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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 D06N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06N
管理番号 1169964
審判番号 不服2004-22057  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-26 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 特願2001-264736「形状保持性布帛」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月12日出願公開、特開2003-73982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成13年8月31日の出願であって、平成15年6月26日付けで拒絶理由通知書がされ同年8月29日付けで意見書が提出されたが平成16年9月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月26日に拒絶査定に対する審判請求がされると共に同日付けで手続補正がされ、更に審尋に対して平成19年6月13日に回答書が提出されたものである。

2.平成16年10月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成16年10月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の明細書の特許請求の範囲(出願当初のものである。)の
「【請求項1】 合成繊維を含み、防シワ性が60%以下である形状保持性布帛。
【請求項2】 防シワ性が40%以下である形状保持性布帛。
【請求項3】 繊維布帛の少なくとも片面に金属層を含む、請求項1または2記載の形状保持性布帛。
【請求項4】 金属層が金属箔を含む、請求項3記載の形状保持性布帛。
【請求項5】 金属箔が金、銀、錫、アルミニウムおよび鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4記載の形状保持性布帛。
【請求項6】 金属層が2枚の繊維布帛の間に挟持されている、請求項3?5のいずれかに記載の形状保持性布帛。
【請求項7】 少なくとも1の繊維布帛の可視光線透過率が10%以上である、請求項3?6のいずれかに記載の形状保持性布帛。」

「【請求項1】 繊維布帛の少なくとも片面に金属層を含み、少なくとも1の繊維布帛の可視光線透過率が10%以上である形状保持性布帛。
【請求項2】 金属層が金属箔を含む、請求項1記載の形状保持性布帛。
【請求項3】 金属箔が金、銀、錫、アルミニウムおよび鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2記載の形状保持性布帛。
【請求項4】 金属層が2枚の繊維布帛の間に挟持されている、請求項1?3のいずれかに記載の形状保持性布帛。
【請求項5】 合成繊維を含み、防シワ性が60%以下である、請求項1?4のいずれかに記載の形状保持性布帛。
【請求項6】 防シワ性が40%以下である、請求項1?4のいずれかに記載の形状保持性布帛。」
と補正するものである。
(2)補正の適否
補正後の請求項1は、補正前の請求項3の発明特定事項「繊維布帛の少なくとも片面に金属層を含む」と補正前の請求項7の発明特定事項「少なくとも1の繊維布帛の可視光線透過率が10%以上である」を発明特定事項とする「形状保持性布帛」の発明である。他方、補正前の請求項3?7は、防皺性の程度の規定がされている補正前の請求項1及び、又は補正前の請求項2を引用するものであるから、補正前の請求項1?7はいずれも防皺性の程度が規定されていた「形状保持性布帛」であるところ、補正後の請求項1は、それらの規定を含むものではない。してみると、補正後の請求項1は、補正前の請求項1?7いずれについても少なくとも防皺性の程度について拡張するものであるといえる。このような補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものであるといえないことは、明らかである。
(3)まとめ
したがって、この補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年10月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、その補正前の明細書、すなわち願書に最初に添付した明細書(以下「本願明細書」という。)によれば、上記の補正前の特許請求の範囲の請求項1?7のとおりものであると認められ、その請求項4に係る発明は、他の請求項を引用しない形式で記載すると、
「合成繊維を含み防シワ性が60%以下である形状保持性布帛、又は防シワ性が40%以下である形状保持性布帛であって、その繊維布帛の少なくとも片面に金属箔を含む金属層を含む形状保持性布帛。」
ということができる(この発明を本願発明4というが、この発明は「合成繊維を含み防シワ性が60%以下である形状保持性布帛」と「防シワ性が40%以下である形状保持性布帛」とを包含するから、特に後者を特に「本願発明4-2」ということとする。)。

4. 原査定の理由
原査定の理由は、「平成15年6月26日付け拒絶理由通知書に記載した理由」であるところ、その理由は、この出願の請求項1?7に係る発明はその出願前頒布された特開平4-327276号公報(以下「刊行物1」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

5. 刊行物1の記載事項
刊行物1には次の事項が記載されている。
a 「折曲げ皺や揉み皺等の入り易い紙類,不織布,布地等の繊維シート状物,プラスチックシート状物及びそれらの複合体,さらに,これらを難燃化した基材シート等に機械揉み加工を施して表裏の歪みをつくり,自然皺を形成し,合成樹脂やエラストマー等の組成液,または接着剤を吹付けたり,塗工して下処理し,各種の短繊維の1種ないし,ブレンドしたものを植毛加工してシート状物としたことを特徴とする揉み皺入り植毛シート。」(請求項1)
b 「紙類,不織布,布地等の繊維シート状物,プラスチックシート状物及びそれらの複合体,さらに,これらを難燃化した基材シート等に皺入りし易くするために,合成樹脂組成液あるいはサイジング剤等の処理をし,またカレンダー加工を施し,あるいは,それらの基材シートの裏面に金属箔を貼着して予備加工処理して,皺付けし易くして基材シートとして用いることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の揉み皺入り植毛シート。」(請求項2)
c 「アルバムやケース類の装丁,あるいはカバー,インテリヤとしてディスプレー用材や壁装材,あるいは衣料用等の素材として利用される分野に関する。」(【0001】)
d 「皺を入り易くした繊維シート状物を機械揉み加工して歪みを形成することにより,繊維シート状物は表裏に凹凸をつくる。すなわち,全体的に平面的でない歪みをつくり,立体感や自然感を発現する。これに,下塗加工を施し,ほぼ同じ長さの短繊維を植毛することにより,細かい皺の分枝部分にも植毛され,歪の高低に応じて,短繊維の高低をつくり,曲毛や伏毛のない,直立植毛の変化のある模様を基材の模様通りに顕現する。
植毛したものに揉み加工などを行う場合は,皺入り箇所が脱毛したり,曲毛になったり,伏毛になったりする。
本発明では,このような問題はない。」(【0005】)
e 「原材料について言うと植毛シート用基材は,紙類,不織布,布地等の繊維シート状物,プラスチックフィルム状物及びそれら難燃化したもの等を適宜の組み合せにおいて,貼着して複合体としたもの等が用いられる。・・・そして,加工については,模様付けは,実施例のような機械揉み,ドラム揉み,扱き皺付け,筋引き等・・・が利用できる。皺の入り難い基材シートは,樹脂組成液で,あらかじめ基材シートを処理しておくと基材シートの強化や皺付けの容易化につながる。例えば,・・・カレンダー加工して,単位密度を高め,剛性を強くしたり,金属箔を裏打ちとして貼着しておくと皺が入り易くなる。・・・」(【0007】)
f 「皺付し易い基材シート,または,その加工を容易にし得るようにした基材シートに,あらかじめ表裏に歪みのあるような加工を施して,接着剤ないし樹脂加工して,その上に植毛することにより,歪の形状の細部,例えば,主筋に対する分枝筋まで植毛され,曲毛や伏毛のない直立した繊維の模様が立体的にボリュウム感をもって発現する。」(【0008】)

6. 当審の判断
(1) 刊行物1に記載された発明
刊行物1は「折曲げ皺や揉み皺等の入り易い紙類,不織布,布地等の繊維シート状物,・・・基材シート等に機械揉み加工を施して表裏の歪みをつくり,自然皺を形成し,合成樹脂やエラストマー等の組成液,または接着剤を吹付けたり,塗工して下処理し,各種の短繊維・・・を植毛加工してシート状物としたことを特徴とする揉み皺入り植毛シート。」(摘示a)に関して記載するものであって、その「紙類,不織布,布地等の繊維シート状物,・・・基材シート等」について、「皺入りし易くするために,・・・それらの基材シートの裏面に金属箔を貼着して予備加工処理して,皺付けし易くして基材シートとして用いる」(摘示b)ことが記載されている。
すなわち、刊行物1には、植毛シートの基材シートとして、不織布や布地の「裏面に金属箔を貼着して」折曲げ皺や揉み皺等の入り易いものが記載されていると認められる。
以上によれば、刊行物1には、
「不織布や布地の裏面に金属箔を貼着した折曲げ皺や揉み皺等の入り易い不織布や布地」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(2) 本願発明4と引用発明との対比
本願発明4のうち「防シワ性が40%以下である形状保持性布帛」のものである本願発明4-2と引用発明とを対比すると、引用発明の「不織布や布地」は本願発明4-2の「繊維布帛」や「布帛」に相当する(本願明細書段落【0023】参照)から、引用発明の「裏面に金属箔を貼着した」不織布や布地は、本願発明4-2の「繊維布帛の少なくとも片面に金属箔を含む金属層を含む」布帛に相当する。すると、両者は、
「繊維布帛の少なくとも片面に金属箔を含む金属層を含む布帛」
である点で一致し、以下の点で相違が認められる。
『本願発明4-2は、「防シワ性が40%以下である」「形状保持性」の布帛であるのに対して、引用発明は「折曲げ皺や揉み皺等の入り易い」不織布や布地であるものの、「防シワ性が40%以下である」「形状保持性」のものであるかは明らかではない点』
(3) 相違点についての判断
ア 本願発明4-2の「形状保持性」に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載が認められる。
A 「本発明は、形状保持性布帛に関する。本発明は、特に、シワや凹凸を容易に付与することができ、そのシワの痕や凹凸が残存する、意匠性に優れた形状保持性布帛に関する。」(【0001】【発明の属する技術分野】)
B 「従来、繊維布帛やそれを用いた衣服やカバンに対してシワを付与する方法としては、ポリエステル繊維などの熱によりシワを固定しやすい素材を用いたものの場合には、金属板などを用い、高温高圧の状態において繊維布帛にシワをつけ、固定化したり、袋の中に繊維布帛や衣服を詰め込み、熱水中で処理を行ったりして、シワを付与していた。また、上記のような熱と湿気だけではシワを固定し難い綿繊維等の素材では、さらにメラミン樹脂などの形態安定化樹脂を付与する必要があった。
しかし、これらの方法によってシワを付与する場合、スチームプレス機などの高温高圧処理が可能な装置やシワ固定用の樹脂等が必要となり、一般の消費者が自身で手軽に繊維布帛や衣服などの繊維製品にしわを付与し、固定化することはできなかった。」(【0002】?【0003】)
C 「本発明は、繊維布帛や、衣服、カバン等の縫製品に対し、製造業者であってもあるいは消費者であっても、任意の部分に簡単にシワや凹凸を付与することができ、かつ、そのシワや凹凸の形状も任意のものとすることができ、さらにはその付与されたシワや凹凸の形状を通常の使用状態で安定して維持することのできる形状保持性布帛を提供しようとするものである。」(【0005】)
D 「合成繊維、特に、ポリエステル繊維はシワになり難い素材であるが、防シワ性が60%以下の形状保持性布帛であれば、特にシワや凹凸を付与するための設備を用いなくても、人手によって任意の場所に任意の形状のシワや凹凸を付与することができ、そのようなシワや凹凸は通常の使用環境下では消えることはない。また、合成繊維を含むと含まざるとにかかわらず、シワや凹凸の固定の観点からは防シワ性は40%以下であるのがよく、好ましくは30%以下であるのがよい。また、ここで言う防シワ性に関しては、タテ方向、ヨコ方向、または布帛の表裏の少なくとも1つが60%以下または40%以下、好ましくは30%以下の防シワ性を有していればよく、さらに好ましくはタテ、ヨコ両方の防シワ性が60%以下であればよい。ここで、防シワ性は、JIS L 1059-1(モンサント法)により測定されるものである。」(【0016】)
E 「本発明において、金属層としては、金属メッキ層、金属含有樹脂フィルム層、金属箔層などが挙げられるが、シワや凹凸形状のつけやすさおよび安定性の観点からは金属箔層が好ましく用いられる。」(【0020】)
F 「金属箔の厚みは、要求される風合い、シワや凹凸の形状から任意のものを用いることができるが、好ましくは5?100μm、さらに好ましくは10?50μmであってよい。5μmよりも薄くなると、貼り合わせる繊維布帛の種類にもよるが得られる形状保持性布帛の形状保持性が低下し、シワが消えやすくなる。また、100μmよりも厚くなると風合いが硬くなりすぎることがあるので好ましくない。ただし、柔らかい風合いを必要としない環境下や、得られた形状保持性布帛が使用される環境下でほとんど物理的な力がかからない状態で使用される場合には、厚さははとくに限定されるものではない。」(【0022】)
G 「本発明の形状保持性布帛を用い、衣服、カバン、袋等の繊維製品を製造すれば、特別な装置や樹脂を用いることなく、消費者自身が手軽に、任意の場所に任意の形状のシワや、必要に応じて10cm以上の大きな凹凸をも付与することができ、またそのようなしわや凹凸は通常の使用状態では消えることがない。したがって、消費者は、従来にない、シワや凹凸による意匠性が楽しめるようになる。」(【発明の効果】【0033】)
H 「また、得られた形状保持性布帛を用いて袋を作成したところ、消費者の好みに合わせてシワと凹凸を手で容易に付与することができ、3日間使用したがシワも凹凸も消えなかった。」(【0041】)
イ 本願発明4-2の「形状保持性」の「形状」とは、その記載からは特定されるものではないものの、以上によれば、少なくとも「シワや凹凸」を含むものであると認められる。そしてその「シワや凹凸」の「保持性」もその記載からは明らかではないものの、「残存」(摘示A)、「固定化」(摘示B)「通常の使用状態で安定して維持する」(摘示C)、「通常の使用環境下では消えることはない」(摘示D)、「安定」(摘示E)などの記載、さらにその程度を表すと認められる「防皺性」が「JIS L 1059-1(モンサント法)」(摘示D)で測定したしわ回復角(規定された条件下でで折り畳まれた試験片の、おもり除去後の規定時間における試験片両翼間の角度)に基づくものであることからみて、「シワや凹凸」の「固定され易さ」を意味すると認められる。
そして、その「防皺性が40%以下」のものとは、「シワや凹凸」の「固定され易さ」の下限値を示したもの、すなわち、その値のもの以上にシワや凹凸が固定され易いものをいうと認められる。
更に、そのようなシワや凹凸が固定され易さは、その実施例1によれば、ナイロン及びポリエステル2枚の布帛間に厚さ30μmのアルミニウム箔を貼り合わせることにより得られる(この場合の防皺性は概ね30%前後である。)ことが認められる。
ウ それに対して、引用発明における「折曲げ皺や揉み皺等の入り易い」不織布や布は、「皺を入り易くした繊維シート状物を機械揉み加工して歪みを形成することにより,繊維シート状物は表裏に凹凸をつくる。すなわち,全体的に平面的でない歪みをつくり,立体感や自然感を発現する」(摘示d)ものであるが、刊行物1の摘示d、fによれば、この基材シートに付けられた凹凸は、接着剤の吹付や塗工、植毛加工後も保持されるものであることが認められる。
すると、引用発明の「折曲げ皺や揉み皺等の入り易い」不織布や布も、シワや凹凸が固定され易いもの、すなわち、「形状保持性」の程度が大きいものと認められる。
そして、引用発明の「形状保持性」の大きさの程度、すなわち、シワや凹凸の固定され易さの程度は明らかではないから、直ちには「防皺性が40%以下」とまではいえないとしても、引用発明の不織布や布地が折曲げ皺や揉み皺等が付与されその後もその皺等が固定される必要があるものであることからすれば、同程度であるか、そうでないとしてもシワや凹凸の固定され易さの程度はより大きい方が良いことは明らかであるから、引用発明の不織布や布の固定され易さの程度を、例えば金属箔の厚みを増す等してより大きいものとすること、例えば防止皺性を40%以上のシワや凹凸が固定され易いものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願明細書を検討しても、本願発明4-2がこの点によって格別の効果を奏すると認めることはできない。
エ 請求人の主張
(ア) 請求人は、平成19年6月13日付け回答書において、
「本発明の布帛は、消費者やデザイナーが手などで簡単に、任意の場所に、任意の大きさ、形状のしわを付与することができる形状保持性布帛であります。さらに、アイロン等を用いればしわを消すことができ、再度、消費者、デザイナー等が手で、任意の場所に、任意の形状のしわを付与することができるものであります(本願明細書の〔0007〕の段落)。」
と主張する。
しかし、本願発明4-2の布帛は、「形状保持性」の大きい布帛であって、その皺の入れ方如何を問わない、シワや凹凸が所定以上に固定され易い布帛であるに過ぎない。
シワや凹凸が固定され易いこととシワや凹凸が入れ易いこととは必ずしも対応するものではない。例えば、シワや凹凸を入れるために大きな力を必要とし手などで簡単にシワや凹凸を入れ難いものであっても、シワや凹凸が固定され易いものであれば本願発明4-2に含まれる、すなわち、本願発明4-2の布帛は「消費者やデザイナーが手などで簡単に、・・・しわを付与することができる」もののみを含むものではないから、「本発明の布帛は・・・消費者やデザイナーが手などで簡単に、・・・しわを付与することができる」布帛であるとの主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
また、シワや凹凸が固定され易いこととアイロン等を用いればシワや凹凸を消すことができることとは対応するものではないから、この点についての主張も特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
(イ) 請求人は、同回答書において、
「引用文献1(審決注:刊行物1である。)に記載された発明は、シート等に皺を形成した後、植毛加工を行う揉み皺入り植毛シートに関する発明であり、植毛前に基材シートに皺を形成させるので、従来の植毛後に皺入れをしたものにおけるように皺入り箇所が脱毛したり、曲毛になったり、伏毛になったりする問題はないという作用効果を有します(引用文献1の〔0005〕の段落)。したがって、引用文献1の植毛シートが製造された後にシワが入ると、従来と同じように皺入り箇所が脱毛したり、曲毛になったり、伏毛になったりする問題が発生してしまうため、引用文献1の植毛シートでは、得られた布帛を入手したデザイナーや消費者の段階では簡単に皺付与ができないものであることが必要です。このことを裏付ける構成として、引用文献1における皺の付与方法は機械揉み加工を行うことが必須条件(引用文献1の請求項1)となっていることからも、人の手等によっては皺が入り難いことがわかります。」と主張する。
しかし、刊行物1には、「植毛シート」のみならず、その植毛の基体となるシワや凹凸が固定され易いシートも開示されることは刊行物1に接した当業者であれば容易に把握することができるものである。刊行物1が植毛シートのみを開示することを前提とする主張は、採用することはできない。
また、本願発明4-2が「人の手等によっては皺が入り難い」ものを含まない旨の主張が特許請求の範囲の記載に基づかないことは、前示のとおりである。
(ウ) よって、請求人の上記各主張は、上記認定判断を左右するものではない。
(4) まとめ
したがって、本願発明4-2は、その出願前頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、この場合を含む本願発明4は、その出願前頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7. むすび
以上のとおり、本願発明4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-18 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-12 
出願番号 特願2001-264736(P2001-264736)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06N)
P 1 8・ 57- Z (D06N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 健治  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 鴨野 研一
岩瀬 眞紀子
発明の名称 形状保持性布帛  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 吉田 維夫  
代理人 樋口 外治  

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