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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1169308
審判番号 不服2005-6162  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2007-12-06 
事件の表示 特願2000-260414号「管球」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月15日出願公開、特開2002- 75011号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯
本願は、平成12年8月30日付けの出願であって、原審の拒絶理由通知に対して平成16年9月24日付けで意見書の提出と共に手続補正をしたが拒絶査定を受けたので、平成17年4月7日付けで本件審判を請求すると共に、同日付けで、平成14年改正前の特許法第17条の2第1項第3号に規定する手続補正(前置補正)をしたものである。

【第2】平成17年4月7日付け手続補正の却下について
【補正却下の決定の結論】
平成17年4月7日付けの手続補正を却下する。
【補正却下の決定の理由】
1.平成17年4月7日付けでされた手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の趣旨
(1)本件手続補正の前後における、それぞれの請求項1に係るの発明は次のとおりである。
<本件手続補正前>の請求項1に記載された発明
「【請求項1】発光管と、この発光管を点灯させるための点灯回路と、内部に前記点灯回路が収納され、かつ一端部に口金を有するケースとを備え、前記ケースには、前記ケース内に形成された空間の全周の少なくとも一部を覆うように、前記ケース内に形成された空間内の熱を前記口金へ伝導させる部材を有し、かつ前記部材が前記口金と熱的に接続されていることを特徴とする管球。」
<本件手続補正後>の請求項1に記載された発明
「【請求項1】発光管と、この発光管を点灯させるための点灯回路と、内部に前記点灯回路が収納され、かつ一端部に口金を有するケースと、前記ケース内に形成された空間の全周の少なくとも一部を覆うように、前記ケース内に形成された空間内の熱を前記口金へ伝導させる部材とを備え、前記部材が前記ケースに設けられているとともに、前記部材が前記口金と接続されていることを特徴とする管球。」(以下、「本願補正発明」という。)
(2)上記の手続補正は、ケース内に形成された空間内の熱を口金へ伝導させる「部材」と「口金」とが「熱的に接続され」るための構成(両者は必ずしも、「接続」(直接的に接触)していなくてもよい)を、「部材が前記口金と接続され」る構成のみに限定しようとするものであって、この補正は平成18年改正前の特許法17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、新規事項を追加するものではない。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

2.引用例、その記載事項及び引用発明
(1)原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-230202号公報(以下、「第1引用例」という。)には、「放電灯装置」に関して、次の(イ)?(ホ)の事項が記載されている。
(イ)「放電灯部と、外囲器に収納されて上記放電灯を点灯する点灯装置部とが近接配置されたものにおいて、上記外囲器を、その外部を構成し絶縁材からなる第1の外囲器と、この第1の外囲器の内周にほぼ密着し上記点灯装置部を包囲する金属材からなる第2の外囲器とで構成したことを特徴とする放電灯装置。」(第1頁左下欄第5?11行)
(ロ)「第9図は・・・従来の放電灯装置の縦断面図で・・・図中、(l)は放電灯(1a)とこれを覆う透明体又は半透明体の外被(1b)からなる放電灯部、(2)は放電灯(1a)を点灯する点灯装置部で・・・(3)は点灯装置部(2)を覆う絶縁材の外囲器、(4)は口金である。
従来の放電灯装置は上記のように構成され、・・・点灯装置部(2)の構成部品には、例えばスイッチングトランジスタ(2A)、(2B)等発熱があり、外部へこの熱を逃がしたい部品がある。」(第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第11行)
(ハ)「〔実施例〕
第1図?第4図はこの発明の一実施例を示す図で、第1図は斜視図、第2図は分解斜視図、第3図は第2の外囲器(3B)の縦断面図、第4図は点灯装置部(2)の電気回路図であり、(1)・・・(2)、・・・(4)は上記従来装置と同様のものである。」(第2頁左下欄第9?15行)
(ニ)「上記のように構成された放電灯装置においては、・・・高周波電圧が放電灯(1a)に印加されて放電灯(1a)は点灯する。
点灯装置部(2)の構成部品は発熱しても、第2の外囲器(3B)が金属材であり、熱の良導体であるため、第2の外囲器(3B)の場所による温度差は小さくなり、かつこれとほぼ密着した第1の外囲器(3A)を介して放熱が行われる。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第6行)
(ホ)「また、第2の外囲器(3B)の内側に薄い絶縁フィルムを設けてもよい。」(第3頁左下欄第1?2行)
(ヘ)第1図及び第2図には、 第1の外囲器(3A)の一端部に口金(4)を有している点が記載されていることが認められる。
この記載事項(ア)?(へ)及び第1図、第2図に示された内容を総合すると、第1引用例には、
「放電灯(1a)とこれを覆う透明体又は半透明体の外被(1b)からなる放電灯部(1)と、外囲器(3)に収納されて放電灯(1a)を点灯する点灯装置部(2)とが近接配置されたものにおいて、外囲器(3)を、その外部を構成し一端部に口金(4)を有する絶縁材からなる第1の外囲器(3A)と、第1の外囲器(3A)の内周にほぼ密着し点灯装置部(2)を包囲する金属材からなる第2の外囲器(3B)とで構成し、点灯装置部(2)の構成部品が発熱しても、金属材で熱の良導体である第2の外囲器(3B)の場所による温度差を小さくして、かつこれとほぼ密着した第1の外囲器(3A)を介して放熱が行われる放電灯装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)同じく原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-86787号公報(以下、「第2引用例」という。)には、「低圧水銀蒸気放電ランプ」に関して、次の(ト)及び(チ)の記載がある。
(ト)「【0006】・・・本発明の低圧水銀蒸気放電ランプは、定常点灯時の水銀蒸気圧を制御するアマルガムを収容したアマルガム収容部を有する発光管と、・・・前記発光管を点灯するための点灯回路と、前記点灯回路を収納したケースと、前記ケースに設けられた口金を備え、前記アマルガム収容部と前記口金とを熱伝導部材で接続した構成を有する。
【0007】このような構成とすれば、アマルガム収容部の熱を熱伝導部材を介して口金に伝え放熱させることができるので、アマルガム温度の過上昇を充分に規制することができる。このため、水銀蒸気圧を適正値に制御することが容易になり、発光効率を向上することができる。」(第2頁第2欄第11?25行)
(チ)「【0010】・・・また、熱伝導部材10は、熱伝導性の良い金属材料、例えば、銅束線からなる。なお、熱伝導部材10と点灯回路3との絶縁性を確保するために、熱伝導部材10に絶縁処理を施した構造でもよい。
【0011】本実施形態では、熱伝導部材10の材料として銅を用いているが、・・・熱伝導部材10をシリコン材料で形成した場合には熱伝導部材10と点灯回路3との絶縁性を確保するための対策を施す必要がなくなる。」(第2頁第2欄第45行?第3頁第3欄第11行)

3.発明の対比
(1)上記引用発明と本願補正発明とを対比すると、引用発明の「放電灯(1a)」は、本願補正発明でいう「発光管」に相当し、以下は同様に、「点灯装置部(2)」は「点灯回路」に、「一端部に口金(4)を有する絶縁体からなる第1の外囲器(3A)」は「一端部に口金を有するケース」に、「放電灯装置」は「管球」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「金属材からなる第2の外囲器(3B)」は「第1の外囲器(3A)の内周にほぼ密着し点灯装置部(2)を包囲」しているが、これは「第1の外囲器(3A)」内に形成された空間の全周を覆うものであり、「第1の外囲器(3A)」内の点灯装置部(2)の構成部品が発熱しても、熱が空間を隔てて金属材で熱の良導体である第2の外囲器(3B)に伝導し、かつこれとほぼ密着した第1の外囲器(3A)を介して放熱が行われるので、本願補正発明の「ケース内に形成された空間の全周の少なくとも一部を覆うように、前記ケース内に形成された空間内の熱を」「伝導させる部材」に相当する。
(2)上記の対比から、本願補正発明と引用発明との間の一致点及び相違点を、次のとおりである。
[一致点]
「発光管と、この発光管を点灯させるための点灯回路と、内部に前記点灯回路が収納され、かつ一端部に口金を有するケースと、前記ケース内に形成された空間の全周の少なくとも一部を覆うように、前記ケース内に形成された空間内の熱を伝導させる部材とを備え、前記部材が前記ケースに設けられている管球」である点。
[相違点]
本願補正発明では、ケース内に形成された空間内の熱を伝導させる部材が「口金と接続され」て、熱を「口金へ」伝導する構成としているのに対し、引用発明では、「第2の外囲器(3B)・・・とほぼ密着した第1の外囲器(3A)を介して放熱が行われ」る点。

(3)当審の判断
上記の相違点を検討すると、
引用発明では、「第2の外囲器(3B)」(ケース内に形成された空間内の熱を伝導させる部材)によって伝導される熱は、「第1の外囲器(3A)を介して放熱」されるとしているが、放熱部分は第1の外囲器(3A)のみにとどまらず、その面積ができるだけ広くなるようにする方が放熱の効率がよくなることは当業者においては明らかな事項である。
一方、第2引用例には、「アマルガム収容部の熱を熱伝導部材を介して口金に伝え放熱させる」旨が記載されている(上記記載事項(ヘ))けれども、放電灯(放電ランプ)における発熱部材は必ずしも「アマルガム収容部」のみに限られるわけではないから(第1引用例の記載事項(ロ)参照)、第2引用例の上記記載は、放電灯(放電ランプ)の発熱部材に発生する熱の放熱部として、口金を利用することを示唆したものとも解することができる。
そうすると、引用発明においても、上述のとおり放熱部分の面積を広くするために、第2引用例の上記示唆に基づいて、口金を放熱部として、この口金と「点灯装置部(2)の発熱」(記載事項(ロ))を放熱部に伝導するための部材である「第2の外囲器(3B)」とを接続して、上記相違点で指摘した本願補正発明と同様の構成とすることは、当業者が容易になし得たものといえる。
そして、本願発明の構成により得られる作用効果も、引用発明及び第2引用例の記載事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は引用発明及び第2引用例の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求人の主張について
(1)上記4.で検討した点に関して、請求人は、審判請求の理由において、第1引用例に記載されたものは、「点灯回路部の熱を、単に絶縁材からなる第1の外囲器表面から外部に放熱させようとする着想に基づくもの」であるのに対し、第2引用例に記載されたものは、「アマルガム収容部の温度を下げることを課題とし、アマルガム収容部の外面と口金とを熱伝導部材によって接続し、アマルガム収容部の温度を直接口金に伝えて下げようとする着想に基づくもの」であって、「着想や課題の異なる」第2引用例に記載されたものを、第1引用例に記載されたものと「組み合わせ本願発明を得ることは困難」である旨の主張をしている。
そこで検討すると、第2引用例では、確かに直截的には「アマルガム収容部の温度を下げること」を課題とするとしているけれども、上述のとおり、放電灯における発熱部材は必ずしも「アマルガム収容部」のみに限られるわけではなく(第1引用例の記載事項(ロ)参照)、また、アマルガム収容部以外の発熱部材についてもアマルガム収容部と同様の方法で放熱できることは、当業者であれば、当然に類推可能な程度の事項といえる。しかも、発熱部材と熱伝導部材とが、第1引用例に示されるように、空間(空気)を介して熱伝導されるか、また、第2引用例に示されるように、「接続」(直接的な接触)により熱伝導されるかは、その技術的な意義と構成において、本質的な差異をなすものではない。
したがって、第1引用例と第2引用例のそれぞれに記載された発明は、必ずしも、請求人がいうような「着想や課題の異なる」ものとまではいえず、両者を「組み合わせ本願発明を得ることは困難」とする請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は更に、「ショートや感電等の発生防止の配慮から、口金には電源供給のための点灯回路との配線以外の接続は通常行われないもの」であって、「絶縁物と口金との接続として、アマルガム収容部すなわちガラス細管(絶縁物)と口金とを接続すること」が第2引用例に開示されてあるとしても、「ショートや感電等の生じやすい点灯回路を囲繞した」第1引用例記載の「金属製の熱伝導部材」を、第2引用例の記載に基づいて、「口金に接続することは通常着想しない」から、第1引用例と第2引用例とを「組み合わせる動機は存在しない」旨の主張をしている。
この点について検討すると、第2引用例に開示されているのは、請求人が指摘する「アマルガム収容部すなわちガラス細管(絶縁物)と口金とを接続すること」ではなく、アマルガム収容部と口金とを、銅束線のような「熱伝導性の良い金属材料」等から成る「熱伝導部材」を介して接続することであるから(記載事項(ト)参照)、請求人の上記の主張は、その前提自体に誤りがあるということになる。
もっとも、第2引用例では「熱伝導部材10と点灯回路3との絶縁性を確保するために、熱伝導部材10に絶縁処理を施した構造でもよい」として、上述の「ショートや感電等の発生防止」のための対策をとるべき必要性が示唆されているが、この点は、第1引用例(記載事項(ホ))においても、「第2の外囲器(3B)の内側に薄い絶縁フィルムを設けてもよい」として、同様の示唆がなされている。そして、引用発明において、上述の絶縁フィルムを設ける等の対策が講じられる場合には、請求人の上記指摘するところは、その裏付けの根拠となる合理的な理由を相当程度欠くことになるから、いずれにしても、上記二つの引用例を「組み合わせる動機は存在しない」旨の請求人の主張を採用することはできない。

6.独立特許要件の欠如に伴う手続補正の却下
上記検討から明らかなように、本願補正発明は、上記引用発明及び第2引用例の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件手続補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反することになり、同第159条第1項において一部読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【第3】本願の発明について
1.本願の発明
平成17年4月7日付けの本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成16年9月24日付け手続補正に係る明細書の、特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるが、そのうち、請求項1に係る発明は請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】発光管と、この発光管を点灯させるための点灯回路と、内部に前記点灯回路が収納され、かつ一端部に口金を有するケースとを備え、前記ケースには、前記ケース内に形成された空間の全周の少なくとも一部を覆うように、前記ケース内に形成された空間内の熱を前記口金へ伝導させる部材を有し、かつ前記部材が前記口金と熱的に接続されていることを特徴とする管球。」(以下、「本願請求項1の発明」という。)

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項及び引用発明は、上記【第2】の2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
上記の本願請求項1の発明と、上記の【第2】で検討した本願補正発明とを対比すると、空間内の熱を口金へ伝導させる「部材」と「口金」との関連構成について、本願請求項1に係る発明は、「熱的に接続され」るのに対して、本願補正発明は、上記の「熱的に接続され」る構成を、「部材が前記口金と接続され」る構成のみに限定しようとするものといえる。
そうすると、本願請求項1の発明の構成を、さらに限定した構成を備える本願補正発明が、上記【第2】の2.以下に記載したとおり、上記の引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1の発明も本願補正発明と同じく、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【第4】むすび
上記のとおり、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願請求項2以下に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-04 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-10-24 
出願番号 特願2000-260414(P2000-260414)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F21S)
P 1 8・ 121- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志柿崎 拓  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 岸 智章
柴沼 雅樹
発明の名称 管球  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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