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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C02F
管理番号 1169362
審判番号 不服2005-7015  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-20 
確定日 2007-12-05 
事件の表示 特願2001-246879「高粘性油吸引装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月25日出願公開、特開2003- 53338〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月16日の出願であって、平成16年12月15日付け拒絶理由通知に対して、平成17年2月22日付けで手続補正がされたが、同年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成17年2月22日付けの手続補正書により補正された明細書に記載されている次のとおりのものである。
「【請求項1】 油貯槽に残留した高粘性油や海上等に流出して高粘性化した油を吸引して回収する装置で、丸3モーターで回転する丸1油掻き取りスクリューにより高粘性油を掻き取り、スクリューにより掻き揚げられた高粘性油は丸7グレーチング及び丸2温水ノズルからの温水ジェットによりスクリューから分離し、分離した高粘性油は流動化区画内に取り込まれる。流動化区画内で高粘性油は丸4攪拌棒及び温水ジェットにより分散・流動化され、さらに丸5油水分離穴あき板により過剰な水分が取り除かれた状態となる。流動化区画内の油は丸13真空タンクにつながる丸9油吸引ホースで吸引・回収されることを特徴とする高粘性油吸引装置。」

3.原査定の理由
平成16年12月15日付け拒絶理由通知書には、以下の理由が記載されている。
「 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1について
請求項1に係る発明は、「高粘性油吸引装置」の発明であるが、請求項1の記載では、「・・・掻き取り、スクリューからはがして吸引装置内に取り込む。・・・分散・流動化され、・・・吸引される・・・」とあるように方法的に記載されており、どの構成を必須とする装置であるのか不明瞭である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。」
また、この拒絶理由通知書の<補正等の示唆>には、「どのような部品が必須であり、それらの部品がどのように配置されて高粘性油吸引装置を構成しているのかを明確にされたい。」と記載されている。

4.請求人の主張
請求人は、原査定の理由に対し、審判請求書の請求の理由において「必須の構成要素は高粘性油を掻き取るスクリューネジ、スクリューネジを回転させる電動モーター、高粘性油を流動化する温水ノズルである。装置の構造は円筒容器内にスクリューネジが収まり、円筒容器の上部に防水構造の電動モーターを取り付けてスクリューネジを回転させるようにしている。スクリューネジの上端部には少しの間隙を空けて円筒のケーシングに固定されたグレーチングを設け、さらにスクリューネジの外周辺に円筒容器に固定された数段の環状の穴あき板が取り付けてある。グレーチングの上部は高粘性油を流動化する空間で円筒容器に温水ノズルが取り付けられている。また高粘性油を流動化する空間内にスクリューネジの軸にスクリューネジと同時に回転する攪拌棒が取り付けてある。装置の機能は電動モーターでスクリューネジを回転させて高粘性油を掻き取り、スクリューネジを高粘性油の層内で移動すると、高粘性油がネジの斜面に沿って装置内に取り込まれる。スクリューネジの上端には放射状の格子(グレーチング)を設けて、高粘性油をスクリューネジから掻き取る。グレーチングの上部で高粘性油に温水を噴射して高粘性油を流動化する。流動化を促進させる目的でスクリューネジと同軸で回転する攪拌棒を設けている。流動化された高粘性油は円筒容器上部に取り付けられた吸引ホースにより真空タンクに吸引され、回収される。またスクリューネジの周囲に複数の穴の開いた環状の油水分離穴あき板を設けて、高粘性油の吸引効率を上げるようにしている。以上述べたことは全体図及び請求項に十分に記載されている。」と主張している。

5.当審の判断
本願の特許請求の範囲の請求項1には、高粘性油吸引装置について、請求人が、必須の構成要素であると主張する「スクリュー」、「モーター」、「温水ノズル」は記載されているものの、装置の構造と主張する「円筒容器内にスクリューネジが収ま」ること、「円筒容器の上部に防水構造の電動モーターを取り付け」ること、「スクリューネジの外周辺に円筒容器に固定された数段の環状の穴あき板が取り付け」ること、「スクリューネジの軸にスクリューネジと同時に回転する攪拌棒が取り付けてある」ことについては記載されておらず、これらのことが請求項1の記載から明確であるともいえない。
また、「温水ノズル」について、請求項1には「スクリューにより掻き揚げられた高粘性油は・・・温水ノズルからの温水ジェットによりスクリューから分離し」及び「流動化区画内で高粘性油は・・・温水ジェットにより分散・流動化され」との記載があり、請求人は「グレーチングの上部は高粘性油を流動化する空間で円筒容器に温水ノズルが取り付けられている」と主張しているが、請求項1に記載されている、高粘性油が「スクリューから分離」することと「分散・流動化」することとが、いずれも一つの温水ノズルで行われるように配置されているのか、それぞれ異なる温水ノズルで行われるように配置されているのか、請求項1の記載からは不明であり、請求人の主張をみても明確でない。
さらに、「油水分離穴あき板」について、請求項1には「流動化区画内で高粘性油は丸4攪拌棒及び温水ジェットにより分散・流動化され、さらに丸5油水分離穴あき板により過剰な水分が取り除かれた状態となる」との記載があり、請求人は「スクリューネジの外周辺に円筒容器に固定された数段の環状の穴あき板が取り付けてある」と主張しているが、請求人の主張によれば、油水分離穴あき板は、スクリューネジの外周辺すなわち高粘性油を流動化する空間より下に取り付けてあることになり、流動化区画の外に取り付けてあるものと解されるが、請求項1の記載からは、油水分離穴あき板は、流動化区画内で分散・流動化された高粘性油を「過剰な水分が取り除かれた状態」とするものであり、流動化区画内に取り付けてあるものと解することができるから、請求項1には、請求人の主張するような「油水分離穴あき板」の配置が明確に記載されているとはいえない。
よって、請求項1には、高粘性油吸引装置の構造が明確に記載されておらず、必須の構成要素がどのように配置されて高粘性油吸引装置を構成しているのか明確に記載されていないから、特許請求の範囲の記載からは、特許を受けようとする発明が明確でない。

6.むすび
以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-20 
結審通知日 2007-10-02 
審決日 2007-10-15 
出願番号 特願2001-246879(P2001-246879)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 斉藤 信人
森 健一
発明の名称 高粘性油吸引装置  

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