• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200611178 審決 特許
不服200611239 審決 特許
不服20065710 審決 特許
不服200516226 審決 特許
不服20038143 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169298
審判番号 不服2004-24798  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-02 
確定日 2007-12-06 
事件の表示 特願2003-342413「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯等
本願は、平成12年11月16日に特許出願した特願2000-349975号の一部を平成15年9月30日に新たな特許出願としたものであって、平成16年10月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成16年12月2日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成17年1月4日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成17年1月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年1月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別される種々の図柄を変動表示する変動表示手段と、
前記変動表示手段とは別に設けられ、内部当選役を報知する種々の図柄を表示する演出用リールと、
ゲーム毎にサンプリングされる乱数値により内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
前記内部当選役決定手段の決定結果と遊技者の停止操作のタイミングとに基づいて前記変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段と、
前記演出用リールの演出内容を決定する演出決定手段と、
前記演出決定手段の決定結果に対応して設けられ前記演出用リールの演出動作を予め定めた演出データに基づいて、前記演出用リールの動作を制御する演出制御手段とを具備し、
前記演出制御手段が前記演出データに基づいて前記演出用リールの動作を制御している状況において、遊技者により演出用リールの演出を中止させるための所定の操作が行われたとき、前記演出制御手段は、増加役に内部当選したことを報知する図柄以外の図柄または前記演出用リールによる演出の中止を示す図柄を表示する動作を予め定めた演出中止データに基づいて前記演出用リールの動作を制御することを特徴とする遊技機。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である変動表示手段における「種々の図柄」について「遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別される」との限定、演出用リールにおける「種々の図柄」について「内部当選役を報知する」との限定、「所定の操作」について「演出用リールの演出を中止させるための」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、平成12年1月21日に発行されたパチスロ攻略マガジン(ドラゴン)2000年2月増刊号(第9巻第3号通巻第108号)、株式会社双葉社(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

・記載事項1
第8頁の右上部には、正面下部に「大花火」と表示されたスロットマシンの写真が掲載されており、当該スロットマシンには、その正面中央よりやや上部に上下に3つの図柄が表示された窓3つからなる表示部があり、その表示部の上には横書きの「大当り」と表示された表示部が備えられている。

・記載事項2
第8頁中央上部には、「リール配列」と記載されて「左」「中」「右」毎に配列された種々の図柄が図示されている。

・記載事項3
第8頁には、「役の構成」と題して、役の種類とコイン払出枚数が図示されており、「通常時小役確率」、「ボーナス抽選確率表」と題して、役の当選の確率が記載されている。

・記載事項4
第9頁中央下部には、「リプレイハズシ攻略手順」と題して、アシストハズシを行う手順が記載されている。

・記載事項5
第10頁右上部には、「この機種も他のアルゼ系マシン同様、成立フラグの状況別に演出パターンがまとめて振り分けられている。新たに搭載された4thリールとて例外では無く、予告音・フラッシュ等と連動する。ただ、今作ではまず「128分の(黒丸)」の抽選を突破して始めて演出の振り分けが成される仕組みとなっており、これに漏れた場合はいかなる役が成立していようとも何も起こらない。
まずは4thリール。アクションは28種類用意されており、作動タイミング別に分類可能。「大当り」と「ハズレ」はレバー操作時か第三停止時にのみ出現する事になる。」と記載されている。

・記載事項6
第10頁左上部には、「オオハナビ主なボーナス確定パターン」と題して、「(1)4thリールに「大当り」が停止」と記載されている。

・記載事項7
第10頁下半分には、「オオハナビ4thリールアクションパターン全28種」と題して、4thリールで表示されるパターンを28種図示しており、そのなかで図柄としては「大当り」、「ハズレ」、「赤はっぴの花火師」(注1)、「青はっぴの花火師」(注2)、「花火玉」(注3)が図示されており、その表示順序等が図示されている。なお、注1?3については、その呼称が本文等に記載されていないので、そのキャラクターの様子からそのように仮に呼称した。

以上の記載事項1?7について、次のことが言える。
(1)記載事項1における「窓3つからなる表示部」はスロットマシンにおける通常の構造及び記載事項2からみて、回転リールから構成される変動表示手段であり、スロットマシンの技術常識からリール上の図柄は遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別されるものであることは自明である。
(2)記載事項1における横書きの「大当り」と表示された表示部は、その「大当り」の文字が「オオハナビ4thリールアクションパターン全28種」で記載されている「大当り」の文字と同一であることから、4thリールであることは明らかである。更に、記載事項6によれば、4thリールに「大当り」が停止すると、ボーナスが確定していることがわかるので、4thリール上の「大当り」図柄は内部当選役を報知するものである。
(3)記載事項3によれば、役が所定の確率で決定されていることは自明であり、引用文献1に記載されたスロットマシンが役決定手段を有することは明らかである。
(4)記載事項4の「アシストハズシ」を行うことからみて、引用文献1に記載されたスロットマシンにはアシストを行う変動表示手段の変動表示を停止制御する停止制御手段が設けられていると解される。
(5)記載事項5によると、4thリールにはアクションパターンが28種類用意されていることから、このアクションパターンは予め定められたものと言うことができ、そのパターンは「演出データ」として予め定められたものであることは明らかである。また、記載事項5の「まず「128分の(黒丸)」の抽選を突破して始めて演出の振り分けが成される仕組みとなっており、」との記載からみて、引用文献1に記載されたスロットマシンは「演出用リールの演出内容を決定する演出決定手段」を有するものと解される。更に、記載事項7によれば、図柄の表示順序等がパターンとして決められていることから、引用文献1に記載されたスロットマシンは「4thリールの演出動作を予め定めた演出データに基づいて、4thリールの動作を制御する演出制御手段」を有するものと解される。

以上を総合すると、引用文献1には、次の発明が実質的に記載されている。
「遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別される種々の図柄を変動表示する変動表示手段と、
変動表示手段とは別に設けられ、内部当選役を報知する種々の図柄を表示する4thリールと、
役を決定する役決定手段と、
変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段と、
4thリールの演出内容を決定する演出決定手段と、
演出決定手段の決定結果に対応して設けられ、4thリールの演出動作を予め定めた演出データに基づいて、4thリールの動作を制御する演出制御手段を有するスロットマシン。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(2)引用文献2について
平成12年5月1日に発行されたパチスロ必勝ガイド2000年5月号(第11巻第5号通巻第142号)、株式会社白夜書房(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

・記載事項8
第62頁の右上部には、正面下部に「玉緒でポン!」と表示されたスロットマシンの写真が掲載されており、当該スロットマシンには、その正面中央よりやや上部に上下に3つの図柄が表示された窓3つからなる表示部があり、その表示部の上には「ボーナス確定」の文字とともに人物(玉緒)のキャラクターが図示された表示部が備えられている。

・記載事項9
第63頁左上部には、「液晶演出は、コイン投入時に毎回出題されるクイズに、中村玉緒が正解するかどうかが最初の分岐点になる。・・・その選択を、プレイヤー自ら第3リールを止めるタイミングで行うという、まさにプレイヤー参加型の演出となっているのだ。」と記載されている。

・記載事項10
第62頁から第63頁にまたがって、「大公開! これが巷で噂の液晶演出だ!!」と題して、コイン投入時から第3リール停止時までの各段階での液晶演出画面が図示されている。

・記載事項11
第63頁の最下部には、「見たくない人(?)もこれで安心! キャンセル機能もあり!! さすがに見たくないという人は少ないだろうが、明らかにボーナス非成立だと分かる時など、液晶による演出が邪魔になることがある。そういった場合には、コインを投入するかBETボタンを押すことによってキャンセル可能。スピーディーなゲーム進行に一役買っている。」と記載されている。

以上の記載事項8?11について、次のことが言える。
(1)引用文献2に記載されたスロットマシンにおける、「ボーナス確定」の文字とともに人物(玉緒)のキャラクターが図示された表示部は、上記各記載事項を参酌すると、演出用液晶表示部と解される。
(2)記載事項10によれば、コイン投入時等の各段階で液晶演出する画面は複数用意されていることから、当該画面のデータは演出用データとして予め定められていると解され、引用文献2に記載されたスロットマシンは演出データに基づき演出用液晶表示部の動作を制御する演出制御手段を有するものと認められる。
(3)記載事項11に液晶による演出が邪魔な場合にコイン投入又はBETボタンの押動を行う旨の記載があるが、これは「遊技者により演出を中止させるための所定の操作」と言うことができる。

以上を総合すると、引用文献2には、次の発明が実質的に記載されている。
「演出制御手段が演出データに基づいて演出用液晶画面の動作を制御している状況において、遊技者により演出用液晶画面の演出を中止させる所定の操作が行われたとき、演出を中止する遊技機。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明を比較すると、
引用文献1記載の発明の「4thリール」は、その図柄の表示により演出を行っているものであるから、本願補正発明の「演出用リール」に相当する。
また、引用文献1記載の発明の「スロットマシン」は、遊技機の一種であるから、「遊技機」と言いかえることができる。

そうすると、本願補正発明と引用文献1記載の発明は、
「遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別される種々の図柄を変動表示する変動表示手段と、
変動表示手段とは別に設けられ、内部当選役を報知する種々の図柄を表示する演出用リールと、
役を決定する役決定手段と、
変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段と、
演出用リールの演出内容を決定する演出決定手段と、
演出決定手段の決定結果に対応して設けられ、演出用リールの演出動作を予め定めた演出データに基づいて、演出用リールの動作を制御する演出制御手段を有する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「役決定手段」が、本願補正発明においては「ゲーム毎にサンプリングされる乱数値により内部当選役を決定する内部当選役決定手段」であるのに対して、引用文献1記載の発明ではそのような構成か不明である点。

<相違点2>
「変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段」が、本願補正発明においては「内部当選役決定手段の決定結果と遊技者の停止操作のタイミングとに基づいて」いるのに対し、引用文献1記載の発明ではそのような構成か不明である点。

<相違点3>
本願補正発明では「演出制御手段が演出データに基づいて前記演出用リールの動作を制御している状況において、遊技者により演出用リールの演出を中止させるための所定の操作が行われたとき、演出制御手段は、増加役に内部当選したことを報知する図柄以外の図柄または演出用リールによる演出の中止を示す図柄を表示する動作を予め定めた演出中止データに基づいて演出用リールの動作を制御する」ようにしたの対し、引用文献1記載の発明ではそのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。

<相違点1>について
「ゲーム毎にサンプリングされた乱数値により内部当選役を決定する内部当選役決定手段」を設けることはスロットマシンにおいて常套手段であり、引用文献1記載の発明において上記常套手段を採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたことである。

<相違点2>について
内部当選役決定手段の決定結果と遊技者の停止操作のタイミングとに基づいて変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段はスロットマシンにおいて常套手段であり、引用文献1記載の発明において上記常套手段を採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたことである。

<相違点3>について
上述のように、引用文献2記載の発明は、所定の操作が行われときに演出を中止するものである。しかし、引用文献2記載の発明は中止のときにどのような演出(画面)表示を行うか不明であるが、演出用の表示をどのようなものとするかは設計上の問題である。すなわち、演出中止時に表示する図柄として採用し得るものは、「大当り」等の遊技者に誤解を生じさせるものでなければよく、増加役を報知する図柄以外の図柄としたり、遊技機のその時の状態すなわち演出のキャンセルを示す図柄としたり、適宜決定すればよいものである。その際、中止の演出のためのデータを予め定めた演出中止データに基づき制御が行われることは当然のことである。
したがって、引用文献1記載の発明において、演出の中止を行う引用文献2記載の発明を採用し、その際、中止の時に表示する図柄を適宜決定し、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたことである。

以上により、本願補正発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成17年1月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年10月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「種々の図柄を変動表示する変動表示手段と、
前記変動表示手段とは別に設けられ、種々の図柄を表示する演出用リールと、
ゲーム毎にサンプリングされる乱数値により内部当選役を決定する内部当選役決定手段と、
前記内部当選役決定手段の決定結果と遊技者の停止操作のタイミングとに基づいて前記変動表示手段の変動表示動作を停止制御する停止制御手段と、
前記演出用リールの演出内容を決定する演出決定手段と、
前記演出決定手段の決定結果に対応して設けられ前記演出用リールの演出動作を予め定めた演出データに基づいて、前記演出用リールの動作を制御する演出制御手段とを具備し、
前記演出制御手段が前記演出データに基づいて前記演出用リールの動作を制御している状況において、遊技者により所定の操作が行われたとき、前記演出制御手段は、増加役に内部当選したことを報知する図柄以外の図柄または前記演出用リールによる演出の中止を示す図柄を表示する動作を予め定めた演出中止データに基づいて前記演出用リールの動作を制御することを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断

(1)引用文献
当審の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から「遊技価値が付与される入賞役が停止態様に基づいて識別される」、「内部当選役を報知する」、「演出用リールの演出を中止させるための」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用文献1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-05 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-10-22 
出願番号 特願2003-342413(P2003-342413)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 尚  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 小林 俊久
太田 恒明
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ