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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1169233
審判番号 不服2005-23335  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-02 
確定日 2007-12-12 
事件の表示 特願2000-299610「電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月10日出願公開、特開2002-107966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明・手続の経緯
本願は、平成12年 9月29日に出願されたものであって、平成17年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年12月 2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、この特許出願にかかる発明は、平成17年 9月26日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりの電子写真感光体であるものと認める。
「導電性支持体、感光層を有する電子写真感光体において、
該電子写真感光体の表面層が、
(i)下記式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート、
(ii)下記式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート、並びに
(iii)下記式(3)および下記式(4)で示される構成単位を有する共重合体を含有し、該ポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)が30,000以上105,000以下であり、該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)が25,000以上55,000以下であり、かつMa>Mcであることを特徴とする電子写真感光体:
【化1】

(式中、X_(1)は、炭素原子、または単結合(この際のR_(5),R_(6)は存在しない)、R_(1)?R_(4)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(5),R_(6)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(5)とR_(6)が結合することによって形成されるアルキリデン基を示し、R_(7)?R_(10)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示す。)、
【化2】

(式中、X_(2)は、炭素原子、または単結合(この際のR_(15),R_(16)は存在しない)、R_(11)?R_(14)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(15),R_(16)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(15)とR_(16)が結合することによって形成されるアルキリデン基を示す。)、
【化3】

(式中、R_(17)?R_(22)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、nは正の整数を示す。)、
【化4】

(式中、X_(3)は、炭素原子、または単結合(この際のR_(27),R_(28)は存在しない)、R_(23)?R_(26)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(27),R_(28)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(27)とR_(28)が結合することによって形成されるアルキリデン基を示す。)。」

2.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前である平成11年 8月 6日に頒布された刊行物である特開平11-212289号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】導電性支持体及び感光層よりなる電子写真感光体において、該電子写真感光体の表面層が、
(A)下記式(1)で示される繰返し単位を有するポリアリレート、
(B)下記式(2)で示される繰返し単位を有するポリカーボネート、
(C)下記式(3)及び式(4)で示される繰返し単位を有する共重合体、及び
(D)フッ素系樹脂粉末及び/又はケイ素原子を側鎖に有する重合性単量体を構成成分として有するグラフト重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(X_(1) は、炭素原子、または単結合(この際のR_(5) ,R_(6) はなし)、R_(1 )?R_(4) は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(5) ,R_(6 )はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(5) とR_(6 )が結合することによって形成されるアルキリデン基を示し、R_(7 )?R_(10)はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示す)
【化2】

(X_(2 )は、炭素原子、または単結合(この際のR_(15),R_(16)はなし)、R_(11)?R_(14)は水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(15),R_(16)はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(15)とR_(16)が結合することによって形成されるアルキリデン基を示す)
【化3】

(R_(17)?R_(22)はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、nは正の整数を示す)
【化4】

(X_(3) は、炭素原子、または単結合(この際のR_(27),R_(28)はなし)、R_(23)?R_(26)はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基を示し、R_(27),R_(28)はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいアルキル基、アリール基、またはR_(27)とR_(28)が結合することによって形成されるアルキリデン基を示す)
【請求項2】前記式(1)におけるR_(1) ,R_(2) ,R_(5 ),R_(6) がメチル基でありR_(3) ,R_(4) ,R_(7) ,R_(8) ,R_(9) ,R_(10)が水素原子である繰返し単位を有するポリアリレート、前記式(2)におけるR_(11)?R_(14)が水素原子でありR_(15),R_(16)がXとともにシクロヘキシリデン基である繰返し単位を有するポリカーボネート、前記式(3)におけるR_(17)?R_(20)がメチル基でありR_(21),R_(22)が水素原子であり、かつ前記式(4)におけるR_(23)?R_(26)が水素原子でありR_(27),R_(28)がXとともにシクロヘキシリデン基である繰返し単位を有する共重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】前記(D)成分としてフッ素系樹脂粉体が四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体から選ばれたものである請求項1及び請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】前記(D)成分としてケイ素原子を側鎖に有する重合性単量体を構成成分として有するグラフト重合体が、ケイ素原子を側鎖に有し末端に重合性官能基を有する単量体と、ケイ素原子を有しない重合性単量体もしくは末端に重合性官能基を有するオリゴマーからなるマクロ単量体とを共重合して得られるものである請求項1及び2に記載の電子写真感光体。
・・・
【請求項7】式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート、及び式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート、及び式(3)及び式(4)で示される構成単位を有する共重合体を良溶媒中に溶解混合し、貧溶媒により再沈殿して得られたブレンド材料を含有することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項8】前記感光体を帯電手段、現像手段及びクリーニング手段の構成要素と共に一体として結合された電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【請求項9】前記感光体を帯電手段、現像手段及びクリーニング手段の構成要素と共に一体として結合されたプロセスカートリッジを備えることを特徴とする電子写真装置。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「本発明の目的は、従来のポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂を表面層として有していた問題点を解決し、機械的強度の強さと、潤滑性の高さの両者を耐久後まで一貫して兼ね備えた電子写真感光体を提供することにある。さらに電子写真特性が良好であり、かつ製造時の塗工性及び塗料ポットライフが良好であり、一般的なクリーニングブレードでも捲れの起こらない電子写真感光体を提供することである。」(【0012】)

(1c)「式(1)で示される構成単位の具体例を表1に示す・・・

・・・

」(【0019】-【0023】)

(1d)「式(2)で示される構成単位の具体例を表2に示す・・・

・・・

」(【0024】-【0027】)

(1e)「式(3)で示される構成単位の具体例を表3に示す・・・

・・・」(【0027】-【0029】)

(1f)「本発明においては、式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート、及び式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート、及び式(3)及び式(4)で示される構成単位を有する共重合体の粘度平均分子量は10,000?200,000であることが好ましく、特には15,000?100,000であることが好ましい。また、式(1)で示される構成単位を有するポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)と、式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)と、式(3)及び式(4)で示される構成単位を有する共重合体の粘度平均分子量(Ms)は、Ma≧Mc≧Msであることが好ましい。」(【0046】)

(1g)「本発明における電子写真感光体は、感光層が電荷輸送材料と電荷発生材料を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送層と電荷発生層に分離した積層型でもよいが電子写真特性からは積層型が好ましい。いずれの場合も、少なくとも電子写真感光体の表面層が、前述のとおり式(1)で示される(A)成分としてポリアリレート、及び式(2)で示される(B)成分としてポリカーボネート、及び式(3)及び式(4)で示される(C)成分として共重合体及び(D)成分としてフッ素系樹脂粉体又はケイ素原子を側鎖に有するグラフト重合体を含有する。」(【0050】)

(1h)「[実施例1]・・・Alシリンダーを支持体とし、これに、以下の材料より構成される塗料を支持体上に浸漬法で塗布し、140℃、30分熱硬化して膜厚15μmの導電層を形成した。
・・・
次にこの導電層上に、N-メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部、n-ブタノール30部の混合溶媒に溶解した溶液を浸漬法で塗布し、膜厚0.5μmの中間層を形成した。
次に・・・膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。ビスフェノールC型(例1-2)のポリアリレート50部及びビスフェノールZ型(例2-3)のポリカーボネート40部および例3-1と例2-13に示される変性ポリカーボネート10部を用いて調製したブレンドポリマーを用いた。このブレンドポリマー100部、ポリ四フッ化エチレン(商品名ルブロンL-2、ダイキン工業(株)製)10部、フッ素系グラフトポリマー(商品名アロンGF300、東亞合成化学工業(株)製)0.5部を、モノクロロベンゼン500部、ジクロロメタン500部中に溶解し、ステンレス製ボールミルにて48時間分散した。
得られた分散液に下記構造式のアミン化合物90部・・・下記構造式のアミン化合物10部・・・を溶解し、電荷輸送層用の塗料を得た。
この塗料を浸漬法で塗布し120℃2時間乾燥し25μmの電荷輸送層を形成した。」(【0067】-【0074】)

(1i)「次に評価について説明する。
装置はビューレットパッカード製LBP「レーザージェット4plus」(プロセススピード71mm/sec)を改造して用いた。改造は帯電器の直前にヒューズランプによる前露光を取り付け、残留電位測定時のみ点灯させて使用した。電位測定は、暗部をVd、レーザー光照射部をVl、前露光照射部をVrとして行った。作成した電子写真感光体をこの装置で23℃、55%RH下で通紙耐久を行った。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとし1000枚をプリントしたところで電位を測定し、続けて5000枚まで通紙耐久を行い感光体の削れ量を測定した。また32.5℃、85%RHの高温高湿環境で15000枚の通紙耐久を行った。シーケンスはプリント1枚ごとに1回停止する間欠モードとし、500枚毎に10分間プリントを休止し、1000枚毎にカートリッジを出し入れすることを繰り返し、15000枚を耐久してクリーニングブレードのめくれを評価した。尚、必要に応じ10分間のプリント休止中にトナー補給を行った。さらにソルベントクラック性は表面に指脂を付着させ24時間放置し顕微鏡観察によりソルベントクラックの有無を観察した。ポットライフの評価として、各電荷輸送層塗料を室温(23℃)にて密閉容器中にて1週間静置した後、溶解状態を観察した。」(【0075】-【0076】)

(1j)「[実施例2]用いるブレンドポリマーとしてビスフェノールZ型(例1-23)及びビスフェノールC型(例1-2)を1/1で共重合したポリアリレートを用い、表4に示す条件とした以外は実施例1と同様にして行った。」(【0076】)

(1k)実施例1及び2の電子写真感光体は、続けて5000枚まで通紙耐久試験を行った際の感光体の削れ量が4.5?4.6(μm)と小さく、また32.5℃、85%RHの高温高湿環境下で15000枚の通紙耐久試験を行った際にもブレードめくれの発生が生じない等、優れた特性を示すこと。(【0078】)

(1l)「[実施例13]
実施例1と同様の方法で膜厚15μmの導電層、膜厚0.5μmの中間層、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送層を形成するために、電荷輸送層用の塗料を調製した。ビスフェノールC型(例1-2)のポリアリレート50部及びビスフェノールZ型(例2-3)のポリカーボネート40部及び例3-1と例2-13に示される変性ポリカーボネート10部を用いて調製したブレンドポリマーを用いた。このブレンドポリマー100部、ケイ素原子を側鎖に有する重合性単量体を構成成分として有するグラフト重合体(化合物No.4-1)2部、下記構造式のアミン化合物90部及び・・・下記構造式のアミン化合物10部を、モノクロロベンゼン500部、ジクロロメタン500部中に溶解し、電荷輸送層用の塗料を得た。この塗料を浸漬法で塗布し120℃、2時間乾燥し25μmの電荷輸送層を形成した。次に実施例1と同様に評価された結果を表7に示す。
[実施例14]
用いるブレンドポリマーとしてビスフェノールZ型(例1-23)およびビスフェノールC型(例1-2)を1/1で共重合したポリアリレートを用い、表6に示す条件とした以外は実施例1と同様にして行った。」(【0080】-【0081】)

(1m)実施例13及び14の電子写真感光体は、続けて5000枚まで通紙耐久試験を行った際の感光体の削れ量が4.7?4.8(μm)と小さく、また32.5℃、85%RHの高温高湿環境下で15000枚の通紙耐久試験を行った際にもブレードめくれの発生が生じない等、優れた特性を示すこと。(【0085】)

(1n)「本発明で示したポリアリレートとポリカーボネートと変性ポリカーボネートとケイ素原子を側鎖に有する重合性単量体を構成成分として有するグラフト重合体を含有することにより、優れた機械的強度と表面潤滑性を耐久後まで併せ持つ電子写真感光体を提供することができる。さらに電子写真特性が良好であり、かつ製造時の塗工性及び塗料ポットライフが良好であり、一般的なクリーニングブレードでも捲れの起こらない電子写真感光体を提供することができる。」(【0085】)

(1o)「【発明の効果】・・・本発明の電子写真感光体は、優れた機械的強度と表面潤滑性を耐久後まで併せ持ち、良好な電子写真特性を持っている。また、溶解性、ポットライフの改善により、材料(構成単位)の選択の幅が広がり、利用目的に応じた電子写真感光体の提供が可能となった。」(【0086】)

これら(1a)-(1o)の記載内容を勘案すると、引用例1には、
「導電性支持体及び感光層よりなる電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、
(A)式(1)で示される繰返し単位を有するポリアリレート、
(B)式(2)で示される繰返し単位を有するポリカーボネート、
(C)式(3)及び式(4)で示される繰返し単位を有する共重合体、及び(D)フッ素系樹脂粉末及び/又はケイ素原子を側鎖に有する重合性単量体を構成成分として有するグラフト重合体を含有し、
式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート、式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート、及び式(3)及び式(4)で示される構成単位を有する共重合体の粘度平均分子量は15000?100000であるとともに、該ポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)と、該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)と、該共重合体の粘度平均分子量(Ms)が、Ma≧Mc≧Msである電子写真感光体。」(式(1)-(4)の内容は上記摘記事項(1a)を参照。)の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認めることができる。

また、同じく原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前である平成10年 7月14日に頒布された刊行物である特開平10-186691号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】有機光導電性化合物と、バインダー樹脂とを溶剤中に、溶解あるいは分散してなり、かつ脂肪族不飽和炭化水素を含有することを特徴とする電子写真感光体用塗布液組成物。
【請求項2】前記有機光導電性化合物が電荷発生剤および/または電荷輸送剤であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体用塗布液組成物。
・・・
【請求項8】前記バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂および/またはポリアリレート樹脂との混合物であることを特徴とする請求項1または5記載の電子写真感光体用塗布液組成物。
【請求項9】前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が30,000?60,000であることを特徴とする請求項6?8のいずれかに記載の電子写真感光体用塗布液組成物。
・・・
【請求項11】前記ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量が30,000?50,000であることを特徴とする請求項8記載の電子写真感光体用塗布液組成物。」(【特許請求の範囲】)

(2b)「請求項9の本発明は、前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が30,000?60,000であることを特徴とする電子写真感光体用塗布液組成物である。
・・・
請求項11の本発明は、前記ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量が30,000?50,000であることを特徴とする電子写真感光体用塗布液組成物である。
本発明に従えば、バインダー樹脂の粘度平均分子量が特定の範囲に調整されているので、感光体製品を使用して印刷した場合、バインダー樹脂の不溶物等に起因する画像ムラや黒点がなくなる。また、樹脂の混合物を用いるとき、各樹脂成分の粘度平均分子量が調整されているので、樹脂成分の相溶性が増大する。」(【0013】)

(2c)「電荷輸送層3に用いられるバインダー樹脂は、電荷発生層2に用いられるバインダー樹脂と実質的に異ならない。たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、エポキシ、ウレタン、セルロースエーテル、および前記の樹脂を構成するのに必要なモノマの共重合体等が挙げられる。これらの樹脂の中で、安定した電気特性、機械的強度、感光体の製造コストを考慮すると、ポリカーボネート樹脂が好ましい。特に、粘度平均分子量が約30,000?約60,000であるポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂の共重合体あるいはポリカーボネート樹脂と前記樹脂のモノマを繰返し成分とする共重合体が好ましい。また、これらのポリカーボネートに対して、たとえばポリエチレンテレフタレートに代表される芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分から構成されるポリエステル樹脂やポリアリレートなどのカルボキシル基、ヒドロキシル基などの官能性基を有する官能性モノマーと前記樹脂のモノマーとの共重合体を混合してもよい。特に粘度平均分子量が約20,000から50,000のポリエステル樹脂や粘度平均分子量が約30,000から約50,000のポリアリレートが、繰り返し使用時の電気特性や画像特性、および感光体の製造コストを考慮すると好ましい。」(【0039】)

(2d)「実施例1(積層型感光体)
・・・
上記構造式(化1)で示す電荷発生剤であるビスアゾ系顔料2部と、フェノキシ樹脂(PKHH:ユニオンカーバイド社製)1部と、1,4-ジオキサンを97部とをボールミル分散機で12時間分散して分散液を調製し、これをタンクに満たし、直径80mm、長さ348mmのアルミ製円筒状支持体(アルミドラム)を浸漬、引き上げて塗工し、室温にて1時間乾燥を行い、厚さ約1μmの電荷発生層をアルミドラム上に形成した。
・・・
一方、電荷輸送剤として上記構造式(化2)で示されるヒドラゾン系化合物100部と、バインダー樹脂として粘度平均分子量39,000のポリカーボネート樹脂(Z-400:三菱瓦斯化学社製)100部と、さらに添加剤として2-ペンテンを0.1部加え、ジクロロメタン800部に溶解し、電荷輸送層塗工用塗布液を調製した。
上記のようにして形成された電荷発生層上に電荷輸送層塗工用塗布液を浸漬塗工し、80℃で1時間乾燥を行い、厚さ約20μmの電荷輸送層を形成し、積層機能分離型感光体サンプルA(0日保存)を作製した。」(【0059】-【0063】)

(2e)「実施例3
バインダー樹脂として粘度平均分子量39,000ポリカーボネート樹脂(Z-400:三菱瓦斯化学社製)90部と、粘度平均分子量43,000のポリアリレート樹脂(U-100:ユニチカ社製)10部と、添加剤1-オクテン0.01部を用いたほかは、実施例1と同様に感光体サンプルA,Bを作製し、評価した。評価結果を表1に示す。サンプルA,Bともに初期にはきれいな画像が得られた。繰り返し使用すると、わずかに残留電位の上昇が見られたが、画像には変化は見られなかった。」(【0065】)

3.対比
本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「式(1)で示される繰返し単位を有するポリアリレート」、「式(2)で示される繰返し単位を有するポリカーボネート」、「式(3)及び式(4)で示される繰返し単位を有する共重合体」は、本願発明の「式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート」、「式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート」、「式(3)および式(4)で示される構成単位を有する共重合体」にそれぞれ相当する。
また、引用例1発明の「表面層」は、本願発明のものと構造の共通する「ポリアクリレート」、「ポリカーボネート」、及び「共重合体」を含有する点で、本願発明の「表面層」とかわるところはない。
してみると、本願発明と引用例1発明とは、
「導電性支持体、感光層を有する電子写真感光体であって、
該電子写真感光体の表面層が、
(i)式(1)で示される構成単位を有するポリアリレート、
(ii)式(2)で示される構成単位を有するポリカーボネート、
(iii)式(3)および下記式(4)で示される構成単位を有する共重合体を含有し、
該ポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)及び該ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)が所定範囲に設定される電子写真感光体。」(式(1)-(4)の内容は、前記「1.」を参照。)である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:電子写真感光体の表面層中に含有されるポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)及びポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)が、本願発明では、Maが30000以上105000以下、Mcが25000以上55000以下、Ma>Mcの範囲にあるものと特定されるのに対し、引用例1発明では、Ma及びMcが15000?100000の範囲に設定されるとともに、Ma≧Mcと設定される点。

4.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
引用例1発明は、電子写真感光体の表面層中にポリアリレート、ポリカーボネート等を共存させることにより機械的強度、表面潤滑性等といった電子写真感光体の諸特性を改善させるものであるから(摘記事項(1a)(1b))、引用例1発明におけるポリアリレート及びポリカーボネートの粘度平均分子量を具体化するに際しては、電子写真感光体の機械的強度、表面潤滑性等といった特性を考慮の上、ポリアリレート及びポリカーボネートの粘度平均分子量を、引用例1発明の粘度平均分子量範囲の中でさらに好適化することが、当業者の通常の発想であると考えられる。
そして、引用例1発明におけるポリアリレート及びポリカーボネートの粘度平均分子量を好適化するに際しては、電子写真感光体の表面層中に含有されるポリアリレート及びポリカーボネートの粘度平均分子量が、従来どの程度の値に設定されていたかが当業者に参酌されるものと考えられるところ、引用例2には、電子写真感光体の表面層中に含有させるポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)を30000?50000、同じくポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)を30000?60000に設定することが記載されるとともに(摘記事項(2a)(2b)(2c))、Maが43000、Mcが39000に設定された電子写真感光体の具体例が開示されている(摘記事項(2e))。また、30000以上105000以下なるポリアリレートの粘度平均分子量、及び25000以上55000以下なるポリカーボネートの粘度平均分子量は、引用例2のほか、例えば、特開平9-43870号公報の【0040】-【0058】には、表面層に当該範囲に包含された粘度平均分子量を有するポリアリレートが含有された電子写真感光体が記載され、特開平5-158248号公報の【0023】-【0047】、特開平7-319181号公報の【0049】-【0097】、及び特開平1-253752号公報の第10頁左上欄第10行-第11頁左下欄には、表面層に当該範囲に包含される粘度平均分子量を有するポリカーボネートが含有された電子写真感光体が記載されるように、電子写真感光体の表面層中に含有させるポリアリレート及びポリカーボネートの粘度平均分子量として本願出願前に慣用されていた分子量に過ぎない。
さらに、電子写真感光体の表面層中に2種以上の樹脂を含有させるに当たっては、それら樹脂の分子量は異なるのが普通であり、Ma≧Mcとの関係を具体化するに際し、MaをMcより大きい値となすことは、当業者の通常の選択である。
そうすると、引用例1発明の表面層中に含有されたポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)及びポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)を、電子写真感光体が機械的強度、表面潤滑性等といった特性において許容される性能を示すように、引用例2の記載及び本願出願前周知の技術を参酌の上調整し、それらの粘度平均分子量を、Maが30000以上105000以下、Mcが25000以上55000以下にあるとともに、MaをMcより大となるよう設定することは、当業者であれば、容易になし得る程度の粘度平均分子量範囲の好適化に過ぎないものと云わざるを得ない。

そして、機械的強度及び表面潤滑性等に優れた電子写真感光体が得られるといった本願明細書に示される本願発明の効果は、引用例1発明の表面層中に含有させるポリアリレートの粘度平均分子量(Ma)及びポリカーボネートの粘度平均分子量(Mc)を、引用例1の記載、及びそれら樹脂の粘度平均分子量として従来好適に採用されている値等を参酌の上好適化することにより期待される特性の範囲を超えるものではなく、本願発明が格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1に記載される発明、並びに引用例2に記載される発明及び本願出願前周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載される発明、並びに引用例2に記載される発明及び本願出願前周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この特許出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-18 
結審通知日 2007-10-19 
審決日 2007-10-31 
出願番号 特願2000-299610(P2000-299610)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 淺野 美奈
中澤 俊彦
発明の名称 電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置  
代理人 山下 穣平  
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