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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169560
審判番号 不服2004-11708  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-09 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 平成11年特許願第203313号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月25日出願公開、特開2000- 24219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年10月30日に特許出願した特願平7-306806号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成16年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1ないし4に係る発明は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。
「遊技盤(5) に配置された図柄表示手段(29)と、この図柄表示手段(29)にゲームの進行に伴って所定の表示図柄を表示させる制御手段(43)と、遊技者に有利な状態を暗示する暗示図柄を所定時間(T) 毎に短時間(t) だけ図柄表示手段(29)に表示させる暗示図柄表示制御手段(44)とを備えた弾球遊技機において、暗示図柄表示制御手段(44)は、図柄表示手段(29)による表示図柄の変動の停止中に所定時間(T) が経過したときに、その変動が開始するまで暗示図柄の表示を待機させ、その変動の開始後の変動動作中に暗示図柄を表示させるように構成されていることを特徴とする弾球遊技機。」

2.引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-24118号公報(以下、「引用文献」という。)には、パチンコ機において、以下の記載がある。
a.「・・・パチンコ機1の遊技盤3・・・の盤面中央には・・・センターケース4が配設され、該センターケース4の中央に特別図柄表示装置6を構成する液晶表示器からなる単一の図柄表示器8が配設されている。この図柄表示器8は三つの表示部D,E,Fが画面上で区画配置される。前記表示部D,E,Fは、「0」?「9」,「A」?「J」等、数字及びアルファベット等からなる図柄が表示される。」(段落【0008】)
b.「さらに特別図柄表示装置6の直下位置には該表示装置6を作動させるための特別図柄始動口(特別図柄始動通路)14aが設けられる。・・・」(段落【0013】)
c.「ところで、図柄表示器8は、・・・タイマーTを作動させ、所定時間T0 が経過する毎に、案内図柄xが0.01秒?3秒程度の比較的短時間表出する。特にこの所定時間T0 を0.01秒?0.5秒の範囲とした場合には、知覚を直接煩わせず、その情報が意識下において伝達されることが期待され、このため、遊技の進行を阻害したり、遊技者の気をそらすことがない。
この案内図柄xとしては、図3イで示すように、例えば、大当りとなる図柄を瞬間的に表示する構成が提案され得る。例えば「777」を表示することにより、この図柄の組み合わせが最も大きな利益を供するものであることを暗示させる」(段落【0021】【0022】)
d.「中央制御装置MPUの入力側には、・・・特別図柄始動口14a,14bの検出スイッチS2 ,S2 ・・・等が接続され、各スイッチから送り出された信号を・・・中央制御装置MPUに入力データとして伝えるようにしている。
また中央制御装置MPUの他の入出力側にはI/O回路が接続され、該I/O回路には、第2の制御手段として作用する第2のマイクロコンピュータ・・・が接続されている。」(段落【0032】【0033】)
e.「上記I/O回路に接続された第2のマイクロコンピュータは、LCD可変表示用MPUとドライバーとを備えており、そのドライバーに液晶表示器からなる特別図柄表示装置6の図柄表示器8が接続されている。この第2のマイクロコンピュータの記憶装置ROMには・・・定期的(例えば5秒間隔)に図柄表示器8に所定の時間表示する案内図柄x用の表示データが記憶されている。」(段落【0034】)
f.「また、上述では、常に所定時間(T0 )の経過ごとに案内図柄xを表出させるようにしたが、例えば入賞記憶の無い場合のみに案内図柄xを表出したり、大当り作動中で、特別図柄表示装置6が変動を生じていない間にのみ、該案内図柄xを表出するようにしても良い。
さらには、定期的に案内図柄xを表出させるのではなく、次のように、遊技盤上の各種作動の変化に対応して案内図柄xを表出させ、これにより、各変化時の動的印象をさらに増幅させるようにしても良い。
イ) 始動口に入賞した時に、案内図柄xを表出させてから図柄変動を開始させる。
ロ) 図柄表示器8の表示図柄がリーチとなった時に表出させてから最後の図柄表示部Fを停止させる。またはリーチとなった時に、最終図柄が決定するまで短いインターバルで間欠的に繰り返し表示をする。
ハ) 図柄が停止した時に案内図柄xを表出させる。」(段落【0036】-【0040】)

上記の記載より、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「パチンコ機1の遊技盤3の盤面中央にセンターケース4が配設され、該センターケース4の中央に特別図柄表示装置6を構成する液晶表示器からなる単一の図柄表示器8が配設されており、この図柄表示器8は三つの表示部D,E,Fが画面上で区画配置され、「0」?「9」,「A」?「J」等、数字及びアルファベット等からなる図柄が表示されるよう構成されるとともに、タイマーTを作動させ、所定時間T0 が経過する毎に、上記図柄表示器8に案内図柄xが0.01秒?3秒程度の比較的短時間表出するよう構成されており、特にこの所定時間T0 を0.01秒?0.5秒の範囲とした場合には、知覚を直接煩わせず、その情報が意識下において伝達されることが期待され、この案内図柄xとしては、例えば、大当りとなる図柄「777」を瞬間的に表示することにより、この図柄の組み合わせが最も大きな利益を供するものであることを暗示させるパチンコ機であって、案内図柄xを表出させる態様として、常に所定時間(T0 )の経過ごとに案内図柄xを表出させる態様としたが、例えば入賞記憶の無い場合のみに案内図柄xを表出するようにしても良く、さらには、定期的に案内図柄xを表出させるのではなく、次のイ)?ハ)のように、
イ) 始動口に入賞した時に、案内図柄xを表出させてから図柄変動を開始させる。
ロ) 図柄表示器8の表示図柄がリーチとなった時に表出させてから最後の図柄表示部Fを停止させる。またはリーチとなった時に、最終図柄が決定するまで短いインターバルで間欠的に繰り返し表示をする。
ハ) 図柄が停止した時に案内図柄xを表出させる
ことにより、遊技盤上の各種作動の変化に対応して案内図柄xを表出させ、これにより、各変化時の動的印象をさらに増幅させるようにしても良い、パチンコ機。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、両者はともに「遊技盤」を備えており、引用発明における「図柄表示器」はその機能に照らすと本願発明における「図柄表示手段」に対応しており、同様に「パチンコ機」は「弾球遊技機」に、「図柄」は「表示図柄」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明について次のことがいえる。
(i) 引用発明は、「パチンコ機1の遊技盤3の盤面中央」に「特別図柄表示装置6を構成する液晶表示器からなる単一の図柄表示器8が配設され」(摘示a)ていて、「中央制御装置MPU」に接続された「第2のマイクロコンピュータは、LCD可変表示用MPUとドライバーとを備え」ており、「そのドライバー」に「図柄表示器8が接続され」(摘示d)るものである。
すなわち、引用発明において、「遊技盤3」に配置された「図柄表示器8」(本願発明における「図柄表示手段」に対応する。)は、「LCD可変表示用MPUとドライバー」を介して「第2のマイクロコンピュータ」に接続されていることで、ゲームの進行に伴って所定の「図柄」(本願発明における「表示図柄」に対応する。)を表示させるよう制御されるものであり、上記「LCD可変表示用MPU」は、その機能に照らすと、本願発明における「(表示図柄を表示させる)制御手段」に対応するものであるといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明を特定する、「遊技盤に配置された図柄表示手段と、この図柄表示手段にゲームの進行に伴って所定の表示図柄を表示させる制御手段」の事項に対応する構成を備えているといえる。

(ii) 引用発明は、「図柄表示器8は、タイマーTを作動させ、所定時間T0 が経過する毎に、案内図柄xが0.01秒?3秒程度の比較的短時間表出するよう構成され、特にこの所定時間T0 を0.01秒?0.5秒の範囲とした場合には、知覚を直接煩わせず、その情報が意識下において伝達されることが期待され、この案内図柄xとしては、例えば、大当りとなる図柄「777」を瞬間的に表示することにより、この図柄の組み合わせが最も大きな利益を供するものであることを暗示させるパチンコ機」(摘示c)であり、「第2のマイクロコンピュータの記憶装置ROMには定期的(例えば5秒間隔)に図柄表示器8に所定の時間表示する案内図柄x用の表示データが記憶され」(摘示e)ている。
引用発明において、「大当りとなる図柄「777」」などの「最も大きな利益を供する図柄の組み合わせであることを暗示させる案内図柄x」は、その機能に照らすと、本願発明における「遊技者に有利な状態を暗示する暗示図柄」に対応するものであり、同じく引用発明において、上記した「案内図柄x」(「暗示図柄」)を「図柄表示器8」(「図柄表示手段(29)」)に「所定時間T0 が経過する毎」に「瞬間的に表示」することは、本願発明における「所定時間(T) 毎に短時間(t) だけ図柄表示手段(29)に表示させる」ことに対応するものであるということができ、さらに、同引用発明における「第2のマイクロコンピュータの記憶装置ROMには定期的(例えば5秒間隔)に図柄表示器8に所定の時間表示する案内図柄x用の表示データが記憶され」ていることから、該「第2のマイクロコンピュータ」は「案内図柄x」(「暗示図柄」)の表示制御を行う制御手段(すなわち、本願発明における「暗示図柄表示制御手段(44)」に対応する制御手段。)を備えているということができる。
そうすると、引用発明は、本願発明を特定する、「遊技者に有利な状態を暗示する暗示図柄を所定時間(T) 毎に短時間(t) だけ図柄表示手段(29)に表示させる暗示図柄表示制御手段(44)(とを備えた弾球遊技機)」の事項に対応する構成を備えているといえる。

以上の事項より、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
遊技盤に配置された図柄表示手段と、この図柄表示手段にゲームの進行に伴って所定の表示図柄を表示させる制御手段と、遊技者に有利な状態を暗示する暗示図柄を所定時間(T) 毎に短時間(t) だけ図柄表示手段に表示させる暗示図柄表示制御手段とを備えた弾球遊技機、である点。

相違点;
暗示図柄表示制御手段が、本願発明においては、図柄表示手段による表示図柄の変動の停止中に所定時間(T) が経過したときに、その変動が開始するまで暗示図柄の表示を待機させ、その変動の開始後の変動動作中に暗示図柄を表示させるように構成されているのに対して、引用発明においては、暗示図柄の表示を待機させる表示制御を行うものではない点。

上記の相違点について検討する。
引用発明が備える「案内図柄xを表出させる態様」は、「常に所定時間(T0 )の経過ごとに案内図柄xを表出させる態様」を基本としつつ、「定期的に案内図柄xを表出させるのではな」い「態様」をも含むものであり、後者の「態様」として、引用文献には、「イ)始動口に入賞した時に、案内図柄xを表出させてから図柄変動を開始させる」という「態様」や、「ロ)図柄表示器8の表示図柄がリーチとなった時に表出させてから最後の図柄表示部Fを停止させる。またはリーチとなった時に、最終図柄が決定するまで短いインターバルで間欠的に繰り返し表示をする」という「態様」が例示されている。
引用文献が開示するこれらイ)及びロ)の「態様」は、いずれも、「図柄変動」が行われているときに「案内図柄xを表出させる態様」であり、このうち上記ロ)の「態様」は、「図柄変動」のうち、「リーチ」中に「短いインターバルで間欠的」に「案内図柄x」を「繰り返し表示」する「態様」を含むものである。
そして、引用文献に接した当業者にとって、「常に所定時間(T0)の経過ごとに案内図柄xを表出させる態様」と、「定期的に案内図柄xを表出させるのではな」く、「図柄変動」が行われているときに「案内図柄xを表出させる」上記イ)及びロ)の「態様」とは、互いに相容れない「態様」として認識されるわけではなく、それぞれの「態様」が依拠する基本的な部分が混在するような「態様」があり得ることを実体を伴って認識し得るものである。
すなわち、「所定時間(T0)の経過ごとに案内図柄xを表出させる」ことを基本的な原則として維持しつつ、「図柄変動」が行われているときに「案内図柄xを表出させる」こととし、上記のロ)に示された、「リーチ」中に「短いインターバルで間欠的」に「案内図柄x」を「繰り返し表示」する「態様」を、「リーチ」中だけでなく、「図柄変動」が行われている全期間において「繰り返し表示」することは、当業者にとって容易なことである。
そうすると、引用発明が実質的に備える、「案内図柄x」(本願発明における「暗示図柄」に対応する。)の表示制御を行う制御手段(上記(ii)に記載した、本願発明における「暗示図柄表示制御手段(44)」に対応する制御手段。)は、変動動作中に「所定時間(T0 )」(本願発明における「所定時間(T)」に対応する。)毎に「図柄表示器」(本願発明における「図柄表示手段」に対応する。)に「案内図柄x」(「暗示図柄」)を表示させることを原則としつつ、「所定時間(T0)」(「所定時間(T)」)が「経過」しても「図柄変動」が停止中であって、「図柄表示器」(「図柄表示手段」)において「図柄変動」が行われていなければ、「案内図柄x」(「暗示図柄」)を表示せず、実際に「図柄変動」が開始されると「案内図柄x」(「暗示図柄」)を表示することとなり、「所定時間(T0)」(「所定時間(T)」)が「経過」してから、「図柄変動」が開始されて「案内図柄x」(「暗示図柄」)が表示されるまでの間は、実質上、「案内図柄x」(「暗示図柄」)の表示は待機させられ、その「図柄変動」の開始後の変動動作中に「案内図柄x」(「暗示図柄」)が表示されることとなって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項が得られることとなる。
そして、本願発明が奏する効果も引用発明が奏する効果から予測しうる範囲内のものであって、格別なものではない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項について論ずるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-28 
結審通知日 2007-10-02 
審決日 2007-11-02 
出願番号 特願平11-203313
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 渡部 葉子
太田 恒明
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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