方の位置まで移動させるステップ(b)と、弁部材(回転バルブ部材38)を移動した位置において軸方向に移動させて弁座に着座させるステップ(c)と、を含むものとするとともに、ステップ(a)および(b)を、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行うようにすることは、上記刊行物1の第3の発明に刊行物2の発明と上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。

そして、本件発明5が奏する作用効果は、刊行物1の第3の発明と刊行物2の発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
よって、本件発明5は、刊行物1の第3の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明6に対する判断
本件発明6は、本件発明5において、ステップ(a)および(b)では、弁部材を弁座から離座させるために、弁部材に作用する正味の差圧力の向きを変更するようにしたものであるが、差圧力の向きを変更することは刊行物2の発明でも行われている。
よって、本件発明6は、刊行物1の第3の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明7に対する判断
本件発明7は、本件発明5において、ステップ(a)では正味の差圧力の向きを変更し、ステップ(c)では該差圧力を再現するようにしたものであるが、最初のステップで差圧力の向きを変更し、最後のステップで該差圧力を再現することは刊行物2の発明でも行われている。
よって、本件発明7は、刊行物1の第3の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明8に対する判断
(9-1)本件発明8と刊行物1の第4の発明との対比
本件発明8と刊行物1の第4の発明とを対比すれば、刊行物1の第4の発明の「高圧導管26のポート」は本件発明8の「高圧ポート」に相当し、以下同様に、刊行物1の第4の発明の「低圧導管28のポート」は本件発明8の「低圧ポート」に、「第1および第2のシステム側導管30,32のポート」は「第1および第2システム・ポート」に、「ヘッダ16上面」は「室壁」に、「ケーシング10」は「ハウジング」に、「回転バルブ部材38」は「弁部材」に、「流れ方向切換弁」は「流れ方向変更弁」にそれぞれ相当している。
したがって、本件発明10と刊行物1の第4の発明は、
「高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法。」
で一致し、以下の<相違点>で相違しているものと認める。
<相違点>
弁部材が第1位置と第2位置との間で移動する場合における本件発明8の制御方法は、差圧力の向きを変更して弁部材を弁座から軸方向に移動させるステップ(a)と、圧力差から実質的に開放された状態で弁部材をハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップ(b)と、移動した位置において差圧力を再現させて弁部材を弁座に着座させるステップ(c)と、を含み、ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われるのに対し、刊行物1の第4の発明の制御方法は、差圧力を減少させるステップ(a)と、差圧力を減少させた状態で弁部材(回転バルブ部材38)をハウジング(ケーシング10)の軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップ(b)と、弁部材を移動した位置において差圧力を再現するステップ(c)と、を含み、ステップ(a)および(b)は、単一の手動回転ノブ80の1回の駆動操作に基づいて行われるものである点。

(9-2)相違点の検討
上記刊行物2には、高圧ポートからの流体を、弁部材を回転させることにより切換ポートに選択的に供給する切換弁であって、各弁位置におけるポート面からの流体の漏れを防止するために、弁部材が、各弁位置において該弁部材を確実に着座させるように作用する正味の差圧力を受けるようになっている切換弁の制御方法において、弁部材が離座できるように前記差圧力を逆転させ(すなわち、差圧力の向きを変更して弁部材を弁座から軸方向に移動させ)、弁部材を第1の弁位置から第2の弁位置まで動くように偏倚力を作用させ、第1の弁位置から第2の弁位置まで弁部材が弁座から離れた経路に沿って(すなわち、圧力差から実質的に開放された状態で)弁部材を移動させ、弁部材を第2の弁位置において弁座と係合するように押し付けるために最初の差圧力を再現するようにする方法が記載されており、「2.(2)1)」で前述したのと同様の理由により、この発明を刊行物1の第4の発明に適用することには何ら困難性は認められない。
また、弁の駆動を単一のソレノイドの励磁に基づいて行わせることは、例えば刊行物2?4にみられるように従来周知技術であるから、動作手段として、単一の手動回転ノブに代えて単一のソレノイドを用い、これに励磁による駆動操作を与えることは、当業者が必要に応じて容易に行い得たものである。
してみれば、上記刊行物1の第4の発明において、弁部材(回転バルブ部材38)が第1位置と第2位置との間で移動する場合における制御方法を、差圧力の向きを変更して弁部材(回転バルブ部材38)を弁座から軸方向に移動させるステップ(a)と、圧力差から実質的に開放された状態で弁部材(回転バルブ部材38)をハウジング(ケーシング10)の軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップ(b)と、移動した位置において差圧力を再現させて弁部材(回転バルブ部材38)を弁座に着座させるステップ(c)と、を含むものとするとともに、ステップ(a)および(b)を、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行うようにすることは、上記刊行物1の第4の発明に刊行物2の発明と上記周知技術を適用することにより当業者が容易に行い得たものである。

そして、本件発明8が奏する作用効果は、刊行物1の第4の発明と刊行物2の発明と上記周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものではない。
よって、本件発明8は、刊行物1の第4の発明と刊行物2の発明と上記周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明9に対する判断
本件発明9は、本件発明8において、弁部材を移動させる所定の角度を約90度としたものであるが、回転バルブの弁部材の移動角度を約90度とすることは、刊行物5にみられるように周知技術である。
よって、本件発明9は、刊行物1の第4の発明と刊行物2の発明と上記各周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)総括
以上のとおり、本件の請求項1?9に係る発明は、いずれも刊行物1、2の発明と上記各周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1?9に係る発明は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

【8】当審で通知した無効理由に対する被請求人の主張について
被請求人は、当審で通知した上記無効理由に対し、平成18年1月11日付けの意見書で、刊行物1?5には、「弁部材を前記弁座から軸方向に離反させて離座させるステップと、前記弁部材を前記弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と第2位置との間を移動させるステップとが、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことについて記載も示唆もされていないから、これらをいかに組み合わせたとしても本件発明を容易に想到することはできない、と主張している。
しかしながら、前述したように、主弁体の弁位置の移動を、弁部材を離座させるステップと、離座させた状態で移動させるステップによって行うことは刊行物2に記載されており、また、弁の駆動を単一のソレノイドの励磁に基づいて行わせることは従来周知技術であって、刊行物1の発明に刊行物2の発明と該周知技術を適用することには何ら困難性はないから、被請求人の上記主張は採用できない。
(なお、被請求人は、本件特許明細書には、「弁部材を前記弁座から軸方向に離反させて離座させるステップと、前記弁部材を前記弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて第1位置と第2位置との間を移動させるステップとが、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる」ことが記載されていると主張するが、本件特許明細書における「ソレノイド」は、これらのステップを行わせるための最初の動作を行う「動作滑り子」を往復動させるだけのものであって、これらのステップの実際の動作は、特許請求の範囲に何ら記載されていない「弁部材と制御開閉部と作動子機構の特殊な組み合わせ機構」によって達成されるものである。)

【9】むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1?9に係る発明は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、上記結論のとおり審決する。

(なお、本件の請求項2,3(訂正前の請求項3,4)に係る発明については、当審において通知した平成17年9月28日付けの職権審理による無効理由においては、特許法第29条第1項第3号の規定に違反する旨のみを指摘し、特許法第29条第2項の規定に違反する旨についての指摘はしていないが、被請求人は、平成18年1月11日付けの意見書で、訂正した請求項2,3に基づき、特許法第29条第2項の規定に対応して意見を述べているから、これに関しては新たに無効理由通知書を通知することなく審理を行った。)
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
流体システム内の流れの方向を変更する方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとをこれらのポートが開口している弁座を介して弁室に連通させ、
(b)第1および第2位置間で前記弁座に対して移動するように前記弁室内に弁部材を配置し、
(c)前記弁部材を前記弁座上の第1位置において前記弁座に着座密封係合させる方向に前記弁部材に差圧力を加え、
(d)前記弁部材が前記第1位置に着座しているときに、前記低圧ポートを弁部材流通路を介して前記第1システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記弁室を介して前記第2システム・ポートに連通させることによって、システムを通るシステム流体を一方向に向け、
(e)前記弁部材が離座できるように前記差圧力の向きを変更し、
(f)前記弁部材が前記第1位置から前記第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、
(g)前記第1位置から第2位置まで、前記弁部材が前記弁座から離れた経路に沿って、前記偏倚力に応答して前記弁部材を移動させ、
(h)前記弁部材を前記第2位置において前記弁座と係合するように押し付けるために前記差圧力を再現し、
(i)前記弁部材が前記第2位置に着座しているときに、前記低圧ポートを前記弁部材流通路を介して前記第2システムに連通させるとともに、前記高圧ポートと前記第1システム・ポートとを前記弁室を介して連通させることによって、システムを通る流体流れ方向を変更し、
前記差圧力の向きを変更する工程(e)、前記偏倚力を作用させる工程(f)、および前記弁部材を移動させる工程(g)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われる、ことを特徴とする流体システム内の流れの方向を変更する方法。
【請求項2】高圧ポートを第1システム・ポートに連通させるとともに低圧ポートを第2システム・ポートに連通させ、また前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させることを交互に行うことにより変更弁を作動させる方法であって、
(a)前記低圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるように弁部材を第1位置に配置させること、
(b)第1の弁部材圧力領域を前記低圧ポートに連通させるとともに、対向する第2の弁部材圧力領域をより大きい圧力に連通させることによって、前記弁部材にまたがって第1の圧力差を形成すること、
(c)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の連通がほぼ阻止されるように、前記第1位置において前記弁部材を弁座面に強制的に着座させること、
(d)前記圧力差を実質的に変えるように前記第1および第2圧力領域を連通させること、
(e)前記弁部材を前記弁座面との係合から外れるように離座させること、
(f)前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かすこと、および
(g)前記高圧ポートと前記低圧ポートとの連通がほぼ阻止されるように、前記第2位置において前記弁部材を弁座面に着座させること、
を含み、
前記第1および第2圧力領域を連通させる工程(d)、前記弁部材を離座させる工程(e)、および前記弁部材を離座させた状態で第2位置に整列するように動かす工程(f)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記変更弁を作動させる方法。
【請求項3】前記弁部材を動かす工程(f)は、前記弁部材を前記第1位置と整列する状態から前記第2位置と整列する状態に回転させることを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】前記弁部材を離座させる工程(e)は、前記弁部材を回転軸の方向に移動することを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法であって、
前記方法は、前記弁部材が前記第1位置と前記第2位置との間で移動する場合に、
(a)前記弁部材を前記弁座から軸方向に離反させて離座させるステップと、
(b)前記弁部材を前記弁座から離座した状態でハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、
(c)前記弁部材を前記移動した位置において軸方向に移動させて前記弁座に着座させるステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。
【請求項6】前記ステップ(a)および(b)において、前記弁部材を前記弁座から離座させるために、該弁部材に作用する正味の差圧力の向きを変更すること特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】前記ステップ(a)では前記正味の差圧力の向きを変更し、前記ステップ(c)では該差圧力を再現するようになっていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】高圧ポートと、低圧ポートと、第1および第2システム・ポートとを有する室を規定し、各ポートが弁座をなす室壁を介して該室に開口しているハウジングと、第1位置と第2位置との間で前記室壁にほぼ平行に移動できるように前記ハウジング内に配置された弁部材と、を有し、前記弁部材は、前記第1位置においては、前記低圧ポートを前記第1のシステム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるようになっており、また前記第2位置においては、前記低圧ポートを前記第2システム・ポートに連通させるとともに、前記高圧ポートを前記第1システム・ポートに連通させるようになっており、また前記弁部材は、前記第1または第2位置にあるときは、前記高圧および低圧ポート間の連通を阻止するようになっており、前記弁部材は、前記高圧ポートと前記低圧ポートとの間の漏れを防止するために、前記第1または第2位置において該弁部材を確実に着座するように作用する正味の差圧力を受けるようになっている流体システムにおける流体の流れ方向変更弁の制御方法であって、
前記方法は、前記弁部材を前記第1位置と前記第2位置の間で移動させる際に、
(a)前記差圧力の向きを変更して前記弁部材を前記弁座から軸方向に移動させるステップと、
(b)前記圧力差から実質的に開放された状態で前記弁部材をハウジングの軸を中心に所定角度だけ回転させて前記第1位置と前記第2位置との間を移動させるステップと、
(c)前記移動した位置において前記差圧力を再現させて前記弁部材を前記弁座に着座させるステップと、を含み、
前記ステップ(a)および(b)は、単一のソレノイドの1回の励磁に基づいて行われることを特徴とする前記方法。
【請求項9】前記所定の角度は、約90度であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体システム内の流れの方向を変更する方法に関し、さらに詳しくは、高低システム圧力間で大きい差を有する流体システムに用いられる流れ変更弁(reversing valve)における流体の流れの方向を変更する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体システムにおける流体の流れ方向を変更(反転)する弁は、一般に知られており、多くの形体をとっている。最高システム圧力が最低システム圧力と実質的に相違している場合、システム流変更弁は困難な動作条件を受ける。このような条件は、採用される変更弁の型式および種類を制限する。蒸気圧縮冷凍システムに用いられる冷凍剤変更弁がそのような変更弁の代表的なものである。
【0003】
冷凍剤流変更弁は、一般に、ヒート・ポンプのような冷凍システムに設けられている。このシステムにおける高冷凍剤圧は、28kg/cm2(400psi)以上システム低圧を上回ることがある。この圧力差が変更弁の構造に加えられ、変更弁構造部が顕著な圧力を受ける。このような圧力は、弁の動作の抵抗となる摩擦力をもたらすだけでなく、弁の内部において高圧側から低圧側に冷凍剤が漏れる可能性がある。
【0004】
従来技術では、差圧力に基づいて漏れを減少させて弁部品間の密封関係を確実にすることに成功した変更弁構造が提案されている。このタイプの弁構造は、1987年12月15日付で特許された米国特許第4,712,582号に開示されている。このタイプの弁は、システムにおける冷凍剤の流れる方向を制御するために、弁座に設けられた二者択一のポートの対と協働する高圧室内の弁スライド部材を用いている。この弁スライド部材は、弁座に沿って、一方の流れ方向位置から交互に生じる流れ方向反転位置へ動く。コンプレッサの動作中は、常に、高圧システム流体が弁座に対して弁スライド部材を押圧している。弁の着座力が高圧システム側から低圧システム側への冷凍剤の漏れを最少にする。低い漏れ率がシステムの性能および効率を改善した。
【0005】
この着座力は、弁スライド部材の移動に対する抵抗となる大きな摩擦力を生じさせる。そのため、いくつかの従来システムでは、変更弁は、コンプレッサが作動を停止しかつシステム圧が等しくなるかあるいは等しくなるようになり始めた後にのみ作動するようになっていた。コンプレッサが作動している間に流れの変更(反転)が要求されるようなシステムにおいては、摩擦力に打ち克ちかつ変更弁を作動させるために、強力な作動子(actuator)が要求される。このような変更弁の作動子の制御および構造は、費用を大幅に増大させるとともに変更弁の集合体(組立体/assemblies)を著しく複雑にしていた。
【0006】
作動子に関する多数の考えがこれまで何回も提案された。例えば、前記米国特許の作動子は、パイロット弁組立体と、スライド部材に装着されかつ円筒形高圧室の両端にそれぞれ対面する作動ピストンを備えている。パイロット弁組立体は、弁室へのシステム冷凍剤の出入りを制御する。
【0007】
このパイロット弁組立体は、低電力制御ソレノイドと、該ソレノイドによって作動する小型の4路(方)パイロット弁とによって形成されている。ソレノイドが非励磁にされると、パイロット弁は、同時に、高圧冷凍剤を一方の室端に供給し、低圧冷凍剤を他方の室端に供給するように条件設定されている。ピストンは、スライド部材をその両方の移動位置の一方に移動させるのに十分な冷凍剤の差圧力を受ける。
【0008】
ソレノイドが励磁されると、パイロットバルブが作動し、ピストンへの圧力付与を逆にする。ピストン圧力が逆になると、スライド部材が弁座上の別の位置に駆動され、システム冷凍剤の流れ方向が反対になる。
【0009】
このような作動子は、有効で信頼性はあるが、製造にあたって多くの製造作業を必要とする多数の部品からなっている。このような種類の弁構造は、それらの弁を自動生産に適さないものにしている。変更弁のコストは、それらの比較的多い労働作業内容の故に高くなる。
【0010】
さらに、異なる寸法のシステムには、異なる寸法の弁が要求される。小さくて比較的よく隔絶された空間を冷やすようにつくられた冷凍システムは、比較的小さい熱交換器を介して低流量で循環する小量の冷凍剤を含む。大きい空間あるいは隔絶されていない空間を冷やすための高容量システムは、大きい熱交換器を介して高流量で循環する大量の冷凍剤を含む。ここで述べられているような高容量システム用に構成された変更弁は、小さなシステムの冷凍剤の流れを扱うことができる。しかし、小さなシステムは、寸法が適さない大きな変更弁を適正に作動させるのに十分なエネルギを発生させることができない場合がある。
【0011】
小容量システムが寸法の適さない大きな弁を備えている場合、コンプレッサが切られているときに変更(反転)が起きると、流れの向きの変更を完了させることはできない。このような弁をその全ストロークの約半分だけ作動させると、弁部材がシステムの高圧及び低圧側を互いに連通させることになる。この弁部材によってもたらされる大面積の流路は、弁部材を弁部材のストロークの残った部分にわたって作動させるのに有用な高圧冷凍剤の供給を急激に減少させるとともに方向転換させる。そのため、弁部材は、コンプレッサが再度始動した後でさえも、その部分的に作動した状態に留まることがある。このような事態が生じる可能性があるので、システムの流れを提供するとともに適切にバルブを動作させる圧力差を保証するようなサイズにされた弁を製作することが必要とされていた。
【0012】
また、現在の冷凍システムの部品は、逆の衝撃を受ける変更弁を有する条件を作り出した。前述のコンプレッサと異なり、新しいススクロール式冷凍剤コンプレッサは、コンプレッサの中からシステムへ液化冷凍剤を押し出すことができる確動容積型コンプレッサである。スクロール・コンプレッサは、コンプレッサの始動後、適当な時間にわたって、変更弁を介して液状冷凍剤をシステムの高圧側に放出することができるが、これは時として、変更弁に問題をもたらす。
【0013】
すなわち、弁スライド部材が二つの作動位置の間にあるとき、室からの高圧冷凍剤の流れが著しく制限される。スクロール・コンプレッサが液状冷凍剤を変更弁の室に押し出している間にこの弁条件が存在すると、極端な圧力スパイクが弁室の内部に生じる。この圧力スパイクは、変更弁の損傷や破損をもたらす。
【0014】
変更弁が作動している間の大きな摩擦力を減少させるために、関連したばね付勢された流出弁を有する手動式変更弁の構成に関する提案がなされた。1958年10月7日付で特許された米国特許第2,855,000号を参照されたい。この流出弁は、変更弁部材に加えられる圧力差を減らすために、ばねの付勢力に抗して手動で開く。これは、変更弁部材の移動に対する抵抗となる摩擦力の大きさを減少させる。この変更弁部材は、早いタイミングで変化する差圧力を受け、該差圧力は弁部材を振動させかつその動きに対する抵抗となる摩擦力をいくらか減らしたものとする。
【0015】
この変更弁は、流れ方向を変更するために手動で操作される。変更弁が作動した後に、付勢ばねが流出弁を再び閉じる。この提案は、要求される手動操作を簡単で小さな力の機械的作動子によって繰り返すことができないので、自動的な流れの変更を要求する環境において商業的に実現できるものではなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、流体システム内を循環する流体の流れを変更する新規で改良された方法を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この流体システムは、弁部材がその弁座から離れた経路に沿って弁部材が二つの流れ方向位置の間を移動する際に、弁部材が該弁部材をその弁座に押し付けるシステム流体圧から解放されるように構成され、それによって、弁部材の動きに対する抵抗となる実質的な摩擦力を回避し、簡単で小さい力の弁作動子の使用を可能にする。この新規な変更弁は、複雑ではない構造を有しており、比較的部品点数が少なく容易に製造や組立のできる部品からなり、しかも信頼性がありかつ有効な動作をなす。
本発明は、流体システムまたは回路内で流れ方向を変える新規でかつ改良された方法を提供する。この方法は、高圧ポート、低圧ポート、第1及び第2システム・ポートを、弁座を介して弁室に開口している少なくとも前記低圧ポート及び前記第1及び第2システムポートに連通させ、弁部材を第1及び第2位置間で弁座に対して移動するように弁室内に配置し、前記弁部材に差圧力を加えることにより前記弁座上の第1位置において該弁座に着座密封係合させる方向に押圧し、前記弁部材が第1位置に着座しているときに、低圧ポートを弁部材を介して第1システム・ポートに連通させ、高圧ポートを第2システム・ポートに連通させることによって、一方向にシステムを通してシステム流体を向け、前記弁部材を前記第1位置から第2位置まで動くように偏倚力を作用させ、前記弁部材を離座できるように差圧力の向きを変更し、前記第1位置から第2位置まで、前記弁部材が弁座から離れた経路に沿って前記偏倚力に応じて該弁部材を移動させ、前記弁部材を前記第2位置において再着座させ、前記弁部材が前記第2位置に着座しているときに前記低圧ポートを弁部材を介して第2システムに連通させるとともに前記高圧ポートと第1システム・ポートを連通させることによってシステム流体の流れ方向を変更するようになっている。
【0018】
本発明の好適実施例においては、差圧が解消されたときに有効になる作動装置によって、前記弁部材が一方の位置から他方の位置へ動くように偏倚作用を受けるようになっている。
【0019】
【発明の実施の形態】
流体システムまたは回路内の流れを変更(逆転)するように本発明に従って構成された弁20が図面に示されている。図示された好適な弁20は、ヒート・ポンプ(図1)のような蒸気圧縮冷凍システムSに装備されるように構成された冷凍剤流れ変更弁(refrigerant flow reversing valve)である。このシステムSは、従来のものまたは適当な構成のものでもよく、コンプレッサCと、屋内および屋外熱交換器IX、OXと、これらの熱交換器の間に配置された膨張装置Xとを有するとして図示されている。図1及び図2において、弁20は、概略、ハウジング集合体(組立体)22と、前記ハウジング内に配置された弁部材24と、前記ハウジング内で前記弁部材を支持する弁キャリヤ26と、システムSを通る冷凍剤の流れ方向を変更するように第1及び第2位置間において前記ハウジング内で前記弁部材24を移動させる作動子28と、を有している。
【0020】
ハウジング組立体22は、弁部材24を含みかつシステムSに連通する内部室30を画定する。好適なハウジング組立体22は、一体のドーム状エンド・キャップ34とポート形成板36とによってそれぞれ密封状に閉じられた両端部を有する円筒状圧力容器32を有している。このポート形成板36は、ハウジング組立体が高い内圧に容易に耐えることができるように、容器32に溶接されている。図1において、冷凍剤流通管40-43は、ポート形成板36に設けられた冷凍剤ポート45-48に密封状に結合されている。流通管40は、コンプレッサ放出ラインと、高圧高温ガス状冷凍剤をハウジング組立体に向けるポート45(高圧ポート)とに密封状に接続されている。流通管41は、コンプレッサ入口と、ハウジング組立体からの低圧低温冷凍剤をコンプレッサに向けるハウジング・ポート(低圧ポート)とに密封状に連結されている。流通管42は、屋外熱交換器OXと、屋外熱交換器とハウジング組立体22との間で冷凍剤の流れを取り扱うシステム・ポート47とに密封状に連結されている。流通管43は、屋内熱交換器IXと、屋内熱交換器とハウジング集合体22との間の冷凍剤の流れを取り扱うシステム・ポート48とに密封状に連結されている。これらの流通管は、好ましくは、システム冷凍剤流れラインおよびポート板36に密封はんだ付けまたは同等の結合をするのに適した銅または類似の材料が用いられる。
【0021】
弁部材24は、まずシステムSを通る一方の方向に次いで反対の方向に冷凍剤の流れを向けるように、ポート板36に対する交互の位置の間でハウジング組立体に対して移動する。弁部材24は、圧力容器32内に緩く嵌合したほぼ円筒形弁体50と、ハウジング壁に係合するようにリング溝54内に着座されかつ弁本体50のまわりに延びる流れ制限リング52とを有している。この流れ制限リング52は、ピストン・リングと同様に構成され、室30を該リング52の両側で室部分30a、30bに有効に分割する。
【0022】
弁本体50は、ポート板36に対面するベース部56と、前記リング溝54を規定しかつ前記制限リング(シールリング)52を支持する遠隔案内部58と、該案内部とベース部との間の中央本体部59を画定している。ベース部56は、ポート板36によって規定された平面弁座61に対面する平らな弁座面60と、該弁座面60に開口する冷凍剤用流通路62、64を規定している。流通路62は、ベース部56内の細長いドーム状凹部であり、弁座面60に開口している。この流通路62は、常に低圧ポート46と整列するようになっており、低圧路として言及される。流通路64は、ベース部56における湾曲凹部であり、高圧ポート45に常に整列するようになっている。流通路64は、高圧通路として言及され、ベース部弁座面60に開口し、ベース部周縁にほぼ180°だけ室部分30aに開口している。流通路62及び流通路64間で延びる無孔隔壁68が弁座面60の一部を成形している。この隔壁68は、流通路64まで延びる鼻状突起69を規定している。
【0023】
図示されている弁本体50においては、弁座面60が弁部材のベース部の端面に結合されたシート状の弾性ガスケット60aによって成形されている。このガスケット60aおよびベース部端面の寸法および形状はほぼ類似している。弁座面60とポート板座61が係合すると、ガスケット材料が弾性圧縮され、これらの面が弁座面60を取り囲む室部分30a内の高圧冷凍剤から流通路62内の低圧冷凍剤を有効に密封するように弁座面60がポート板座61に対面する。
【0024】
弁部材24がその第1位置にあるとき、コンプレッサ放出部からの高圧冷凍剤が熱交換器IXに向けられるように、流通路64がポート45,48と整列する。同時に、流通路62が熱交換器OXからコンプレッサ吸引部まで冷凍剤を連通させるように、流通路62がシステム・ポート47と整列する。
【0025】
弁部材24は、ポート板36から離れて軸方向にシフトし、ハウジング組立体の縦軸70を中心に90°回転し、かつポート板36と係合する状態に戻ることによって、その第2位置に移動する。弁部材24がその第2位置にあるとき、流通路64がポート45、47に連通し、一方流通路62がポート46,48に連通する。このようにして、高圧ガス状冷凍剤がコンプレッサからポート45,47を介して熱交換器OXに向けられ、一方低圧冷凍剤が熱交換器IXからポート46,48を介してコンプレッサに戻される。
【0026】
本発明の好適実施例においては、弁本体50には、軸70上の隔壁68からポート板36内のめくら穴まで延びるトラニオン71(図2の(A)図)が設けられている。このトラニオン71は、弁部材24の回転中に弁部材を軸70に一致させて維持し、また弁部材24が座51に対して移動するとき、めくら穴内で軸方向に摺動する。弁部材24が座51に対して軸方向に移動するときに弁部材が軸70に正確に一致するように、弁本体案内部58が流れ制限リング52をトラニオン71から離れて支持している。
【0027】
流れ制限リング52は、該リング52の両側の圧力が等しくなるまで、高圧冷凍剤がポート45-48から離れているハウジング組立体室部分30b内に徐々にリングを通って漏れるように構成配置されている。好ましいリングは、弁部材を通る流体の流れに抵抗は与えるが阻止はしないように働く重なった端を有する分割プラスチック・リングである。このリング52は、ハウジング壁および弁部材材料と係合したとき、低い滑り摩擦係数を呈する。また、このリング52は、ハウジングに対する弁部材の動きが摩擦により実質的に妨げられることがないようになっている。
【0028】
室部分30a,30b内の圧力が等しくされたとき(弁の正常な動作条件である)、室部分30b内の圧力がコンプレッサ放出部圧力レベルにほぼ達する。また、流通路62の有効面積に作用する圧力は、コンプレッサ入口の圧力レベルにほぼ達する。したがって、弁本体座面60は、弁部材24に加えられる正味の差圧力によって、座61との緊密な密封係合をするように強制的に押し付けられる。
【0029】
用途によって、流れ制限リング52によって提供される制限された流れを増すことが望ましいこともある。これは、室部分30a,30b間に延びるリング52をバイパスする弁本体内の補助制限流路(図示せず)を形成することによって達成することができる。この補助制限流路は、弁本体が位置変更後に直ちにポート板36上に着座するように、迅速に圧力を均一にする。
【0030】
弁キャリヤ26は、弁部材24をハウジング組立体の軸70に一致するように維持しつつ該弁部材24をハウジング組立体22に対して往復・回転運動可能に支持するように構成配置されている。図示する弁キャリヤ26は、軸70上に弁部材24を中心位置決めする案内部材72と、弁部材24を案内部材72に連結するスピンドル部材74とからなっている。このスピンドル部材74は、それが弁部材24とともに回転し、軸方向に動くように弁部材に固定されている。この案内部材72は、圧力容器32内で軸方向にのみ移動できるように拘束されている。
【0031】
案内部材72は、弁部材24を軸70に正しく一致させた状態で、弁部材24と共に圧力容器32内で軸方向に摺動する。図示する案内部材72は、軸70上で中心位置決めされた平らな円形本体部76と、円周方向に間隔をあけて本体部周囲から軸方向に突出した複数のリブ78と、これらのリブ78と共に本体部72から同軸に延びかつ本体部の周囲から半径方向内方にリブを結合する円筒形スカート部80とからなる。
【0032】
これらのリブ78は、案内部材72がハウジング22内で軸方向に移動するときに、容器壁上に支持される。これらのリブ78は、それらの幅の狭い半径方向外縁が円周方向に間隔をあけて容器壁に係合するように配設されている。これらのリブの外縁は非常に幅が狭く、容器壁と低摩擦で摺動接触する。スカート部80はリブを強化し、本体部76に剛性を与える。また、本体部76は、補強カラーによって取り囲まれた軸70上のスピンドル受け穴81(図2の(A)図)を規定する。
【0033】
スピンドル部材74は、共通の軸運動を行うように弁部材24を案内部材24に連結し、また弁部材をその二つの位置の間で回転させるように作動子28から弁部材24にとトルクを伝達する。このようにして、スピンドル部材は軸70を中心として回転し、弁部材と共に軸に沿って軸方向に移動する。スピンドル部材74は、ほぼコップ形状をしており、案内部材72に対面する円形ベース82と、弁本体案内部58に固定された半径方向に延びるフランジ83によって規定される開放端と、案内部材受け穴81を通ってベース82から突出するトラニオン84とを有している。
【0034】
好適なスピンドル・フランジ83は、弁部材24に着座されかつ結合されるので、スピンドル部材74と弁部材24と一体となって動く。スピンドル・フランジ38は、円周方向整列ノッチ83aを除いて、ほぼ円形になっている。このスピンドル・フランジ83は、ノッチ83aが弁部材案内部58aの面の凹部のキー状部と相互嵌合するように、該弁部材案内部58aの面に設けられた凹部に着座する。これは、スピンドル部材74と弁部材24とが一体に結合されたときにそれらが正確に整列することを保証する。
【0035】
好適な図示するトラニオン84は、スピンドル部材74および案内部材72を一体に掛止して(ラッチして)、それらの間の相対回転は許しながらも、軸方向の移動を一体化することを保証する。このトラニオン84は、ベース82から穴81を通って突出する4つの間隔をあけた半円筒形アームを備えている。各アームは、掛止面85bで終了する截頭円錐カム部85aを有する掛止構造部85を規定する。カム部85aは、突出したトラニオンアーム端から離れるに従い先細りになるようになっており、アームが穴81を通じて挿入されると、カム部85aが開口側に係合し、またカム部が穴81を完全に貫通するまでアームを弾性変形させるようになっている。この連結において、掛止面85bは、穴81を取り囲む案内部材ベース76によって形成されたキーパ面と対向掛止関係になるように、軸70から半径方向外方に掛止する。トラニオン・アームは、スピンドル部材74と案内部材72との間の相対回転が容易になるように、定位置に掛止した後にトラニオン・アームが穴81に緩く受け入れられる。
【0036】
作動子28は、第1及び第2位置間で弁部材を動かす。好適な作動子は、弁部材24を離座させかつそれを一方の位置から移動させる制御開閉部(control valving)90(図3-図6参照)と、弁部材24を他方の位置に整列させるように回転させかつ弁部材24を再着座させるように離座した弁部材24に作用する作動子機構92と、制御開閉部90および作動子機構92用のオペレータ94とを備えている。
【0037】
オペレータ94は、弁部材が離座するように制御開閉部90を作動させ、また弁部材24をその別の位置まで移動させるように作動子機構92を調節する。このオペレータは、低電力ソレノイド100と、該ソレノイドと係合して往復動する動作滑り子(operating slide)102からなっている。このソレノイド100は、適当な機械的または電気的スイッチ(図示せず)によって励磁または非励磁にされる。このスイッチは、タイマ、温度センサまたは冷凍システム内で冷凍剤の流れを逆転させる適当なもしくは従来の装置によって制御される。
【0038】
ソレノイド100が非励磁にされると、弁20が作動し、その第1位置(図3の(A)-(C)図)に留まる。ソレノイド100が励磁されると、弁20は作動し、その第2位置(図6の(A)-(C)図)に留まる。ソレノイド100は、ハウジング組立体22に固定されたコイル組立体110(図1)と、該コイル組立体およびハウジング容器(32)の壁を通って滑り子102まで伸びるプランジャ組立体111とからなるように図示されている。
【0039】
前記コイル組立体110は、管状スプールに巻き付けられた絶縁電線コイルと、該コイルをカプセル化するともにコイルのリードに接続された電気端子構造部110bを形成する成形プラスチック体110aと、コイルを部分的に取り囲む磁束誘導フレーム110cと、ソレノイド110を支持するとともに該ソレノイド110をハウジング組立体に密封状に結合するコイル組立体111と協働する磁極片112とからなる。この磁極片112は、ハウジング壁穴に密封状に溶接されかつ軸70に直交するようにハウジング壁から突出する管状円筒形透磁部材である。磁極片112は、コイルおよび本体110aの中へ部分的に突出しており、またプランジャ案内として機能する磁極片孔を備えている。
【0040】
フレーム110cは、一対の脚113と連結部114とを有するほぼU字形の透磁シート金属部材である。コイルおよび本体110aは、脚113の間に受け入れられる。これらの脚113は、コイルおよび本体110aを通して中央円筒形開口と一致するプランジャ開口を規定している。プランジャ組立体111は、コイル、本体、フレーム開口を貫通し、磁極片112に密封状に結合される。
【0041】
プランジャ組立体111は、ハウジング組立体22から離れた端部130aにおいて閉じられ、かつ室30側において磁極片112に密封状に結合された薄壁管状ハウジング130と、磁極片112と閉じられたハウジング端130aとの間でハウジング130内に位置する円筒形プランジャ要素134と、該プランジャ要素134の運動を滑り子102に伝達するように磁極片穴を貫通する押し棒136とからなる。磁極片112,フレーム110c及びプランジャ要素134は、透磁性であり、またコイルが励磁されたとき、回路内の磁束がプランジャを磁極片に押し付ける磁力を発生するように、磁気回路を形成する。ハウジング130は、例えば銅または非磁性ステンレス鋼のような非磁性材料から作られている。開放されたハウジング端が磁極片112に密封状にはんだ付けされる。
【0042】
コイルおよびプランジャ組立体は、迅速簡単に組立や分解ができるように、一体に着脱自在に接続されている。好適なコイルおよびプランジャ組立体は、クリップ要素138(図1)によって連結される。このクリップ要素138は、フレーム110cをその組み立てられた位置において磁極片およびプランジャ組立体にフレーム脚113間のコイルとともにロックした状態で、磁極片112を弾性状に把持する。この磁極片112には、弁ハウジング22の側のフレーム脚113の内面に隣接して位置する円周方向溝が形成されている。このクリップ要素138は、ヘアピンに似た成形針金ばねから形成することが好ましい。フレームおよびコイルはプランジャ組立体として組み立てられ、またクリップがフレーム脚とハウジング22に最も近いコイル端との間に手動で挿入される。クリップは磁極片溝内に嵌合し、磁極片を弾性状に把持し、フレームが外れることを防止し、組立体を一体にロックする。
【0043】
プランジャ要素134は、同一の平らなパネルによって成形された部分を備えた円周部を有する円筒形部材として示されている。各パネルは、該プランジャ要素と同じ長を有しており、ハウジング管130の滑らかな内面に係合する円筒状に湾曲した面部の間に位置している。このプランジャ要素134は、前記円筒状湾曲面部を介してハウジング130内で軸方向に案内され、他方それらの間に位置しているパネルがプランジャ要素の動きによって移動された流体の流れのための通路を提供している。
【0044】
押し棒136は、弁部材24を作動させるように滑り子102にプランジャ要素の動きを伝達する。押し棒136と磁極片孔との間の間隙は、流体がハウジング管130に対して流出入することを可能にするので、淀みがちな流体がプランジャの運動を妨げることがない。この押し棒136は、非磁性材料から構成された真直な円筒形部材として図示されている。
【0045】
図示した好適な滑り子102は、第1および第2位置間で弁部材24に対して移動して、弁部材24が離座するように制御開閉部90を作動させる。図示する滑り子102は、それが位置を変えたとき、一方の位置から他方の位置へ弁部材24を回転させるように作動子を調節する働きもする。滑り子102は、ソレノイドが励磁されたとき軸70を横切る運動をするように押し棒136と係合している本体140と、ソレノイドが非励磁にされたとき滑り子本体、押し棒、プランジャ要素をそれらの最初の位置まで戻すように押し棒に抗して本体140に反作用を及ぼす圧縮ばね142とからなる。
【0046】
滑り子本体140は、案内部材72内に収納され、かつ軸70を横切る滑り運動をするように弁部材案内面とスピンドル・フランジ83に着座された環状部材として図示されている。弁部材24に対面する軸方向滑り子本体面は、弁部材案内部およびスピンドル・フランジ83の方に突出しかつそれらと摺動自在に係合する直径方向に配置された脚144(図1)を規定している。これらの脚144は、軸70を横切る滑り子本体140の摺動動作のみならず、弁部材24と滑り子本体140との間に比較的低い摩擦の相対回転を提供する。これらの脚144間の滑り子本体面部分146は、平坦でしかも弁部分案内部からくぼんでいる。滑り子本体外周148部は、ハウジング組立体内壁から間隔をおいて位置しており、案内部材スカート80に軸方向に隣接して設けられている。
【0047】
圧縮ばね142は、押し棒の位置から直径方向に離れた位置で滑り子本体140に反作用を及ぼす。図示するばね142は、滑り子本体内のめくら穴149内に配置されたら旋圧縮ばねである。このばね142は、案内部材リブ78aによって圧縮され、定位置に維持される。このリブ78aは、案内部材スカート80から前記めくら穴149を二等分する狭い半径方向に延びる滑り子部材スロット150まで半径方向内方に延びている。ばね142は、このようにしてリブ78aによって穴149内に支持される。突出リブ端は、ばね142を圧縮しながら案内部材を滑り子本体140に組み付けることを容易にするために、くさび形状になっている。
【0048】
滑り子102は、弁部材24と共に軸70に沿って動くが、弁部材24と共にハウジングに対して回転することができないようになっている。図示する滑り子部材は、ソレノイド押し棒136によって弁部材と共に回転することを防止されている。すなわち、押し棒は、磁極片孔を介して弁ハウジング室部分30bの中にそして狭い滑り子本体スロット152の中に突出している。滑り子本体スロット152は、押し棒136を摺動自在に受け入れ、かつ軸70に平行に滑り子本体内に延びている。
【0049】
制御開閉部90は、ソレノイド100が励磁または非励磁とされるときはいつでも室部分30bを弁部材内の吸込み圧流通路62に連通させる。制御開閉部が作動したとき、室部分30b内の圧力が実質的に室部分30a内の圧力(最初はコンプレッサ放出圧レベル)以下に突然低下する。室部分30a,30b間の合成圧力差がただちに弁部材24を離座させ、ポート板36から軸方向に弁部材24を移動させる。弁部材24は、離座すると、キャリヤ26および滑り子102を移動させる(シフトさせる)。これらの要素はすべて弁ハウジング壁と本質的に係合していないので、それらの軸70方向への動きは拘束されない。また、弁部材24は、案内部材72および滑り子102に対して自由に回転できるので、軸70のを中心とした弁部材の回転の摩擦抵抗は無視しうる。
【0050】
弁部材24が離座した後は、ポート45,46は室部分30a内で互いに連通し、またリング52および制御開閉部90が室部分30a,30bを連通させる。それにより、弁部材にまたがる圧力差が実質的に低下するので、弁部材24は軸70を中心として自由に回転する離座条件に留まる傾向にある。
【0051】
図示した変更弁においては、制御開閉部90は、滑り子本体140に保持された第1、第2弁要素160,162と、弁部材通路62から弁部材案内部面58aを通り室部分30bまで延びる協働ベント通路(coacting vent passage)164とからなる。各弁要素160,162は、各滑り子本体案内開口166(図3-6)内に保持されたポペットとして示されている。これらのポペットは、滑り子本体の中央軸70のまわりで互いから90°以上離れて配置されている。弁部材24がその第1位置にあるとき、ポペット160がベント通路164を閉じる(図3)。弁部材がその第2位置にあるとき、ポペット162がベント通路164を閉じる(図6)。これらのポペットは、各ポペットの端部に常に一致し、接近し、あるいは係合した状態にある案内部材スカート80(図3-6には示されていないが、図1を参照)によって各開口166内に保持されている。
【0052】
滑り子102が図3に示す位置から図4に示す位置まで移動してポペット160を弁案内部面58aに沿ってスライドさせ、ベント通路164を開放する。滑り子本体140は、弁部材24が90°回転を完了しその第2位置と軸方向に一致するようになったとき、ベント通路164を覆う位置にポペット162を同時に移動させる(図5の(A)-(C)図)。開放したベント通路164は、室部分30b内の圧力がコンプレッサ吸込み圧レベルまでただちに減少するように、室部分30bを低圧流通路に連通する。そして、弁部材が離座し、軸70を中心として90°回転する。作動子機構は、弁部材が回転した後にベント通路をふさぐようにポペット162を移動することによってベント通路164を再び閉じるように制御開閉部90を作動させる。
【0053】
冷凍剤の流れを変更する場合、弁部材24がその第1位置に戻される(図3)。ソレノイド100は、図5に示す位置から図3に示す位置まで滑り子102を移動させる。ポペット162は、ベント通路164を開放するように滑り子と共に移動し、他方ポペット160は弁部材24がその回転を完了するとベント通路164を覆う位置まで動く。いずれのポペットが係合密封するにしても、ベント通路164が差圧力によって確実に密封されることに注目されたい。これらのポペットは、弁案内面58aに対して低い滑り摩擦係数を有するプラスチック材料から形成される。ポペットに作用する差圧力は、ベント通路164を開放したとき、ポペットの動きに対する大きな妨げとはならない。
【0054】
作動子機構92は、軸70を中心として第1および第2位置間で離座した弁部材24を前後に回転させ(図3,6)、弁部材24を再着座させる。図示した作動子機構92は、流体圧応答駆動ピストン組立体170と、関連したカム伝達部172とを備えている。
【0055】
駆動ピストン組立体170は、軸70に沿ってカム伝達部要素を往復させる。このピストン組立体170は、弁部材24によって支持された駆動ピストン180と、弁部材24と駆動ピストンとの間で反作用を及ぼすピストンばね182と、該ピストンばねを含むピストン室186を作り出すように弁部材とピストンとの間を密封するピストン・シール184とを備えている。通路188(図3-6)はピストン室186を常に流通路62に連通させている。また、弁部材着座面60とピストン室186との間に延びる流通路189が、弁部材が離座したときのみ、室部分30aとピストン室186との間を連通する。
【0056】
駆動ピストン180は、弁部材24に対して軸70の方向に往復できるように装着されている。図示したピストンは、弁部材面58a内の円筒形開口190内に装着されかつ軸70上に中心位置決めされるコップ状のほぼ円筒形部材である。ピストンばね182は、開口190内に突出しかつピストン内でばね案内192を包囲する螺旋圧縮ばねである。
【0057】
弁部材24が第1および第2のいずれかの位置にあり、かつ室部分30a,30bがともにコンプレッサ放出圧レベルにあるとき、ピストン180がばね182を十分に圧縮して開口190内に十分に押し込まれる。このようにピストンが押し込まれるのは、ピストン室186内の圧力が流通路62に連通する流通路188を介してコンプレッサ吸引レベルに維持されるためである。ピストン180にまたがる差圧は、ばね力およびシール184によって生じる動きに抗する摩擦抵抗を超える力を作り出す。
【0058】
ピストン・シール184は、ピストンを通る漏れを阻止するために、弁部材開口190の円筒壁と密封状に係合している。好適なシールは、ピストン自体と一体に(連続して)成形された可撓性円周リップである。他のシールとしては、例えばOリングを用いてもよい。ピストンばね182は、ピストンが差圧を受けていないときに、シール184によって与えられる往復運動に対する摩擦抵抗に打ち克ち、かつピストンを動かすのに十分な力以上のものを加える。
【0059】
弁部材24が離座すると、室部分30b内の圧力が弁部材流通路62内の圧力とほぼ同じになるので、ピストン180は実質的な差圧を受けない。したがって、ピストン180に作用しばね182に抗する圧力がなくなる。ピストンばね182は、ピストンに対し弁部材開口190から外れてスピンドル部材74に入る力を加える。貯えられたスプリング・エネルギによるピストン運動は、弁部材を回転するようにカム伝達部172に作用する。このピストンの状態は図5の(A)-(C)図に示されている。
【0060】
カム伝達部172は、滑り子102と弁部材24との間で作動し、弁部材24をハウジング22に対して回転させる。ピストン180は、弁部材24がピストン180に対して回転を制限されるように、舌片およびスロット構造によって効果的にキー止めされる。すなわち、スピンドル部材には、対応するスピンドル・スロット(図1)と相互に嵌合する舌片194が設けられている。また、スピンドル部材にも対応するピストン舌片を受けるスロット196(図1)が設けられている。
【0061】
カム伝達部172は、ピストン180が弁部材24から出てきたとき、弁部材を他方の位置に整列させるように回転させる。カム伝達部172は、駆動ピストン180の両側に形成されたカム面または斜面200,202と、滑り子102に成形された直径方向に対向したカム・フォロワ204,206とから構成されている。カム斜面200とカム・フォロワ204とは、軸70を中心として一方の方向に弁部材24を回転させるように係合可能になっている。カム斜面202とカム・フォロワ206とは、軸70を中心として反対方向に弁部材24を回転させるように係合可能になっている。
【0062】
カム面200は、ピストン180の基端部側からその外面に沿って、ピストンの反対端部におけるピストン・シール184から軸方向に離れた位置まで延びるら旋斜面である。このカム面200は、ピストンがそのストロークにわたって移動しているとき、カム斜面200とカム・フォロワ204との間の係合位置がピストン軸70のまわりに約90°の円弧だけ横切るように構成されている。
【0063】
また、カム面202は、ピストン180の基端部側からその外面に沿って、ピストンの反対端部におけるピストン・シール184から軸方向に離れた位置まで延びるら旋斜面である。このカム面202は、ピストンがそのストロークにわたって移動しているとき、カム斜面202とカム・フォロワ206との間の係合位置がピストン軸70のまわりに約90°の円弧だけ横切るように構成されている。カム斜面200,202のら旋の角度は同じであるが、その旋回方向は逆である。従って、これらのカム斜面は、ピストンシール側のそれらの端部で互いに隣接し、また反対側のピストン端において互いに隣接している。
【0064】
各カム・フォロワ204,206は、各カム斜面200,202に係合するように滑り子本体140の内周から半径方向内方に延びる突起によって成形されている。カム・フォロワ204,206は、カム・トラックと係合するようにスピンドル部材側壁内の間隙開口208(図1)を介して延出している。間隙開口208は大きく、弁部材およびスピンドル部材がカム・フォロワと干渉せずにそれらの別の位置間で回転できるようになっている。カム・フォロワは、弁10を組み立てる際に、スピンドル部材ベース82内のスロット82aを通されるようになっている。
【0065】
弁部材24がその第1位置(図3)にあり、かつシステム流の向きが変更されるとき、ソレノイドが励磁され、滑り子102を動かして、カム・フォロワ204を先端側ピストン端(図4)にあるカム斜面200に係合させる。同時に、滑り子102は、カム・フォロワ206を動かして、斜面202との係合を外す。また、滑り子102はベント通路164を開放するようにポペット160を移動し、弁部材24が離座する(図5)。
【0066】
弁部材24が離座すると、ピストンばね182がピストン180をシリンダ190から外れさせ、弁部材24は第2位置(図6)と整列するように回転する。すなわち、ピストン180が弁部材開口190から出てくると、カム斜面200とカム・フォロワ204とが係合し、相対的に動く。この場合、滑り子102がハウジング組立体22に対して回転しないように固定され、またピストン180は弁部材24に対して回転しないように固定されている。したがって、カム・フォロワ204とカム斜面200との間の反力は、それらが係合している90°の角度にわたって軸70を中心として弁部材24を回転させる。それによって、離座した弁部材24は、第2位置(図6)に整列するように移動する。
【0067】
図示する弁20においては、ピストン180は、カム斜面200,202(図1)から半径方向外方に同一の耳たぶ状カム要素210を備えている。一方のカム要素210は、ピストンがストローク終了近くに達しカム斜面200とカム・フォロワ204とが係合している間、カム・フォロワ206と協働する。これらのカム要素210は、それぞれ、ピストンがそのストロークを完了し、弁部材から十分に離れたときに、関連したカム・フォロワ204または206を案内するように軸方向に延びるカム・スロット211を有している。
【0068】
弁部材24が最初に離座し、かつ作動子機構が弁部材24を最初に回転させたとき、通路189が開かれ、システムから室部分30aに向けられた高温、高圧のガス状冷凍剤に直接にさらされる。通路189は、高圧ガスのうちのいくらかをピストン室186に向ける。ピストン室186では、少なくとも最初のうちは、この高圧ガスはばね182のピストン作用力を補助するのに有効である。
【0069】
弁部材がその回転を終了し、第2位置に整列したとき、作動子28が弁部材24を2つの独立した方法の一方または両方で再着座させる。一つは、作動子機構は、弁部材24を座61と係合させる力を発生する。他方は、弁部材がその回転を終了したとき、制御開閉部90が弁部材24にまたがる弁着座圧力差を再形成するように作動する。
【0070】
作動子機構はハウジング組立体22に対する軸方向移動を拘束されているので、ピストン180が弁部材24に対してそのストロークを完了したとき、作動子機構が弁部材24をその座61に押し付ける。その結果、弁部材24は、座61に対してハウジング組立体内で軸方向に動く。好適な図示したピストン180は、ハウジング・エンド・キャップ34と係合するようにトラニオンを通って突出する棒状延長部215を有している。弁部材24は、ピストン180がそのストロークの終りに達する前であって、かつ棒状延長部215がエンド・キャップに係合する前に、その回転を完了する。ピストンがそのストロークを継続すると、延長部215がエンド・キャップに係合し、ハウジング組立体に対してそれ以上の軸方向移動を防止するようにピストン部材を拘束する。圧縮ばね182は、弁部材を座61に押し付ける弁座反作用力が弁部材24に加えられるように、ピストン180と弁部材24との間に反作用を継続する。
【0071】
本発明の図示した好適実施例においては、各カム斜面200,202は、関連した耳たぶカム210の面と一緒になり、軸方向に延びる各カム・スロット211の一部をなす。各カム・スロット211のベース(基端部)は、ピストン・シール184に隣接して位置する軸方向停止面217によって形成されている。カム・フォロワ204,206は、これらの軸方向停止面に係合し、弁部材から外れてピストンをそれ以上移動させないようにする。弁部材が90°回転した後に、軸方向に延びるカム・スロット211がカム・フォロワを受け、そしてピストンが弁部材に対してそのストロークを軸方向に継続することを可能にする。軸方向に延びるカム・スロット211は、ピストンが弁部材に対して回転しないようにピストンを拘束する。ピストンが回転すると、座61および制御開閉部90に対して弁部材を誤配置させる場合がある。
【0072】
作動子機構によって与えられる弁の着座力は、当初は、ばね182によってつくられる着座力に限定されているが、室部分30b内の圧力が最終的に上昇し、強い差圧着座力でばね力を補助する。
【0073】
作動子機構92は、弁部材を90°回転させることによって制御開閉部90を作動させるので、ベント通路164は、該ベント通路がポペット162によって塞がれかつ密封される位置まで動かされる。これは、室部分30bと低圧流通路62との間の連通を阻止する。室部分30bの圧力は、制限リング52を通る制限された冷凍剤の流れのためにコンプレッサ吸引圧レベルまで上昇し始める。弁部材24に加えられる合成差圧力は、弁部材をその第2位置(図6)に再着座させる。
【0074】
弁部材24が再着座すると、ピストン室186が再び通路188を介してコンプレッサ吸引圧に連通される。ピストン180は、ばね182によってピストンに加えられた力をはるかに超える付加差圧力を受ける(室部分30a内の高圧とピストン室186内の低圧との差)。このようにして、ピストンは、ばね182を十分に圧縮しながら弁部材開口190内に押し戻される。ピストン180が弁部材開口内に押し込まれると、カム面200,202および各カム・フォロワ204,206の係合が解かれ、弁部材24を作動させる整列関係がなくなるので、弁部材24を回転させる傾向がなくなることに注意されたい。
【0075】
冷凍剤の流れを再び変更する場合、ソレノイド100は非励磁にされる。滑り子102は、図6に示すカム・フォロワ206とカム斜面202が係合(整列)した位置から動く。それにより、ポペット162がベント通路164から移動して、弁部材を離座させる。ピストン180にまたがる圧力差は解消し(消失し)、またピストン180は弁部材開口190から出てくる。
【0076】
カム斜面202とカム・フォロワ206とは、ピストンがそのストロークにわたって移動するとき、相互に係合して移動する。滑り子102がハウジング組立体22に対して回転しないように再び固定され、そしてピストン180が弁部材に対して回転しないように固定される。したがって、カム・フォロワ206とカム斜面202との間の反力が、カム斜面202が設けられている完全な90°の角度にわたって軸70のまわりに弁部材24を回転させる。依然として離座している弁部材24が第1位置(図3)に整列するように移動する。
【0077】
ピストン180は、そのストロークを継続し、延長部215をハウジング組立体のエンド・キャップに係合させ、その結果、ピストンばね182は、弁部材を座61と係合するように有効に押圧する。カム・フォロワ204,206は、ピストンがそのストロークを継続している間、それぞれの軸方向カム・スロット211の中を動く。これらのカム・スロット211は、弁部材が着座するように動くとき、弁部材が回転しないように保証する。
【0078】
離座した弁部材が図3に示す位置に最初に整列したとき、ポペット160がベント通路164を塞ぐので、室部分30bは流通路62と連通しなくなる。制限された冷凍剤の流れが制限リング52を通過すると、室部分30bの圧力がコンプレッサ吸引圧レベルまで上昇し始める。この室部分30b内の上昇圧力は、弁部材を座61(図3)に確実な着座関係で押し付けるように弁部材24に作用する圧力を作り出す。ピストン180は、それに加えられた差圧力によってばね力に抗して弁部材開口内に同様に押し戻される。
【0079】
弁20の構成および作動は、その反転(変更)動作を完了できないという弁にとっての大きなリスクなしに、様々な異なる寸法の冷凍システムにおける使用を可能とする。その理由は、この新しい弁は、反転(変更)を完了するために大きなシステム圧力差が連続して存在することに依存しないからである。比較的小容量のシステムSにおいてコンプレッサCが停止した時点で変更が要求されたと仮定する。ソレノイド100は弁部材24を離座させるように制御開閉部90を作動する。システムの高圧および低圧側が離座した弁部材を介して連通する。システムSが小さいので、小量の冷凍剤を収容し、また熱交換器も小さい。そのため、システム圧力は即座に等しくなる。それにもかかわらず、弁部材24はばね182に貯えられたエネルギによって別の位置に整列するように回転し、そしてピストン180がそのストロークを完了したとき、ばね力によって再び着座される。弁のこの状態は図2の(A)図に示されている。コンプレッサのサイクルが再び”オン”になると、冷凍剤圧力が室部分30a,30b内に徐々に形成され、弁部材を強く着座させる差圧力を作り出すとともに、ピストン180を再び押し込み、次の変更をするためのエネルギをばね182に貯える。
【0080】
さらに、弁部材24はその二つの位置の間を移動しているとき離座しているので、高強度の耐久性のある研磨された弁座と弁の滑り面が不要になる。弁20の多くの要素が鋳造プラスチック部品から構成できる。また、ハウジング組立体、流通管、ソレノイド、ばねは主として金属から作られるが、残りの部品はプラスチックである。したがって、この新しい弁を製造するための労力および材料費は、従来の弁よりも著しく少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
概略的に示された冷凍システムに接続され、本発明に従って構成された変更弁の分解斜視図である。
【図2】
図1に示す変更弁の図であって、(A)図は図1の組み立てられた変更弁の縦断面図であって、弁部材がその移動を完了してシステムの流れ方向を変更する瞬間、すなわち、コンプレッサをオフにしシステム圧力を等しくしたときを示し、また、(B)図は(A)図の2B-2B線によって示される面から見た側面図である。
【図3】
図1の弁の一部を示す図であって、(A)図は(B)図の3A-3A線によって示す面から概略的に見た横断面図であり、(B)図は図2の(A)図に類似した縦断面図であって、簡明化のためにいくつかの弁部品を省略して弁がある動作状態にあることを概略的に示し、そして、(C)図は(B)図の3C-3C線によって示す面から見た横断面図である。
【図4】
図1の弁の一部を示す図であって、(A)図は(B)図の4A-4A線によって示す面から見た横断面図であり、(B)図は図2の(A)図に類似した縦断面図であって、簡明化のためにいくつかの弁部品を省略して弁がある動作状態にあることを概略的に示し、そして、(C)図は(B)図の4C-4C線によって示す面から見た横断面図である。
【図5】
図1の弁の一部を示す図であって、(A)図は(B)図の5A-5A線によって示す面から見た横断面図であり、(B)図は図2の(A)図に類似した縦断面図であって、簡明化のためにいくつかの弁部品を省略して弁がある動作状態にあることを概略的に示し、そして、(C)図は(B)図の5C-5C線によって示す面から見た横断面図である。
【図6】
図1の弁の一部を示す図であって、(A)図は(B)図の6A-6A線によって示す面から見た横断面図であり、(B)図は図2の(A)図に類似した縦断面図であって、簡明化のためにいくつかの弁部品を省略して弁がある動作状態にあることを概略的に示し、そして、(C)図は(B)図の6C-6C線によって示す面から見た横断面図である。
【符号の説明】
20---弁
22---ハウジング集合体
24---弁部材
28---作動子
58---遠隔案内部
94---オペレータ
111---プランジャ集合体
170---流体圧応答ピストン集合体
S---蒸気圧縮冷凍システム
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-06 
結審通知日 2006-02-10 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願2001-322781(P2001-322781)
審決分類 P 1 113・ 537- ZA (F16K)
P 1 113・ 121- ZA (F16K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 柴沼 雅樹
ぬで島 慎二
登録日 2002-05-17 
登録番号 特許第3307921号(P3307921)
発明の名称 流体システム内の流れの方向を変更する方法  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 佐藤 久容  
代理人 朝比 一夫  
代理人 朝比 一夫  
代理人 升永 英俊  
代理人 福田 親男  
代理人 福田 親男  

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