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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1169309
審判番号 不服2005-7594  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-27 
確定日 2007-12-06 
事件の表示 平成11年特許願第147453号「測距装置および走行制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 8日出願公開、特開2000-337871〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年5月27日の出願であって、平成17年3月24日付け(発送日:平成17年3月29日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月26日付け手続補正により明細書又は図面についての補正がなされたものである。

2.平成17年5月26日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年5月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】・・・を特徴とする測距装置。
【請求項2】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項3】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項4】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項5】・・・を特徴とする測距装置。
【請求項6】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項7】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項8】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項9】・・・を特徴とする走行制御装置。」
から、
「【請求項1】・・・を特徴とする測距装置。
【請求項2】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項3】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項4】・・・請求項1記載の測距装置。
【請求項5】・・・を特徴とする測距装置。
【請求項6】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項7】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項8】・・・請求項5記載の測距装置。
【請求項9】・・・を特徴とする走行制御装置。
【請求項10】・・・を特徴とする走行制御装置。」
に補正する補正事項を含むものである。

(2)補正の目的についての検討
本件補正によって、特許請求の範囲には新たに独立項である請求項10(「走行制御装置」)が追加された。
一方、補正前の特許請求の範囲についてみると、上記(1)に記載したとおり、請求項1?8に係る発明は「測距装置」に関するものであり、「走行制御装置」に関するものは請求項9のみである。
してみると、本件補正は、「走行制御装置」に関する発明の数を1から2に
増加するものである。
したがって、本件補正は、補正前の請求項1?9に記載した発明を特定するために必要な事項を限定することを目的とするものであるとは言えない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものであるとも言えない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号乃至第4号に掲げるいずれの事項をも目的としないものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成17年5月26日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成12年2月2日付け手続補正書及び平成17年2月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項9に係る発明は次のとおりである。
「車両の走行状態を制御する走行制御装置において、
受光部に投影された複数のマーカの画像間距離を求めることにより、前記マーカを有する車両までの距離を測定する測距装置において、
前記受光部に投影された前記マーカの画像のうち、第1の距離を隔てて配置された1対のマーカからの画像を抽出する第1のマーカ画像抽出手段と、
前記受光部に投影された前記マーカの画像のうち、第2の距離を隔てて配置された1対のマーカからの画像を抽出する第2のマーカ画像抽出手段と、
所定の条件に基づいて前記第1または第2のマーカ画像抽出手段によって抽出された前記マーカの画像の何れかを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記マーカの画像から、前記マーカを有する車両までの距離を演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果と、前記走行状態を検出した検出信号とに応じて走行機構の動作を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする走行制御装置。」(以下、「本願発明」という。)

4.刊行物に記載された発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平3-282315号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
a.「この発明は複数の移動体が移動する場合に、先行する移動体とこの移動体の後に続く移動体との離間距離を計測するものに関し、とくに先行する移動体と後続の移動体とがそれぞれ独自に、あるいはそれぞれ可変の速度をもって、またはたがいに所定の離間距離をもって移動するもの、たとえば飛翔体、飛行体、乗り物あるいは無人走行車等に適用されるものである。・・・従来、移動体たとえば無人走行車は先行する走行車の後に続く走行車があるばあい、言うまでもなく両者の衝突を未然に防ぐ必要がある。・・・このため、前方を走る走行する無人走行車に対する後続車の衝突防止の必要性はますます高く、いきおい走行状態における両者の相対距離をつねに検出する必要がある。」(3頁右上欄16行?左下欄13行)
無人走行車において、先行する走行車との衝突防止のために、検出された離間距離に基づいて当該走行車の走行状態の制御を行うことは技術常識であるから、この点を考慮すると、
前記記載a.及び第1図から、
(1)検出された離間距離に応じて車両の走行状態を制御する手段を有する走行制御装置、が読みとれる。
b.「(15)先行する移動体に設けられた複数の発光部と、上記先行する移動体に後続する移動体に設けられ、上記発光部から放射される光をレンズ系を介して結像させる受光面を有する受光部と、上記受光面上の光の像の第1の位置からその第2の位置までの長さを検出する検出部およびこの検出部の出力をもとに上記後続の移動体から上記先行する移動体までの離間距離を演算する演算部とを備えた移動体の離間距離計測装置。」(特許請求の範囲の請求項15)
c.「したがって発光部11から出た光はレンズ系17を介して受光面16に入射し、その面上に2つの輝点像を形成する。そこでこの2つの輝点間の距離を受光面16すなわち光センサ-アレイにより計測すれば、下記の関係から放射光が作る角度θが分かるので後続の移動体2と先行する移動体1との離間距離L1が計測される。ここで放射光が作る角度θは先行する移動体1と後続の移動体2との離間距離をLl、発光点E1、E2間の距離すなわち両発光部の外側端間の距離をL2、受光面16すなわち光センサ-アレイにより計測される輝点間の距離をL3、レンズ系17と受光面16間の距離をL4とすると
tanθ=L2/L1=L3/L4
L2/L1=L3/L4
∴L1=L4/L3×L2
となる。
なおこの方式は実質的に従来の三角測量である。」(4頁右下欄12行?5頁左上欄下から8行)。
前記記載b.c.及び第2図から、
(2)受光面16に形成された2つの輝点像間の距離を計測して求めることにより、先行する移動体1との離間距離L1を測定する離間距離計測装置、が読みとれる。
d.「そして長距離を計測するとき、すなわち先行する移動体lと後続の移動体2とがあらかじめ設定された検出限界距離と、これから所定の距離だけ短い遠距離領域にあるときには受光面16上のたがいに最も離れた光の像の間隔、すなわち3つの輝点のうち、外側の2つの輝点の距離を測定すれば発光部が2個のものと実質的に同様となる。」(6頁左上欄5行?12行)
e.「この検出可能な軌道ゾーンをより確保するために遠距離領域Zfと近距離領域Znとの間において、両領域に重なるように中距離領域Zmを設ける。
このばあい、遠距離領域Zfにあるばあいのように、最外側の輝点を測定するのではなく、たがいに隣接する発光部すなわち第1の発光部11aと第3の発光部あるいは第2の発光部11bと第3の発光部11cとの距離に対応する受光面16上の輝点間距離を計測する。この計測のおいては両最外側の発光部が、検出ゾーンのなかにある必要はなく、隣接した2個の発光部が検出ゾーンの中にあればよい。」(6頁右上欄15行?左下欄6行)
f.「すなわち両移動体の離間距離が中距離領域にあるときにもっとも外側に位置する発光部が検出面から外れてもたがいに隣接する発光部によりその距離が測定され、・・・。」(6頁右下欄下から3行?7頁左上欄4行)
移動体の離間距離が中距離領域にあるときに隣接する発光部の輝点像により距離を演算する方法は、当然に遠距離領域における方法と同じく前記c.に記載された三角測量を用いるものと考えられるから、この点を考慮すると、
前記記載b.c.d.e.及び第10図から、
(3)受光面16に形成された発光部の輝点像のうち、たがいに隣接する発光部すなわち第1の発光部11aと第3の発光部、あるいは第2の発光部11bと第3の発光部11cの輝点像から先行する移動体までの離間距離L1を三角測量により演算する演算部、が読みとれる。
また、前記記載e.f.及び第8図?第10図から、
(4)遠距離領域Zfでは、両最外側の発光部の輝点像間の距離から離間距離L1を求めること、中距離領域Zmでは、互いに隣接する発光部(すなわち第1の発光部11aと第3の発光部11c、あるいは第2の発光部11bと第3の発光部11c)の輝点像間の距離から離間距離L1を求めること、両最外側の発光部の輝点像あるいは互いに隣接する発光部の輝点像の選択は、遠距離あるいは中距離等の距離領域に応じて行うこと、が読みとれる。
以上の記載事項(1)?(4)を勘案すると、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「移動体1の走行状態を制御する走行制御装置において、
受光面16に形成された2つの輝点像間の距離を求めることにより、先行する移動体1との離間距離L1を測定する離間距離計測装置であって、
受光面16に形成された輝点像のうち、
遠距離あるいは中距離等の距離領域に応じて両最外側の発光部の輝点像あるいは隣接した2個の発光部の輝点像のいずれかを選択する手段と、
該選択手段によって選択された輝点像から先行する移動体1までの離間距離L1を三角測量により演算する演算部と、
前記演算部による演算結果に応じて走行状態を制御する手段と、を有する走行制御装置。」(以下、「刊行物に記載された発明」という。)

5.対比
そこで、本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明における、
「移動体1」、「受光面16」、「形成された」、「発光部」、「輝点像」、「先行する移動体1」、「離間距離L1」、「離間距離計測装置」、「遠距離あるいは中距離等の距離領域に応じて」、「隣接した2個」、「両最外側」、「演算部」は、それぞれ、本願発明における、
「車両」、「受光部」、「投影された」、「マーカ」、「マーカ(の)画像」、「マーカを有する車両」、「距離」、「測距装置」、「所定の条件に基いて」、「第1の距離を隔てて配置された1対」、「第2の距離を隔てて配置された1対」、「演算手段」に相当する。
また、刊行物に記載された発明における、「演算部による演算結果に応じて走行状態を制御する手段」も、本願発明における、「演算手段による演算結果と、走行状態を検出した検出信号とに応じて走行機構の動作を制御する制御手段」も、共に、「演算手段による演算結果に応じて走行状態を制御する制御手段」である点で共通している。
してみると、両者は、
(一致点)
「車両の走行状態を制御する走行制御装置において、
受光部に投影された複数のマーカの画像間距離を求めることにより、前記マーカを有する車両までの距離を測定する測距装置において、
受光部に投影された前記マーカの画像のうち、第1の距離を隔てて配置された1対のマーカからの画像、または、第2の距離を隔てて配置された1対のマーカからの画像のいずれかを所定の条件に基づいて選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記マーカの画像から、前記マーカを有する車両までの距離を演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果に応じて走行状態を制御する制御手段と、を有する走行制御装置。」
で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
相違点1:マーカ画像抽出手段について、
本願発明では、マーカからの画像を抽出するための「画像抽出手段」を有しているのに対し、刊行物に記載された発明では、当該手段を用いていない点。
相違点2:走行機構の動作を制御する制御手段について、
本願発明では、走行機構の動作の制御は、演算手段による演算結果(すなわち車間距離)に加えて、走行状態を検出した検出信号(例えば車速など)にも応じて制御する、としているのに対し、刊行物に記載された発明では、その点についての記載がない点。

6.当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について、
この種の走行装置において、撮像された画像データに対して輪郭抽出処理(本願発明の画像抽出に相当する)を施し、抽出された画像に基づき車間距離を求めることは周知な技術である(例えば、特開平7-77421号公報:特に、段落番号【0014】、【0015】の記載及び図3を参照のこと、また、特開平7-334800号公報:特に段落番号【0008】輪郭抽出手段9及び図1を参照のこと)から、刊行物に記載された発明において、画像間距離を求めるにあたり、発光部(マーカ)からの画像を抽出するための画像抽出手段を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について、
一般に、車両の走行状態の制御において、先行車までの車間距離を計測した結果と、車速センサ等により車両の走行状態を検出した結果により、スロットルアクチュエータ等の走行機構の動作を制御することは周知な技術である(例えば、特開平6-20200号公報:特に、図3及びこれに関する発明の詳細な説明の箇所を参照のこと、また、特開平10-166899号公報:特に図1及びこれに関する発明の詳細な説明の箇所を参照のこと)から、本願発明のように、演算手段による演算結果(すなわち車間距離)と走行状態を検出した検出信号(例えば車速等)とに応じて当該走行機構の動作を制御するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物に記載された発明及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
なお、審判請求人は、この走行制御装置に関して、平成17年2月7日付け意見書において、本願発明は「「演算手段による演算結果と、走行状態を検出した検出信号とに応じて走行機構の動作を制御する制御手段」を具備しており、これによって、「前方車との車間が一定に保たれる」という引用文献にはない特別の効果を有するものである」旨、主張している。
しかしながら、上記6.(2)相違点2について、で述べたように「演算手段による演算結果と、走行状態を検出した検出信号とに応じて走行機構の動作を制御する制御手段」を備えた車両の走行制御装置は周知なものであり、該周知技術により車間距離が制御されることも、前記周知文献(特開平6-20200号公報、特開平10-166899号公報)にも記載されているように車間距離制御型自動走行装置が奏する周知の作用効果に過ぎないから、審判請求人の主張は妥当でない。

7.むすび
したがって、本願発明は、前記刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-03 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-10-22 
出願番号 特願平11-147453
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 上原 徹
岡田 卓弥
発明の名称 測距装置および走行制御装置  
代理人 服部 毅巖  
代理人 服部 毅巖  

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