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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63H |
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管理番号 | 1169259 |
審判番号 | 不服2006-26080 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-18 |
確定日 | 2007-12-14 |
事件の表示 | 平成8年特許願第206659号「図柄造形遊具」拒絶査定不服審判事件〔平成10年2月3日出願公開、特開平10-28782〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成8年7月17日に出願された特願平8-206659号の特許出願に係り、原審における平成17年12月2日付拒絶理由通知に対し、平成18年2月11日付で意見書が提出されるとともに、明細書の特許請求の範囲及び図面の簡単な説明、並びに図面を補正する手続補正書が提出され、そして、前記手続補正が特許法第17条の2第3項に規定されている新規事項の追加禁止要件に違反することを拒絶理由とする平成18年5月2日付の最後の拒絶理由通知に対し、平成18年7月13日付で意見書が提出されるとともに、明細書の特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正書が提出されたところ、前記平成18年7月13日付で提出された明細書の特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正については、特許法第17条の2第3項に規定されている新規事項の追加禁止要件違反の理由により平成18年9月7日付で補正の却下の決定がなされるとともに、本願は、平成18年9月7日付で前記最後の拒絶理由通知書に記載の拒絶理由により拒絶査定がなされ、その後、前記拒絶査定を不服として、平成18年10月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2 原審が拒絶査定の理由とした平成18年5月2日付の最後の拒絶理由通知の内容 原審において、平成18年5月2日付で通知した最後の拒絶理由通知書に記載されているところの、審査官が拒絶査定の理由とした拒絶理由の内容(全文)は、次のとおりである。 「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものである。これについて意見があれば、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出して下さい。 理 由 平成18年 2月11日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 イ.補正後の請求項1には、 「適宜大きさの雄状面ファスナー(1)の裏面に、ほぼ同サイズの台紙(2)を張り付ける。これにリング(3)と同数の切り込み(4)をいれる。 台紙とほぼ同サイズの「表表紙と裏表紙」(5)の間に、台紙(2)と同サイズの絵柄や図形の輪郭をかいた複数枚のメッシュシート(6)をはさみ、開閉自在のリング(3)で閉じ、リング(3)に対向する辺には係止具(7)を付ける。又、相互のサイズに関連をもたせた多様な形の多数個の雌状面ファスナー小片(8)よりなる図柄造形遊具。 作用効果 雄状面ファスナー(1)を好みの絵柄や図形の描かれたメッシュシート(6)の下に差しいれ、リング(3)に、切り込み(4)を差し込み固定する。メッシュシートの絵柄や図形に合わせて雌状面ファスナー小片(8)を組み合わせて取りつけ絵柄や図形を完成させる。メッシュシート(6)をめくることで、一気にすべての雌状面ファスナー小片(8)をはがすことが出来、ただちに次の好みのメッシュシート(6)に移ることができる。大きな楕円のベージでは、動物や人間の表情を表現したり、福笑い遊びなどを楽しむこともできる。又、完成した絵柄を開閉自在のリング(3)から取はずし飾ることもできる。 尚、裏表紙(5)の内側には、ファスナー付きの袋を取りつけ、雌状面ファスナー小片(8)を収納するものとする。」 と記載されているが、出願当初の明細書又は図面には、「適宜大きさの雄状面ファスナー(1)の裏面に、ほぼ同サイズの台紙(2)を張り付ける。」、「これにリング(3)と同数の切り込み(4)をいれる。」、「雄状面ファスナー(1)を好みの絵柄や図形の描かれたメッシュシート(6)の下に差しいれ、リング(3)に、切り込み(4)を差し込み固定する。」、「大きな楕円のベージでは、動物や人間の表情を表現したり、福笑い遊びなどを楽しむこともできる。」、「又、完成した絵柄を開閉自在のリング(3)から取はずし飾ることもできる。 」等の事項については記載されておらず、かつ、上記事項は当初明細書等の記載からみて自明な事項ともいえない。 ロ.補正後の請求項2には、 「メッシュシート(6’)の周辺を滑らかな状態とし、メッシュシート(6’)に描かれた線に沿って、先端の固い紐(9)を縫い通し凹凸を出す。更に台紙(2’)の上に複数枚のメッシュシート(6’)乗せ、片隅を支点(10)として閉じてなる請求項第1項の視覚障害者用図柄造形遊具。 作用効果 視覚障害者は縫い通した紐(9)の凹凸に触ることにより、部分部分の形を理解できる。そして雌状面ファスナー小片(8)を選び出し、紐(9)の凹凸に合わせて軽く押しつけ、小片(8)を組合せながら絵柄を完成させることにより、全体像をはっきりと認識することができる。 尚、雄状面ファスナーの貼られた台紙(2’)の上には、支点(10)を介して複数枚のメッシュシート(6’)をゆるく綴じ付け、自在に回転することができるものとする。」 と記載されているが、出願当初の明細書又は図面には、「メッシュシート(6’)の周辺を滑らかな状態とし」、「メッシュシート(6’)に描かれた線に沿って、先端の固い紐(9)を縫い通し凹凸を出す。」、「更に台紙(2’)の上に複数枚のメッシュシート(6’)乗せ、片隅を支点(10)として閉じてなる」、「視覚障害者は縫い通した紐(9)の凹凸に触ることにより、部分部分の形を理解できる。」、「そして雌状面ファスナー小片(8)を選び出し、紐(9)の凹凸に合わせて軽く押しつけ、小片(8)を組合せながら絵柄を完成させることにより、全体像をはっきりと認識することができる。」、「尚、雄状面ファスナーの貼られた台紙(2’)の上には、支点(10)を介して複数枚のメッシュシート(6’)をゆるく綴じ付け、自在に回転することができるものとする。」という事項については記載されておらず、かつ、上記事項は当初明細書等の記載からみて自明な事項ともいえない。 ハ.補正後の【図1】?【図4】に記載された事項は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、かつ、当初明細書等の記載からみて自明な事項ともいえない。 ニ.補正後の【図面の簡単な説明】に記載された事項は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、かつ、当初明細書等の記載からみて自明な事項ともいえない。 なお、当該補正がなされた明細書又は図面における請求項1-2に記載した事項は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから、当該発明については新規性、進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。 最後の拒絶理由通知とする理由 1.最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。」 3 当審の審理の対象 上記「1 手続の経緯」欄に前述のとおり、平成18年7月13日付の明細書の特許請求の範囲及び図面を補正する手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定されている新規事項の追加禁止要件違反の理由により平成18年9月7日付で補正の却下の決定がなされているところ、審判請求人は前記補正の却下の決定について、審判請求書の請求の理由において、 「9月19日付、特許庁より【拒絶査定】並びに【補正の却下の決定】を送付される。 補正の却下の決定のところで【図5】【図6】について書かれているが、上記理由により消去されるべきものである。 次に、「補正の却下の決定」の「理由」の「イ」「ロ」については、線で消した文章は消去して下さい。「ハ」については前記の通りである。 結び 上記理由により審判を請求する。」 と主張して、前記補正の却下の決定に係る平成18年7月13日付け手続補正で追加した図面の【図5】と【図6】が消去されるべきこと、及び、同手続補正で補正した特許請求の範囲の請求項1の 「【請求項1】 図柄を描いた複数枚のメッシュシート(2)をリング(5)でとじ合わせそれぞれのメッシュシート(2)の下に厚紙等を貼着した雄状面ファスナー(1)を出し入れ自在とする構成であり、更に相互のサイズに関連を持たせた異なる形状の多数個の雌状面ファスナー形片(3)を有する図柄造形遊具。」の記載から 「の下に厚紙等を貼着した雄状面ファスナー(1)」の文言を削除し、 また、請求項2の 「【請求項2】 厚紙などの裏表紙の内側に雄状面ファスナー(1)を貼着し、この上に外周を縁取りを施すなどなめらかな状態とし、図柄を描いた複数枚のメッシュシート(2)を重ね、1角に設けた留め具(8)により回動自在に閉じた状態とする構成であり、更に相互のサイズに関連を持たせた異なる形状の複数個の雌状面ファスナー形片(3)を有し、該雌状面ファスナー形片(3)を、おもて表紙の内側に着脱自在に収納する構成とする図柄造形遊具。」の記載から 「し、該雌状面ファスナー形片(3)を、おもて表紙の内側に着脱自在に収納する構成と」の文言を削除する旨の補正の示唆を、審判請求書においてしている。 しかしながら、本願についての拒絶査定不服審判の請求に伴い、明細書又は図面を補正する適法の手続補正が法定期間内になされてなく、かつ、前記補正の却下の決定についての不服を拒絶査定不服審判における請求の趣旨とする旨の主張もなされていない。 そして、前記事項については、手続補正により補正できる法定期間が既に経過しているので、適法に補正することができないものとなっている。 したがって、平成18年9月7日付の前記補正の却下の決定はすでに確定しており、また、適法の手続補正が法定期間内になされていないから、当審が審理すべき対象は、平成18年2月11日付の、明細書の特許請求の範囲及び図面の簡単な説明、並びに図面を補正する手続補正に基づいて補正された明細書及び図面である。 4 本願に対する拒絶査定の理由についての検討 (1)本願に対する拒絶査定の理由の要点 本願に対する拒絶査定の理由は、上記「2 原審が拒絶査定の理由とした平成18年5月2日付の最後の拒絶理由通知書の内容」欄に前述のとおりの「平成18年2月11日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」というものであり、その本願に対する拒絶査定の理由の要点は、次のアないしエに示すとおりである。 ア 補正後の請求項1について (ア) 「適宜大きさの雄状面ファスナー(1)の裏面に、ほぼ同サイズの台紙(2)を張り付ける。」、 (イ) 「これにリング(3)と同数の切り込み(4)をいれる。」、 (ウ) 「雄状面ファスナー(1)を好みの絵柄や図形の描かれたメッシュシート(6)の下に差しいれ、リング(3)に、切り込み(4)を差し込み固定する。」、 (エ) 「大きな楕円のベージでは、動物や人間の表情を表現したり、福笑い遊びなどを楽しむこともできる。」及び (オ) 「又、完成した絵柄を開閉自在のリング(3)から取はずし飾ることもできる。」 の各事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されておらず、かつ、上記各事項は当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。 イ 補正後の請求項2について (ア) 「メッシュシート(6’)の周辺を滑らかな状態とし」、 (イ) 「メッシュシート(6’)に描かれた線に沿って、先端の固い紐(9)を縫い通し凹凸を出す。」、 (ウ) 「更に台紙(2’)の上に複数枚のメッシュシート(6’)乗せ、片隅を支点(10)として閉じてなる」、 (エ) 「視覚障害者は縫い通した紐(9)の凹凸に触ることにより、部分部分の形を理解できる。」、 (オ) 「そして雌状面ファスナー小片(8)を選び出し、紐(9)の凹凸に合わせて軽く押しつけ、小片(8)を組合せながら絵柄を完成させることにより、全体像をはっきりと認識することができる。」、 (カ) 「尚、雄状面ファスナーの貼られた台紙(2’)の上には、支点(10)を介して複数枚のメッシュシート(6’)をゆるく綴じ付け、自在に回転することができるものとする。」 の各事項は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、上記各事項は当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。 ウ 補正後の図面について 補正後の【図1】?【図4】に記載された各事項は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、上記各事項は当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。 エ 補正後の図面の簡単な説明の欄について 補正後の図面の簡単な説明の欄に記載された各事項は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、上記各事項は当初明細書等の記載から自明の事項であるともいえない。 (2)当審の判断 ア 補正後の請求項1の記載についての検討 補正された請求項1に記載されている少なくとも上記(イ)及び(ウ)の各事項から把握される「これ[適宜大きさの雄状面ファスナー(1)の裏面に張り付けたほぼ同サイズの台紙(2)]にリング(3)と同数の切り込み(4)をいれ、前記リング(3)に、前記切り込み(4)を差し込み固定する」という技術思想は、出願当初明細書等に記載されていないことが明らかである。 そして、前記(イ)及び(ウ)の各事項から把握される前記技術思想は、出願当初明細書等の記載から自明であるともいえない。 イ 補正後の請求項2の記載についての検討 補正された請求項2に記載されている少なくとも上記(イ)、(エ)及び(オ)の各事項から把握される「メッシュシート(6’)に描かれた線に沿って、先端の固い紐(9)が縫い通されることにより形成される縫い通した紐(9)の凹凸に視覚障害者が触ることにより、視覚障害者が部分部分の形を理解でき、また、雌状面ファスナー小片(8)を選び出し、紐(9)の凹凸に合わせて軽く押しつけ、小片(8)を組合せながら絵柄を完成させることにより、全体像をはっきりと認識することができる」ようにする技術思想は、出願当初明細書等に記載されていないことが明らかである。 そして、前記(イ)、(エ)及び(オ)の各事項から把握される前記技術思想は、出願当初明細書等の記載から自明であるともいえない。 ウ 補正後の図面の記載についての検討 補正により差し替えられた補正後の【図1】ないし【図4】の図面には、前記「ア 補正後の請求項1の記載についての検討」欄及び前記「イ 補正後の請求項2の記載についての検討」欄において指摘した前記技術思想を具現化したものが記載されていて、前記補正後の【図1】ないし【図4】の図面の記載は、出願当初明細書等の【図1】ないし【図4】の図面の記載とは、別異のものであることが一瞥して明らかである。 したがって、前記補正後の【図1】ないし【図4】の図面には、新規な技術思想を具現化した図面が記載されていることにより、前記補正後の【図1】ないし【図4】の図面の記載は、出願当初明細書等に記載されていないことが明らかである。 そして、前記補正後の【図1】ないし【図4】の図面の記載は、出願当初明細書等の記載から自明であるともいえない。 エ 補正後の図面の簡単な説明の欄の記載についての検討 補正後の図面の簡単な説明の欄には、次の事項が記載されている。 「【図面の簡単な説明】 【図1】本考案の請求項1に関わる斜視図 【図2】本考案の請求項1に関わる斜視図 【図3】正面図 【図4】本考案の請求項2に関わる斜視図である。これに(図3)を用いて造形する。 【符号の説明】 1、雄状面ファスナー 7、係止具 2、台紙 8、雌状面ファスナー小片 3、リング 9、先の固いひも 4、切り込み 10、支点 5、表裏表紙 6、メッシュシート 【提出物件の目録】 【物件名】 参考資料 1」 しかしながら、前記「ア 補正後の請求項1の記載についての検討」欄、前記「イ 補正後の請求項2の記載についての検討」欄及び「ウ 補正後の図面の記載についての検討」において指摘したように、補正後の請求項1及び請求項2の記載、補正後の【図1】ないし【図4】の記載は、いずれも出願当初明細書等に記載されていない事項を含み、しかも、前記事項が出願当初明細書等の記載から自明であるとも認めることができない以上、補正後の図面の簡単な説明の欄に記載されている補正後の請求項1及び請求項2に関わる発明を図示した図面の説明が、やはり、出願当初明細書等に記載されていない事項を含み、しかも、前記事項が出願当初明細書等の記載から自明であるともいえないこととなることは、前述した理由から明らかなことである。 (3)まとめ 以上のとおりであり、本願の平成18年2月11日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する「明細書又は図面について補正するときは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」の要件を満たしていないので、本願を拒絶査定の処分とするに至ったところの、本願についての前記手続補正を、いわゆる新規事項の追加による「特許法第17条の2第3項の要件違反」とした最後の拒絶理由には、本願を拒絶査定の処分とするに足る十分な理由が認められる。 4 むすび 以上のとおり、平成18年2月11日付けでした明細書又は図面についての手続補正は、「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない」という特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、前記手続補正は、同法第49条第1号に規定する「その特許出願の願書に添付した明細書又は図面についてした補正が第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとき。」に該当するので、本願は、同法第49条により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-28 |
結審通知日 | 2007-10-09 |
審決日 | 2007-10-23 |
出願番号 | 特願平8-206659 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(A63H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
佐藤 昭喜 |
特許庁審判官 |
森内 正明 森口 良子 |
発明の名称 | 図柄造形遊具 |