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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1169974
審判番号 不服2005-4277  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-10 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 平成 9年特許願第206097号「画像処理装置及びその方法、記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月26日出願公開、特開平11- 53372〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年7月31日の出願であって、平成16年10月12日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが、平成17年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年3月10日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年4月11日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものと認める(以下、「本願発明」という)。
「【請求項1】 検索語を入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された検索語の種別を判別する判別手段と、
前記判別手段により対象物を示す語であると判別された場合、該対象物の検索を行う第1の検索手段と、
前記判別手段により指定位置を含む語であると判別された場合、該指定位置を満たす対象物の検索を行う第2の検索手段と、
前記判別手段により画像の特徴を含む語であると判別された場合、該画像特徴を有する対象物の検索を行う第3の検索手段と、
前記第1乃至第3の検索手段のいずれかの検索結果を出力する検索結果出力手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-160725号公報(平成7年6月23日公開。以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 複数の画像が保持されている画像保持手段から利用者の希望する画像を検索する画像検索装置において、
検索対象とする画像の特徴を示す属性条件と当該画像中のどの領域に注目するかを決める位置条件との組み合わせからなる検索条件を入力するための検索条件入力手段と、
前記画像保持手段に保持されている画像を複数の領域に分割する画像分割手段と、
前記画像分割手段により分割された領域毎に画像の特徴を示す属性情報を求める画像特徴抽出手段と、
前記画像特徴抽出手段により求められた前記各領域毎の画像の属性情報で示される画像の特徴と前記検索条件入力手段により入力された前記検索条件中の画像の属性条件との一致度と、前記分割された各領域の画像中の位置と前記入力された検索条件中の前記位置条件との一致度とを算出し、当該検索条件と画像との適合度を求める画像特徴比較手段と、
前記画像特徴比較手段により求められた適合度を基に、前記検索条件入力手段により入力された検索条件に最も一致する画像を求める画像選択手段と、
を具備したことを特徴とする画像検索装置。」

イ.「【0007】本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、画像登録時にはキーワードを必要とせずに利用者の負担が低減できる、画像検索時には高度な画像解析を必要とせずに、検索の処理時間のかからないコストの低い画像検索装置を提供することにある。」

ウ.「【0012】・・・(中略)・・・ここで、画像の属性情報とは、例えば、色相、明度、彩度、複雑度などの画像データから容易に計算できる画像の特徴情報である。」

エ.「【0020】画像検索条件入力装置101は、利用者が画像(画像データベース104内の画像情報)の検索条件を入力したり、利用者独自の特徴条件を定義したりするための入力装置で、例えば、キーボード、マウスなどである。」

オ.「【0023】画像データベース104は、多くの画像情報を蓄えることができるデータベースである。画像分割装置105は、画像データベース104から1つの画像を取り出し、取り出した画像を例えば縦横5×5の区画に分割する。
【0024】画像特徴抽出装置106は、画像分割装置105により5×5の区画に分割された画像の各領域に対して画像の属性情報(色相、明度、彩度、複雑度)を計算する。
【0025】画像特徴量比較装置107は、画像特徴抽出装置106により計算された画像の各領域の属性情報と、内部検索条件式合成装置103により合成された内部検索条件式との適合度を計算する。
【0026】最適画像選択装置108は、画像特徴量比較装置107で計算された適合度に基づいて、適合度の高い順に画像を並び変える。画像出力装置109は、画像を利用者に提示するためのものであり、最適画像選択装置108で並び変えられた画像をその並び順に出力する。
【0027】つぎに利用者が入力する検索条件(利用者入力検索条件)と特徴属性定義利用者辞書102と内部検索条件式とについて詳しく説明する。図2は、利用者が入力する検索条件の一例を示す。図に示すように、利用者は、「明るい」/「青い」/「複雑」といった画像の内容に関する特徴を示す属性条件と、「中央」/「周囲」/「上方」などといった画像中の注目する位置を示す位置条件との組で、符号201または202で示されるような検索条件を与える。さらに、利用者は、「かつ」/「または」などの論理条件で結合された表現を用いて、符号203で示されるような検索条件を与える。」

カ.「【0032】・・・・(中略)・・・・この基本式A@Bにおいて、Aは前述の属性条件に相当し、Bは位置条件に相当する。」

キ.「【0047】内部検索条件式合成装置103により合成される内部検索条件式がA@Bの場合(ステップS906)、画像特徴量比較装置107は、まず、画像の属性条件式を示すAが色相の属性を示す条件式であるか否かを判断する(ステップS910)。
【0048】Aが色相属性条件以外のときには、画像特徴量比較装置107は、画像の属性Imgの示す値(0?1の範囲)そのものをAの評価値とする(ステップS912)。
【0049】一方、Aが色相属性条件のときは、画像特徴量比較装置107は、検索条件式で与えられた具体的な色相と実際の画像の色相との近さを評価したものを評価値とする(ステップS911,S913)。」

ク.「【0051】この位置条件Bの評価値xb とは、図6に対応する領域を縦横5×5の領域で0から1の間の数値で表現したものである。」

ケ.「【0055】以上のように、画像特徴量比較装置107は、属性条件Aおよび位置条件Bのそれぞれの評価値xa ,xb についての再評価をした上で、条件式A@Bの評価値を求める。」

コ.「【0062】画像特徴量比較装置107は、1から両者の差(色相属性条件Aの再評価値と位置条件Bの再評価値との差)の絶対値を引いて属性情報の評価値を各領域S11?S55毎に求める(ステップS914)。これを図13に示す。
【0063】そして画像特徴量比較装置107は、図13に示した各領域S11?S55についての評価値の平均値を求める(ステップS915)。この平均値が適合度となる。図13に示した例では、適合度は“0.81”となる。
【0064】このようにして適合度が求められると、最適画像選択装置108は、画像特徴量比較装置107で求めた適合度の高い順に画像を並び変える。そして、選択装置108は、適合度の最も高い画像を画像出力装置109に送る。
【0065】画像出力装置109は、最適画像選択装置108から送られた画像を利用者に提示する。」

サ.図2には、利用者が入力する検索条件の例として、「中央が明るい」「周囲が青い」「上方が(非常に青いかつ複雑でない)かつ下方が複雑」が記載されている。

したがって、引用刊行物には以下の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。
「複数の画像が保持されている画像保持手段から利用者の希望する画像を検索する画像検索装置において、
「明るい」、「青い」、「複雑」、「非常に青いかつ複雑でない」といった検索対象とする画像の特徴を示す属性条件と、「中央」、「周囲」、「上方」といった当該画像中のどの領域に注目するかを決める位置条件との組み合わせからなる検索条件を利用者が入力するための検索条件入力手段と、
画像保持手段に保持されている画像を複数の領域に分割する画像分割手段と、
前記画像分割手段により分割された領域毎に、画像の属性情報である色相、明度、彩度、複雑度を求める画像特徴抽出手段と、
前記画像特徴抽出手段により求められた前記各領域毎の画像の属性情報で示される画像の特徴と前記検索条件入力手段により入力された前記検索条件中の画像の属性条件との一致度と、前記分割された各領域の画像中の位置と前記入力された検索条件中の前記位置条件との一致度とを算出し、当該検索条件と画像との適合度を求める画像特徴比較手段と、
前記画像特徴比較手段により求められた適合度を基に、前記検索条件入力手段により入力された検索条件に最も一致する画像を求める画像選択手段と、
画像選択手段によって選択された画像を利用者に提示する画像出力手段と、
を具備したことを特徴とする画像検索装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、
・画像検索は画像処理の一種であるから、引用発明の「画像検索装置」は本願発明の「画像処理装置」に対応する。

・引用発明の検索条件は「明るい」、「中央」のような語であるから、本願発明の「検索語」に対応し、その検索条件を入力するための画像検索条件入力手段は、本願発明の「検索語を入力する入力手段」に対応する。

・引用発明の「位置条件」は画像中のどの領域に注目するかを決める条件であるから、画像中の注目する位置を指定したものであり、本願発明の「指定位置」に対応する。

・引用発明の「属性条件」は画像の特徴を示すから、本願発明の「画像の特徴」に対応する。

・引用発明は、検索条件に「位置条件」と「属性条件」とを含み、その検索条件に最も一致する画像を検索する。したがって、検索語に含まれる「指定位置」と「画像の特徴」とに基づいて画像の検索を行う検索手段を有すると言える。
これに対し、本願発明は、第1の検索手段?第3の検索手段を検索手段と総称すると、検索語に含まれる指定位置と画像の特徴とに基づいて画像の検索を行う検索手段を有すると言える。
よって、両者は共に、検索語に含まれる指定位置と画像の特徴とに基づいて画像の検索を行う検索手段を有する点で一致する。

・引用発明の「画像出力手段」は、本願発明の「検索結果出力手段」に対応する。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「検索語を入力する入力手段と、
検索語に含まれる指定位置と画像の特徴とに基づいて画像の検索を行う検索手段と、
検索結果を出力する検索結果出力手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。」

そして、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。

(1)本願発明は、「前記入力手段により入力された検索語の種別を判別する判別手段」を有し、その判別手段は「対象物を示す語」「指定位置を含む語」「画像の特徴を含む語」を判別するのに対し、引用発明はこの判別手段を有しない点。

(2)本願発明の検索手段は「前記判別手段により対象物を示す語であると判別された場合、該対象物の検索を行う第1の検索手段と、前記判別手段により指定位置を含む語であると判別された場合、該指定位置を満たす対象物の検索を行う第2の検索手段と、前記判別手段により画像の特徴を含む語であると判別された場合、該画像特徴を有する対象物の検索を行う第3の検索手段」とからなるのに対し、
引用発明の検索手段は、指定位置と画像の特徴とを含んだ検索語に対して、指定位置と画像の特徴に最も一致する画像を検索する検索手段である点。

(3)本願発明の検索結果出力手段は、「前記第1乃至第3の検索手段のいずれかの検索結果を出力する」のに対し、
引用発明の検索結果出力手段は、検索手段の検索結果を出力する点。

5.当審の判断
上記相違点(1)(2)について、
「対象物」の検索を行う画像の検索手段は周知である(特開平6-96125号公報、段落【0002】(”山””川”等のキーワードによる検索)参照)。このような検索も行えるように、引用発明に「対象物」の検索を行う検索手段を付加することは容易に想到し得ることである。その場合、入力手段には、「指定位置」と「画像の特徴」を含む検索語と「対象物」を示す検索語とが入力されるから、入力された検索語の種別を判別し、「対象物」を示す語であると判別された場合に「対象物」の検索を行うことは適宜なし得ることである。したがって、本願発明の第1の検索手段は容易に想到し得たものである。

また、「対象物」は画像の内容を表すから、「色相、明度、彩度、複雑度」(以下、「色相等」という)と同様に「画像の特徴」であるとも言える。したがって、「画像の特徴」と「指定位置」とを組み合わせた検索語による検索の際に、「対象物」を「画像の特徴」として用い、「指定位置」を満たす「対象物」の検索を行うことも容易に想到し得ることである。また、「指定位置」を満たす「対象物」の検索に加えて、前述した「対象物」の検索も行うためには、入力された検索語が「対象物」と「指定位置」とを含む語であるのか、「対象物」を示す語であるのかを判別する必要があるから、「指定位置」を含む語であることが判別された場合に、「指定位置」を満たす「対象物」の検索を行う検索手段を設けることは容易に想到し得ることである。
なお、引用発明は「画像登録時にはキーワードを必要とせずに利用者の負担が低減できる」(【0007】)、「画像データから容易に計算できる画像の特徴情報である」(【0012】)などの理由から、「色相等」を属性条件としている。しかしながら、属性条件が「対象物」であっても、注目する領域を満たす「対象物」を検索し得ることは明らかであり、たとえ「対象物」が前記理由に反するものであっても、これを属性条件とすることは容易に想到し得ることである。
したがって、本願発明の第2の検索手段は容易に想到し得たものである。

また、引用発明は属性条件と位置条件とを組み合わせたものを検索条件としているが、属性条件のみを検索条件とする画像の検索も周知である(特開平6-96125号公報、段落【0006】?【0007】(キーワードによる検索)、段落【0008】(検索条件中にキーワードを含み、物理属性値が混在しない場合の検索)参照)。前記のような「対象物」の検索、「指定位置」を満たす「対象物」の検索に加えて、このような属性条件のみの検索を行うことも容易に想到し得ることである。
その際の検索語としては、引用発明の「非常に青いかつ複雑でない」のような2つの属性条件(「非常に青い」「複雑でない」)を組み合わせた語も可能であるから、「対象物」と他の画像の特徴とを組み合わせた検索語も適宜なし得ることである。前述の「対象物」の検索、「指定位置」を満たす「対象物」の検索に加えて、このような検索を行うには、検索語が「対象物」を示す語か、「指定位置」を含む語か、「画像の特徴」を含む語かを判別し、「画像の特徴」を含むと判別された場合に、画像の特徴を有する「対象物」を検索すればよいことは容易に想到し得ることである。
したがって、本願発明の判別手段、及び、第3の検索手段は容易に想到し得たものである。

上記相違点(3)について
複数の検索手段から検索結果が得られる場合、検索結果出力手段がいずれかの検索結果を出力すればよいことは容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2007-10-26 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-12 
出願番号 特願平9-206097
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水野 恵雄紀田 馨鈴木 和樹  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 手島 聖治
菅原 浩二
発明の名称 画像処理装置及びその方法、記憶媒体  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  

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