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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B28B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B28B
管理番号 1169459
審判番号 不服2005-805  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-13 
確定日 2007-12-12 
事件の表示 特願2000- 40132「コンクリート製品の製造方法及びその方法に使用するコンクリート製品製造用型枠」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 5日出願公開、特開2000-334718〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月17日(優先権主張平成11年3月23日)に出願した特許出願であって、平成16年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年2月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正により、平成16年11月8日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の【特許請求の範囲】【請求項1】について、「表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠」を「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠」とし、また、「化粧型枠を厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型することによって」を「化粧型枠を前記平板形状における厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型することによって」としたことにより、次のように補正された。
「【請求項1】少なくとも表面の全部又は一部に逆勾配のある凹凸形状を有するコンクリート製品を製造する方法であって、
ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠を蓋体と本体枠とに分解可能な構造型枠に支持させてコンクリートを打設するに際して、化粧型枠を蓋体又は本体枠のうち化粧型枠が配される少なくとも一方の内面に沿って仮保持させた状態で少なくとも化粧型枠の表面と本体枠との間にコンクリートを打設し、そのコンクリートの硬化後に該コンクリートに化粧型枠を付帯させた状態で仮保持状態を解除して蓋体のみを離脱させ、さらに化粧型枠を前記平板形状における厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型することによってコンクリート製品を製造し得るようにしていることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。」
また、【請求項4】について、「表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠」を「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも前記平板形状における厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠」としたことにより、次のように補正された。
「【請求項4】請求項1、2又は3記載の方法に使用されるものであって、ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも前記平板形状における厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠と、化粧型枠の裏面側に配される蓋体及び表面側に配されコンクリートの重量を支持し得る強度を有する本体枠から構成されこれら蓋体と本体枠とが分解可能な構造型枠とを具備してなり、蓋体又は本体枠のうち化粧型枠が配される少なくとも一方の内面に沿って化粧型枠を仮保持し得る仮保持手段を形成していることを特徴とするコンクリート製品製造用型枠。」
【請求項5】について、「表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠」を「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも前記平板形状における厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠」としたことにより、次のように補正された。
「【請求項5】請求項2記載の方法に使用されるものであって、ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなすとともに表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し少なくとも前記平板形状における厚み方向に弾性変形可能な化粧型枠と、化粧型枠の裏面側に配される蓋体及び表面側に配されコンクリートの重量を支持し得る強度を有する本体枠から構成されこれら蓋体と本体枠とが分解可能な構造型枠とを具備してなり、蓋体又は本体枠のうち化粧型枠が配される少なくとも一方の内面に沿って化粧型枠を仮保持し得る仮保持手段を形成するとともに、この仮保持手段を、化粧型枠の自立を補助する自立補助手段としていることを特徴とする請求項4記載のコンクリート製品製造用型枠。」

(2)そして、上記【特許請求の範囲】【請求項1】、【請求項4】及び【請求項5】についてなされた補正は、いずれも「化粧型枠」を「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなす」と限定し、「厚み方向」を「平板形状における厚み方向」と限定する限定的減縮を目的とするものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する補正の要件を満たしているといえる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。
(i)原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された実願昭60-022678号(実開昭61-140807号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「動かない内型枠と少なくとも片側は動く正面板2及び両側共に動く側面板3からなり、脱型時上記動く正面板2を外方へ平行移動させる移動,案内機構と、
上記両側面板3を脱型時、水平旋回して開閉する側面板軸支機構11を備えてなる型枠において、コンクリート成形面に模様を形成するために正面板2に模様形成用の可撓性化粧マットを着脱自在に固定する手段を設けてなることを特長とするコンクリート製品の模様形成用型枠。」(第1頁実用新案登録請求の範囲(1))
(イ)「本考案は製品形状に応じて型枠の垂直面に表面模様を形成する可撓性の化粧マットを着脱自在に固定し、模様に深みのある場合でもコンクリート打設時の振動や上側からのコンクリート圧力でマットが移動することなく垂直面でも模様を形成できるような型枠構造にし、脱型の際に型枠と化粧マットを一緒に脱型したり又は、深みのある模様に付いては形成した模様を破損させないために化粧マットを製品側に残して型枠だけ垂直移動して脱型するようにしたのである。」(第3頁第8?18行)
(ウ)「その他表面を形成する模様の凹凸が大きく、硬化後に化粧マットをコンクリート表面より離型するのが困難で破損の危険がある場合は第6図のように移動正面板2の上下に固定している埋込ボルト10を弛めて製品側に化粧マットを残して移動正面板2だけを移動させてから可撓性の化粧マットの弾性力を利用して形成された模様に深く喰込んでいる化粧マットを端部から順次剥離していくと破損のない模様形成面を形成することができる。」(第7頁第17行?第8頁第6行)
(エ)「又製品形状に応じて化粧マットを製品側に残して型枠だけ脱型することができるので深みのある表面模様などは化粧板の弾性を利用して離型できるので破損のない表面模様を容易に形成可能としたのである。」(第9頁第3?7行)
(ii)対比・判断
引用文献には、「製品形状に応じて型枠の垂直面に表面模様を形成する可撓性の化粧マットを着脱自在に固定し」た「模様形成用型枠」に「コンクリート打設」を行い「硬化」し、「深みのある模様に付いては形成した模様を破損させないために化粧マットを製品側に残して型枠だけ」「脱型」し、「化粧マットを端部から順次剥離していく」ことが記載され、これらによりコンクリート製品を得ることは製造方法に他ならないから、これら記載事項(ア)?(エ)を本願補正発明1の記載に則って整理すると、「深みのある模様を形成したコンクリート製品の製造法であって、内型枠、側面板及び移動正面板からなる型枠構造にし、型枠の垂直面に表面模様を形成する可撓性の化粧マットを移動正面板に着脱自在に固定し、コンクリート打設を行い表面を形成する模様の凹凸が大きく、硬化後に化粧マットをコンクリート表面より離型するのが困難で破損の危険がある場合は移動正面板の上下に固定している埋込ボルトを弛めて製品側に化粧マットを残して移動正面板だけを移動させてから可撓性の化粧マットの弾性力を利用して形成された模様に深く喰込んでいる化粧マットを端部から順次剥離し弾性を利用して離型して破損のない模様形成面を形成するコンクリート製品の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
本願補正発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「表面を形成する模様の凹凸」、「表面模様を形成する可撓性の化粧マット」、「内型枠、側面板」、「正面板」及び「型枠構造」が、それぞれ、本願補正発明1の「凹凸形状」、「凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠」、「本体枠」、「蓋体」及び「構造型枠」に相当し、引用発明は「移動正面板だけを移動させ」るから引用発明の「構造型枠」は「蓋体と本体枠とに分解可能」ということができ、引用発明の「化粧マット」は記載事項(エ)において「化粧板」とも称され、「移動正面板に着脱自在に固定」されているから「平板形状」であって「蓋体の内面に沿って仮保持」されているということができる。引用発明の「コンクリート打設」も「可撓性の化粧マット」が「型枠の垂直面に表面模様を形成する」ように行われるものであるから、本願補正発明1のように「化粧型枠の表面と本体枠との間にコンクリートを打設」するものであり、引用発明の「硬化後に・・・移動正面板の上下に固定している埋込ボルトを弛めて製品側に化粧マットを残して移動正面板だけを移動させ」ることは本願補正発明1の「コンクリートの硬化後に該コンクリートに化粧型枠を付帯させた状態で仮保持状態を解除して蓋体のみを離脱させ」ることに一致し、引用発明の「可撓性の化粧マットの弾性力を利用して形成された模様に深く喰込んでいる化粧マットを端部から順次剥離し弾性を利用して離型」することも「深く喰込んでいる」状態を脱するため化粧マットを直角方向に引っ張りらざるを得ないので、「厚み方向への弾性変形を利用」して離型するということができるから、本願補正発明1における「化粧型枠を前記平板形状における厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型すること」ということができる。
してみると、本願補正発明1と引用発明とは、「凹凸形状を有するコンクリート製品を製造する方法であって、
平板形状をなすとともに凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠を蓋体と本体枠とに分解可能な構造型枠に支持させてコンクリートを打設するに際して、化粧型枠を蓋体又は本体枠のうち化粧型枠が配される少なくとも一方の内面に沿って仮保持させた状態で少なくとも化粧型枠の表面と本体枠との間にコンクリートを打設し、そのコンクリートの硬化後に該コンクリートに化粧型枠を付帯させた状態で仮保持状態を解除して蓋体のみを離脱させ、さらに化粧型枠を前記平板形状における厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型することによってコンクリート製品を製造し得るようにしていることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(a)本願補正発明1ではコンクリート製品の凹凸形状について「少なくとも表面の全部又は一部に逆勾配のある」をとしているのに対して、引用発明では、「深みのある模様を形成したコンクリート製品」を対象とし「逆勾配のある」ことについては記載のない点。
(b)本願補正発明1では化粧型枠の凹凸形状について「表面の全部又は一部に逆勾配のある」ているのに対して、引用発明においては「形成された模様に深く喰い込んでいる化粧マット」であるものの化粧マットの形状について「逆勾配」とすることについては記載のない点。
(c)本願補正発明1では化粧型枠が「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され」ているのに対して、引用文献には化粧マットの弾性を利用するものの材質については記載のない点。
そこで、上記各相違点について検討する。
(a)(b)は、化粧型枠の形状とこれにより成形されるコンクリート製品の形状についての相違点であり、両者が相補する空間関係となり、一方が逆勾配を有すれば他方も自動的に逆勾配を有することになるから同時に検討を行う。
例えば、原査定において周知例として挙げられた、特開昭53-35719号公報には、「樹脂混入補強材によって補強され、ケース内面が弾性ウレタン樹脂とFRPから成る陶磁器製造用型作成のためのケース。」(特許請求の範囲)に関し、「本発明に使用する弾性ポリウレタン樹脂は液状であるので、樹脂混入補強材と元型の間隙に鋳込み硬化させることができ、脱型性については弾性に富んでいるため石膏の膨張(約0.3%)を吸収し、垂直面だけでなく抜き勾配が逆勾配になるような形状(4)でもスムーズに脱型ができる。」(第1頁右下欄第5?9行)と記載され、弾性を利用して逆勾配になるような形状でもスムーズに脱型することが周知であることが窺える(以下、「周知技術1」という。)。そして、原査定においてやはり周知例として挙げられた登録実用新案公報第3003866号には、「任意形状の自然石あるいはこの自然石を母形として形成した元雄型の外側面形状をゴムなどの弾性材料で転写することにより形成した雌型枠本体を備える型枠装置において、前記雌型枠本体の狭隘部を含むオーバーハング部およびコンクリート打設口縁部に弾性補強片を配設するとともにこの弾性補強片の延伸性を少なくとも2倍程度に設定することを特徴とするコンクリート製擬石用型枠装置。」(【実用新案登録請求の範囲】)と記載され、コンクリート製品の型枠装置において狭隘部を含むオーバーハングが化粧型枠にある場合に、硬化後に製品表面に形成されたオーバーハングがこれに噛み合うことが原因とする脱型の容易化と耐久性の向上という課題が既に弾性補強片の延伸性により解決されていたことも窺える(以下、「周知技術2」という。)。本願の明細書の【発明の課題】における「ところが、このように化粧型枠を構造型枠に貼り付けたものでは、化粧型枠に岩肌等を模すために逆勾配いわゆるオーバーハングがある場合には、硬化後にコンクリート製品の表面に形成されるオーバーハングに化粧型枠のオーバーハングが噛み合うこととなり、構造型枠と化粧型枠が一体的となって硬化したコンクリートから化粧型枠を破壊しない限り外すことができない。」という記載からみて、この「オーバーハング」が「逆勾配」に相当することは明らかであり、「狭隘部」がオーバーハングと同様に脱型の困難性の原因となっていたということができる。そして、引用発明における「深みのある模様」や「形成された模様に深く喰い込んでいる」ことはこの「狭隘部を含む」形状であるということができる。
そうすれば、上記の(a)及び(b)の相違点に係る、コンクリート製品の凹凸形状について「少なくとも表面の全部又は一部に逆勾配のある」とすること、あるいは、化粧型枠の凹凸形状について「表面の全部又は一部に逆勾配のある」とすることは、引用発明におけるコンクリート製品の「深みのある模様」やこれを成形する化粧マットの形状が「形成された模様に深く喰い込んでいる」ことと格別相違するものとは認められず、引用発明のコンクリート製品及び化粧マットの形状にさらに「逆勾配」を加えて特定事項としたにすぎないもので、当業者であれば適宜付加しうることにすぎないものである。
(c)については、例えば、特開平9-131718号公報において「コンクリートの表面に凹凸模様を形成するコンクリート用化粧型枠であって、
高分子有機材料と低分子材料とを主成分とし、高分子有機材料の含有割合が低分子材料の含有割合よりも少ない高分子ブレンド材料で構成され、且つ、該高分子有機材料が三次元連続の網状骨格構造を有する熱可塑性材料を用いることを特徴とするコンクリート用化粧型枠。」(【請求項1】)とされ、「低分子材料としては特に限定されないが、次のものが好適に例示される。
軟化剤: 鉱物油系、植物油系、合成系などの各種ゴム用または樹脂用軟化剤。」(【0031】)であること、「しかも、型枠用材料全体は高分子網状骨格構造により保持されたゴム状の弾性体であり、弾性変型が可能で引張応力に対する強度も十分であることから、一度に大きな面積の平板や立体的なコンクリート製品から化粧型枠を簡単に引き剥がすことが可能であり、脱型傾斜を設けない90°の角度の凹凸模様を形成した場合にも、化粧型枠を簡単に分離することができる。」(【0062】)ことが記載されるから、「高分子有機材料が三次元連続の網状骨格構造を有する熱可塑性材料を用い、油系軟化剤を低分子材料として含有し、型枠用材料全体は高分子網状骨格構造により保持されたゴム状の弾性体であり、弾性変型が可能で引張応力に対する強度も十分であることから、脱型傾斜を設けない90°の角度の凹凸模様を形成した場合にも、化粧型枠を簡単に分離することができることを特徴とするコンクリート用化粧型枠。」が周知であるということができ(以下、「周知技術3」という。)、「エラストマー」が常温でゴム状弾性を有する物質であり、低分子材料も型枠用材料全体に当然保持されており封じ込められたということができるから、(c)の相違点に係る、弾性を利用する化粧マットが「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され」ると限定することにも単なる周知技術の付加にすぎず、進歩性を見いだすことはできない。
そして、上記の(a)?(c)の相違点の構成を採用することにより奏されるとする効果も、格別顕著なものとすることはできない。
したがって、本願補正発明1は、上記引用発明及び周知技術1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(iii)
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。そうすると、平成17年2月7日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年2月7日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成16年11月8日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも表面の全部又は一部に逆勾配のある凹凸形状を有するコンクリート製品を製造する方法であって、
表面の一部又は全部に逆勾配のある凹凸部を有し弾性変形可能な化粧型枠を蓋体と本体枠とに分解可能な構造型枠に支持させてコンクリートを打設するに際して、化粧型枠を蓋体又は本体枠のうち化粧型枠が配される少なくとも一方の内面に沿って仮保持させた状態で少なくとも化粧型枠の表面と本体枠との間にコンクリートを打設し、そのコンクリートの硬化後に該コンクリートに化粧型枠を付帯させた状態で仮保持状態を解除して蓋体のみを離脱させ、さらに化粧型枠をその厚み方向への弾性変形を利用してコンクリートから剥がして脱型することによってコンクリート製品を製造し得るようにしていることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。」

4.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(実願昭60-022678号(実開昭61-140807号)のマイクロフィルム)及びその記載事項は、「前記2(2)(i)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明1は、前記2で検討した本願補正発明1から「化粧型枠」の限定事項である「ポリマーの三次元網目構造にオイルを封じ込めた熱可塑性エラストマーにより形成され、平板形状をなす」を省き、「平板形状における厚み方向」を「厚み方向」としたものである。
してみると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに、他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明1が、上記2に記載したとおり、上記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、本願補正発明1と同様の理由により、上記引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、本願の出願前に頒布された刊行物である上記引用文献に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-03 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-10-22 
出願番号 特願2000-40132(P2000-40132)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B28B)
P 1 8・ 575- Z (B28B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村守 宏文  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 宮澤 尚之
斎藤 克也
発明の名称 コンクリート製品の製造方法及びその方法に使用するコンクリート製品製造用型枠  
代理人 赤澤 一博  

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