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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1169874
審判番号 不服2004-22114  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-27 
確定日 2007-12-21 
事件の表示 平成 8年特許願第156678号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月 6日出願公開、特開平10- 256〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年6月18日に特許出願したものであって、平成16年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年10月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について

[補正却下の決定の結論]
平成16年11月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数行複数列にシンボルの表示窓を配列し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示窓の背後でそれぞれ移動表示し、シンボル列の移動表示が停止したときに各表示窓に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機において、
前記表示窓の背後で移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたか否かを判定する手段と、
該第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたとき、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを開始する手段と、
乱数を取得して入賞の種類と前記第一シンボル以外の1つのシンボルを決定し、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させて、決定された該シンボルで停止するように制御して該副ゲームを実行する手段と、
該副ゲームで該シンボルが停止した後、前記表示窓の全てで各シンボル列を再度移動表示させる手段と、
該副ゲームで決定された該第一シンボル以外の1つのシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたことに応答し」について、「前記表示窓の背後で移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたか否かを判定する手段と」と限定し、「前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを」について、「該第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたとき、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを開始する手段と」と限定し、「該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させることによって行い」について、「乱数を取得して入賞の種類と前記第一シンボル以外の1つのシンボルを決定し、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させて、決定された該シンボルで停止するように制御して該副ゲームを実行する手段と」と限定し、「該副ゲームでシンボルを決定した後に前記各シンボル列を再度移動表示させ」について、「該副ゲームで該シンボルが停止した後、前記表示窓の全てで各シンボル列を再度移動表示させる手段と」と限定し、「該副ゲームで決定されたシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う」について、「該副ゲームで決定された該第一シンボル以外の1つのシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う手段と、」と限定し、「ことを特徴とする遊技機」について、「を備えたことを特徴とする遊技機」と限定するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。(下線部は補正箇所)
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用発明
引用刊行物
(i ) 特開平7-313661号公報
(ii) 特開昭63-302878号公報
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である上記の各刊行物には、それぞれ次の発明が記載されている。

(i) 特開平7-313661号公報
特開平7-313661号公報(以下、「引用例1」という。)には以下の記載がある。
(i)-a「ラスタビーム走査によりディスプレイ上に形成された複数の疑似リールを疑似周回転させると共に、それらの疑似リールを乱数値に応じて個別に停止させるビデオスロットマシンにおいて、
複数の疑似リールから成る主リール及び少なくとも1個の疑似リールから成る副リールを設け、疑似周回転後に停止した主リール内の各疑似リールのキャラクタ像が所定のボーナスパターンに揃ったとき、副リールを疑似周回転することを特徴とするビデオスロットマシン。」(特許請求の範囲の請求項1)
(i)-b「【作用】
例えば、主リール内において3×3=9個のマトリクス状に配列された疑似リールの疑似周回転、すなわちスクロール回転が停止したとき、特定の入賞ライン上に特定のキャラクタ像が揃うと、当たり状態と判定され、適宜枚数のコインがプレイヤに払い出される。上記の当たり状態とは別に、主リール内のキャラクタ像が特定のボーナスパターンに揃うと、副リールが疑似周回転、すなわちスクロール回転を開始する。そして、この副リールのスクロール回転によってゲームが続行される。・・・」(段落【0010】)
(i)-c「主リール21は、例えば3×3=9個のマトリクス状に配列された疑似リール6a?6iによって構成される。副リール22は、2個の疑似リール23a及び23bによって構成される。・・・」(段落【0012】)
(i)-d「本実施例では、主リール21内の個々の疑似リール6a?6iは、リンゴ、葡萄、バナナ等といったフルーツを統一概念とするキャラクタ像と、「3」とか「7」とかいった数字を表すキャラクタ像とから成る一群のキャラクタ像を順々にスクロール表示する。また、副リール22内の個々の疑似リール23a,23bは、それぞれ、0?9までの数字を順々にスクロール表示する。」(段落【0013】図4)
(i)-e「以下、上記構成より成るビデオスロットマシンの動作を、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
・・・スタートボタン18が押されると(ステップ52)、・・・主リール21内の全ての疑似リール6a?6iが疑似周回転、すなわち疑似スクロール回転を開始する(ステップ53)。この疑似スクロール回転により、・・・リンゴ、葡萄、バナナ等といったフルーツを表すキャラクタ像及び「3」,「7」等の数字を表すキャラクタ像が各疑似リール内で次々に上辺から現れて、次々に下辺から消えてゆく。
その後、プレイヤによって停止ボタン5が押されたとき、あるいは所定の一定時間が経過したときに自動的に各疑似リール6a?6iのスクロール、すなわち疑似周回転が次々に停止し始める(ステップ54)。このとき個々の疑似リールは、ROM12内の乱数発生部から出力される乱数値に基づいた乱数値制御に従ったそれぞれ独自のタイミングでバラバラに停止し、そして各疑似リール内にどのキャラクタ像が停止したかはRAM13に記憶される。」(段落【0018】-【0020】)
(i)-f「CPU10(図2)は、9個の疑似リール6a?6iのうちの2/3、すなわち6個のスクロール回転が停止したか否かをチェックし(ステップ55)、6個が停止したと判定したときには、その停止した各疑似リール内のキャラクタ像が、ボーナスパターンとしての「ALL FRUITS」の構成要素としての条件を満たしているかどうかをチェックする(ステップ56)。
「ALL FRUITS」というのは、主リール21を構成する全ての疑似リール6a?6iが全てフルーツを表すキャラクタ像で揃った場合の状態を意味している。・・・
ステップ56において、停止した6個の疑似リールが全てフルーツのキャラクタ像を表しているときには、将来、全ての疑似リールが停止したときに「ALL FRUITS」が完成するであろうことを予告するボーナス予告表示、すなわち「ALL FRUITS」表示を行う(ステップ57)。具体的には、・・・フルーツのキャラクタ像で停止した6個の疑似リール6c,6d,6f,6g,6h,そして6iの画面内に「ALL FRUITS」の文字を表示する。このとき、未だ停止していない3個の疑似リール6a,6b,そして6eは、スクロールを継続する。・・・
・・・その後、全ての疑似リールが停止したか否かをチェックし(ステップ58)、全てが停止したと判断されたときには、判定処理を実行する(ステップ59)。」(段落【0021】-【0024】)
(i)-g「この判定処理では、ノーマル状態での当たり状態が生じたか否か及び「ALL FRUITS」が完成したか否かが判定される。ノーマル状態での当たり状態というのは、例えば入賞ライン選択ボタン17を操作することによって予め選択された入賞ライン上に所定のキャラクタ像が揃う状態のことである。・・・
ステップ59の判定処理において、「ALL FRUITS」が完成したと判定されたときには、・・・疑似リール6a?6iの全てにフルーツのキャラクタ像が停止し、そして全ての疑似リール内に「ALL FRUITS」の文字表示が映し出される。このときには、図3において、ステップ60を経由してボーナスフローが実行される。このボーナスというのは、「ALL FRUITS」が完成したことに対してプレイヤに与えられる褒賞ということである。
このボーナスフローでは、副リール22内の疑似リール23a,23bが疑似周回転、すなわちスクロール回転を始め(ステップ64)、そして所定時間後にそのスクロールが停止する(ステップ65)。スクロールが停止した後、各疑似リール23a,23bに表示されている数値がいくつであるかを判定し(ステップ66)、その判定した値をコインの払い出し枚数として決定し(ステップ67)、そしてプレイヤに対して払い出す(ステップ62)。」(段落【0025】-【0027】)
(i)-h「ボーナスパターンの形態も、上記の実施例のような「ALL FRUITS」の状態、すなわち全ての疑似リール6a?6iにフルーツのキャラクタ像が停止する状態に限られず、種々の形態をボーナスパターンとして設定できる。例えば、発生する確率が高くなってしまってボーナスとしての価値が低下するかもしれないが、真ん中の疑似リール6eに特定のキャラクタ像が停止したときをもって、ボーナスパターンが完成したものと判定することも可能である。」(段落【0031】)

上記の記載によれば、引用例1(特開平7-313661号公報)には、以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「ディスプレイ上に形成された複数の疑似リールを疑似周回転させると共に、それらの疑似リールを乱数値に応じて個別に停止させ、疑似周回転後に停止した主リール内の各疑似リールのキャラクタ像が所定のボーナスパターンに揃ったとき、複数の疑似リールから成る副リールを疑似周回転するビデオスロットマシンであって、主リール21は、例えば3×3=9個のマトリクス状に配列された疑似リール6a?6iによって構成され、副リール22は、2個の疑似リール23a及び23bによって構成されており、主リール21内の個々の疑似リール6a?6iは、リンゴ、葡萄、バナナ等といったフルーツを統一概念とするキャラクタ像と、「3」とか「7」といった数字を表すキャラクタ像とから成る一群のキャラクタ像よりなり、また、副リール22内の個々の疑似リール23a,23bは、それぞれ、0?9までの数字よりなり、主リール内における疑似リールの疑似周回転、すなわちスクロール回転が停止したとき、特定の入賞ライン上に特定のキャラクタ像が揃うと、当たり状態と判定され、副リールが疑似周回転、すなわちスクロール回転を開始して、この副リールのスクロール回転によってゲームが続行されるよう構成されており、上記構成より成るビデオスロットマシンの動作は、スタートボタン18が押されると、主リール21内の全ての疑似リール6a?6iがスクロール回転を開始し、その後、プレイヤによって停止ボタン5が押されたとき、あるいは所定の一定時間が経過したときに自動的に各疑似リール6a?6iのスクロールが次々に停止し始め、個々の疑似リールは、ROM12内の乱数発生部から出力される乱数値に基づいた乱数値制御に従ったそれぞれ独自のタイミングでバラバラに停止し、CPU10は、全ての疑似リールが停止したか否かをチェックし、全てが停止したと判断されたときには、判定処理を実行して、ノーマル状態での当たり状態が生じたか否か、及び「ALL FRUITS」が完成したか否かを判定するもので、ノーマル状態での当たり状態は、入賞ライン選択ボタン17を操作することによって予め選択された入賞ライン上に所定のキャラクタ像が揃う状態のことであり、「ALL FRUITS」が完成したと判定されたときには、疑似リール6a?6iの全てにフルーツのキャラクタ像が停止し、全ての疑似リール内に「ALL FRUITS」の文字表示が映し出されてボーナスフローを実行し、副リール22内の疑似リール23a,23bがスクロール回転を始めて所定時間後に停止し、各疑似リール23a,23bに表示されている数値をコインの払い出し枚数として決定してプレイヤに対して払い出す、ビデオスロットマシン。」

(ii) 特開昭63-302878号公報
特開昭63-302878号公報(以下、「引用例2」という。)には以下の記載がある。 (ii)-a「(1)周面に複数個の絵柄を有する複数個のリールをハンドル操作で始動させた後、全リールが停止したときに、停止ライン上に並ぶ絵柄の組み合わせに応じてゲームの勝負を決定するスロットマシンにおいて、前記停止ライン上に特定絵柄が停止したことを検出するための特定絵柄検出手段と、この特定絵柄検出手段の検出動作で全リールまたは所定のリールを自動的に始動させて特別ゲームへ移行させる特別ゲーム移行手段とを具備して成るスロットマシン。
・・・
(3)各リールは、所定時間経過後に自動停止する構成である特許請求の範囲第1項記載のスロットマシン。
(4)特定絵柄検出手段は、停止ライン上に各リールの特定絵柄が停止して、所定の絵柄の組み合わせが成立したことを検出する手段である特許請求の範囲第1項記載のスロットマシン。
・・・
(6)特定絵柄検出手段および特別ゲーム移行手段は、マイクロコンピュータのCPUを制御主体とする特許請求の範囲第1項記載のスロットマシン。」(特許請求の範囲の請求項1、3、4、6)
(ii)-b「〈作用〉
遊技者のハンドル操作で全リールが始動した後に、これらリールが停止したとき、特定絵柄検出手段は停止ライン上に特定絵柄が停止したか否かを検出する。もし停止ライン上に特定絵柄の停止が検出されると、特別ゲーム移行手段は全リールまたは所定のリールを自動的に始動させて特別ゲームへ移行させる。」(第2頁左下欄第5-11行)
(ii)-c「第6図は、この発明の他の実施例を示す。この第2実施例は、・・・タイマによる自動停止方式・・・である。この第2実施例の回路構成は、・・・CPUを制御主体とし、メモリとしてのROMやRAMを含むと共に、インターフェイスを介して入出力各部が電気接続されるものである。第7図は、第2実施例において入賞となる絵柄配列を示している。このうち第7図(1)は特別ゲームの権利が与えられる特定絵柄8による配列(以下、「特別当り」という)を示し、第7図(2)?第7図(6)はそれ以外の絵柄による配列(以下、「第1当り」?「第5当り」という)を示している。」(第5頁左上欄第4行-右上欄第6行、第7図)
(ii)-d「第8図は、第2実施例にかかるスロットマシンの動作手順を示しており、・・・遊技者が・・・始動ハンドル6を操作すると、・・・全リール1a,1b,1cが一斉始動する。これにより通常のゲームが開始され、CPUが有するタイマがタイムアツプしたとき、各リール1a,1b,1cは同時または順次自動停止する(ステップ4)。その結果、停止ラインL上に入賞の絵柄配列が形成されると、・・・その入賞絵柄の配列が第7図(1)に示す特定絵柄8にかかるものであるかどうかを判断する。もし特定絵柄8の配列でないと判断した場合は、・・・その当りの内容に応じた所定配当のコインが払い出された後(ステップ7)、ステップ2へ戻ってつぎの通常ゲームに待機する。これに対し第7図(1)の絵柄配列が成立すると、・・・特別ゲームへ移行することになる。この実施例における特別ゲームは、5回連続して実行されるもので、これら特別ゲームで入賞となる全ての種類の絵柄配列を自動的に生成して、多数のコインを放出するよう構成してある。この特別ゲームでは、全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リール1a,1b,1cを自動的に一斉停止させて、まず停止ラインL上に第1当り(第7図(2)に示す)を成立させ、・・・引き続きステップ11で全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リールla、lb、lcを自動的に一斉停止させて、停止ラインL上に第2当り(第7図(3)に示す)を成立させ、・・・同様にしてステップ13,14では第3当り(第7図(4)に示す)を、ステップ15,16では第4当り(第7図(5)に示す)を、ステップ17,18では第5当り(第7図(6)に示す)を、それぞれ成立させて・・・最後のステップ19で特別当りにかかる絵柄配列(第7図(1)に示す)に戻して特別ゲームを終了させ、ステップ2に戻って通常ゲームの待機する。」(第5頁右上欄第7行-右下欄第18行、第8図)

上記の記載によれば、引用例2(特開昭63-302878号公報)には、以下の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
「周面に複数個の絵柄を有する複数個のリールをハンドル操作で始動させた後、所定時間経過後に自動停止させ、全リールが停止したときに、停止ライン上に並ぶ絵柄の組み合わせに応じてゲームの勝負を決定するスロットマシンであって、マイクロコンピュータのCPUを制御主体とし、メモリとしてのROMやRAMを含むとともに、前記停止ライン上に特定絵柄が停止して、所定の絵柄の組み合わせが成立したことを検出するための特定絵柄検出手段と、この特定絵柄検出手段の検出動作で全リールを自動的に始動させて特別ゲームへ移行させる特別ゲーム移行手段とを具備して成り、スロットマシンの動作手順は、遊技者が始動ハンドル6を操作すると、全リール1a,1b,1cが一斉始動して通常のゲームが開始され、CPUが有するタイマがタイムアツプしたとき、各リール1a,1b,1cは同時または順次自動停止し、その結果、停止ラインL上に入賞の絵柄配列が形成されると、その入賞絵柄の配列が特定絵柄8(第7図(1))にかかるものであるかどうかを判断し、もし特定絵柄8の配列でないと判断した場合は、その当りの内容に応じた所定配当のコインが払い出された後、つぎの通常ゲームに待機し、これに対し特定絵柄8(第7図(1))の絵柄配列が成立すると、5回連続して実行される特別ゲームへ移行することになり、これら特別ゲームで入賞となる全ての種類の絵柄配列を自動的に生成して、多数のコインを放出するよう構成してあり、この特別ゲームでは、全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リール1a,1b,1cを自動的に一斉停止させて、まず停止ラインL上に第1当り(第7図(2)に示す)を成立させ、引き続き全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リールla、lb、lcを自動的に一斉停止させて、停止ラインL上に第2当り(第7図(3)に示す)を成立させ、同様にして、第3当り(第7図(4)に示す)、第4当り(第7図(5)に示す)、第5当り(第7図(6)に示す)を、それぞれ成立させて、最後に特別当りにかかる絵柄配列(第7図(1)に示す)に戻して特別ゲームを終了させ、通常ゲームの待機をする、スロットマシン。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「マトリクス状(に配列)」は本願補正発明における「複数行複数列(に配列)」に、同じく「キャラクタ」は「シンボル」に、それぞれ対応しており、さらに引用発明1について次のことがいえる。

(i) 引用発明1において、「マトリクス状に配列された疑似リール6a?6i」(摘示1-c)は、「リンゴ、葡萄、バナナ等」の「フルーツ」や、「「3」、「7」等」の「数字」を表す「一群のキャラクタ像よりな」(摘示1-d)り、引用例1の図4を参照すると、「疑似リール6a?6i」における上記した複数種類の「キャラクタ像」は、それぞれの「列」において「スクロール回転」することで、これらの「キャラクタ像」が表すそれぞれの「キャラクタ」が移動表示することが見てとれる。
そして、引用発明1における上記「疑似リール6a?6i」を、「キャラクタ」(本願補正発明における「シンボル」に対応する。)を表示する「表示部」と表現することができ、同引用発明1は、前記「表示部」において複数種類の「キャラクタ(シンボル)」の「列」をそれぞれ移動表示するものであるということができる。
すなわち、引用発明1は、「マトリクス状(複数行複数列)にキャラクタ(シンボル)の表示部を配列し、複数種類のキャラクタ(シンボル)を配列したキャラクタ(シンボル)の列を前記表示部においてそれぞれ移動表示」するものであるということができる。
以上のとおり、引用発明1において、「疑似リール6a?6i」を構成する「キャラクタ像」は、「キャラクタ」を画像として表示することで、それぞれの「キャラクタ像」が意味する「キャラクタ」そのものをも表示しているといえるから、以下においては、特に「キャラクタ像」として特記すべき場合を除いて、「キャラクタ像により表示されるキャラクタ」を単に「キャラクタ」という。
一方、本願補正発明は、「複数行複数列にシンボルの表示窓を配列し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示窓の背後でそれぞれ移動表示」するものであり、「(シンボルの)表示窓」を「(シンボルの)表示部」と、「(シンボル列を)表示窓の背後で(移動表示)」することを、「(シンボル列を)表示部において(移動表示)」すると、それぞれ包括的に表現することができる。
そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、「複数行複数列にシンボルの表示部を配列し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示部においてそれぞれ移動表示」するものである点で共通しているといえる。

(ii) 上記(i)に記載したように、引用発明1は、「表示部」である「疑似リール6a?6i」において「キャラクタ(シンボル)列の移動表示」を行うものであるということができる。
そして同引用発明1において、「表示部」である「個々の疑似リール」において「キャラクタ(シンボル)列の移動表示」が「停止」すると、「CPU10」は「判定処理を実行して、ノーマル状態での当たり状態が生じたか否か」を「判定する」ものであり、「ノーマル状態での当たり状態」とは、「予め選択された入賞ライン上に所定のキャラクタ像が揃う状態のこと」(摘示1-e、1-g)であり、「予め選択された入賞ライン」は、その技術的意義に照らすと、本願補正発明における「予め設定された位置」に対応するものといえるとともに、「キャラクタ像」は複数種類存在することから、「キャラクタ像が揃う状態」も複数存在するものであり、上記した「判定」により、入賞の有無及び種類が決められるものといえる。
すなわち引用発明1は、「キャラクタ(シンボル)列の移動表示」が「停止」したときに、各「疑似リール」(「表示部」)に現れている「キャラクタ(シンボル)」を、「予め選択された入賞ライン」(「予め設定された位置」)ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる「ビデオスロットマシン」であり、「ビデオスロットマシン」は「遊技機」に包含されるものである。
一方、本願補正発明は、「シンボル列の移動表示が停止したときに各表示窓に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機」であり、「シンボル列の移動表示が停止したときに各表示部に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機」と包括的に表現することができる。
そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、「シンボル列の移動表示が停止したときに各表示部に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機」である点で共通しているといえる。

(iii) 上記(i)に記載したように、引用発明1は、「表示部」である「疑似リール6a?6i」において「キャラクタ(シンボル)列の移動表示」を行うものであり、「キャラクタ(シンボル)列」の各々には「キャラクタ(シンボル)」が配列されているということができる。
そして同引用発明1において、「キャラクタ(シンボル)列の移動表示」が「停止」すると、「CPU10」は「判定処理を実行」して、「表示部」である「疑似リール6a?6iの全てにフルーツのキャラクタ像が停止」して、「「ALL FRUITS」が完成したか否かを判定する」(摘示1-g)ものであり、当該「フルーツのキャラクタ像」が表す「キャラクタ(シンボル)」を「予め定めたシンボル」と表現することができる。
すなわち、引用発明1は、前記「表示部」において移動表示される各々の「キャラクタ(シンボル)列」が停止したときに、該「キャラクタ(シンボル))列」の各々に配列された「キャラクタ(シンボル)」のうちで「予め定めたシンボル」が前記「表示部」の全てに現れたか否かを「判定する」手段を備えている、ということができる。
一方、本願補正発明は、「前記表示窓の背後で移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたか否かを判定する手段」を備えており、上記(i)に記載したように、「表示窓」を「表示部」と、また、「表示窓の背後で移動表示される(各々のシンボル列)」を「表示部において移動表示される(各々のシンボル列)」と、それぞれ包括的に表現することができるとともに、「配列個数が多い所定の第一シンボル」を「予め定めたシンボル」と包括的に表現することができる。
そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、「前記表示部において移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたか否かを判定する手段」を備えている点で共通しているといえる。

(iv) 上記(iii)に記載したように、引用発明1は、「キャラクタ(シンボル)列の各々に配列されたキャラクタ(シンボル)のうちで予め定めたシンボルが表示部の全てに現れたか否かを判定する手段」を備えているといえる。
上記した「予め定めたシンボルが表示部の全てに現れた」ときとは、「ボーナスパターンに揃った」(摘示1-a)ときであり、「ボーナスパターンに揃った」ことに続いて開始される「ボーナスフロー」は、その技術的意義に照らすと、本願補正発明における「第一シンボル(予め定めたシンボル)が前記表示窓(表示部)の全てに現れたとき」に「開始」する「副ゲーム」に対応するものである。
そして引用発明1は、上記した「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)が開始されると「副リール」内の「疑似リール」の「スクロール回転」を開始し、引き続いて「スクロール回転」を行い、「所定時間後に停止させる」ものであり、「副リール」内の「疑似リール」の「スクロール回転」を開始する手段と、続いて「スクロール回転」を行う手段と、「副リール」内の「疑似リール」を「所定時間後に停止させる」手段を実質的に備えているということができ、これらの手段を「副ゲームを行う手段」と表現することができる。
すなわち、引用発明1は、「予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたとき、副ゲームを行う手段を備えた遊技機」であると表現することができる。
一方、本願補正発明は、「該第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたとき、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを開始する手段と、乱数を取得して入賞の種類と前記第一シンボル以外の1つのシンボルを決定し、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させて、決定された該シンボルで停止するように制御して該副ゲームを実行する手段と、
該副ゲームで該シンボルが停止した後、前記表示窓の全てで各シンボル列を再度移動表示させる手段と、
該副ゲームで決定された該第一シンボル以外の1つのシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う手段と、
を備えたことを特徴とする遊技機」であり、「副ゲーム」に関して本願補正発明が備える上記の各手段を包括して「副ゲームを行う手段」と表現することができ、本願補正発明を「予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたとき、副ゲームを行う手段を備えた遊技機」と包括的に表現することができる。
そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、「予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたとき、副ゲームを行う手段を備えた遊技機」である点で共通しているといえる。

以上の事項より、本願補正発明と引用発明1とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。
一致点;
複数行複数列にシンボルの表示部を配列し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示部においてそれぞれ移動表示し、シンボル列の移動表示が停止したときに各表示部に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機において、前記表示部において移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたか否かを判定する手段と、該予め定めたシンボルが前記表示部の全てに現れたとき、副ゲームを行う手段を備えた遊技機、である点。

相違点;
(A) 本願補正発明では、表示部がシンボルの表示窓であり、シンボル列を前記表示窓の背後でそれぞれ移動表示するものであるのに対して、引用発明1では、表示部が疑似リールであり、疑似リールをスクロール回転することでキャラクタ(シンボル)列をそれぞれ移動表示するものである点。

(B) 予め定めたシンボルが、本願補正発明では、シンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルであるのに対して、引用発明1では、全てがフルーツのキャラクタである「ALL FRUITS」である点。

(C) 副ゲームを行う手段が、
本願補正発明では、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを開始する手段と、乱数を取得して入賞の種類と前記第一シンボル以外の1つのシンボルを決定し、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させて、決定された該シンボルで停止するように制御して該副ゲームを実行する手段と、該副ゲームで該シンボルが停止した後、前記表示窓の全てで各シンボル列を再度移動表示させる手段と、該副ゲームで決定された該第一シンボル以外の1つのシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う手段より成るのに対して、
引用発明1では、副リール内の疑似リールのスクロール回転を開始する手段と、続いてスクロール回転を行う手段と、副リール内の疑似リールを所定時間後に停止させる手段より成るものである点。

(3)判断
上記の相違点について検討する。
相違点(A)について
複数行複数列にシンボルの表示窓を配列して表示部を構成し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示窓の背後でそれぞれ移動表示することは、下記に例示(周知例1ないし3)するように遊技機において周知慣用の技術手段であり、上記した周知慣用の技術手段を参酌し、引用発明1において、表示部である「疑似リール」を表示窓に変更するとともに、「疑似リール」を構成する「キャラクタ像」を、表示窓の背後で移動表示可能な、複数種類のキャラクタ(シンボル)を配列したキャラクタ(シンボル)列に変更して、相違点(A)に係る構成を得ることは、単なる設計の変更にすぎない。

相違点(B)について
引用発明1において、「疑似リール」に表示される「キャラクタ」は、「リンゴ、葡萄、バナナ等」の「フルーツ」と、「「3」、「7」等」の「数字」よりなるものである。
ここで、引用発明1における「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始する要件である、「ALL FRUITS」の「キャラクタ」が表示部の全てに現れたときとは、上記した個々の「フルーツ」の「キャラクタ」のいずれかが表示部に現れて「ALL FRUITS」であることを満たしたときであり、「ALL FRUITS」に係る「キャラクタ」の配列個数は、少なくとも単一種類の「フルーツ」に係る「キャラクタ」の配列個数に比して多いことが明らかであり、さらに、「数字を表すキャラクタ」を含む全ての「キャラクタ」の中でも、該「ALL FRUITS」に係る「キャラクタ」の配列個数は、他の単一種類の「キャラクタ」の配列個数に比して多いことがうかがわれるから、引用例1は、表示部の全てに現れる「キャラクタ」として、配列個数が多い「キャラクタ」を用いることを示唆するものである。
そうすると、引用発明1において、表示部の全てに現れて「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始させる「キャラクタ」として用いる「ALL FRUITS」に代えて、配列個数が多い所定の「キャラクタ」(すなわち、本願補正発明における、「第一シンボル」に対応するキャラクタ。)を用いることは、当業者が適宜に行う設計事項にすぎない。

相違点(C)について
引用発明2は、「周面に複数個の絵柄を有する複数個のリール」が「始動」した後、「停止ライン上」に「特定絵柄8(第7図(1))」が「停止」すると「特定絵柄検出手段」がこれを検出し、「特別ゲーム移行手段」が「特別ゲームへ移行」させて、「通常ゲーム」において用いたものと同じ「複数個のリール」を用いて「特別ゲーム」を行い、「全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リール1a,1b,1cを自動的に一斉停止させ」て、上記「特定絵柄8(第7図(1))」とは異なる「絵柄」の「組み合わせ」よりなる「第1当り(第7図(2))」を「停止ラインL上」に「成立させ」るスロットマシンである。

上記したように、引用発明2は、「特別ゲームへ移行」すると、「通常ゲーム」において用いたものと同じ「複数個のリール」を再度「始動させ」て、各々の表示窓の背後で「絵柄」(シンボル)を再度移動表示するものであり、「通常ゲーム」の結果を受けて行われる上記の「特別ゲーム」は、引用発明1において、「ALL FRUITS」の「キャラクタ」が表示部の全てに現れたことを受けて行われる「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)に対応するものということができる。
そうすると、引用発明1に、引用発明2が備える上記した「特別ゲーム」に関する技術事項を適用して、同引用発明1における「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を、「副リール内の疑似リール」に代えて、「主リール」内の「疑似リール6a?6i」において行うことは、当業者が適宜に想起することであり、引用発明1が「疑似リール6a?6i」を用いて「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始することにより、当該「疑似リール6a?6i」は、次のi)ないしiv)に示すような態様で「キャラクタ(シンボル)」を再度移動表示することとなる。

i) 引用発明2における「特別ゲーム」で、揃って停止する「第1当り(第7図(2))」に係る「絵柄」は、「特別ゲーム」を成立させた「特定絵柄8(第7図(1))」に係る「絵柄」とは異なる種類の「絵柄」であることから、「特別ゲーム」に関する当該技術事項を引用発明1に適用すると、同引用発明1の「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)において、揃って停止する「キャラクタ」は、「ボーナスパターン」を成立させた、「ALL FRUITS」の「キャラクタ」とは異なる種類の「キャラクタ」となり、「ALL FRUITS」以外のいずれか1つの「キャラクタ」が、表示部である「疑似リール6a?6i」の全てに現れるように停止制御することとなる。
さらに、「相違点(B)について」に記載したように、引用例1は、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」として配列個数が多い「キャラクタ」(すなわち、本願補正発明における「第一シンボル」に対応するキャラクタ。)を用いることを示唆するものであるから、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」が表示部である「疑似リール6a?6i」の全てに現れたときに開始する「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)において、停止制御される「キャラクタ(シンボル)」は、「ボーナスパターン」を成立させた上記「キャラクタ(シンボル)」よりも配列個数の少ない別異の「キャラクタ(シンボル)」であり、複数種類の「キャラクタ(シンボル)」の中からいずれか1つが決定されるものといえる。
そうすると、引用発明1は、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」が表示部である「疑似リール6a?6i」の全てに現れたとき、該「キャラクタ(シンボル)」よりも配列個数の少ない複数種類の「キャラクタ(シンボル)」のいずれか1つを決定して「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始するものであるということができ、同引用発明1は、上記した「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始する手段を実質的に備えているということができる。

ii) 引用発明1における「キャラクタ(シンボル)」の停止制御は、「乱数発生部から出力される乱数値に基づいた乱数値制御に従った」(摘示1-e)ものであり、上記i)に記載した、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を開始するに際して決定する、停止制御の対象となる「キャラクタ(シンボル)」も、乱数の取得により決定され、同時に入賞の種類も決定されることとなる。
ところで、引用発明2における「特別ゲーム」は、「全リール1a,1b,1cを自動的に一斉始動させた後、一定時間経過後に全リール1a,1b,1cを自動的に一斉停止させ」ることにより行うものであり、引用発明1に引用発明2が備える上記した技術事項を適用すると、引用発明1における「疑似リール6a?6i」は、全てが「一斉始動」し、その後「一斉停止」するように制御されることとなる。
しかしながら、遊技機において、複数種類の図柄を配列したシンボル列を移動表示するリールの停止制御は、上記した「一斉停止」に限られるものではなく、可変表示における停止制御に見られるように、各リールの停止時期に時間差をもたせて停止制御を行うことの方がむしろ一般的であり、全てのリールの図柄を最終的に同一の図柄に揃えて停止させる入賞図柄の停止制御においても、全てのリールの図柄を同一の図柄に揃えて一斉停止させるよりは、各リールの停止時期に時間差をもたせて停止させるように制御を行う方が通常の技術常識に適ったことであるといえる。そして、引用発明1の「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)において、「疑似リール6a?6i」を「スクロール回転」して、乱数の取得により決定された上記「キャラクタ(シンボル)」を停止制御する際にも、当業者であれば、各「疑似リール6a?6i」の「スクロール回転」の停止時期に時間差をもたせるような停止制御を行うものである。
さらに引用例1には、「キャラクタ像」の停止の態様として、「真ん中の疑似リール6eに特定のキャラクタ像が停止したときをもって、ボーナスパターンが完成したものと判定することも可能」(摘示1-h)として、1つの「キャラクタ像」が停止したときをもって、ゲームの結果を表すという技術事項が併せて開示されている。
以上を総合すると、引用発明1において、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)における「キャラクタ(シンボル)列」の再度の移動表示に時間差をもたせて、表示部である「疑似リール6a?6i」のいずれか1個において「キャラクタ(シンボル)列」を移動表示させて、決定された「キャラクタ(シンボル)」で停止するよう制御することは、単なる設計事項にすぎない。
そうすると、引用発明1は、乱数を取得して、入賞の種類と、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」以外の1つの「キャラクタ(シンボル)」を決定し、表示部である「疑似リール6a?6i」のいずれか1個において「キャラクタ(シンボル)列」を移動表示させて、決定された該「キャラクタ(シンボル)」で停止するように制御して「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を実行することとなり、同引用発明は、上記した、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)を実行する手段を実質的に備えることとなる。

iii) 上記ii)に記載したように、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)における「キャラクタ(シンボル)列」の再度の移動表示に時間差をもたせて、「疑似リール6a?6i」のいずれか1個において「キャラクタ(シンボル)列」を移動表示させて、決定された「キャラクタ(シンボル)」で停止するよう制御することは単なる設計事項にすぎず、「キャラクタ(シンボル)列」の再度の移動表示に時間差をもたせることによって、引用発明1は、上記の「キャラクタ(シンボル)」が停止した後、表示部である「疑似リール6a?6i」の全てで各「キャラクタ(シンボル)列」を再度移動表示させることとなる。
そうすると、引用発明1は、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)で「キャラクタ(シンボル)」が停止した後、表示部である「疑似リール6a?6i」の全てで各「キャラクタ(シンボル)列」を再度移動表示させることとなり、同引用発明は、上記した、各「キャラクタ(シンボル)列」を再度移動表示させる手段を実質的に備えることとなる。

iv) 上記iii)に記載したように、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)における「キャラクタ(シンボル)列」の再度の移動表示に時間差をもたせて、1つの「キャラクタ(シンボル)」が停止した後、「疑似リール6a?6i」の全てで各「キャラクタ(シンボル)列」を再度移動表示させるよう制御することは単なる設計事項にすぎず、「キャラクタ(シンボル)列」が再度移動表示されたとき、上記した1つの「キャラクタ(シンボル)」が表示部である全ての「疑似リール6a?6i」で一斉に現れるように、「キャラクタ(シンボル)列」を停止制御することとなる。
ところで、「キャラクタ(シンボル)列」の再度の移動表示に時間差をもたせることによって、はじめに停止する上記した1つの「キャラクタ(シンボル)」は、上記ii)に記載した、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)で決定された、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」以外の1つの「キャラクタ(シンボル)」であり、本願補正発明における「第一シンボル以外の1つのシンボル」に対応するものである。
そうすると、引用発明1は、「ボーナスフロー」(「副ゲーム」)で決定された、「ボーナスパターン」を成立させた「キャラクタ(シンボル)」以外の1つの「キャラクタ(シンボル)」が表示部である全ての「疑似リール6a?6i」で一斉に現れるように「キャラクタ(シンボル)列」の停止制御を行うこととなり、同引用発明は、上記した、「キャラクタ(シンボル)列」の停止制御を行う手段を実質的に備えることとなる。

以上のとおり、引用発明1は、「キャラクタ(シンボル)」の移動表示を実行するための上記したi)ないしiv)に示す各手段を実質的に備えることとなり、当該各手段は、実質上、本願補正発明が備える「副ゲーム」を行う各手段にそれぞれ対応するものとなって、相違点(C)に係る構成が得られることとなる。

そして、相違点(A)ないし(C)に係る発明特定事項を備えた本願補正発明の効果も、引用発明1並びに、引用発明2及び周知技術が本来奏する効果から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明1並びに、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

【周知例】
周知例1:特開平1-209089号公報
リール機構を構成する各リール1a?1iに対応して、スロットマシン本体の正面パネル3に表示窓4a?4iを形成したスロットマシンのリール機構。(第2頁右下欄第12-16行、第3頁左上欄第16行-右上欄第9行、第1図、第2図)

周知例2:特開平6-39085号公報
表示パネル4に、3行3列のマトリクス状に配置された、計9個のリール表示窓5a?5iを形成するとともに、表示窓5a?5iを通して第1?第9リール17a?17iを観察可能としたスロットマシン。(段落【0007】【0008】、図1、図2、図3)

周知例3:特開平8-10383号公報 ゲーム機本体2の正面パネルに、同一サイズの開口3を3行3列にマトリクス状に配列したシンボル表示窓5が設けられ、各々の開口3の奥には、外周に複数個複数種類のシンボルを配列した9個のリール34a?34iを設けたスロットマシン。(段落【0009】【0015】、図1)

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年11月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年8月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数行複数列にシンボルの表示窓を配列し、複数種類のシンボルを配列したシンボル列を前記表示窓の背後でそれぞれ移動表示し、シンボル列の移動表示が停止したときに各表示窓に現れているシンボルを予め設定された位置ごとに組み合わせて入賞の有無及び種類が決められる遊技機において、
前記シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたことに応答し、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させることによって行い、該副ゲームでシンボルを決定した後に前記各シンボル列を再度移動表示させ、該副ゲームで決定されたシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行うことを特徴とする遊技機。」

(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における、「前記表示窓の背後で移動表示される各々のシンボル列が停止したときに、該シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたか否かを判定する手段と」を「前記シンボル列の各々に配列されたシンボルのうちで配列個数が多い所定の第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたことに応答し」とより広義な概念で特定し、同様に、「該第一シンボルが前記表示窓の全てに現れたとき、前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを開始する手段と」を「前記第一シンボルよりも配列個数の少ない複数種類のシンボルのいずれか1つを決定する副ゲームを」と、「乱数を取得して入賞の種類と前記第一シンボル以外の1つのシンボルを決定し、該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させて、決定された該シンボルで停止するように制御して該副ゲームを実行する手段と」を「該表示窓のいずれか1個の背後でシンボル列を移動表示させることによって行い」と、「該副ゲームで該シンボルが停止した後、前記表示窓の全てで各シンボル列を再度移動表示させる手段と」を「該副ゲームでシンボルを決定した後に前記各シンボル列を再度移動表示させ」と、「該副ゲームで決定された該第一シンボル以外の1つのシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う手段と、」を「該副ゲームで決定されたシンボルが該全ての表示窓で一斉に現れるようにシンボル列の停止制御を行う」と、「を備えたことを特徴とする遊技機」を「ことを特徴とする遊技機」と、それぞれ、より広義な概念で特定するものである。
そうすると、本願補正発明における発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明1並びに、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、限定事項を省いてより広義な概念で特定される本願発明も、引用発明1並びに、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1並びに、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本願の他の請求項について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-03 
結審通知日 2007-10-09 
審決日 2007-11-01 
出願番号 特願平8-156678
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 渡部 葉子
土屋 保光
発明の名称 遊技機  
代理人 江間 路子  
代理人 飯田 昭夫  

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