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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1169326 |
審判番号 | 不服2005-18195 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-22 |
確定日 | 2007-12-06 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第 14221号「デジタル双方向通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月15日出願公開、特開平 9-212457〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年1月30日の出願であって、平成17年4月18日付けで通知した拒絶理由に対して、同年6月22日付けで手続補正がなされたものの、同年8月19日付けで拒絶査定がなされ、同年9月22日付けで審判請求がなされるとともに同年10月20日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正は平成19年7月10日付けで却下の決定がなされると共に拒絶理由が通知され、同年9月10日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明について 本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成19年9月10日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「サービス提供装置との間の双方向通信のインターフェース機能を担うネットワークモジュールと、 メモリを有し、前記メモリにあらかじめ保持されているS/Wモジュールを用いて、または、前記サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた他のS/Wモジュールを用いて、各種機能を実行するCPUモジュールと を有し、 前記他のS/Wモジュールが、データ送信時に送信されるデータを暗号化し、暗号化されたデータの受信時に暗号化されたデータを復号する暗号化機能および復号化機能を実現し、 前記CPUモジュールが、前記サービス提供装置が保持している暗号化適用データリストを取得し、前記暗号化適用データリストに含まれるデータの授受は、前記サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた前記他のS/Wモジュールによって暗号方式を用いて実行し、前記暗号化適用データリストに含まれないデータの授受は、暗号方式を用いないで実行する ことを特徴とするデジタル双方向通信端末。」 3.引用例 当審により平成19年7月10日付けで通知された拒絶の理由で引用された、本出願前である平成5年12月24日に頒布された刊行物である特開平5-344084号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (a)「【0019】 【実施例】以下、本発明の一実施例としてテレビジョン放送を適用する場合を図面と共に説明する。まず、図1に基づいて本発明に係わる番組参加型放送システムの構成を説明すると、放送局2が既存のテレビジョン通信網を介して各家庭等の聴者又は視聴者側に放送すると、多数の聴者又は視聴者の夫々に備えられている本発明の受信装置4a?4n(ここで、添字nは不特定の数を示すものとする)が、受信電波中の特定周波数帯域に含まれる変調信号、又は、特殊な符号化処理等を施されて映像信号に重畳された変調信号を復調することによって、放送局2側で伝送した特殊なデータ(以下、局送信用データという)を受信することができるようになっている。ここで、本実施例にあっては、上記特定周波数帯域とは、テレビジョン音声多重放送技術によって伝送される副チャネル信号の周波数帯域であり、放送局2が聴者又は視聴者参加に必要な局送信用データを副チャネル信号として伝送して、これを受信装置4a?4nが復調する。又、符号化処理等を施された局送信用データは、所謂文字多重放送において水平走査期間中の映像に影響を与えないように伝送される文字情報のデータであり、これを受信装置4a?4nが復調する。尚、いずれの多重通信方式を適用するかは、用途や仕様等によって決定される。 【0020】又、上記の多重放送によって伝送されてくる局送信用データは、受信装置4a?4nを所有している聴者又は視聴者と放送中の番組とが時間的な同期を取ると共に、受信装置4a?4nを制御するため等のデータである。 【0021】更に、夫々の受信装置4a?4nには、聴者又は視聴者が放送局2側へ返送しようとする情報(以下、返送データという)を、ISDN、VAN、ファクシミリ通信回線等の既存の通信網を介して放送局2や返送データを処理する等の特定の返送会社等の返送相手側に設置されているコンピュータシステムに返送することができるように、音響カプラを有するモデムやデジタル通信機能を有する通信用インタフェース等(以下、これらのモデムや通信用インタフェース等を通信網接続装置と言う)が内蔵されている。尚、返送先である放送局2や特定の返送相手は複数の場合もある。 【0022】又、上記返送データを、郵便手段を介して返送する郵便用葉書等やFAX通信によって返送するための原稿等の返送媒体に記録する印字装置や、予め磁気記録層が塗布形成されている返送媒体に磁気記録する磁気記録装置が内蔵されており、これらの印字装置や磁気記録装置が返送データを即座に記録することで、聴者又は視聴者は単に投函やFAX通信すれば処理が済むようになっている。尚、この返送データは、放送局2と受信装置4a?4nの間で決められた特殊なコードに暗号化されて送信あるいは返送用媒体に記録されるようになっている。そして、この暗号化の手法は受信装置4a?4nと放送局2や特定の返送相手側でのみ予め決められているので、放送局2側等では、返送されて返送データを逆に解読することによって、聴者又は視聴者の意思を理解することができるようになっている。」 (b)「【0037】次に、装置本体34に内蔵されている制御回路の構成を図6に基づいて説明する。テレビジョンチューナー72は、受信ケーブル38を介して受信アンテナに接続され、放送局2側から送信されてきたテレビジョン電波から音声中間周波信号を分離して、主チャネル信号と副チャネル信号を出力する。音声多重チャネル分離回路74は、音声信号を主チャネル信号と副チャネル信号に分離し、副チャネル信号を出力する。したがって、放送局2側の送信装置8に内蔵されている変調回路28でFSK規格に基づいて周波数変調された局送信用データを出力する。復調回路76は、この周波数変調された局送信用データを復調して元のバイナリーコードの局送信用データを発生し、マイクロプロセッサ78を有するコンピュータシステムのバスラインに転送する。一方、主チャネルの音声信号出力には、上記音声ボタン54を介して再生回路とスピーカが接続されており、主チャネルの内容を確認することができる。 【0038】バスラインには、マイクロプロセッサ78の指令に従って時間計測を行うタイマー回路80と、各種データ処理の際に使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)82と、システムプログラムを格納する読出し専用メモリ(ROM)84と、表示パネル46の表示制御を行うための表示用インタフェース86と、4個の操作用キーボード(図5に示す操作用キーボード44の他に3個)を接続するためのキーボード用インタフェース88と、前記郵便用葉書96に記録を行うプリンタ90を駆動制御するためのプリンタ用インタフェース92と、聴者又は視聴者返送データを通信網を介して伝送するための通信網接続装置94が接続されている。尚、図中の点線で囲む範囲内の各回路及びデバイスは、半導体集積回路装置(所謂IC)として一体化されている。 【0039】そして、マイクロプロセッサ78は、復調回路76から局送信用データの内の内容データQnを受信すると、該内容データQnに対応する制御動作を行い、更に、時計制御データQtを受信すると、受信と同時に或いは所定の約束に基づいてタイマー回路80に対してタイマー動作を開始させる。従って、内容データQnと時計制御データQtを受信すると、時計制御データQtを受信した時点に同期して時間経過をタイマー回路80が計測する。更に、放送局2側が局送信用データをテレビジョン多重通信によって送信を行った時点から夫々の聴者又は視聴者に設けられている夫々の受信装置4a?4n内のタイマー回路80がタイマー動作を開始するまでの遅延時間のバラツキは、放送局2側から例えば300キロメートル離れた各受信装置4a?4nであっても1mS以下であり、ほぼ放送局2と聴者又は視聴者側の全ての受信装置4a?4nが時間的に同期することとなる。即ち、受信装置4a?4n間での動作のバラツキは無視することができる程度に小さい。 【0040】そして、聴者又は視聴者が通常のテレビジョンセット6a?6nの番組映像を見て、自己の意見や回答等を操作用キーボード44を介して入力すると、マイクロプロセッサ78は、タイマー回路80がタイマー動作開始時点から操作用キーボード44による入力時点まで計測した時間データTを読取ると共に、操作用キーボード44から転送されてきたキーコードデータKを作成し、更に、次式(1)(2)に基づいて返送データXT とXK を形成した後、これらを通信網接続装置94を介して通信網へ伝送させたり、プリンタ用インタフェース92を介してプリンタ90による郵便用葉書96への記録を行わせる。」 (c)「【0043】ここで、図2に示した放送局2側の送信装置8のマイクロプロセッサ10には、次式(3)(4)に示す暗号解読のための演算式が予め内蔵されており、通信網を介して返送されてきた夫々の返送データデータXT とXK を代入することによって、元の時間データTとキーコードデータKに翻訳する。尚、受信装置4a?4nは、キーコードデータKに、各受信装置4a?4nに予め登録されている装置番号(所謂、マシンコード)のデータmも付随させて返送し、送信装置8側で翻訳するようにしてもよい。 【0044】 【数2】 …(中略)… 【0045】尚、内容データQnは放送局2側で保持しているのでそのまま代入される。そして、上記データmも返送されてくる場合には、このデータmを調べることにより、放送局2側と正規に契約等した聴者又は視聴者の所定の受信装置からの返送データであることを確認することができ、更にキーコードデータKを解析処理することにより、番組に対する聴者又は視聴者の意見を集計したり、クイズ番組のような場合には正解者を検出し、更に、時間データTを併せて解析処理することにより、最も早く正解を出した回答者を抽出する等の処理が行われる。 【0046】…(中略)… 【0047】ここで注目すべき点は、郵便用葉書96によって別途返送されてくる場合であっても、時間データTが暗号解読されるので、クイズ番組のような場合に最も早く正解を出した回答者を抽出する等が可能であり、したがって、時間をも問題とする番組を実現することが可能となる。更に、暗号化された返送データは、聴者又は視聴者個々の特有のデータであり、放送局2側でしかその解読は不可能であるので、聴者又は視聴者からの返送データを個別化することができると共に、聴者又は視聴者もデータ情報の改ざん等の不正行為を行うことができず、更に、放送局2側と聴者又は視聴者を除く部外者に対して完全に秘密を保持することが可能となる。更に、返送データXT とXK は、放送局2側が送信した内容データQnを含めて暗号化されるので、放送局2の番組に対しての返送データであることを確実に確認することができることから、この番組参加型システムの悪用を完全に防止することができる。」 (d)「【0057】このようにして、操作用キーボード44の入力情報に係わるキーコードデータKが確定すると、図7のステップ180においてキーフラグデータFkが“1”であることを確認した後、ステップ190,200における暗号化処理を行う。尚、ステップ180においてFk≠1であればステップ210においてエラー発生の点検を行い異常があればステップ115のエラー処理を行う。 【0058】ステップ190では、タイマーレジスタ[T]に保持されているデータTとデータレジスタM[1]?M[5]に保持されている内容データQnについて前記式(1)を適用して暗号化処理を行い、時間に関する返送データXT を形成して、レジスタ[Ra]に保持する。又、ステップ200では、キーレジスタ[Mk]に保持されているデータKとデータレジスタM[1]?M[5]に保持されている内容データQnについて前記式(2)を適用して暗号化処理を行い、キー入力データに関する返送データXK を形成してレジスタ[Rb]に保持する。 【0059】そして、次のステップ220では、これらの返送データXT とXK を順次に通信網接続装置94に供給し、通信網を介して放送局2側へ転送する。又、郵便用葉書96に記録するように予めキーボード入力によって設定されていると、ステップ220では、返送データXT とXK を数字や記号等の符号化して記録を行う。」 (e)「【0064】又、この実施例では、受信した所定のデータQn等に応じて受信装置を機能させるアルゴリズムを、予め受信装置に内蔵されているROM84に格納されているプログラムによって実現する場合を述べたが、これに限定されず、放送局2側から送信する局送信用データにこのアルゴリズムを実現させるためのプログラムデータを含ませておき、このプログラムデータを受信装置内のRAM82に保持した後、受信装置内のマイクロプロセッサ78がこのプログラムデータにしたがって制御動作するようにしてもよい。尚、この実施例では、予め所謂イニシャルプログラムローダをROM84に記憶させておくことによって、このイニシャルプログラムローダを介して上記アルゴリズムを実現するプログラムデータを入力することが可能となる。このように放送局2から送信されてきたデータを受信装置に所謂ダウンロードさせる機能を持たせることによって、ユニーク且つ幅広い処理を実現することができ、更に、上記暗号化の手法を番組毎に変更させる等の処理を行うことが可能となるので、不正行為の排除と情報の秘密保持をより完全に行うことができるようになる。」 上記(a)には、番組参加型放送システムの構成として、放送局が複数の受信装置と既存の通信網を介して双方向通信を行う際に、通信網接続装置により前記受信装置から送られる返送データは、前記放送局との間で予め決められた特殊なコードに暗号化されて送信し、前記放送局側では、前記返送データを解読することで視聴者の意思を理解することが記載されている。 上記(b)には、受信装置に内蔵されている制御回路の構成として、マイクロプロセッサを有するバスラインに、各種データ処理の際に使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)と、システムプログラムを格納する読み出し専用メモリ(ROM)とを接続し、各回路及び各デバイスは半導体集積回路装置として一体化されていることが記載されている。 また上記(b)には、マイクロプロセッサが局送信用データの内容データを受信すると、該内容データに対する制御動作を行うことが記載されている。 上記(c)には、受信装置が、キーコードデータに、前記受信装置に予め登録されている装置番号(マシンコード)を付随させて返送し、放送局側で翻訳することで正規に契約等した視聴者の受信装置からの返送データであることを確認できることが記載されている。 さらに上記(c)には、暗号化された前記返送データは、視聴者個々の特有データであり、放送局側以外では該データの解読は不可能であるので、視聴者は返送データを個別化することができると共に、視聴者もデータ情報の改ざん等の不正行為を行うことができず、更に部外者に対して完全に秘密を保持することが可能となることが記載されている。 上記(d)には、暗号化された返送データはレジスタに保存されることが記載されている。 上記(e)には、受信したデータ等に応じて受信装置を機能させるアルゴリズムは、放送局側から送信される局送信用データに前記アルゴリズムを実現させるためのプログラムデータを含め、ROMに記憶させておいたイニシャルプログラムローダを介して前記プログラムデータを入力して受信装置内のRAMに保持した後、受信装置内のマクロプロセッサが前記プログラムデータにしたがって制御動作するようにし、暗号化の手法を番組毎に変更させる等の処理を行うことで、不正行為の排除と情報の秘密保持をより完全に行うことができる旨が記載されている。 してみると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されている。 放送局との間の双方向通信のインタフェース機能を担う通信網接続装置と、 RAM、ROMを有し、前記ROMに予め保持されているイニシャルプログラムローダを介して、前記放送局からの局送信データを受信して該局送信データに含まれるプログラムデータを前記RAMに保存した後、前記プログラムデータにしたがって制御動作することで各種機能を実行するマイクロプロセッサと、 キーコードデータに予め登録されている装置番号(マシンコード)を付随させて返送することで、正規に契約等した視聴者からの返送データであることを確認できると共に、前記返送データにより視聴者を個別化することで該視聴者によるデータ情報の改ざん等の不正行為を行うことができないようにする機能と、 を有し、 前記プログラムデータが、返送データの送信時に送信されるデータを暗号化する暗号化機能を実現し、 前記マイクロプロセッサが、前記装置番号の返送と暗号方式を用いて暗号化した返送データをレジスタへ保持して、前記放送局へのデータの返送を実行する ことを特徴とする受信装置。 また、本願の出願前である平成7年8月4日に頒布された刊行物である特開平7-202877号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (f)「【0010】次に、本発明で伝送の対象となるデータ構造としては、データ本体と、スクランブルデータと、ローダによって構成されている。そして、多数のデータ本体がホストコンピュータ1から通信衛星3、あるいはCATVネットワーク5を介して受信端末装置2に対してサイクリックに送信され、スクランブルデータとローダは各受信端末の要求に応じて公衆回線網4を介して個別に送信される。あるいは、CATVネットワーク5の場合にはデータ本体とは別チャンネルで個別の識別符号を付加するなどの処理を施したうえで送信される。このようにデータを2種類の伝送経路に分割するのは、データ本体はデータ容量が膨大なものも存在するので、伝送効率が高い通信モードに適する一方、スクランブルデータやローダなどはデータ容量は小さいが、料金徴収との関係で要求先である受信端末装置を特定する必要があるからである。 【0011】送信の対象となるデータ本体はスクランブルが施された状態のもので、スクランブルデータはスクランブルのパラメータや、スクランブルの一種としての圧縮辞書やパスワードなどによって構成されている。また、ここでいうデータ本体とは、実行ファイルを含んだデータを意味し、一定のコマンドによってデータ本体単独で起動することができるものをいう。ローダはデータ本体を起動するために用いられ、データ本体をスクランブルデータに基づいて復号しながら、受信端末に装備された主記憶装置の空メモリ領域やハードディスクなどの外部記憶装置に展開する。そして実行権を、復号されたデータ本体に移行する。このとき、スクランブルデータもローダと共に主記憶装置あるいは外部記憶装置に展開される。従って、主記憶装置にいったんスクランブルデータをダウンロードした後に外部記憶装置に記憶されているスクランブルデータを予め決められた手順によって自動的に削除するか、全てのスクランブルが復号化された時点で外部記憶装置に展開されたスクランブルデータを削除あるいは書き換えするようにすれば、次に同じデータ本体を起動しようとしてもスクランブルデータをホストコンピュータから再度ダウンロードしなければできないことになる。従って、無断使用を防止することができる。これは、ローダ自体を同様の処理で削除、あるいは書き換えを行うことにより達成してもよい。」 (g)「【0013】図3は受信端末装置2がデータ本体、スクランブルデータおよびローダを記憶装置に読み込んだ状態を示す。8はハードディスク装置などの外部記憶装置、9は処理実行のためのメモリ領域であり、既に基本OSが一部の領域を占領している。ここで、外部記憶装置8にはデータ本体、スクランブルデータおよびローダが格納されているが、これらの各データはファイルによって明確に独立した状態である。そして、キーボードやマウスからローダの起動を指示すると、基本OSが外部記憶装置8をアクセスし、メモリ領域9の空領域に対して処理を展開し、図4のメモリ状態が達成される。即ち、空領域にはローダ10とスクランブルデータ11が読み込まれ、基本OSからローダ10に移行された実行権のもとにローダ10が外部記憶装置8に存在するデータ本体を読み込みながらスクランブルデータを参照してデータ本体を復号する。この場合、外部記憶装置8に格納されているスクランブルデータおよびローダは削除される。削除するタイミングは問わないが、少なくとも受信端末装置2においてデータ処理が終了するまでには完了していなければならない。なお、外部記憶装置8から削除するのは、スクランブルデータあるいはローダの何れか一方だけでもよい。また、これらを外部記憶装置8からメモリ領域9にいったんコピーして、後に削除する過程に代えて、コピーと削除を同時に行う処理、即ち移行によっても目的は達成できる。」 上記(f)には、各受信端末装置の要求に応じてホストコンピュータから、CATVネットワークを介して、スクランブルが施された状態のデータ本体、スクランブルデータ、及びローダを前記データ本体を起動しようとする毎にダウンロードする受信端末装置において、前記ローダが前記データ本体を前記スクランブルデータに基づいて復号しながら、前記受信端末装置に装備された主記憶装置の空メモリ領域などに展開した後、実行権を復号されたデータ本体に移行することが記載されている。 上記(g)には、外部記憶装置に格納されているデータ本体、スクランブルデータおよびローダについて、前記ローダの起動を指示すると、基本OSによって前記ローダと前記スクランブルデータがメモリ領域の空き領域に対して処理展開され、前記ローダは前記基本OSから移行された実行権のもとに前記データ本体を読み込んで前記スクランブルデータを参照して前記データ本体を復号すると共に、前記外部記憶装置に格納されているスクランブルデータおよびローダを削除することが記載されている。 してみると、引用文献2には、以下の周知技術が記載されている。 ホストコンピュータとの間でCATVネットワークを介した通信を行う受信端末装置において、該受信端末装置の要求に応じて、スクランブルが施された状態のデータ本体、スクランブルデータ、及びローダを、ホストコンピュータからダウンロードし、前記ローダの起動に応じて基本OSから移行された実行権に基づいて前記データ本体を前記スクランブルデータを参照して復号する受信端末装置。 また、本願の出願前である平成4年3月4日に頒布された刊行物である特開平4-68387号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (i)「(課題を解決するための手段) 本発明のデータ暗号化処理方法は、単位データ毎に暗号化テーブルを参照して暗号化を行うものにおいて、予め、特定の内容の暗号化を禁止する前記単位データをリストアップした無変換データテーブルを設け、前記無変換データテーブルを参照して、リストアップされた前記単位データの暗号化が禁止された内容の前記暗号化テーブルを生成するものである。 また、単位データ毎に暗号化演算を実行して暗号化を行うものにおいて、予め、特定の内容の暗号化を禁止する前記単位データをリストアップした無変換データテーブルを設け、前記無変換データテーブルを参照して、リストアップされた前記単位データの暗号化を禁止することを特徴するものである。」(第3頁右上欄第15行-同頁左下欄第10行) 上記(i)には、単位データ毎に暗号化を行うと共に、特定の内容の暗号化を禁止する前記単位データをリストアップした無変換データテーブルを設け、その無変換データテーブルを参照してリストアップされた単位データについては暗号化を禁止する暗号化処理方式が記載されており、前記無変換データテーブルに含まれていないデータは、暗号方式を実行し、前記無変換データテーブルに含まれるデータは、暗号方式を用いないで実行しているが、暗号方式の実行の要否を比較決定するデータテーブルとして、暗号方式を実行するデータのみが含まれるよう構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 してみると、引用文献3には、以下の周知技術が記載されている。 暗号化の実行の要否を指示決定するデータテーブルに基づいて、データ暗号化の実行の要否を指示決定するデータ暗号化処理方法。 4.対比 本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「放送局」、「通信網接続装置」、「RAM」と「ROM」は、本願発明の「サービス提供装置」、「ネットワークモジュール」、「メモリ」にそれぞれ相当する。 さらに、引用文献1記載の発明では、ROMに予め保持されているイニシャルプログラムローダを介して、放送局からの局送信データを入力したものがRAMに保存され、これを制御動作するプログラムデータとすることでマイクロプロセッサは各種機能を実行しており、引用文献1記載の発明における「マイクロプロセッサ」の上述した機能は、本願発明「CPUモジュール」が、「メモリにあらかじめ保持されているS/Wモジュールを用いて、または、前記サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた他のS/Wモジュールを用いて、各種機能を実行する」ことに相当する。 さらに、返送データの送信時に送信されるデータを暗号化する暗号化機能を実現している引用文献1記載の発明における「プログラムデータ」は、本願発明の「他のS/Wモジュール」と、データの送信時に送信されるデータを暗号化する暗号化機能を実現している点で一致している。 さらに、引用文献1記載の発明では、「マイクロプロセッサ」はプログラムデータを用いて各種機能を実行するものであり、該プログラムデータは、返送データの送信時に送信されるデータを暗号化する暗号化機能を実現していることから、引用文献1記載の発明における「マイクロプロセッサ」の当該機能は、本願発明の「CPUモジュール」による、「前記サービス提供装置が保持している暗号化適用データリストを取得し、前記暗号化適用データリストに含まれるデータの授受は、暗号方式を用いて実行し、前記暗号化適用データリストに含まれないデータの授受は、暗号方式を用いないで実行する」機能と、CPUモジュールによる前記データの送信は、サービス提供装置からネットワークモジュールを介してメモリにロードされリンクされた他のS/Wモジュールの暗号方式を用いて実行する点で一致している。 さらに、引用文献1記載の発明における「受信装置」は、放送局とデータを双方向で通信する端末であるから、本願発明の「デジタル双方向通信端末」に相当する。 してみると、引用文献1記載の発明と本願請求項1に係る発明とは、 サービス提供装置との間の双方向通信のインターフェース機能を担うネットワークモジュールと、 メモリを有し、前記メモリにあらかじめ保持されているS/Wモジュールを用いて、または、前記サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた他のS/Wモジュールを用いて、各種機能を実行するCPUモジュールと、 を有し、 前記他のS/Wモジュールが、データの送信時に送信されるデータを暗号化する暗号化機能を実現し、 前記CPUモジュールによるデータの送信は、前記サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた他のS/Wモジュールの暗号方式を用いて実行する ことを特徴とするデジタル双方向通信端末。 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 他のS/Wモジュールの機能として、本願発明では、「暗号化されたデータの受信時に暗号化されたデータを復号する」復号化機能も実現することで、データの授受に暗号化方式を用いることが出来るのに対し、引用文献1記載の発明では、受信データに対する復号化機能について何ら示されておらず、したがってデータの授受に暗号方式を用いているか示されていない点。 (相違点2) CPUモジュールによる暗号化機能が、本願発明では、「サービス提供装置が保持している暗号化適用データリストを取得し、前記暗号化適用データリストに含まれるデータの授受は、サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた前記他のS/Wモジュールによって暗号方式を用いて実行し、前記暗号化適用データリストに含まれないデータの授受は、暗号方式を用いないで実行する」ことであるのに対し、引用文献1記載の発明では、サービス提供装置が保持している暗号化適用データリストを取得し、該取得したリストによって暗号方式の実行の要否を指示決定することは示されていない点。 5.判断 そこで、上記相違点について検討する。 (相違点1)について 引用文献1には、上記2.(b),(e)において、放送局から送信されたデータを受信装置にダウンロードさせる機能を通信端末に持たせていることが記載されている。 ここで、受信端末の要求に応じてホストコンピュータからダウンロードされる暗号化されたデータを受信時に復号する機能をS/Wモジュールであるローダの起動によって実現することは、引用文献2に記載されているごとく周知技術である。 そして、引用文献1,2が共に暗号を用いた双方向通信端末について記載したものである点を勘案すれば、引用文献1記載の発明における放送局からのデータの通信端末でのダウンロード処理として、前記周知技術を採用し、他のS/Wモジュールにより、暗号化されたデータの受信時に暗号化されたデータを復号する機能も実現することで、データの授受に暗号方式の使用を可能とすることは、当業者が容易になし得たことであるし、 (相違点2)について 引用文献1には、上記2.(e)において、放送局側から送信する局送信用データに受信装置を機能させるアルゴリズムを実現させるためのプログラムデータを含ませておき、このプログラムデータを受信装置内のRAMに保持した後、受信装置内のマイクロプロセッサがこのプログラムデータにしたがって制御動作するようにする機能を持たせることによって、ユニーク且つ幅広い処理を実現することができ、更に、暗号化の手法を番組毎に変更させる等の処理を行うことが可能となるので、不正行為の排除と情報の秘密保持をより完全に行うことができるようになることが記載されており、放送局側から送信する局送信用データである受信装置を機能させるアルゴリズムを実現させるためのプログラムデータとして暗号化の手法を含めることにより、該暗号化の手法を番組毎に変更させることが開示されている。 ここで、暗号化の実行の要否を指示決定するデータテーブルに基づいて、データ暗号化の実行の要否を指示決定するデータ暗号化処理方法は、引用文献3に記載されているごとく周知技術である。 してみると、各引用文献が共に暗号を用いた通信端末について記載したものである点を勘案すれば、不正行為の排除と情報の秘密保持をより完全に行うために、引用文献1記載の発明におけるサービス提供装置が保持し、該サービス提供装置からネットワークモジュールを介して取得する前記暗号化の手法として、前記各周知技術を採用し、サービス提供装置が保持している暗号化適用データリストを取得し、前記暗号化適用データリストに含まれるデータの授受は、サービス提供装置から前記ネットワークモジュールを介して前記メモリにロードされリンクされた前記他のS/Wモジュールによって暗号方式を用いて実行し、前記暗号化適用データリストに含まれないデータの授受は、暗号方式を用いないで実行するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用文献1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-28 |
結審通知日 | 2007-10-02 |
審決日 | 2007-10-17 |
出願番号 | 特願平8-14221 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮司 卓佳 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
冨吉 伸弥 青木 重徳 |
発明の名称 | デジタル双方向通信端末 |
代理人 | 山形 洋一 |
代理人 | 前田 実 |