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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1169404 |
審判番号 | 不服2005-17211 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-08 |
確定日 | 2007-12-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 25762号「樹脂モールド型表示装置およびその製法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月17日出願公開、特開平11-224063〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年2月6日の出願であって、平成17年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年9月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年10月11日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年10月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論]平成17年10月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「基板と、該基板の表面に7セグメントのそれぞれのセグメントを構成するように設けられる複数個の発光部と、該複数個の発光部の各発光部ごとに該発光部を被覆し、モールド成形により基板上に直接形成される透明樹脂部とからなり、前記基板の前記各発光部に対応する部分に、それぞれ1個の樹脂注入用のスルーホールが形成され、前記透明樹脂部は、前記スルーホールから注入される樹脂により前記各発光部で同時に形成されると共に、各セグメント間で独立しており、かつ、前記基板の裏面には形成されない構造である樹脂モールド型表示装置。」 と補正された。 前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「透明樹脂部」について「(それぞれ1個の樹脂注入用の)スルーホールから注入される樹脂により前記各発光部で同時に形成される」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶理由に引用された特開平7-22653号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく特開平8-254960号公報(以下、「引用例2」という。)及び同じく実願平2-109011号(実開平4-65464号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)にはそれぞれ、以下の事項が記載されている。 a.引用例1; 基板に実装された電子部品のモールド方法に関するもので、 ア.【0002】 「【従来の技術】従来、基板に実装された電子部品を基板と一体にモールドする方法が知られている。図2は、その電子部品の一例として、プリント基板に実装されたLEDチップに対する従来のモールド方法を模式的に示す断面図である。同図に示すように、従来のモールド方法は、プリント基板11の一方の面11aに実装されたLEDチップ2の近傍に、プリント基板11に対して一対の貫通孔5a,5bを設け、該LEDチップ2に対して所定のレンズ状のキャビティー4aを備えた上型4Aと、他方の面11b側に該キャビティー4aに対応する湯溜りとなるキャビティー4bを備えた下型4Bとで、LEDチップ2をプリント基板11と共に取り囲み、上記キャビティー4b側からモールド用の合成樹脂6を注入すると共に、該貫通孔5を介して上記レンズ状のキャビティー4a内に導いて一体にモールドするものである。」 イ.【0011】 「【実施例】・・・・・。モールド用の材料樹脂としてポリカーボネートを用い、図1に示すように、2つのキャビティーC1,C2の中間に設けたゲート7から、押出機の出口圧力1500kgf/cm^(2)にて上記材料樹脂を注入し、LEDチップ2とその基板の裏面部分とを貫通項5を通して一体にモールド成形し、無色透明のレンズ被覆層を有するLED照明具を得た。」 したがって、前記ア.及びイ.の記載事項からして、引用例1には、図面を含めて、「プリント基板11と、該基板11の表面に設けられる複数個のLEDチップ2と、該複数個のLEDチップ2ごとに該LEDチップ2を被覆し、モールド成形により基板11上に直接形成される合成樹脂6とからなり、前記基板11の前記各LEDチップ2に対応する部分に、それぞれ2個の樹脂注入用の貫通孔5a、5bが形成され、前記合成樹脂6は、前記貫通孔5a、5bから注入される樹脂により前記各LEDチップ2で形成されると共に、各LEDチップ2間で独立している、樹脂モールドされたLED照明具。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 b.引用例2; セグメント形表示装置に関するもので、 ウ.【特許請求の範囲】【請求項1】 「複数の独立した発光セグメントから成るセグメント形表示装置において、各発光セグメントは、LED素子と、該素子を包含した透光性樹脂部と、より成り、透光性樹脂部は、LEDの正面発光方向に略、山の形の外形を有するセグメント形表示装置。」 エ.【0001】 「【産業上の利用分野】本発明は、複数の独立した発光セグメントを持つセグメント形表示装置、特に発光環境の改良をはかったセグメント形表示装置に関する。」 オ.【0002】 「【従来の技術】図2(イ)は、7セグメントを持つ数字表示装置を示す図である。7個のセグメント1を8の字形に配置し、数字0?9を選択指示して表示するものである。図2(ロ)が図2(イ)の点線部拡大図、図2(ハ)がセグメントの横及び縦断面図である。即ち、各セグメント1は、図2(ロ)、(ハ)に示すように、LED素子2とそのモールドをはかった透光性樹脂部3より成る。LED素子2は、底部にあり、これを透光性樹脂部3でモールドする。樹脂部3の外形は、矩形である。この樹脂部3の外形の表面(発光面)4から外方向に向かってLED素子2からの光が放出する。」 カ.【0007】 「【実施例】図1は本発明のセグメント形表示装置の実施例図である。図1(イ)が、7個のセグメント10で数字0?9の選択表示を可能にする表示装置であり、これの各セグメント10の構成が本実施例の特徴をなす。図1(ロ)が図1(イ)の点線部の拡大図、図1(ハ)がセグメントの横及び縦断面図である。即ち、図1(ロ)、(ハ)に示すように、セグメント10をLED素子11と透光性樹脂部12とで構成し、透光性樹脂部12はLED素子11を全面的にモールドすると共に、その外形が略、山の形をなすものとした。」 c.引用例3; モジュールタイプLEDのモールド構造に関して、第1図?第10図に、絶縁基板1の裏面には透明樹脂部が形成されない前記モールド構造が記載されている。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の対象である「樹脂モールドされたLED照明具」は、本願補正発明の対象である「樹脂モールド型表示装置」に相当する。 (b)引用発明の「プリント基板11」、「LEDチップ2」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「発光部」に相当する。 (c)引用発明の「合成樹脂6」は、引用例1の記載事項イ.からして、無色透明のレンズ被覆層となるものであるから、本願補正発明の「透明樹脂部」に相当する。 (d)引用発明の「貫通孔5a、5b」は、本願補正発明の「スルーホール」に相当する。 (e)引用発明の「合成樹脂6」は、引用例1の記載事項ア.からして、貫通孔5a、5b(スルーホール)から注入される樹脂により各LEDチップ2(各発光部)で同時に形成されるものと認められる。 よって、前記(a)?(e)の対比、記載事項の認定から、両者は、「基板と、該基板の表面に設けられる複数個の発光部と、該複数個の発光部の各発光部ごとに該発光部を被覆し、モールド成形により基板上に直接形成される透明樹脂部とからなり、前記基板の前記各発光部に対応する部分に、樹脂注入用のスルーホールが形成され、前記透明樹脂部は、前記スルーホールから注入される樹脂により前記各発光部で同時に形成されると共に、各発光部間で独立している、樹脂モールド型表示装置。」である点で一致し、以下の相違点(1)?(3)が存在する。 相違点(1) 複数個の発光部が、本願補正発明は、7セグメントのそれぞれのセグメントを構成するように設けられるものであるのに対して、引用例1には、そのようなセグメントを構成する記載がない点。 相違点(2) 基板の各発光部に対応する部分に形成される樹脂注入用のスルーホールのそれぞれの個数が、本願補正発明は、1個であるのに対して、引用発明は、2個である点。 相違点(3) 透明樹脂部が、本願補正発明は、基板の裏面には形成されない構造であるのに対して、引用発明は、樹脂モールドされたLED照明具(樹脂モールド型表示装置)とする際に、透明樹脂部が基板の裏面には形成されない構造であるかどうか不明である点。 (4)当審の判断 前記相違点(1)?(3)について検討する。 相違点(1)について 引用例2には、従来技術を含めて、複数の独立した7つの発光セグメントから成る7セグメント形表示装置において、各発光セグメントは、LED素子と、該素子を包含した透光性樹脂部と、より成る7セグメント形表示装置、が記載されているといえる。 したがって、引用発明の表示装置において、基板の表面に設けられる複数個の発光部として、7セグメントのそれぞれのセグメントを構成するものを採用することは、引用例2の技術事項を基に当業者が容易になし得ることである。もっとも、引用例2には、基板の表面に7セグメント発光部を設けることの直接の記載はないが、基板の表面に設けることは、当業者が当然に想起し得ることである。 また、引用発明の発光部として、7セグメントのそれぞれのセグメントを構成するものを採用した場合であっても、合成樹脂6(透明樹脂部)は、当然各セグメント間で独立した構成となることに変わりはない。なお、引用例2の従来技術の図2(ロ)を見ても、各セグメントが独立していることは、明らかである。 相違点(2)について 基板の各発光部に対応する部分に形成される樹脂注入用のスルーホールの個数をいくつにするかは、各発光部を覆う透明樹脂部の厚さ、量などを考慮して、当業者が容易に選択し得る設計事項であり、1個とすることは容易になし得ることである。 本願明細書の【発明の実施の形態】を説明している段落【0015】では、「各発光部2ごとに少なくとも1個のスルーホール11が形成されている。」と記載しながら、本願補正発明では、「1個の樹脂注入用のスルーホール」と限定しており、この点からも、「1個のスルーホール」とすることは、格別なことではない。 相違点(3)について 引用発明の最終製品であるLED照明具(表示装置)とする際に、透明樹脂部が基板の裏側には形成されない構造とするか、或いは形成される構造とするかは、LED照明具の使用形態により適宜選択し得る事項である。 引用例3に示されるように、絶縁基板1の裏面には透明樹脂部が形成されないモジュールタイプLEDのモールド構造は、知られている。 したがって、相違点(3)に係る本願補正発明の発明特定事項は、格別のものではない。 そして、本願補正発明の作用・効果についても、引用発明、及び引用例2、3に記載された発明から予測される範囲内のもので、格別のものではない。 よって、本願補正発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年10月11日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年5月23日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。) 「基板と、該基板の表面に7セグメントのそれぞれのセグメントを構成するように設けられる複数個の発光部と、該複数個の発光部の各発光部ごとに該発光部を被覆し、モールド成形により基板上に直接形成される透明樹脂部とからなり、前記基板の前記各発光部に対応する部分に、それぞれ1個の樹脂注入用のスルーホールが形成され、前記透明樹脂部は各セグメント間で独立しており、かつ、前記基板の裏面には形成されない構造である樹脂モールド型表示装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.項で検討した本願補正発明から「透明樹脂部」の限定事項である「(それぞれ1個の樹脂注入用の)スルーホールから注入される樹脂により前記各発光部で同時に形成される」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-08-28 |
結審通知日 | 2007-09-18 |
審決日 | 2007-10-02 |
出願番号 | 特願平10-25762 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河原 英雄、加藤 隆夫 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
森口 良子 辻 徹二 |
発明の名称 | 樹脂モールド型表示装置およびその製法 |
代理人 | 河村 洌 |