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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1169654
審判番号 不服2005-3068  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-22 
確定日 2007-12-19 
事件の表示 平成7年特許願第156574号「高アンペア定格遮断器のハンドル連動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年7月12日出願公開、特開平8-180773号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月23日(パリ条約による優先権主張 1994年6月27日、米国)の出願であって、原審での拒絶理由に対する平成16年7月13日付けの手続補正がされ、平成16年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成17年2月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項4について、
「一端が前記閉成手段に接続され、且つ他端が前記閉成リンクに接続されている閉成レバー(38)を更に有する請求項3記載の遮断器。」とある記載を、
「一端が前記閉成手段に接続され、且つ他端が前記閉成リンクに接続されている閉成レバー(38)を更に有する請求項1乃至3のいずれかに記載の遮断器。」とするものである。(下線部は補正個所を示す。)

(2)当審の判断
上記補正事項は、請求項4について、請求項3のみを引用していたものを、請求項1及び2をも引用するものとするものである。
そうすると、上記補正事項は、特許請求の範囲を拡大するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、上記補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正を目的とするものとも認められない。
さらに、補正前の請求項4の記載自体明瞭であるとともに、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものでもないから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。
したがって、本件補正は、平成6年法改正前の特許法第17条の2第3項各号に掲げる事項を目的とするものではなく、同項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年2月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年7月13日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「絶縁基体(11)と、
前記基体の上に設けられていて、閉成軸(33)を囲んでいる絶縁カバー(12)と、
前記閉成軸に接続されていて、該閉成軸を回転させて遮断器接点を閉成状態に駆動するための閉成ばね(16)と、
前記閉成ばねを作動するように接続されていて、オペレータが前記閉成ばねを解放して前記遮断器接点を閉成状態に作動することが出来るようにするための閉成手段(32)と、
前記閉成手段に動作的に接続されていて、前記閉成手段が作動されるまで前記作動ばねの解放を防止するラッチ装置と、
オペレータが前記閉成ばねをチャージすることが出来るようにするための外部アクセス可能な操作ハンドルであって、前記ラッチ装置と前記閉成手段との間で相互作用して前記閉成ばねを制御可能に解放する連動手段(40)を含む外部アクセス可能な操作ハンドルとを有する高レベル過電流保護用の工業定格遮断器。」

(1)引用刊行物
ア.第1引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭55-53015号公報(以下「第1引用例」という。)には、「電動ばね操作装置」に関して、第1?13図とともに次の事項が記載されている。
(ア)「本発明はしや断器の鎖錠装置を装着した電動ばね操作装置に関する。
従来のしや断器の電動ばね操作装置は投入ばねを蓄勢するには電動機でラチエツトつめを駆動し、ラチエツトつめに係合するつめ車を回転して投入ばねを蓄勢し、死点を超えてキヤツチに係止する構造である。かかる電動ばね操作装置においては送りつめと押えつめとが正確につめ車にかみ合う必要があるために微妙な調整が必要で装置は複雑になり高価であつた。・・・
本発明は上記欠点に鑑みなされたものでラチエツト機構および死点を有しない電動ばね操作装置であつて、鎖錠装置を単一ユニツトにまとめて装着した安全で生産性のある電動ばね操作装置を提供することを目的とする。」(第1頁左下欄第16行?同右下欄第14行)
(イ)「以下本発明を図面に示す1実施例について説明する。第1図および第2図において、(1)は電動機、(1a)は電動機1に直結する歯車、(2)は歯車(1a)に噛合う歯車、(3)は歯車(2)で回転する垂直なボールねじ、(4)はボールねじ(3)が回転すると案内棒(5)に沿つて昇降する摺動部、(5)はボールねじ(3)に並行する案内棒、(6)は水平なシヤフト(7)に固着するカムであつて第3図のように摺動部(4)の突部(4a)がカム(6)に回動自在に装着するローラ(6a)を押し上げて第2図におけるカム(6)を反時計方向に回転する。(7)は水平な回動自在なシヤフト、(8),(9)はシヤフト(7)に固着するレバー、(10)はシヤフト(7)に固着する手動用のハンドル受け、(11)はレバー(9)の端部のピン、(12)はピン(11)に懸架する投入ばね、(14)はレバー(8)の端部のローラ、(15)はカム(6)が回転して投入ばね(12)を蓄勢した位置にローラ(14)を停止するキヤツチ、(16)はキヤツチ(15)に連結する手動操作用のロツド、(17)はキヤツチ(15)と投入コイル(13)とを連結するリンクである。」(第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第13行)
(ウ)「(18)はカム(6)のカム面(6a)で押し下げられるローラ、(18a)は1端にローラ(18)を装着し他端を回動自在に支持するレバー、(18b)は1端をローラ(18)でレバー(18a)に連結するリンク、(18c)は1端をリンク(18b)に連結するリンク、(18d)は1端をリンク(18c)に連結し他端を回動自在に支持するレバー、(18e)は一端をリンク(18b)と(18c)とを連結するピンに連結するリンク、(18f)は1端をリンク(18e)に連結し他端を回動自在に支持するレバーであつてリンク装置を構成している。(19)はリンク(18c)と(18d)とを連結するピンに装着するローラ、(20)はローラ(19)を係止するキヤツチ、(20a)はリンク(18b)と(18c)と(18e)とを連結するピンを係止するキヤツチ、(21)はレバー(18f)を開路方向に付勢する開路ばねである。(40)はしや断器の固定接点、(41)は固定接点(40)に接離する可動接点、(42)は可動接点(41)を駆動するロツド、(43)はロツド(42)をレバー(18f)に連結するピンである。」(第2頁左上欄第14行?同右上欄第11行)
(エ)「次にこの装置の作用を説明する。しや断器を閉路するには先ず電動機(1)を回転して歯車(1),(2)を介してボールねじ(3)を摺動部(4)が案内軸(5)に沿つて上昇するように回転する。突部(4a)がローラ(6a)を押し上げカム(6)を第4図に示す位置に反時計方向に回転してローラ(14)はキヤツチ(15)に係止する。この時投入ばね(12)はピン(11)に引張られて蓄勢する。ローラ(14)がキヤツチ(15)に係止すると電動機(1)を逆回転して摺動部(4)を下げ当初の位置に戻る。次に投入コイル(13)を付勢してリンク(17)でキヤツチ(15)を時計方向に回動しローラ(14)を開放すると投入ばね(12)のエネルギでカム(6)は時計方向に回転してローラ(18)をカム面(6a)で下方に押下げリンク装置を介してレバー(18f)を時計方向に回転しロツド(42)で可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する。この閉路状態を第2図に示す。」(第2頁右上欄第12行?同左下欄第7行)
(オ)「かかる装置にあつては危険防止のため次の鎖錠が必要である。すなわち(1)手動または電気操作による投入ばねの蓄勢過程中は電気的および機械的に投入動作ができないこと・・・である。」(第2頁左下欄第15行?同右下欄第4行)
(カ)「次に鎖錠装置を説明する。第6図および第7図において、(22)は前記電動ばね操作装置のフレームに固着したフレーム、(23)は長孔(23a)をフレーム(22)に固着するピン(24),(24)に挿着した左右に移動自在なシヤツタ、(25)はシヤツタ(23)の突部(23b)とフレーム(22)との間に懸架してシヤツタ(23)を右方向に付勢するばね、(26)はピン(27)でフレーム(22)に回動自在に支持したレバー、(28)はレバー(26)を反時計方向に付勢するばねである。レバー(26)の端部(26a)は摺動部(4)の底面(4b)に当接し、摺動部(4)が上昇するとレバー(26)の端部(26b)はロツド(16)の端部に固着する投入ボタン(29)の係合部(29a)を係止し投入ボタン(29)を押すことを不可能にする。」(第2頁左下欄第5?17行)
(キ)「次に鎖錠装置の作用について説明する。第6図において手動ハンドルにより投入ばね(12)を手動で蓄勢する場合には、シヤツタ(23)を第8図のように左方向へ移動し手動ハンドル(36)をハンドル受け(10)に挿着し、手前方向に回転してカム(6)を回転しキヤツチ(15)にローラ(14)を係止する。この時シヤツタ(23)は突部(23c)が投入ボタン(29)の係合部(29a)を係止する。このため投入ボタン(29)を押すことが不可能となりキヤツチ(15)を外して投入動作することができない。同時にシヤツタ(23)の突部(23b)がスイツチ(37)のレバー(37a)を押し下げスイツチ(37)の接点を開離し電気的投入回路を断路して電気的投入動作を不可能にする。
また投入ばね(12)を電気操作により蓄勢する場合には、第6図において電動機(1)が回転し摺動部(4)が上昇するとレバー(26)はばね(28)により持ち上げられ、レバー(26)は反時計方向に回転し第9図のように突部(26b)が投入ボタン(29)の係合部(29a)を係止し、投入ボタン(29)を押すことが不可能となる。また電動機(1)の回転中は電気的投入回路が開路するようにして電気的投入動作を不可能となる。従つて手動または電気操作による投入ばねの蓄勢過程中は電気的および機械的に投入動作ができない。」(第3頁左上欄第12行?同右上欄第14行)
(ク)投入ボタン(29)について、記載事項(イ)の「(16)はキヤツチ(15)に連結する手動操作用のロツド」及び記載事項(キ)の「このため投入ボタン(29)を押すことが不可能となりキヤツチ(15)を外して投入動作することができない。」との記載からみて、投入ボタン(29)は手動操作用のロツド(16)に連結され、これを押すことでキヤツチ(15)を外して投入動作をさせるものであると認められる。さらに記載事項(エ)の「キヤツチ(15)を時計方向に回動しローラ(14)を開放すると投入ばね(12)のエネルギでカム(6)は時計方向に回転してローラ(18)をカム面(6a)で下方に押下げリンク装置を介してレバー(18f)を時計方向に回転しロツド(42)で可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する。」及び記載事項(キ)の「従つて手動または電気操作による投入ばねの蓄勢過程中は電気的および機械的に投入動作ができない。」との記載並びに第2及び4図を合わせみると、投入ボタン(29)を押すことで手動操作用のロツド(16)を介してキヤツチ(15)を時計方向に回動し、投入ばね(12)のエネルギでカム(6)は時計方向に回転して、可動接点(41)を固定接点(40)に閉路するものである。
(ケ)記載事項(イ)の「(10)はシヤフト(7)に固着する手動用のハンドル受け」及び記載事項キ.の「手動ハンドルにより投入ばね(12)を手動で蓄勢する場合には、・・・手動ハンドル(36)をハンドル受け(10)に挿着し、手前方向に回転してカム(6)を回転しキヤツチ(15)にローラ(14)を係止する。」との記載から、手動ハンドル(36)はハンドル受け(10)に挿着され、これにより投入ばね(12)を手動で蓄勢するものであるといえる。
これらの記載事項(ア)?(キ)、検討事項(ク)及び(ケ)並びに図面の図示内容を総合すると、第1引用例には、
「回動自在なシヤフト(7)と、
シヤフト(7)に固着するレバー(9)を介して接続されていて、そのエネルギで該シヤフト(7)を時計方向に回転してしや断器の可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する投入ばね(12)と、
これを押すことで手動操作用のロツド(16)を介してキヤツチ(15)を時計方向に回動し、投入ばね(12)のエネルギでカム(6)は時計方向に回転して、可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する投入ボタン(29)と、
投入ボタン(29)が押されると手動操作用のロツド(16)を介して時計方向に回動されるものであって、投入ボタン(29)が作動されるまでは投入ばね(12)を蓄勢した位置に停止するキヤツチ(15)と、
投入ばね(12)を手動で蓄勢する手動ハンドル(36)とを有し、
手動または電気操作による投入ばねの蓄勢過程中は電気的および機械的に投入動作ができないようにする鎖錠として、
手動ハンドル(36)により投入ばね(12)を手動で蓄勢する場合には、シヤツタ(23)により投入ボタン(29)を押すことができないようにし、
電気操作により蓄勢する場合には、電動機(1)が回転し摺動部(4)が上昇すると投入ばね(12)は蓄勢されるとともにレバー(26)は反時計方向に回転し、その突部(26b)が投入ボタン(29)の係合部(29a)を係止して投入ボタン(29)を押すことができないようにするしゃ断器。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
イ.第2引用例
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭52-54967号公報(以下「第2引用例」という。)には、「多極型遮断器」に関して、次の事項が記載されている。
「第1図には、この発明を実施した工業用遮断器が示されている。これは基部22及びカバー24から成る絶縁ケーシング20を有する。」(第7頁第5?7行)

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「回動自在なシヤフト(7)」は、その機能・構成からみて、前者の「閉成軸(33)」に相当し、以下同様に、後者の「しや断器の可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する」は前者の「遮断器接点を閉成状態に駆動する」及び「遮断器接点を閉成状態に作動する」に、後者の「投入ばね(12)」は前者の「閉成ばね(16)」及び「作動ばね」に、後者の「投入ボタン(29)」は前者の「閉成手段(32)」に、後者の「投入ばね(12)を蓄勢した位置に停止するキヤツチ(15)」は前者の「作動ばねの解放を防止するラッチ装置」に、後者の「蓄勢」は前者の「チャージ」に、後者の「手動ハンドル(36)」は前者の「操作ハンドル」、後者の「しゃ断器」は前者の「遮断器」にそれぞれ相当する。
また、後者の「投入ばね(12)」は「シヤフト(7)に固着するレバー(9)を介して接続されていて、そのエネルギで該シヤフト(7)を時計方向に回転してしや断器の可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する」のであるから、前者の「閉成ばね(16)」と同様に「閉成軸に接続されてい」るといえるとともに、「該閉成軸を回転させて遮断器接点を閉成状態に駆動する」ものであるといえる。
後者の「これを押すことで手動操作用のロツド(16)を介してキヤツチ(15)を時計方向に回動し、投入ばね(12)のエネルギでカム(6)は時計方向に回転して、可動接点(41)を固定接点(40)に閉路する投入ボタン(29)」は、当然オペレータが「これを押す」ものであるから、前者の「閉成ばねを作動するように接続されていて、オペレータが前記閉成ばねを解放して遮断器接点を閉成状態に作動することが出来るようにするための閉成手段(32)」に相当する。
後者の「キヤツチ(15)」は「投入ボタン(29)が押されると手動操作用のロツド(16)を介して時計方向に回動される」のであるから前者の「ラッチ装置」と同様に「閉成手段に動作的に接続されてい」るといえ、「投入ボタン(29)が作動されるまでは投入ばね(12)を蓄勢した位置に停止する」ことから前者の「閉成手段が作動されるまで前記作動ばねの解放を防止する」という作動をなすものであるといえる。
後者の「投入ばね(12)を手動で蓄勢する手動ハンドル(36)」は、当然オペレータが操作するものであって、外部アクセス可能であるといえるから、前者の「オペレータが前記閉成ばねをチャージすることが出来るようにするための外部アクセス可能な操作ハンドル」に相当する。
そうすると、両者は、「閉成軸と、
前記閉成軸に接続されていて、該閉成軸を回転させて遮断器接点を閉成状態に駆動するための閉成ばねと、
前記閉成ばねを作動するように接続されていて、オペレータが前記閉成ばねを解放して前記遮断器接点を閉成状態に作動することが出来るようにするための閉成手段と、
前記閉成手段に動作的に接続されていて、前記閉成手段が作動されるまで前記作動ばねの解放を防止するラッチ装置と、
オペレータが前記閉成ばねをチャージすることが出来るようにするための外部アクセス可能な操作ハンドルとを有する遮断器。」である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]本願発明は、「絶縁基体(11)と、前記基体の上に設けられていて、閉成軸(33)を囲んでいる絶縁カバー(12)」とを備えるのに対して、引用発明では、そのような構成を備えるか否かが不明である点。
[相違点2]本願発明は、操作ハンドルに「ラッチ装置と閉成手段との間で相互作用して前記閉成ばねを制御可能に解放する連動手段(40)を含む」のに対して、引用発明は、操作ハンドルに上記のような連動手段を含むものか否か不明である点。
[相違点3]本願発明に係る遮断器は、「高レベル過電流保護用の工業定格」遮断器とされるのに対し、引用発明では、遮断器の使用態様についての明確な言及がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
ア.相違点1について
第2引用例((1)イ.参照)に示されるように、当該技術分野においては、「絶縁基体」と当該基体上に設けられる「絶縁カバー」とを備える遮断器はよく知られているし、絶縁カバーが、遮断器の機構の一部である「閉成軸(33)を囲」むものとすることも通常想到しうる程度のことであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明と同様の構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしうる設計事項といえる。

イ.相違点2について
引用発明の「シヤツタ(23)」は「手動または電気操作による投入ばねの蓄勢過程中は電気的および機械的に投入動作ができないようにする鎖錠として、」「手動ハンドル(36)により投入ばね(12)を手動で蓄勢する場合に」「投入ボタン(29)を押すことができないように」するものであり、本願発明の「連動手段(40)」とは、閉成手段に作用して閉成ばねを制御可能に解放する鎖錠手段という点で共通している。
引用発明の投入ボタン(29)は手動操作用のロツド(16)を介してキヤツチ(15)を回動するものであるから、鎖錠手段に関し、上記投入ボタン(29)からキヤツチ(15)のどこで、その動作を制御するかは、当業者が適宜選択し得る設計事項であるといえ、その場所による格別の作用効果も認められない。また、具体的にどのようなリンク機構等を用いるかも、当業者が適宜なし得る設計事項であるといえるから、引用発明において、ラッチ装置と閉成手段との間で相互作用して前記閉成ばねを制御可能に解放するよう、鎖錠手段を設けることは当業者が格別の困難性を要することなくなし得る設計上の事項であるといえる。
一方、引用発明は「電気操作による投入ばねの蓄勢過程中」に「機械的に閉路する投入動作ができないようにする鎖錠として、」「電気操作により蓄勢する場合には、電動機(1)が回転し摺動部(4)が上昇すると投入ばね(12)は蓄勢されるとともにレバー(26)は反時計方向に回転し、その突部(26b)が投入ボタン(29)の係合部(29a)を係止して投入ボタン(29)を押すことができないようにする」ものであって、蓄勢を行う部材である摺動部(4)に連動する鎖錠手段をも有するといえる。
そうすると、手動操作による投入ばねの蓄勢過程中に対応する上記鎖錠手段についても、電気操作による投入ばねの蓄勢過程中に対応する鎖錠手段と同様に、蓄勢を行う部材である操作ハンドルに連動するように、操作ハンドルに鎖錠手段を含めて構成することも当業者が必要に応じて適宜なし得ることといえる。
以上のことから、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別想到し難いこととはいえない。

ウ.相違点3について
上記第2引用例には「工業用遮断器」が記載されるように、遮断器の使用態様として工業用とすることは、通常のものであるといえる。
そして、工業用の電流のレベルを考慮して、引用発明の遮断器を、「高レベル過電流保護用の工業定格」を備えるものとすることに、格別の困難性があるとは認められない。

そして上記相違点1?3を合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び及び第2引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び及び第2引用例記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-20 
結審通知日 2007-07-24 
審決日 2007-08-06 
出願番号 特願平7-156574
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01H)
P 1 8・ 572- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 茂夫  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 岸 智章
平上 悦司
発明の名称 高アンペア定格遮断器のハンドル連動装置  
代理人 松本 研一  
代理人 伊藤 信和  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  

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