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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1169838
審判番号 不服2006-5394  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-23 
確定日 2007-12-20 
事件の表示 平成 8年特許願第182787号「多層プリント配線板および接着フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年1月16日出願公開、特開平10-13039〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成8年6月24日の出願であって、請求項1、2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 回路形成をした各層間を接着フィルムによって一体に成形接合された多層プリント配線板において、前記接着フィルムが、支持する基布を有することなく熱硬化性樹脂組成物により成膜されたものであるとともに該熱硬化性樹脂組成物のフィラー成分として塩基性硫酸マグネシウムを含むことを特徴とする多層プリント配線板。」

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平8-63989号(特開平9-260843号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】内層回路板と外層回路用銅箔とが絶縁層を介して積層されてなる内層回路入り多層銅張積層板において、前記絶縁層が熱硬化性樹脂中に電気絶縁性ウィスカーを分散したものであることを特徴とする内層回路入り多層銅張積層板。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1b)「本発明は、薄型化、高密度化に対応可能な多層プリント配線板用の内層回路入り多層銅張積層板・・・に関するものである。」(【0001】)
(1c)「本発明に用いるウィスカーとしては、電気絶縁性であり・・・ウィスカーの種類としては、例えば、硼酸アルミニウム・・・塩基性硫酸マグネシウム・・・から選ばれた1以上のものを用いることができる。」(【0008】)
(1d)「実施例1 ・・・熱硬化性樹脂ワニスに、平均直径0.8μm、平均繊維長20μmの硼酸アルミニウムウィスカーを・・・配合し・・・ワニス中に均一に分散するまで撹拌した。これを・・・片面粗化電解銅箔の粗化面にナイフコータにて塗工し・・・加熱乾燥して溶剤を除去すると共に、樹脂を半硬化し・・・銅箔付きプリプレグを作製した。・・・この作製した銅箔付きプリプレグを・・・両面銅張積層板に回路形成した内層板の回路面にプリプレグ面を合わせるように積層し・・・熱圧成形して内層回路入り多層銅張積層板を得た。・・・さらに、この内層回路入り多層銅張積層板に回路形成した後、ICベアチップを実装し、ワイヤボンディングで表面回路と接続した。・・・この内層回路入り多層銅張積層板の一部を切取り、外層銅箔をエッチングにより除去し、外観を観察したところ、ボイドやかすれがなく、内層回路の凹凸への埋めこみ性は良好であった。」(【0021】?【0023】)

3.当審の判断
3-1.先願明細書記載の発明
(1)先願明細書の摘記事項(1a)によれば、内層回路板と外層回路用銅箔とが絶縁層を介して積層されてなる内層回路入り多層銅張積層板において、前記絶縁層が熱硬化性樹脂中に電気絶縁性ウィスカーを分散したものである内層回路入り多層銅張積層板が記載され、摘記事項(1c)によれば、電気絶縁性ウィスカーとして、塩基性硫酸マグネシウム又は硼酸アルミニウムが用いられること、摘記事項(1b)によれば、内層回路入り多層銅張積層板は多層プリント配線板用であることが記載されている。
(2)摘記事項(1d)によれば、絶縁層は、硼酸アルミニウムウィスカー(電気絶縁性ウィスカー)を分散した熱硬化性樹脂ワニスを電解銅箔(外層回路用銅箔)に塗工し、乾燥、半硬化し、ガラスクロス等の基布を有することなく銅箔付きプリプレグとして作製されるので、支持する基布を有しない熱硬化性樹脂組成物から製膜されたフィルムに相当するものであると認められる。
(3)また、同じく摘記事項(1d)によれば、この銅箔付きプリプレグを内層回路板の回路面にプリプレグ面を合わせるように積層、熱圧成形して、内層回路入り多層銅張積層板を製造すること、及び、内層回路入り多層銅張積層板に回路形成した後、ICベアチップを実装し、ワイヤボンディングで表面回路と接続することから、内層回路入り多層銅張積層板の外層回路用銅箔に回路形成して多層プリント配線板を作製し、この多層プリント配線板にICベアチップを実装し、ワイヤボンディングで表面回路と接続することが記載されている。
(4)そうすると、銅箔付きプリプレグの絶縁層は、電気絶縁性ウィスカーを分散した熱硬化性樹脂ワニスの塗工層を乾燥、半硬化した熱可塑性樹脂組成物の層であって、支持する基布を有することなく銅箔上に成膜されたフィルムといえるし、内層回路板の回路面と外層回路用銅箔を接着するための接着フィルムともいえることが理解できる。
(5)そこで、先願明細書の摘記事項(1a)?(1d)の記載を多層プリント配線板の観点で総合すれば、先願明細書には、
「内層回路板と、外層回路用銅箔の間を接着フィルムによって一体に成形接合された多層プリント配線板において、前記接着フィルムが、支持する基布を有することなく熱硬化性樹脂組成物により成膜されたものであるとともに該熱硬化性樹脂組成物が塩基性硫酸マグネシウムを分散している多層プリント配線板。」(以下、「先願明細書発明」という。)が記載されていることになる。

3-2.対比・判断
本願発明1と先願明細書発明とを対比すると、先願明細書発明の「内層回路板」は、本願発明1の「回路形成をした層」に相当するし、先願明細書発明の「塩基性硫酸マグネシウム」はフィラー成分であるから、両者は、
「回路形成をした層を接着フィルムによって一体に成形接合された多層プリント配線板において、前記接着フィルムが、支持する基布を有することなく熱硬化性樹脂組成物により成膜されたものであるとともに該熱硬化性樹脂組成物のフィラー成分として塩基性硫酸マグネシウムを含む多層プリント配線板。」で一致し、次の点で一応相違する。
相違点:本願発明では回路形成した各層を接合するのに対し、先願明細書発明で内層回路板と接合する外層回路用銅箔が、回路を形成した層であると明記されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
先願明細書発明の銅箔は、銅箔付き接着フィルムにおいては接着フィルムの支持基材として作用しているものの、多層プリント配線板においては外層回路用銅箔として存在しており、3-1.(3)で摘記したように、内層回路入り外層銅張積層板を製造した後に回路を形成しているのだから、回路を形成した層であると認めることができる。
してみると、上記相違点は実質的な相違点ではないから、本願発明1は、先願明細書発明と同一である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、先願明細書発明と同一であり、しかも、本願発明1の発明者が上記先願明細書発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められず、本願発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-19 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-07 
出願番号 特願平8-182787
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 市川 裕司

小川 武
発明の名称 多層プリント配線板および接着フィルム  
代理人 須山 佐一  

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