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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1169875
審判番号 不服2004-25512  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-14 
確定日 2007-12-21 
事件の表示 平成11年特許願第248079号「発光素子及び投写型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 3日出願公開、特開2000- 66205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年5月9日に国際特許出願した特願平9-540724号の一部を平成11年9月1日に新たな特許出願としたものであって、平成16年6月21日付けで拒絶理由が通知され、平成16年8月20日付けで手続補正書が提出されたが、平成16年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年12月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成17年1月13日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成19年7月9日付けで、平成17年1月13日付けの手続補正の却下がなされると共に、同日付けで拒絶理由が通知され、平成19年9月10日付けで手続補正書が提出された。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲請求項1乃至8に係る発明は、平成16年5月10日付け及び平成19年9月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1乃至8に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「有機分子を備えた有機薄膜層と、
反射電極層と、
当該反射電極層との間で前記有機薄膜層を挟持する透明電極層と、が基板に設けられ、
前記反射電極層と前記透明電極層との間の電界に応じて発光し、前記透明電極層を透過した光のうち、右回り円偏光及び左回り円偏光のうち一方の円偏光成分を反射し、かつ、他方の円偏光成分を透過させる偏光選択反射機能素子と、
を備え、
前記透明電極層は、前記有機薄膜層と前記偏光選択反射機能素子との間に配置されることを特徴とする発光素子。」

3.引用例
平成19年7月9日付けの拒絶理由通知に引用された特開平7-36032号公報(以下、「引用例1」という。)、及び同じく特開平7-142171号公報(以下、「引用例2」という。)にはそれぞれ、以下の事項が記載されている。

a.引用例1;
ア.【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、TN(Twisted Nematic),STN(Super Twisted Nematic),FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)等の液晶表示装置のように、偏光を利用して明暗を表示する直視型液晶表示装置用のバックライト光源に関する。」

イ.【0006】
「そこで、プレーナ配向したコレステリック液晶層(以下、CH液晶層という)と、円偏光の回転方向を逆にする反射板とを使用し、発光体からの発光光を有効に利用して高効率化を図るバックライト光源が提案されている(特開平3-45906号公報参照)。このバックライト光源は、図6に示すように、CH液晶層40と、反射板30と、両者の間に配置された発光体10と、λ/4の位相差を有する位相差板(1/4波長板)50とから構成されている。CH液晶層40は、コレステリック(液晶分子)が螺旋状に配列した構造を有するため、液晶分子の螺旋ピッチに対応する波長で選択反射を示す。従って、液晶を適切に選択することにより、選択反射波長域において、CH液晶層40を円偏光フィルタとして機能させることができる。すなわち、右円偏光又は左円偏光を反射し、それと反対の回転方向の円偏光を透過するものである。円偏光が反射されるときの回転の方向は、液晶分子の螺旋の回転方向によって決まる。【0007】
上記バックライト光源において、CH液晶層40が右円偏光を透過し、左円偏光を反射する場合、発光体10を発した光100のうち右円偏光成分101はCH液晶層40を透過し、左円偏向成分102は反射する。発光体10は非偏光光源であるため、右円偏光成分101と左円偏光成分102との強度比は1:1である。CH液晶層40で反射された左円偏光成分102は、反射後も偏光状態を変えず左円偏である。この左円偏光は、その後、反射板30で反射するが、反射の際に偏光の回転方向が逆となるので、反射光103は右円偏光104となるため、CH液晶層40を透過可能となる。すなわち、発光体10を発した全ての光は、CH液晶層40を透過後右円偏光に揃えられる。この透過光を1/4波長板50により直線偏光105に変換することにより、従来、偏光子60で吸収されて無駄になっていた発光光の50%の光を有効に利用することができる。」

ウ.【0018】
「発光体10には蛍光管,LED,ハロゲンランプ等が使用できるが、白色光を発光し、小型、高発光効率、低発熱という点から蛍光管が適している。」

前記ア.?ウ.の記載事項からして、引用例1には、「液晶を適切に選択することにより、選択反射波長域において、右円偏光又は左円偏光を反射し、それと反対の回転方向の円偏光を透過して円偏光フィルタとして機能するプレーナ配向したコレステリック液晶層(CH液晶層)40と、円偏光の回転方向を逆にする反射板30と、両者の間に配置された蛍光管,LED,ハロゲンランプ等の発光体10と、λ/4の位相差を有する位相差板(1/4波長板)50とから構成されている、発光光を有効に利用できるバックライト光源。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

b.引用例2;
エ.【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は発光デバイスにかかわり、とくに情報通信分野用の光論理デバイス、表示素子、通信用発光デバイス、情報ファイルの読み/書き用ヘッド、印刷装置、センサなどに好適な可変波長化したエレクトロルミネッセンス(以下ELと略称する)素子に関する。」

オ.【0002】
「【従来の技術】ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス誌、vol.27,NO.2(1988)pp.L269-L271には、有機蛍光体薄膜の各蛍光体の分子式に応じた発光スペクトルが得られることが開示されている。図2は上記有機蛍光体薄膜を用いた一般的な有機発光素子の断面図である。硝子基板101上に透明導電膜103、ジアミン誘導体(TAD)のホール注入層104、発光層105、金属電極106を順次形成する。」

カ.【0003】
「透明導電膜103と金属電極106を互いに直交するマトリクス状に形成し、透明導電膜103bをプラス、金属電極106をマイナスとして5?20Vの直流電圧を印加すると、両者の交差部分が発光し、光が硝子基板101側から出射するようになっている(「にっている」は誤記と認める。)。この発光部部分を画素と呼ぶ。この発光スペクトルは発光物質の種類により決定される。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の対象である「バックライト光源」は、本願発明の対象である「発光素子」に相当する。
(b)引用発明の「液晶を適切に選択することにより、選択反射波長域において、右円偏光又は左円偏光を反射し、それと反対の回転方向の円偏光を透過して円偏光フィルタとして機能するプレーナ配向したコレステリック液晶層(CH液晶層)40と、λ/4の位相差を有する位相差板(1/4波長板)50とを備えたもの」は、本願発明の「右回り円偏光及び左回り円偏光のうち一方の円偏光成分を反射し、かつ、他方の円偏光成分を透過させる偏光選択反射機能素子」に相当する。
(c)本願発明の「反射電極層」と引用発明の「反射板30」とは、円偏光の回転を逆にする光反射作用を有する点で技術的に共通するものであるから、前記偏光選択反射機能素子に入射する光を発光させる発光部材は、本願発明が、「有機分子を備えた有機薄膜層と、反射電極層と、当該反射電極層との間で前記有機薄膜層を挟持する透明電極層と、が基板に設けられ、前記有機薄膜層は前記反射電極層と前記透明電極層との間の電界に応じて発光するもの」であるのに対して、引用発明では、「円偏光の回転方向を逆にする反射板30と蛍光管,LED,ハロゲンランプ等の発光体10」がこれに対応するといえる。

前記(a)?(c)の記載事項からして、両者は、
「後述する偏光選択反射機能素子に入射する光を発光させる発光部材と、入射した右回り円偏光及び左回り円偏光のうち一方の円偏光成分を反射し、かつ、他方の円偏光成分を透過させる偏光選択反射機能素子と、を備えた発光素子。」である点で一致し、以下の相違点(1)、(2)が存在する。

相違点(1)
偏光選択反射機能素子に入射する光を発光させる発光部材が、本願発明は、有機分子を備えた有機薄膜層と、反射電極層と、当該反射電極層との間で前記有機薄膜層を挟持する透明電極層と、が基板に設けられ、前記有機薄膜層は前記反射電極層と前記透明電極層との間の電界に応じて発光するものであるのに対して、引用発明は、円偏光の回転方向を逆にする反射板30と蛍光管,LED,ハロゲンランプ等の発光体10とからなる点。

相違点(2)
本願発明は、透明電極層が、前記有機薄膜層と前記偏光選択反射機能素子との間に配置されるのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

5.当審の判断
前記相違点(1)、(2)について検討する。

相違点(1)について;
引用例2には、硝子基板101上に透明導電膜103、ジアミン誘導体(TAD)のホール注入層104、有機蛍光体発光層105、金属電極106を順次形成する有機発光素子、が記載されている(記載事項オ.)。
引用例2の「透明導電膜103」、「硝子基板101」は、本願発明の「透明電極層」、「基板」に相当し、また、引用例2では、光が硝子基板101側から出射するのであるから(記載事項カ.)、引用例2の「金属電極106」は、光反射機能を有するもので、本願発明の「反射電極層」に相当する。
引用例2の「有機蛍光体発光層105」は、金属電極106(反射電極層)と透明導電膜103(透明電極層)との間の電界に応じて発光するものであるから、本願発明の「有機分子を備えた有機薄膜層で、反射電極層と透明電極層との間の電界に応じて発光するもの」に相当する。

してみれば、引用例2には、発光部材として、本願発明にいう「有機分子を備えた有機薄膜層と、反射電極層と、当該反射電極層との間で前記有機薄膜層を挟持する透明電極層と、が基板に設けられ、前記有機薄膜層は前記反射電極層と前記透明電極層との間の電界に応じて発光するもの」が、記載されているといえる。

上述の引用例2の発光部材と、引用発明の「円偏光の回転方向を逆にする反射板30と蛍光管,LED,ハロゲンランプ等の発光体10とからなるもの」とは、発光部材の点で一致しているので、引用発明の「円偏光の回転方向を逆にする反射板30と蛍光管,LED,ハロゲンランプ等の発光体10とからなるもの」に換えて、「有機分子を備えた有機薄膜層と、反射電極層と、当該反射電極層との間で前記有機薄膜層を挟持する透明電極層と、が基板に設けられ、前記有機薄膜層は前記反射電極層と前記透明電極層との間の電界に応じて発光するもの」とすることは、引用例2の記載事項を基に当業者が容易になし得ることである。

相違点(2)について;
引用発明の「偏光選択反射機能素子に入射する光を発光させる発光部材」として、引用例2に記載のものに換えて使用することは、「相違点(1)について」の項で述べたように、当業者が容易になし得ることであり、該発光部材として引用例2に記載のものを採用した場合には、透明電極層は、当然、前記有機薄膜層と前記偏光選択反射機能素子との間に配置されることとなる。

そして、本願発明の作用・効果も、引用発明及び引用例2に記載された発明から予測される範囲内のもので、格別のものではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-23 
結審通知日 2007-10-24 
審決日 2007-11-09 
出願番号 特願平11-248079
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 昌士  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 安田 明央
森内 正明
発明の名称 発光素子及び投写型液晶表示装置  
代理人 大賀 眞司  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 田中 克郎  

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