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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1169881
審判番号 不服2005-14536  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-28 
確定日 2007-12-21 
事件の表示 平成11年特許願第231269号「基準補正値と相対補正値とを用いた双方向印刷時の記録位置ズレの調整」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月24日出願公開、特開2000-296609〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月18日(優先権主張:平成11年2月10日)に出願したものであって、平成17年6月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月25日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】?【請求項19】(記載を省略)
【請求項20】 印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドを備えた印刷装置を用いて、主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
(a)特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための前記印刷装置のユーザによって決定された基準補正値を設定する工程と、
(b)少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程と、
(c)前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程と、を備え、
前記工程(b)は、前記基準補正値を補正するために前記印刷装置の出荷前に予め設定されて前記印刷装置内のメモリに格納された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を備えることを特徴とする双方向印刷方法。
【請求項21】 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項22】 請求項21記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項23】 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項24】 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項25】 請求項21または22記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項26】 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項27】 請求項26記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項28】 請求項26または27記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項29】 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項30】 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項31】 請求項28記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項32】 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
前記工程(b)は、さらに、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を含む、双方向印刷方法。
【請求項33】 請求項32記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項34】 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項35】 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項36】 請求項20ないし33のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項37】(記載を省略)」
から
「 【請求項1】?【請求項18】(記載を省略)
【請求項19】 印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドを備えた印刷装置を用いて、主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
(a)特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための前記印刷装置のユーザによって決定された基準補正値を設定する工程と、
(b)少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程と、
(c)前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程と、を備え、
前記工程(b)は、前記基準補正値を補正するために前記印刷装置の出荷前に予め設定されて前記印刷装置内のメモリに格納された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードと、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードとのうちから選択された調整モードに従って前記調整値を決定する工程を備えることを特徴とする双方向印刷方法。
【請求項20】 請求項19記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項21】 請求項20記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項22】 請求項20または21記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項23】 請求項20または21記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項24】 請求項20または21記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項25】 請求項19記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項26】 請求項25記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項27】 請求項25または26記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項28】 請求項27記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項29】 請求項27記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項30】 請求項27記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項31】 請求項19記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項32】 請求項19ないし31のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項33】 請求項19ないし31のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項34】 請求項19ないし31のいずれかに記載の双方向印刷方法であって、
・・・中略・・・、双方向印刷方法。
【請求項35】(記載を省略)」
と補正された。

(2)補正目的についての検討
「双方向印刷方法」に関する発明は、補正前には、請求項20?36、補正後には、請求項19?34に係る発明のみである。平成17年8月25日付け審判請求書についての手続補正書第1頁下から第4?3行に「補正後の請求項19は、元の請求項(20+32)に相当しています。
元の請求項32は削除し、元の請求項33?36の請求項番号を順次繰り上げました。」との記載があり、補正前請求項20?31、33?36が補正後請求項19?30、31?34に形式上対応しているものと認められるが、補正前請求項32の記載は、「請求項20記載の双方向印刷方法であって、
前記工程(b)は、さらに、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を含む、双方向印刷方法。」であって、第2の調整モードに従って調整値を決定する工程がさらに付け加わっているのに対し、補正後請求項19の記載は、「・・・ 前記工程(b)は、前記基準補正値を補正するために前記印刷装置の出荷前に予め設定されて前記印刷装置内のメモリに格納された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードと、前記基準補正値を前記調整値としてそのまま使用する第2の調整モードとのうちから選択された調整モードに従って前記調整値を決定する工程を備えることを特徴とする双方向印刷方法。」であって、第1の調整モードに加え、第2の調整モードが選択肢として付け加わったものであるから、補正後請求項19が補正前請求項20に補正前請求項32を加えたものに相当するとは到底いえない。
そこで、補正後請求項19が補正前請求項20を限定的に減縮したものであるか否か検討すると、補正前請求項20には、調整値を決定する工程に調整モードを選択することが記載されていなかったのにもかかわらず、補正後請求項19には、調整値を決定する工程に調整モードを選択することを加え、更に第2の調整モードを選択肢として加えており、その結果、第1の調整モードに従って調整値を決定する工程を含まない双方向印刷方法が含まれることとなり、補正後請求項19についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは到底いえない。
更に、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)ともいえず、請求項の削除でも誤記の訂正でもないことは明らかであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的としておらず、該規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項20に係る発明は、平成16年6月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項20に記載された事項により特定されるものであり、その請求項20に係る発明(以下、「本願発明」という。)を再掲すると、以下のとおりである。

「印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドを備えた印刷装置を用いて、主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
(a)特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための前記印刷装置のユーザによって決定された基準補正値を設定する工程と、
(b)少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程と、
(c)前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程と、を備え、
前記工程(b)は、前記基準補正値を補正するために前記印刷装置の出荷前に予め設定されて前記印刷装置内のメモリに格納された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードに従って前記調整値を決定する工程を備えることを特徴とする双方向印刷方法。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された特開平7-81190号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【0065】また、本実施例で用いるインクジェットはカラーヘッドも両方向印字を行うものとし、以下の要領でユーザーは各色間のドットズレ補正と、各色毎の両方向印字時のドットズレ補正の両方を行うものとする。図12にこれら補正行程のフローチャートを示した。
【0066】ユーザーがレジ調整モードを指定すると、本体はまず各色ドットズレ補正モードに入る。
【0067】ユーザーがLEDの点灯状態などで補正モードに入っていることを確認し、スタートSWを押すことにより、本体は4色ヘッドを用いて各色ドットズレ補正パターンの印字を開始する。この時に出力されるサンプルは、図3に示したパターンを図5の様に配列させたものであるが、ブラックとシアン、ブラックとマゼンタ、ブラックとイエローの3つの組み合わせについてパターンを印字するものとする。また、この場合においても吐出タイミングは10μm毎に15段階に変化させ、図5と同様にそれぞれに応じたLEDモデルも同時に印字する。
【0068】出力されたサンプルから、3色それぞれについて最もブラックに近いパターンをユーザーが選択し、まずシアンについて選択した位置のLED状態を設定し、記憶SWでシアン往方向の吐出タイミングを記憶させる。
【0069】同様に、マゼンタ、イエローについての入力、記憶操作を行う。
【0070】イエローのドット位置補正の記憶が完了した段階で、本体は両方向ドット位置補正モードに入る。ユーザーがサンプルの印字が再び可能なことを確認し、スタートSWを押す。これにより、両方向ドット位置補正用パターンの印字が4色ヘッドを用いて開始される。ここで印字されるパターンは図2に示したものであり、吐出タイミングはやはり10μm毎に15段階に変化させ、それぞれに応じたLEDモデルも同時に印字する。
【0071】ユーザーは、各色について最も良好な一様性をもつパターンを選び、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順にLEDを用いて補正値を入力する。
【0072】最後のイエロー補正値の記憶が終了した段階で、ドット位置補正モードは全て終了し、本体は通常の印字モードに戻る。
イ.【0073】本実施例では、まず片方行印字において各色をブラックヘッドの吐出タイミングに合わせ、その後、各色毎に復路方向の吐出タイミングを往路方向の吐出タイミングに合わせている。従って、各色の往路印字、復路印字が全て独立に補正可能であるような構成を予め持っている必要がある。
【0074】しかしこの様な構成を持っていなくとも、各色をブラックに合わせて補正した後は、ブラックのみ両方向ドット位置補正することで、各色もブラックと同じだけの補正がかかるような構成を持っていれば、カラー両方向印字のドットズレは十分に補正できるであろう。
ウ.【0075】以上説明してきたように、本実施例によれば図3に示すようなパターンを、4回の片方向走査で分割記録する際に、吐出タイミングを段階的に変化させた複数のパターンを形成することによって、その一様性から各色ヘッドの吐出タイミングの適正値を判断し、本体に入力することによって、両方向印字時の着弾位置ズレを高精度に補正することが可能となる。
【0076】なお、以上はユーザー自身が補正する場合として説明してきたが、本体出荷時にこれらの補正を行い、ここでの補正値をユーザーレジ調整パターンの中心値としておけば、その後の調整幅を予め絞っておくことが出来る。実際にこれらのドットズレが起こる要因は、先にも説明したように記録装置本体に固有なものが多いのであるから、この様な絶対的な補正は着荷時前に行っておく方が好ましい。
エ.【図12】には、各色ドット位置補正モードで、シアン、マゼンタ、イエローの適正値を入力し、両方向ドット位置補正モードでブラック、シアン、マゼンタ、イエローの適正値を入力することが記載されている。

上記刊行物は、「インクテストプリント方法及びインクジェット記録装置」に関するものであるが、上記ア.の段落【0065】に両方向印字を行うインクジェットが記載されており、印刷画像信号に応じて印刷媒体上に画像を印刷することは技術常識であるから、インクテストプリントを行い、ドットズレ補正を行った後、印刷画像信号に応じて印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法を認識できる。よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「カラーヘッドを備えたインクジェットを用いて、印刷画像信号に応じて印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
ユーザーは、ブラックとシアン、ブラックとマゼンタ、ブラックとイエローの3つの組み合わせについてドットズレ補正パターンを印字し、ブラックドットに対するシアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正の記憶操作をし、
ユーザーは、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの両方向ドット位置補正用パターンを印字し、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの両方向ドット位置補正用補正値を入力し、
その後、印字モードに戻る双方向印刷方法。」

(2)対比・判断
本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「カラーヘッド」及び「インクジェット」は、それぞれ本願発明の「印刷ヘッド」及び「印刷装置」に相当する。
刊行物記載の発明のインクジェットのカラーヘッドは、印刷媒体上の各画素位置にドットを記録するものであり、双方向印刷方法を行うのは通常いわゆるシリアル型の印刷装置であって、主走査を往復で双方向に行いつつ、画像を印刷することは明らかである。
刊行物記載の発明の往方向のドット位置補正は、ブラックに対するものであるから、ブラックドットを特定の基準ドットと称することができ、ブラックの両方向ドット位置補正用補正値は、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するためのものであるから、ブラックの両方向ドット位置補正用補正値を基準補正値と称することができる。また、刊行物記載の発明は、ユーザーがブラックの両方向ドット位置補正用補正値を入力しているから、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための印刷装置のユーザによって決定された基準補正値を設定する工程を有しているものといえる。
刊行物記載の発明の往方向のドット位置補正の記憶操作では、往方向のドット位置補正値が入力されることは明らかであり、刊行物記載の発明のインクジェットは、入力された往方向のドット位置補正値と両方向ドット位置補正用補正値とを用いて、色ズレ及び往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させることは明らかであるから、少なくとも基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程を有しているものといえる。
刊行物記載の発明のインクジェットは、印字モードに戻った際に、前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整することは明らかであるから、調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程を有しているといえる。
よって、両者は、
「印刷媒体上の各画素位置にドットを記録する印刷ヘッドを備えた印刷装置を用いて、主走査を往復で双方向に行いつつ、印刷画像信号に応じて前記印刷媒体上に画像を印刷する双方向印刷方法であって、
(a)特定の基準ドットに関して、往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを補正するための前記印刷装置のユーザによって決定された基準補正値を設定する工程と、
(b)少なくとも前記基準補正値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置のズレを減少させるための調整値を決定する工程と、
(c)前記調整値を用いて往路と復路における主走査方向の記録位置を調整する工程と、を備える双方向印刷方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]工程(b)に関し、本願発明は、基準補正値を補正するために印刷装置の出荷前に予め設定されて前記印刷装置内のメモリに格納された相対補正値で前記基準補正値を補正する第1の調整モードに従って調整値を決定するのに対し、刊行物記載の発明は、そのような特定がない点。

上記相違点に関して検討する。
刊行物記載の発明のシアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正は、ブラックドットの往方向の位置に対する補正であり、それぞれの往方向のドット位置補正値がインクジェット(本願発明の「印刷装置」)内のメモリに格納されることは明らかである。
刊行物の上記イ.段落【0074】に「しかしこの様な構成を持っていなくとも、各色をブラックに合わせて補正した後は、ブラックのみ両方向ドット位置補正することで、各色もブラックと同じだけの補正がかかるような構成を持っていれば、カラー両方向印字のドットズレは十分に補正できる」と記載され、「各色をブラックに合わせて補正」する時に使用する補正値は、シアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値であり、その補正後の「ブラックのみ両方向ドット位置補正する」とは、シアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値にブラックの両方向ドット位置補正用補正値(本願発明の「基準補正値」)を補正、即ち、ブラックの両方向ドット位置補正用補正値を基にすれば、シアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値は、ブラックの両方向ドット位置補正用補正値を補正しているものであるから、シアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値は、本願発明の「相対補正値」に相当する。
また、刊行物の上記ウ.段落【0076】の「以上はユーザー自身が補正する場合として説明してきたが、本体出荷時にこれらの補正を行い」との記載から、インクジェット本体出荷前に前記補正値を予め設定してインクジェット本体内のメモリに格納することが示唆されており、色調整において、補正値をたくさん入力するのは手間がかかり、簡単な入力で調整ができるようにすることは、当然の要求であり、各色のドット位置は、各色インクの粘性等インク自体の性質に負うところが大きく、通常、使用されるインクは決まっているから、シアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値を出荷前に予め設定してメモリに格納することは当業者が容易になし得る程度のことである。そして、出荷前に予め設定されてメモリに格納されたシアン、マゼンタ、イエローの往方向のドット位置補正値でブラックの両方向ドット位置補正用補正値を補正する態様を第1の調整モードと称することに何の困難性もないから、本願発明の上記相違点のようなものとすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-12 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-05 
出願番号 特願平11-231269
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男小松 徹三  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 尾崎 俊彦
菅藤 政明
発明の名称 基準補正値と相対補正値とを用いた双方向印刷時の記録位置ズレの調整  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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