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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1170006
審判番号 不服2006-8239  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 特願2000- 35616「研磨パッドの表面状態評価方法及びその装置とそれを用いた薄膜デバイスの製造方法及びその製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月17日出願公開、特開2001-223190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月8日の出願であって、平成17年10月28日付の手続補正を経て平成18年3月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月27日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、同年5月26日付で明細書を補正対象書類とする手続補正がなされたものであり、当審による平成19年6月18日付審尋に対して同年8月9日付の回答書と同年9月28日付の上申書とが提出されたものである。

2.平成18年5月26日付の明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
本件補正を却下する。

【理由】
2.1 補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲は、
<補正前>
「【請求項1】
研磨パッド表面に光を照射し、該光が照射された領域を撮像して画像信号を得、該画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を求め、該求めた面積率を予め求めておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態を評価することを特徴とする研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項2】
前記面積率が予め設定した閾値を超えた場合にアラームを表示することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの表面状態を評価した結果をドレッシングの条件にフィードバックすることを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項4】
研磨パッド表面に光を照射する照射手段と、該照射手段により光が照射された前記研磨パッド表面を撮像して画像信号を取得する撮像手段と、該撮像手段で取得した画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を求める画像処理手段と、研磨パッドの面粗さと面積率との関係を予め記憶しておく記憶手段と、前記画像処理手段で求めた面積率を前記記憶手段に記憶しておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態を評価する処理手段とを備えることを特徴とする研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記面積率が予め設定した閾値を超えた場合にアラームを表示することを特徴とする請求項4記載の研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記研磨パッドの表面状態を評価した結果をドレッシングの条件にフィードバックすることを特徴とする請求項4もしくは5記載の研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項7】
基板上に形成され凹凸面を有する薄膜を研磨パッドにより研磨し平坦化処理する工程と、前記研磨パッドの表面状態を評価し、この評価結果に基づいてドレッサーによる研磨パッドのドレッシング条件を最適化する工程とを含む薄膜デバイスの製造方法であって、前記研磨パッドの表面状態の評価を請求項1乃至3のいずれか一つに記載の研磨パッドの表面状態評価方法で構成したことを特徴とする薄膜デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記研磨パッドにより研磨し平坦化処理する工程は、CMP加工工程を含むことを特徴とする請求項7記載の薄膜デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記ドレッサーによる研磨パッドのドレッシング条件を最適化する工程においては、前記研磨パッドの表面状態の評価結果に基づいて、前記ドレッサーの研磨パッドに対する接触圧力、回転数及び揺動運動の周期のいずれかを制御するか、もしくはドレッサー材質を選択することを特徴とする請求項7もしくは8記載の薄膜デバイスの製造方法。
【請求項10】
半導体デバイスの表面に形成した膜を研磨する研磨手段と、前記研磨手段の研磨パッドの表面状態を評価する手段とを備えた薄膜デバイスの製造装置であって、前記研磨パッドの表面状態を評価する手段を、請求項4乃至6のいずれか一つに記載の研磨パッドの表面状態評価装置で構成したことを特徴とする薄膜デバイスの製造装置。」から、
<補正後>
「【請求項1】
研磨パッド表面に位置を相対的に変化させて光を照射し、該光が照射された各領域を撮像して画像信号を得、該画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を前記各領域について求め、該求めた前記各領域ごとの面積率を予め求めておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態の分布を評価することを特徴とする研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項2】
前記面積率が予め設定した閾値を超えた場合にアラームを表示することを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの表面状態の分布を評価した結果をドレッシングの条件にフィードバックすることを特徴とする請求項1記載の研磨パッドの表面状態評価方法。
【請求項4】
研磨パッド表面に位置を相対的に変化させて光を照射する照射手段と、該照射手段により光が照射された前記研磨パッド表面の各領域を撮像して画像信号を取得する撮像手段と、該撮像手段で取得した各領域の画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を前記各領域について求める画像処理手段と、研磨パッドの面粗さと面積率との関係を予め記憶しておく記憶手段と、前記画像処理手段で求めた面積率を前記記憶手段に記憶しておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態の分布を評価する処理手段とを備えることを特徴とする研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記面積率が予め設定した閾値を超えた場合にアラームを表示することを特徴とする請求項4記載の研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記研磨パッドの表面状態の分布を評価した結果をドレッシングの条件にフィードバックすることを特徴とする請求項4もしくは5記載の研磨パッドの表面状態評価装置。
【請求項7】
基板上に形成され凹凸面を有する薄膜を研磨パッドにより研磨し平坦化処理する工程と、前記研磨パッドの表面状態の分布を評価し、この評価結果に基づいてドレッサーによる研磨パッドのドレッシング条件を最適化する工程とを含む薄膜デバイスの製造方法であって、前記研磨パッドの表面状態の分布の評価を請求項1乃至3のいずれか一つに記載の研磨パッドの表面状態評価方法で構成したことを特徴とする薄膜デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記研磨パッドにより研磨し平坦化処理する工程は、CMP加工工程を含むことを特徴とする請求項7記載の薄膜デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記ドレッサーによる研磨パッドのドレッシング条件を最適化する工程においては、前記研磨パッドの表面状態の分布の評価結果に基づいて、前記ドレッサーの研磨パッドに対する接触圧力、回転数及び揺動運動の周期のいずれかを制御するか、もしくはドレッサー材質を選択することを特徴とする請求項7もしくは8記載の薄膜デバイスの製造方法。
【請求項10】
半導体デバイスの表面に形成した膜を研磨する研磨手段と、前記研磨手段の研磨パッドの表面状態の分布を評価する手段とを備えた薄膜デバイスの製造装置であって、前記研磨パッドの表面状態の分布を評価する手段を、請求項4乃至6のいずれか一つに記載の研磨パッドの表面状態評価装置で構成したことを特徴とする薄膜デバイスの製造装置。」に補正された。

なお、下線は補正箇所を明りょうにする目的で当審にて付与したものである。

2.2 補正の目的についての判断
上記補正は、請求項1ないし10の発明を特定する事項のうち、「研磨パッド表面に光を照射」する点については「位置を相対的に変化させて」行うこと、「撮像」及び「面積率を求める」ことについては照射された「各領域」について行うこと、及び、「表面状態の評価」はその「分布」を評価すること、にそれぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲を限定して減縮することを目的とするものに該当する。そして、上記補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たしている。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.3 刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に国内で頒布された次の刊行物には、以下の事項が記載されていると認められる。
刊行物1: 特開平9-285955号公報
刊行物2: 特開平10-315131号公報

2.3.1 刊行物1
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「【請求項1】加工物の表面を研磨する研磨方法であって、
研磨材で前記加工物の表面を研磨する研磨ステップと、
前記研磨材の反射率を測定するステップと、前記測定した前記研磨材の反射率に基づいて研磨性能に関連する前記研磨材の特性を定量化するステップと、前記定量化した前記研磨材の特性が所定の基準よりも劣ったか否かを判定するステップとからなる、繰返し実行される測定ステップと、
前記測定ステップで前記研磨材の特性が前記所定の基準よりも劣ったと判定された場合に、前記研磨材にドレッシング処理を施すドレッシングステップとを有することを特徴とする研磨方法。」
b.(段落17)
「【0017】本センサ11の光学系は、研磨パッド6の表面6aに対して任意の入射角θ(本実施の形態では、約15°)で照明光eを照射する光源21と、2つのフォトダイオード24a,24bとにより構成されている。詳細には、光源21から照射された照明光eは、コリメータレンズ22を透過し、ビームスプリッタ25で2方向に分割された後、その内の一方の光e_(1)が集光レンズ26によって一方のフォトダイオード24aへと導かれ、他方の光e_(2)が研磨パッド6の表面6aで反射した後、集光レンズ23によって他方のフォトダイオード24bへと導かれるようになっている。」
c.(段落21?24)
「【0021】性能評価部11aは、センサ11の出力(即ち、フォトダイオード24aで検出された光e_(1)の光量m_(1)と、フォトダイオード24bで検出された光e_(2)の光量m_(2))を用いて、研磨パッド6の反射率(m_(2)/m_(1))を算出する。
【0022】その後、上記センサ11の出力から算出した研磨パッド6の反射率(m_(2)/m_(1))と、研磨パッドの反射率と研磨能率を関係付ける関数fとを用いて、研磨パッド6の研磨能率を算出する。その結果、例えば、従来技術の欄で述べた研磨条件と同様な研磨条件で使用される研磨パッド6の反射率(m_(2)/m_(1))は、研磨加工の進行に伴って、図5に示すように推移することが確認される。これは、研磨開始前またはドレッシング処理直後の研磨パッド6の表面6aでは、図2(a)に示すように、光e_(2)が微細な凹凸で乱反射しやすく、研磨加工の進行に伴って平滑化された研磨パッド6の表面6aでは、図2(b)に示すように、光e_(2)が正反射しやすいためである。
【0023】尚、ここでいう研磨パッドの反射率と研磨能率とを関係付ける関数fとは、実験データに基づいて予め作成しておいた関数のことである。即ち、研磨の進行と共に従来技術と同様な測定方法によって研磨パッドの研磨能率k(t)を逐次測定し、これを上記研磨パッド6の反射率(m_(2)/m_(1))とを対応付けて表示すると、図6に示すように、おおむね両者の値を一意に対応付けることができる関数(k(t)=f(m_(2)/m_(1)))が存在することが判る。この関数(k(t)=f(m_(2)/m_(1)))が、ここでいう研磨パッドの反射率と研磨能率とを関係付ける関数fである。
【0024】そして、逐次算出される研磨パッドの研磨能率k(t)に基づいて、研磨加工中の研磨パッドの研磨性能の優劣を評価する。尚、本実施の形態では、上記研磨パッドの研磨能率kが所定の値を下回った時点で、研磨パッドの研磨性能が劣化したと判定する。また、上記研磨パッドの研磨能率kが所定の値を上回った時点で、研磨パッドの研磨性能が回復したと判定する。」

上記の摘記事項の内容を本件補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には、
「研磨パッド表面に光を照射し、該光が照射された領域の反射率を測定し、該測定した反射率を予め求めておいた研磨パッドの研磨能率と反射率との関係を用いて前記研磨パッドの研磨能率を評価する研磨パッドの研磨能率評価方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)
が記載されていると認められる。

2.3.2 刊行物2
a.(特許請求の範囲、請求項1及び2)
「【請求項1】 研磨工具に半導体ウエハの表面を接触させかつ前記研磨工具に研磨液を供給して前記研磨工具と前記半導体ウエハとを相対的に擦り付けて前記半導体ウエハを研磨する研磨工程と、前記研磨工具をドレッサによりドレッシングするドレッシング工程とを有する半導体ウエハの研磨方法であって、
前記ドレッシング工程においてドレッシングされた前記研磨工具の表面状態を測定し、
その測定値により前記研磨工具のドレッシング終了を判定するようにしたことを特徴とする半導体ウエハの研磨方法。
【請求項2】 請求項1記載の半導体ウエハの研磨方法において、前記測定値は前記研磨工具の表面粗さ、前記研磨工具の平坦度、または前記研磨工具の表面の滑り摩擦抵抗であることを特徴とする半導体ウエハの研磨方法。」
b.(段落4?5)
「【0004】そこで、ウエハの表面を平坦に研磨するために、研磨剤を溶媒に懸濁させて、溶媒自体にウエハの表面を化学的にエッチング処理する能力を持たせつつ、研磨工具により研磨するようにしたCMP(Chemical Mechanical Polishing) 技術、つまり化学的機械研磨技術が適用されている。この技術により、ウエハの主面に形成された絶縁膜あるいは金属膜の凹凸を平坦化することが可能となる。
【0005】ウエハの主面に形成された凹凸をCMP技術によって研磨してウエハの主面を平坦化する場合には、研磨速度は研磨工具の表面状態がきわめて敏感に影響し、研磨加工が繰り返されると、研磨工具の表面状態が摩耗などによって劣化するので、研磨速度は研磨加工時間の経過に伴って低下する。」
c.(段落25)
「【0025】図1に示されように、研磨装置は研磨工具15の表面状態を測定するための表面状態測定機23を有し、この表面状態測定機23は、研磨盤13の上方にこれの径方向に延びて設けられたガイド部材24に沿って摺動自在に装着された移動部材25に取り付けられている。」
d.(段落42?43)
「【0042】次に、表面状態測定機23による研磨工具15の表面状態を検出する方式について説明する。表面状態を検出する方式としては、研磨工具15の表面粗さを測定する方式、平坦度を測定する方式および表面の滑り摩擦抵抗を測定する方式などがある。
【0043】表面粗さは、研磨工具15の表面が初期状態の多数の気孔を有する合成樹脂の状態と、目詰まりした状態との違いを捉えることで測定することができ、研磨工具15の表面に触針を接触させるようにした触針式と、研磨工具15の表面の光の反射率を検出するようにした光学的方式とのいずれかを適用して表面粗さを測定することができる。」
e.(段落59)
「【0059】さらに、ドレッサ21と研磨工具15とをXY2軸方向に相対的に移動させるようにし、ドレッシングが不十分な部分を集中的にドレッシングするようにしても良い。」

摘記事項bから、刊行物2における「研磨工具」とは、本件補正発明の「研磨パッド」に相当するものであることは明らかである。摘記事項c及びdからは、「表面状態測定機」が研磨パッド上を位置を相対的に変化させながら光を照射し、該光が照射された各領域の反射率を検出することにより表面状態を測定していることが理解される。また、摘記事項eの「ドレッシングが不十分な部分を集中的にドレッシングする」との記載からは、各領域の反射率に基いて研磨パッドの表面状態の分布を評価していることが明白である。
そこで、上記摘記事項を整理すると、刊行物2には、
「研磨パッド表面に位置を相対的に変化させて光を照射し、該光が照射された各領域の表面状態を前記各領域について求め、前記研磨パッドの表面状態の分布を評価する研磨パッドの表面状態評価方法。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)
が記載されていると認められる。

2.4 対比
刊行物1の摘記事項c中、段落22の記載からは、研磨パッドの反射率が研磨パッドの表面状態によって変化し、反射率と研磨能率とが関連することが理解されるから、刊行物1記載の発明において研磨パッドの反射率によって「研磨能率」を評価することは、「表面状態」を評価することにほかならない。また、本件補正発明の「面積率」と刊行物1記載の発明の「反射率」とは、共に表面状態を評価するための「光学的特性」である限りにおいて共通するから、刊行物1記載の発明で「反射率を測定する」ことは「光学的特性を測定する」ものであるということができる。
そうすると、両者の間には次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「研磨パッド表面に光を照射し、該光が照射された領域の光学的特性を求め、該求めた光学的特性を予め求めておいた研磨パッドの表面状態と光学的特性との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態を評価する研磨パッドの表面状態評価方法。」である点。
<相違点1>
光学的特性による領域の表面状態の評価は、前者では領域を撮像して画像信号を得、該画像信号を2値化して求めた、該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を該領域について求め、該面積率を予め求めておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて評価するものであるのに対し、後者ではこのようなものでない点。
<相違点2>
研磨パッドの表面状態の評価は、前者では研磨パッド表面に位置を相対的に変化させて光を照射し、照射された各領域ごとの表面状態を求めて表面状態の分布を評価するのに対し、後者ではこのようなものでない点。

2.5 判断
以下に、上記相違点について検討する。
2.5.1 <相違点1>について
光が照射された領域を撮像して画像信号を得、該画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を該領域について求め面積率を用いて領域ごとの表面状態を評価することは、例えば特開昭60-53121号公報、特開平5-346320号公報及び特開平10-103940号公報に見られるごとく、従来周知の技術であり、研磨パッドの表面状態を評価することに上記周知技術を採用することを阻害する理由も見当たらないため、相違点1に係る発明特定事項を本件補正発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

2.5.2 <相違点2>について
研磨パッド表面に位置を相対的に変化させて光を照射し、該光が照射された各領域の表面状態を前記各領域について求め、前記研磨パッドの表面状態の分布を評価する研磨パッドの表面状態評価方法は、刊行物2に記載されている。
刊行物2記載の事項は刊行物1記載の発明と同じく、研磨パッドの表面状態を評価するものであるから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して相違点2に係る発明特定事項を本件補正発明のものとすることは、当業者が容易になし得るものである。

2.5.3 まとめ
本件補正発明には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項ならびに従来周知の技術に基いて普通に予測される作用効果を上回る、格別のものを見出すこともできない。
よって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項ならびに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.6 むすび
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項ならびに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができるものであるため、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
3.1 本願発明
平成18年5月26日付の明細書を補正対象書類とする手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成17年10月28日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「研磨パッド表面に光を照射し、該光が照射された領域を撮像して画像信号を得、該画像信号を2値化して該画像内の明るい部分の画像全領域に占める面積率を求め、該求めた面積率を予め求めておいた研磨パッドの面粗さと面積率との関係を用いて前記研磨パッドの表面状態を評価することを特徴とする研磨パッドの表面状態評価方法。」

3.2 刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.3」に記載したとおりである。

3.3 対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、2.2に記載した発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記2.6に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項ならびに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし10に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-24 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-12 
出願番号 特願2000-35616(P2000-35616)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野田 達志  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 菅澤 洋二
豊原 邦雄
発明の名称 研磨パッドの表面状態評価方法及びその装置とそれを用いた薄膜デバイスの製造方法及びその製造装置  
代理人 ポレール特許業務法人  

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