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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47G |
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管理番号 | 1169595 |
審判番号 | 不服2005-14347 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-27 |
確定日 | 2007-12-20 |
事件の表示 | 平成8年特許願第164041号「食品容器及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年1月13日出願公開、特開平10-5102号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成8年6月25日の出願であって、平成17年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月26日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成17年8月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年8月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「カップ状の容器本体1の容器開口部2にフランジ3を有する熱成形で製造した食品容器において、フランジ3の厚さをtとしたとき、フランジ3のエッジ部4に0.3t?3tのRを設けたことを特徴とする食品容器。」(下線は補正箇所を示す。) 2.補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1(平成17年2月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載した発明を特定するために必要な事項である「R」について、その範囲を「0.1t?5t」から「0.3t?3t」に縮小したものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-132519号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 a.「本発明の熱可塑性樹脂製容器の製造方法は、粘弾性領域内の温度状態とされた熱可塑性樹脂製被成形体を、回転金型ドラムの周面上に複数連ねて配置されたキャビティのうちのいずれかの開口部に導入配置し、回転金型ドラムの外周に配置された賦形手段を回転金型ドラムと同一の軸を中心として同一角速度で同一方向に回転させながらキャビティ内で熱可塑性樹脂製被成形体を容器形状に賦形し、その後、賦形手段を回転金型ドラムと同一の軸を中心として逆方向に回転させて元の位置に戻すことを特徴とする。ここで、熱可塑性樹脂製被成形体は、キャビティの開口部に連続状態で供給される連続シートであってもよく、あるいは予め容器形状に応じてプレカットされた所謂ブランクであってもよいが、圧力流体により賦形可能な温度となっていなければならない。そして、この熱可塑性樹脂製被成形体は、インジェクション成形品やプレス成形品などを含み、膜状のものに限定されるものではない。また、賦形手段とは、供給される熱可塑性樹脂製被成形体の一方の側に配置されるキャビティに対し、被成形体の反対側に配置されてキャビティとともに容器の熱成形を行う手段である。」(段落【0008】?【0009】) b.「さらに、本発明の熱可塑性樹脂製容器の製造方法においては、装置の多機能化を図るという点で、熱可塑性樹脂製被成形体が連続シートである場合には、この連続シートの容器形成部分を打ち抜く打ち抜き手段、容器の縁切りを行うトリミング手段、または容器のリップ部を形成するリップ形成手段のうちの少なくとも一つを賦形手段とともに回転させながら、これらの各手段による処理を行うことが望ましい。また、熱可塑性樹脂製被成形体がブランクである場合には、容器のリップ部を形成するリップ形成手段を賦形手段とともに回転させながら、これらの各手段による処理を行うことが望ましい。」(段落【0010】) c.「図1から図3までには、本発明の第一実施例の熱可塑性樹脂製容器の製造装置10が示されている。・・・(中略)・・・製造装置10は、・・・(中略)・・・食品包装用等の熱可塑性樹脂製容器12を製造する装置である。」(段落【0017】) d.「また、圧空ボックス41の先端部には、容器12のリップ部12Aを形成するリップ形成手段等を設けておいてもよい。」(段落【0022】) e.「[実験3]厚み1.1mmのポリプロピレン系バリアシートを細密充填により直径85mmのプレカットブランクとし、これを前記第二実施例の製造装置70に導入した。このブランクを加熱・移送部80で加熱してその表面温度を180℃とした後、成形部71に受け渡し、約0.6秒間圧空圧をかけて賦形を行い、カップ状の容器を得た。」(段落【0042】) f.「本発明に適用される熱可塑性樹脂製被成形体の材質は、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(透明PS)、複合材、多層材等、熱成形に適用できる材質のものであれば任意である。」(段落【0049】) g.図2及び図4には、容器開口部にリップ部12Aを有するカップ状の容器12が図示されている。 そこで、これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「カップ状の容器12の容器開口部にリップ部12Aを有する熱成形で製造した食品包装用の熱可塑性樹脂製容器。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「容器12」は、その構造・機能などからみて、前者における「容器本体1」に相当し、以下同様に、「リップ部12A」が「フランジ3」に、「食品包装用の熱可塑性樹脂製容器」が「食品容器」に、それぞれ相当する。 してみると、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、 <一致点> 「カップ状の容器本体1の容器開口部2にフランジ3を有する熱成形で製造した食品容器。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願補正発明では、フランジ3のエッジ部4に0.3t?3tのRを設けたのに対して、引用発明では、その点が明らかにされていない点。 3-3.判断 次に、上記相違点について検討する。 コップや食器等においては、身体を傷つけないように端部に面取りやRを付けるのが普通であり、フランジを有する食品容器においても、例えば実願平2-43209号(実開平4-3911号)のマイクロフィルム(特に明細書5ページ2?13行、第3図参照)、特開昭58-11645号公報(特に2ページ左上欄3?5行、2ページ右上欄3?9行、第6図参照)、実願昭57-159662号(実開昭59-64077号)のマイクロフィルム(特に明細書2ページ17行?3ページ5行、第3図参照)などに見られるように、内容物を飲食する際に口あたりがよく、かつ、けがをしないようにするために、フランジのエッジ部にRを設けることは、従来から広く一般に採用されてきた手段であり、周知技術にすぎない。 そうすると、引用発明において、上記周知技術を適用してフランジのエッジ部にRを設けることは、当業者が容易に想到できたことであり、その際に、Rの数値範囲をどの程度にするかは、口あたり性を考慮して当業者が適宜設定すべき事項であり、設計的事項にすぎないというべきである。 したがって、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到できたことであるということができる。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年2月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「カップ状の容器本体1の容器開口部2にフランジ3を有する熱成形で製造した食品容器において、フランジ3の厚さをtとしたとき、フランジ3のエッジ部4に0.1t?5tのRを設けたことを特徴とする食品容器。」 IV.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「II.3-1.」に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記「II.1.」で検討した本願補正発明において、「R」の範囲を「0.3t?3t」から「0.1t?5t」に拡大したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに一部の発明特定事項についてその範囲を縮小したものに相当する本願補正発明が、前記「II.3-2.3-3.」に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-18 |
結審通知日 | 2007-10-23 |
審決日 | 2007-11-06 |
出願番号 | 特願平8-164041 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47G)
P 1 8・ 575- Z (A47G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小谷 一郎 |
特許庁審判長 |
川本 真裕 |
特許庁審判官 |
北村 英隆 鏡 宣宏 |
発明の名称 | 食品容器及びその製造方法 |
代理人 | 穂高 哲夫 |