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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1170013
審判番号 不服2007-17333  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 特願2005-365730「センサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日出願公開、特開2006-126212〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年4月22日(優先権主張平成15年10月3日)に出願した特願2004-127134号の出願の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成17年12月20日に分割して出願したものであって、平成19年5月17日付(発送日同年5月22日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年7月18日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成19年7月18日付の手続補正(以下、「本願補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本願補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本願補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
センサ本体部と、
前記センサ本体部と同一材料で形成された上部封止体と、
前記センサ本体部と同一材料で形成され、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサ装置。」
から
「【請求項1】
シリコンを基材とするセンサ本体部と、
シリコンを基材とする上部封止体と、
シリコンを基材とし、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する金属からなる貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサ装置。」
と補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すため、請求人が付したものである。また、平成19年4月5日付の手続補正は原審にて却下されている。)

2.補正の適否
上記の補正事項は、請求項1に係る発明特定事項である、上部封止体及び下部封止体の材料が、センサ本体部と「同一材料」で形成された点について、その材料を「シリコンを基材」とすることに限定し、同じく、請求項1に係る発明特定事項である、「貫通電路」の材料を「金属からなる」ものに限定するものである。
したがって、上記補正事項は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-20147号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「【0002】
【従来の技術】半導体加速度センサは、図3(a)に示す斜視図及び図3(b)に示すAーA断面図に見られるように、センサ部1、上部ストッパ部2及び下部ストッパ部3の三重構造をしていて、それぞれの外周部は接着部5で封止されている。センサ部1には、単結晶シリコンウエーハを加工して形成した厚肉のおもり部分4と薄肉の梁部分13とが有り、このおもり部分4に加速度が加わったときの振動によって梁部分13に生じるひずみにより加速度を検出するものである。上部ストッパ2とセンサ部1との間及び下部ストッパ3とセンサ部1との間の空隙は接着部5によりシールされ、おもり部分4の振動に対してエアダンピング効果により制振作用を及ぼすためのものである。
【0003】以下に、上記構造の半導体加速度センサの製造方法について説明する。先ず、シリコン製ストッパウエーハに、図4(a)に示すような全面格子状パターンの接着剤10を塗布する。このストッパウエーハ内のセンサ部に対応する部分には、ウエーハの表裏を貫通する通気孔8が予め設けられている。但し、ウエーハの外周部は製造工程中でウエーハを加工するときに、真空吸着によってウエーハハンドリングを行うための領域として用いるので、通気孔はウエーハ外周部には設けられていない。一方、単結晶シリコンウエーハに、例えばアルカリ性溶液などを用いた異方性エッチングにより、厚肉のおもり部分と薄肉の梁部分とを形成した構造のセンサウエーハを用意する。
【0004】次に、上下のストッパウエーハの間にセンサウエーハを挟んで重ね合せる。このときの位置決めは、顕微鏡を用いてそれぞれのウエーハに形成された目合せマークを合せることにより行う。
【0005】次いで、重ね合せたウエーハを加圧・加熱し、3枚のウエーハを接着する。その後、図5(a)及び(b)に示すように、ダイシングソーなどにより接着部の部分で切断し、個々のセンサを得る。」(段落【0002】?【0005】)
(2)「【0007】尚、上下のストッパウエーハは上述のとおり、センサウエーハとストッパウエーハとの間の間隙によりおもり部分の振動に対するエアダンピング効果をもたらすためのものであるので、平面度の良好な平板上のものであればシリコンウエーハに限らず、例えば石英板など他の材料を用いることができる。但し、製造工程中でセンサウエーハと共に加熱することがあることから、熱膨張率がセンサウエーハの熱膨張率と同等なシリコンウエーハが通常用いられる。尚また、センサウエーハとしては、梁部分がピエゾ抵抗効果を示すようにする必要から単結晶シリコンウエーハを用いなければならないが、ストッパウエーハに用いるシリコンウエーハは、必ずしも単結晶シリコンウエーハである必要はない。」(段落【0007】)
(3)図面の図3(b)には、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれてセンサ部1が設けられている構成が示されている。

上記摘記事項からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

<刊行物1記載の発明>
「単結晶シリコンを基材とするセンサ部1と、
シリコンを基材とする上部ストッパ2と、
シリコンを基材とし、上部ストッパ2との間にセンサ部1を設けた下部ストッパ3とを備え、
センサ部1は、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて重ね合わせて接着された半導体加速度センサ。」

4.対比
本願補正発明1と刊行物1記載の発明を対比する。
後者の「上部ストッパ2」及び「下部ストッパ3」は、これら2つのストッパとセンサ部1とが三重構造をしていて、それぞれの外周部は封止されていることからして(上記摘記事項「3.(1)」における段落【0002】)、前者の「上部封止体」、「下部封止体」にそれぞれに相当する。
また、後者の「半導体加速度センサ」は、前者の「センサ装置」と「センサ装置」である限りで一致し、後者の「単結晶シリコンを基材とするセンサ部1」は、前者の「シリコンを基材とするセンサ本体部」と、「シリコンを基材とするセンサ本体部」である限りで一致する。
更に、後者の「シリコンを基材とし、上部ストッパ2との間にセンサ部1を設けた下部ストッパ3」と、前者の「シリコンを基材とし、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体」とは、「シリコンを基材とし、上部封止体との間にセンサ本体部を設けた下部封止体」である限りで一致する。
そうすると、両者は次の一致点及び相違点1、2を有している。

<一致点>
「シリコンを基材とするセンサ本体部と、
シリコンを基材とする上部封止体と、
シリコンを基材とし、上部封止体との間にセンサ本体部を設けた下部封止体とを備えたセンサ装置。」

<相違点1>
本願補正発明1においては、下部封止体が上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞にセンサ本体部を収納するものであり、センサ本体部は上部封止体に固定されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、下部ストッパ3は上部ストッパ2と接合されておらず、センサ部1は上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて重ね合わせて接着されている点。

<相違点2>
本願補正発明1においては、上部封止体が、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する金属からなる貫通電路とを備えているのに対し、刊行物1記載の発明においては、実装用電極及び貫通電路に相当する構成を具備していない点。

5.判断
<相違点1について>
センサ装置において、シリコンを基材とする2つの部材のうちの一方の部材が他方の部材に接合されることによりこれら2つの部材の内部に空洞を形成し、その空洞にシリコンを基材とするセンサ本体を収納し、且つ、センサ本体部はこれら2つの部材のうちの一方に固定することは、例えば、特開2001-305152号公報(特にその段落【0033】?【0034】、及び図1(b)を参照。)、特開平7-201905号公報(特にその段落【0058】?【0059】、【0063】、及び図18を参照。)、特開平10-19923号公報(特にその段落【0002】?【0007】、及び図13?15を参照。)に記載されるように周知の技術である。そして、刊行物1記載の発明と当該周知の技術とは、シリコンを基材とする2つの部材の間にシリコンを基材とするセンサ本体部を設けた点で共通していることからすれば、刊行物1記載の発明に対して上記周知の技術を適用して上記相違点1に係る特定事項を得ることは、当業者が容易に成し得たものである。

<相違点2について>
刊行物1の上記摘記事項「3.(1)」における段落【0002】には、「・・・おもり部分4に加速度が加わったときの振動によって梁部分13に生じるひずみにより加速度を検出するものである。」と記載されている。当該記載事項、及び、上記摘記事項「3.(3)」における、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれてセンサ部1が設けられている構成、並びに、梁部分13に生じるひずみの検出部と外部の回路装置とが電気的に接続されることは技術常識であることからみて、刊行物1記載の発明においては、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて設けられているセンサ部1と、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間の空間の外部とを繋ぐ電路、及び、センサ部、上部ストッパ2、下部ストッパ3よりなる加速度センサと外部の回路装置を繋ぐための電極が加速度センサ上に適宜設けられているものとするのが相当である。
そして、積層されているシリコン基板に、その基板を貫通する金属からなる貫通電路を設けることは、例えば、特開2002-158191(特にその段落【0004】、【0018】を参照。)、特開2003-140064号公報(特にその段落【0031】?【0032】を参照。)に記載されるように周知の技術である。してみれば、刊行物1記載の発明に対して上記周知の技術を適用して上記相違点2に係る特定事項を得ることは、当業者が容易に成し得たものである。

<本願補正発明1の作用効果について>
そして、本願補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本願補正発明1は刊行物1記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成19年7月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成18年12月25日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
<本願発明1>
「【請求項1】
センサ本体部と、
前記センサ本体部と同一材料で形成された上部封止体と、
前記センサ本体部と同一材料で形成され、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサ装置。」

2.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び同刊行物に記載された発明・事項は、前記、「第2 3.(1)ないし(3)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、前記「第2」で検討した本願補正発明1の発明特定事項である、上部封止体及び下部封止体の材料が、センサ本体部と「同一材料」で形成された点について、その材料を「シリコンを基材」とする限定、及び、同発明特定事項である、「貫通電路」の材料を「金属からなる」ものとする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明1が前記「第2 5.」に記載したとおり、前記刊行物1記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明1も同様の理由により、刊行物1記載の発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-23 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願2005-365730(P2005-365730)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 智利  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 上原 徹
岡田 卓弥
発明の名称 センサ装置  
代理人 樋口 次郎  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  

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