ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1169618 |
審判番号 | 不服2004-353 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-05 |
確定日 | 2007-12-17 |
事件の表示 | 平成11年特許願第304775号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月 8日出願公開、特開2001-120724〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成11年10月27日の出願であって、平成15年8月15日付けで拒絶の理由に対し、同年10月16日付けで明細書についての手続補正がなされ、同年11月19日付けで拒絶の査定がされ、これに対し、平成16年1月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同月26日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年10月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものと認める。 「複数の回転リールを備えるリールユニットと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、前記リールユニット、スタートスイッチ、及びストップスイッチにそれぞれ接続される遊技制御装置とを備えたスロットマシンであって、 前記遊技制御装置は、遊技を制御するための遊技制御手段と、抽選を行うための抽選手段とを有し、 前記抽選手段は、乱数を発生させるための乱数発生手段と、この乱数発生手段が発生させた乱数を抽出するための乱数抽出手段と、抽選判定に用いる抽選テーブルと、乱数抽出手段が抽出した乱数と抽選テーブルとを照合して、抽選結果を判定するための抽選判定手段とを有し、 前記抽選テーブルは、複数のブロックに分割され、各ブロック毎に、少なくとも同一絵柄の組合せによる同一種類の当選となる乱数領域が設けられていることを特徴とするスロットマシン。」 なお、請求項1の記載では、「ブロック」がどのようなものであるかが明確ではないため、「前記抽選テーブルは、複数のブロックに分割され、……」という記載の意味が明らかでない。ここで、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、平成15年10月16日付け手続補正書により補正された明細書の段落0047に「ここで、「ブロック」とは、抽選テーブル(150)の全領域を分割することによって得られる部分をいう。」と記載されているのみで、他に技術的な説明がないことから、本願発明の「ブロック」とは、ROM等の具体的な構造や、特定の手法(例えば、全領域を2等分する、全領域を10000毎に分割する、等)によって分割された領域ではなく、抽選テーブルの全領域を任意に分割した部分領域であると解する。 第3 引用刊行物の記載事項 (1)引用例1 原査定に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-108417号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0015】図2中、10は、弾球遊技機としてのパチンコ機の正面を示すものであり、このパチンコ機10は、その前面には遊技盤20を有し、遊技盤20の表面には、円弧状の外レール21及び内レール22の2本のレールからなる略円形状のガイドレール23で囲まれた略円形の遊技部30を備えている。……」 「【0016】前記遊技部30内のほぼ中央には、図3に示すように、図柄変動表示手段としての図柄変動表示装置40が設けられている。……」 「【0018】……上記図柄変動表示装置40は、図4に示すように、横並びに並んだ3つの表示窓41・・と、各表示窓41・・の奧方に各々配置された合計で3つの回転リール42・・とを備えている。……」 「【0021】前記パチンコ機10の内部には、図柄変動表示装置40や変動入賞装置70などの各種制御を行うための電子的制御装置(図示せず)が設けられている。前記電子的制御装置は、CPUを中心に構成され、プログラムなどが記憶されたROM、RAM等を有するマイクロコンピュータから構成されている。……」 「【0022】上記プログラムは、図1に示すように、概略して、入賞及び停止図柄の決定に関する判定処理と、図6に示すように、入賞判定等における確率変動に関する確率変動処理との2つの処理を有する。……」 「【0024】ステップ101においては、乱数発生手段が順次発生する乱数値のうち、始動口50への入球を条件に、1の乱数値を抽出する。前記乱数発生手段は、例えば「0?5999」までの数字を、所定の間隔、例えば5mSごとに順次発生させるものである。つぎにステップ102に進み、入賞判定手段は、上記乱数抽出手段が抽出した乱数値を、判定テーブルと照合する。」 図5の記載から、判定テーブルは、高確率時の入賞領域として乱数値「733」、「1951」を含み、これらの乱数値の入賞図柄は、「7」であることが認められる。 前記摘示の記載、認定事項及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「3つの回転リール42・・を備えた図柄変動表示装置40と、電子的制御装置とを備えたパチンコ機10であって、 前記電子的制御装置は、図柄変動表示装置40や変動入賞装置などの各種制御を行い、入賞及び停止図柄の決定に関する判定処理を有するプログラムを実行し、 前記判定処理では、乱数発生手段が順次発生する乱数値のうち、1の乱数値を抽出し、乱数抽出手段が抽出した乱数値を、判定テーブルと照合し、 前記判定テーブルは、高確率時の入賞領域として乱数値「733」、「1951」を含み、これらの乱数値の入賞図柄は、「7」であるパチンコ機。」 第4 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「3つの回転リール42・・を備えた図柄変動表示装置40」は本願発明の「複数の回転リールを備えるリールユニット」に、「判定テーブル」は「抽選テーブル」に、「入賞領域」は「当選となる乱数領域」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「電子的制御装置」は、「図柄変動表示装置40や変動入賞装置などの各種制御を行い、入賞の決定に関する判定処理を有するプログラムを実行」するものであるから、「遊技制御装置」であると言え、さらに、「遊技を制御するための遊技制御手段と、抽選を行うための抽選手段とを有」するものであると言える。 引用発明の「電子的制御装置」で実行される「入賞及び停止図柄の決定に関する判定処理」では、「乱数発生手段が順次発生する乱数値のうち、1の乱数値を抽出し、乱数抽出手段が抽出した乱数値を、判定テーブルと照合」するから、引用発明の「電子的制御装置」は、実質的に「乱数を発生させるための乱数発生手段と、この乱数発生手段が発生させた乱数を抽出するための乱数抽出手段と、抽選判定に用いる抽選テーブルと、乱数抽出手段が抽出した乱数と抽選テーブルとを照合して、抽選結果を判定するための抽選判定手段とを有」するものであると認められる。 引用発明の「判定テーブル」は、「高確率時の入賞領域として乱数値「733」、「1951」を含」むものである。ここで、本願発明の「ブロック」とは、抽選テーブルの全領域を任意に分割した部分領域であり、具体的なROM等の構造や、特定の手法によって分割された領域ではないと解すれば、引用発明の「判定テーブル」は、乱数値「733」を含むブロックと、乱数値「1951」を含むブロックとの、二つのブロックより成ると言える。また、これらの乱数値による入賞についてみると、いずれも入賞図柄が「7」であるから、これらの乱数値は「同一絵柄の組合せによる同一種類の当選となる乱数領域」であると言える。してみると、引用発明の「判定テーブル」は、「複数のブロックに分割され、各ブロック毎に、少なくとも同一種類の組合せによる同一種類の当選となる乱数領域が設けられている」ものであると認められる。 そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致並びに相違するものと認められる。 一致点 「複数の回転リールを備えるリールユニットと、遊技制御装置とを備えた遊技機であって、 前記遊技制御装置は、遊技を制御するための遊技制御手段と、抽選を行うための抽選手段とを有し、 前記抽選手段は、乱数を発生させるための乱数発生手段と、この乱数発生手段が発生させた乱数を抽出するための乱数抽出手段と、抽選判定に用いる抽選テーブルと、乱数抽出手段が抽出した乱数と抽選テーブルとを照合して、抽選結果を判定するための抽選判定手段とを有し、 前記抽選テーブルは、複数のブロックに分割され、各ブロック毎に、少なくとも同一絵柄の組合せによる同一種類の当選となる乱数領域が設けられている遊技機。」 である点。 相違点 遊技機が、本願発明では、「複数の回転リールを備えるリールユニットと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、前記リールユニット、スタートスイッチ、及びストップスイッチにそれぞれ接続される遊技制御装置とを備えたスロットマシン」であるのに対し、引用発明では、複数の回転リールを備えるリールユニットと、遊技制御装置とを備えているものの、パチンコ機である点。 第5 判断 (1)相違点について 遊技機として、「複数の回転リールを備えるリールユニットと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、前記リールユニットが備える各回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、前記リールユニット、スタートスイッチ、及びストップスイッチにそれぞれ接続される遊技制御装置とを備えたスロットマシン」は、本願出願前に周知である。したがって、引用発明における遊技機を、パチンコ機に代えて上記スロットマシンとすることは、当業者が容易に想到できたものである。 (2)作用効果について 本願発明の「乱数の出現頻度の偏りの影響が抽選結果に及びにくい」という作用効果について検討する。引用発明において、判定テーブルが複数のブロックに分割され、各ブロック毎に入賞領域が設けられているという構成によって、上記作用効果が生じることは、当業者にとって周知である。(例えば、特開平2-257973号公報には、「その各乱数テーブルは全乱数の数に対し当たりモードの生起確率に対応した数の当たり乱数が書き込まれている。そして、その当たり乱数のテーブル上の分布は、第7図に示すようになっている。即ち、乱数テーブルIは第7図(a)に示すように、当たり乱数が略均一に配置されており、乱数テーブルIIは第7図(b)に示すように、当たり乱数が後半に局在されており、乱数テーブルIIIは第7図(c)に示すように、当たり乱数が2箇所で局在している。」[第3頁右上欄第5行乃至第14行]、「乱数テーブルIが選択されている場合には、第7図(a)に示す如く、当たり乱数の生起傾向が短周期においても均一となる。それに対し、乱数テーブルII又は乱数テーブルIIIが選択された場合には、第7図(b)、(c)に示す如く、当たり乱数の生起傾向は短周期において1箇所又は2箇所に局在することになる。尚、長周期での当たり乱数の発生確率は、3つの乱数テーブルに含まれる当たり乱数の数が等しいので、共に同一である。」[第4頁左下欄第18行乃至右下欄第6行]と記載されている。)してみると、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明が特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-12 |
結審通知日 | 2007-10-18 |
審決日 | 2007-10-31 |
出願番号 | 特願平11-304775 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
渡部 葉子 太田 恒明 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 黒田 博道 |