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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1169450 |
審判番号 | 不服2004-23474 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-17 |
確定日 | 2007-12-13 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第114013号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月 7日出願公開、特開平 7-289686〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯等 本願は、平成6年4月27日の出願であって、平成16年5月6日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成16年7月16日付けで手続補正がされ、平成16年10月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成16年11日17日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成16年12月9日付けで手続補正がされたものである。 第2 平成16年12月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年12月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数種の入賞が設定されたスロットマシンにおいて、全種類の入賞について1回のゲームの実行によって入賞が発生したことを画像で表示する画像表示器と、前記画像表示器の表示動作を制御する表示制御部とを備え、前記表示制御部は、ゲームの実行により入賞が発生したとき、その入賞の種類を表す画像を前記画像表示器に表示させてその表示を次ゲームに持ち越すとともに、それまで表示されていた前回の入賞の種類を表す画像を消すことによって、前記表示画像をつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、継続して表示させるスロットマシン。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「入賞」について「1回のゲームの実行によって」又は「ゲームの実行により」との限定を付加、「表示する」について「画像で」との限定を付加するものであって、「入賞表示部」を「画像表示器」と限定、「入賞発生後からつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、その入賞の種類を前記入賞表示部に継続して表示させる」を「その入賞の種類を表す画像を前記画像表示器に表示させてその表示を次ゲームに持ち越すとともに、それまで表示されていた前回の入賞の種類を表す画像を消すことによって、前記表示画像をつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、継続して表示させる」と限定するものであり、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用文献について 原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-66229号(実開平6-23575号)のCD-ROM(公開日:平成6年3月29日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「【実用新案登録請求の範囲】・・・【請求項2】 複数のシンボルが表された複数個のリールを始動させた後に停止させ、停止ライン上に並ぶ各リールのシンボルの組合せが予め設定された複数種の入賞態様のいずれかに一致したとき、その入賞態様に応じた枚数のメダルを配当するようにしたスロットマシンにおいて、 すべての入賞態様についてのシンボルの組合せとメダルの配当枚数とを組にした情報を可変表示することが可能な表示器と、 停止ライン上に並んだシンボルの組合せがいずれか入賞態様に一致したとき、その入賞態様についてのシンボルの組合せとメダルの配当枚数とを組にした情報を前記表示器に表示させる表示制御装置とを備えて成るスロットマシン。」 ・記載事項2 「【0022】図5は、この考案の第2の実施例を示す。この実施例のスロットマシン2の表示部4には、成立した入賞態様についての情報を可変表示するための入賞情報表示器33が設けてある。」 ・記載事項3 「【0023】前記入賞情報表示器33は、複数のLEDをマトリクス配列した構造のものであって、図6に示すごとく、ゲーム中に入賞に関わるシンボルの組合せが成立すると、成立したシンボルの組合せとメダルの払出枚数とを組にした情報が所定時間表示される。図示例では、シンボル24の組合せが成立して12枚のメダルが払い出されることを知らせている。」 ・記載事項4 「【0028】入賞に関わるいずれかシンボルの組合せが成立しているとき、ステップ6は「YES」となり、CPU31はつぎのステップ7で、表示部4に成立した入賞態様についてシンボルの組合せと払出メダル数とを表示させ、ステップ8で所定枚数のメダルを払い出させる。」 ・記載事項5 図6には、入賞表示器33内にシンボル24として楕円形の右側に突起が出ているものが3つ図示されている。 以上の記載事項1?5及び図1?8によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「複数種の入賞態様に応じた枚数のメダルを配当するようにしたスロットマシンにおいて、 表示部4に設けられるとともに、すべての入賞態様についてのシンボルの組合せとメダルの配当枚数とを組にした情報を可変表示するものであり、かつ、成立した入賞態様について可変表示するものであって、複数のLEDをマトリクス配列した構造の入賞情報表示器33と、 成立した入賞態様についてシンボルの組合せと払出メダル数とを表示部4に表示させるCPU31とを備え、 ゲーム中に入賞に関わるシンボルの組合せが成立すると、成立したシンボルの組合せとメダルの払出枚数とを組にした情報を入賞情報表示器33に所定時間表示させるスロットマシン。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比 引用発明について、以下の(1)?(4)のことが言える。 (1)「複数種の入賞態様に応じた枚数のメダルを配当するようにしたスロットマシン」について 入賞態様が複数であって、その入賞態様に応じた枚数のメダルを配当するということは、複数種の入賞が設定されているということであり、引用発明は「複数種の入賞が設定されたスロットマシン」なる構成を実質的に具備している。 (2)「すべての入賞態様についてのシンボルの組合せとメダルの配当枚数とを組にした情報を可変表示するものであり、かつ、成立した入賞態様について可変表示するものであって、複数のLEDをマトリクス配列した構造の入賞情報表示器33」について 「成立した入賞態様について可変表示する」ということは「入賞が発生したことを表示する」と言いかえることができるとともに、「1回のゲームの実行によって」入賞が発生することはスロットマシンにおいて常識である。 また、入賞情報表示器33は、「すべての入賞態様についてのシンボルの組合せとメダルの配当枚数とを組にした情報を可変表示するもの」であるから、「全種類の入賞に対して可変表示するもの」と言うことができる。 更に、入賞情報表示器33は、複数のLEDをマトリクス配列した構造のものであり、シンボル23を表示するものであるから、「画像で表示する画像表示器」と言うことができる。 以上により、引用発明は「全種類の入賞について1回のゲームの実行によって入賞が発生したことを画像で表示する画像表示器」なる構成を実質的に具備している。 (3)「成立した入賞態様についてシンボルの組合せと払出メダル数とを表示部4に表示させるCPU31とを備え」について CPU31は成立した入賞態様についてシンボルの組合せと払出メダル数とを表示部4に表示させるが、表示部4においてシンボルの組合せと払出メダル数を表示しているのは入賞情報表示器33である。したがって、CPU31は画像表示器である入賞情報表示器33に表示させるものであり、その表示動作を制御する表示制御部の機能を有していることは自明である。 それ故、引用発明は「画像表示器の表示動作を制御する表示制御部」なる構成を実質的に具備している。 (4)「ゲーム中に入賞に関わるシンボルの組合せが成立すると、成立したシンボルの組合せとメダルの払出枚数とを組にした情報を入賞情報表示器33に所定時間表示させる」について 「ゲーム中に入賞に関わるシンボルの組合せが成立する」は、「ゲームの実行により入賞が発生した」と言いかえることができ、「成立したシンボルの組合せとメダルの払出枚数とを組にした情報」は入賞の種類を表すものであり、それは画像として画像表示器である入賞情報表示器33に表示されるものであり、その表示が「表示制御部」の機能を有するCPU31により制御されることは上記(3)で説示したとおりである。 したがって、引用発明は「表示制御部は、ゲームの実行により入賞が発生したとき、その入賞の種類を表す画像を所定時間画像表示器に表示させる」なる構成を実質的に具備するものである。 本願補正発明と引用発明を対比すると、 「複数種の入賞が設定されたスロットマシンであって、全種類の入賞について1回のゲームの実行によって入賞が発生したことを画像で表示する画像表示器と、画像表示器の表示動作を制御する表示制御部とを備え、表示制御部は、ゲームの実行により入賞が発生したとき、その入賞の種類を表す画像を画像表示器に表示させるスロットマシン。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願補正発明では、入賞の種類を表す画像の表示を次ゲームに持ち越すとともに、それまで表示されていた前回の入賞の種類を表す画像を消すことによって、表示画像をつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、継続させて表示させるのに対して、引用発明ではそのような構成を有していない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 スロットマシン等の遊技機において、遊技者が台を選択するに際して入賞が発生しそうな台かどうかを判断するための指標を遊技者に提供し客サービスを向上させることは周知の課題であって、当該課題を解決するために遊技機本体又は近傍に設けた表示器で遊技機の入賞の発生状況すなわち過去の入賞の発生を表示することは本願出願前に周知の技術である。 例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭61-106360号(実開昭63-13193号)のマイクロフィルムには、「表示器21」に「当りをマーク(大当りマーク21b、中当りマーク21c)で示す」ことにより、「愛好家達に、今後の出玉状況を予測する上で必要な情報を十分与えることができる。」(6頁14行?7頁11行)と記載されている。 一方、引用発明において、前回の入賞(入賞後「所定時間」を除く)から次の入賞までの間は、入賞情報表示器33にどのような表示を行わせるか(表示をしないことも含む)は適宜決定すればよいものであることは明らかである。そして、過去の入賞の発生を表示するという周知技術を参酌すれば、引用発明において過去の入賞である前回の入賞の表示を次ゲームに持ち越し、次の入賞が発生するまでのゲーム期間中、継続させるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、直前の画像を消し、次の画像を表示することは、画像処理において常套手段であるから、それまで表示されていた前回の入賞の種類を表す画像を消すことによって、表示画像を表示させるようにすることは単なる設計事項である。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成16年12月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年7月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数種の入賞が設定されたスロットマシンにおいて、全種類の入賞について入賞が発生したことを表示する入賞表示部と、前記入賞表示部の表示動作を制御する表示制御部とを備え、前記表示制御部は、入賞が発生したとき、入賞発生後からつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、その入賞の種類を前記入賞表示部に継続して表示させるスロットマシン。」 2.本願発明の進歩性の判断 (1)引用文献 当審の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「1回のゲームの実行によって」、「ゲームの実行により」及び「画像で」との構成を省き、「入賞表示部」を「画像表示器」とした限定及び「入賞発生後からつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、その入賞の種類を前記入賞表示部に継続して表示させる」を「その入賞の種類を表す画像を前記画像表示器に表示させてその表示を次ゲームに持ち越すとともに、それまで表示されていた前回の入賞の種類を表す画像を消すことによって、前記表示画像をつぎの入賞が発生するまでのゲーム期間中、継続して表示させる」とした限定を元に戻したものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-11 |
結審通知日 | 2007-10-16 |
審決日 | 2007-11-01 |
出願番号 | 特願平6-114013 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬津 太朗 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 ▲吉▼川 康史 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 鈴木 由充 |