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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1170016
審判番号 不服2007-17336  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 特願2005-365734「センサシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月25日出願公開、特開2006-133236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年4月22日(優先権主張平成15年10月3日)に出願した特願2004-127134号の出願の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成17年12月20日に分割して出願したものであって、平成19年5月17日付(発送日同年5月22日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年7月18日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成19年7月18日付の手続補正(以下、「本願補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本願補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本願補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
センサ装置と、前記センサ装置を駆動するための集積回路とを備えるセンサシステムであって、
前記センサ装置は、センサ本体部と、前記センサ本体部と同一材料で形成された上部封止体と、前記センサ本体部と同一材料で形成され、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサシステム。
【請求項2】
前記材料が半導体であること
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記材料がシリコンを基材とする材料であり、
前記上部封止体と前記下部封止体の接合には、シリコン基板の貼り合わせ技術が用いられていること
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。」
から
「 【請求項1】
センサ装置と、前記センサ装置を駆動するための集積回路とを備えるセンサシステムであって、
前記センサ装置は、シリコンを基材とするセンサ本体部と、シリコンを基材とする上部封止体と、シリコンを基材とし、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する金属からなる貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサシステム。
【請求項2】
前記センサ装置と前記集積回路とを互いに積層した状態で支持するように前記センサ装置と前記集積回路との間に介在し、且つ前記センサ装置と前記集積回路との電気的接続を中継するMID基板と、
前記MID基板に設けられ前記MID基板を通じて前記センサ装置と前記集積回路との少なくとも一方に電気的に接続された実装用外部電極とを備えること
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項3】
前記集積回路は、前記センサ装置と接続されて積層体を形成し、
前記センサ装置と前記集積回路との間に介在することなく前記積層体を支持するMID基板と、
前記MID基板に設けられ前記MID基板を通じて前記センサ装置と前記集積回路との少なくとも一方に電気的に接続された実装用外部電極とを備えること
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項4】
前記集積回路は、前記センサ装置と接続されて積層体を形成しており、該積層体に実装用外部電極が設けられたこと
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項5】
前記上部封止体と前記下部封止体の接合には、シリコン基板の貼り合わせ技術が用いられていること
を特徴とする請求項1に記載のセンサシステム。
【請求項6】
前記実装用外部電極が階段状に屈曲したピンであること
を特徴とする請求項3に記載のセンサシステム。
【請求項7】
前記実装用外部電極が、前記集積回路の表面のうち前記センサ装置に面する側とは反対側に設けられており、
前記集積回路が、前記センサ装置を駆動するための回路が形成された集積回路基板と、
前記集積回路基板の側面を這うことにより前記実装用外部電極と前記センサ装置とを電気的に接続する第1配線パターンを更に備えること
を特徴とする請求項4に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記実装用外部電極が、前記センサ装置の表面のうち前記集積回路に面する側とは反対側に設けられており、
前記センサ装置が、前記上部封止体の側面と前記下部封止体の側面とを這うことにより前記実装用外部電極と前記集積回路とを電気的に接続する第2配線パターンを更に備えること
を特徴とする請求項4に記載のセンサシステム。」
と補正された。(なお、平成19年4月5日付の手続補正は原審にて却下されている。)

2.補正の目的の適否
本願補正は、補正前の請求項の数が3であったものを、補正後の請求項の数を8に増加するものである。そして、その内容からみて、当該補正が、補正前の請求項が複数の請求項を択一的に引用して記載してあったものを、その引用する請求項を減じた上で独立して分けて記載することで請求項の数が増加したものでもない。
また、補正後の請求項2及び3に係る発明は、「MID基板」及び「実装用外部電極」を備えることを発明特定事項とし、補正後の請求項4、6ないし8に係る発明は、「実装用外部電極」を備えることを発明特定事項としているが、補正前の請求項1ないし3に係る発明においては、「MID基板」、「実装用外部電極」を発明特定事項とするものではない。
してみれば、これら請求項2ないし4、6ないし8に係る補正は、明らかに、特許請求の範囲を減縮するものではなく、また、請求項の削除にも、誤記の訂正にも、明りょうでない記載の釈明にも該当しない。

3.むすび
以上のとおり、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成19年7月18日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成18年12月25日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
<本願発明1>
「 【請求項1】
センサ装置と、前記センサ装置を駆動するための集積回路とを備えるセンサシステムであって、
前記センサ装置は、センサ本体部と、前記センサ本体部と同一材料で形成された上部封止体と、前記センサ本体部と同一材料で形成され、前記上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体とを備え、
前記センサ本体部は、前記上部封止体に固定され、
前記上部封止体は、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する貫通電路とを備えること
を特徴とするセンサシステム。」

2.刊行物記載の発明・事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-20147号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】半導体加速度センサは、図3(a)に示す斜視図及び図3(b)に示すAーA断面図に見られるように、センサ部1、上部ストッパ部2及び下部ストッパ部3の三重構造をしていて、それぞれの外周部は接着部5で封止されている。センサ部1には、単結晶シリコンウエーハを加工して形成した厚肉のおもり部分4と薄肉の梁部分13とが有り、このおもり部分4に加速度が加わったときの振動によって梁部分13に生じるひずみにより加速度を検出するものである。上部ストッパ2とセンサ部1との間及び下部ストッパ3とセンサ部1との間の空隙は接着部5によりシールされ、おもり部分4の振動に対してエアダンピング効果により制振作用を及ぼすためのものである。
【0003】以下に、上記構造の半導体加速度センサの製造方法について説明する。先ず、シリコン製ストッパウエーハに、図4(a)に示すような全面格子状パターンの接着剤10を塗布する。このストッパウエーハ内のセンサ部に対応する部分には、ウエーハの表裏を貫通する通気孔8が予め設けられている。但し、ウエーハの外周部は製造工程中でウエーハを加工するときに、真空吸着によってウエーハハンドリングを行うための領域として用いるので、通気孔はウエーハ外周部には設けられていない。一方、単結晶シリコンウエーハに、例えばアルカリ性溶液などを用いた異方性エッチングにより、厚肉のおもり部分と薄肉の梁部分とを形成した構造のセンサウエーハを用意する。
【0004】次に、上下のストッパウエーハの間にセンサウエーハを挟んで重ね合せる。このときの位置決めは、顕微鏡を用いてそれぞれのウエーハに形成された目合せマークを合せることにより行う。
【0005】次いで、重ね合せたウエーハを加圧・加熱し、3枚のウエーハを接着する。その後、図5(a)及び(b)に示すように、ダイシングソーなどにより接着部の部分で切断し、個々のセンサを得る。」(段落【0002】?【0005】)
イ 「【0007】尚、上下のストッパウエーハは上述のとおり、センサウエーハとストッパウエーハとの間の間隙によりおもり部分の振動に対するエアダンピング効果をもたらすためのものであるので、平面度の良好な平板上のものであればシリコンウエーハに限らず、例えば石英板など他の材料を用いることができる。但し、製造工程中でセンサウエーハと共に加熱することがあることから、熱膨張率がセンサウエーハの熱膨張率と同等なシリコンウエーハが通常用いられる。尚また、センサウエーハとしては、梁部分がピエゾ抵抗効果を示すようにする必要から単結晶シリコンウエーハを用いなければならないが、ストッパウエーハに用いるシリコンウエーハは、必ずしも単結晶シリコンウエーハである必要はない。」(段落【0007】)
ウ 図面の図3(b)には、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれてセンサ部1が設けられている構成が示されている。

上記摘記事項イにおける「センサウエーハとしては、・・・単結晶シリコンウエーハを用いなければならないが、ストッパウエーハに用いるシリコンウエーハは、必ずしも単結晶シリコンウエーハである必要はない。」の記載からみて、センサウエーハ及びストッパウエーハを共に単結晶シリコンウエーハとしてもよいこと、すなわち、ストッパウエーハをセンサウエーハと同一材料で形成してもよいことが読み取れる。そして、ストッパウエーハは切断されることで、上部ストッパ部2及び下部ストッパ部3となるのである(上記摘記事項アを参照)。
そうすると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。

<刊行物1記載の発明>
「半導体加速度センサであって、
半導体加速度センサは、センサ部1と、センサ部1と同一材料で形成された上部ストッパ2と、センサ部1と同一材料で形成され、上部ストッパ2との間にセンサ部1を設けた下部ストッパ3とを備え、
センサ部1は、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて重ね合わせて接着された半導体加速度センサ。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平8-32090号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、振動計測や車両制御や運動制御などに利用される加速度、角速度などの慣性力を検出する慣性力センサ並びにその製造方法に関するものである。」(段落【0001】)
イ 「【0065】図1において、3は梁、4は質量体、5はアンカー、6は固定電極、7は固定電極、8は金属電極、9はシリコンからなる基板である。梁3、質量体4およびアンカー5は一体化形成され振動体を構成する。さらに振動体と、固定電極6と、固定電極7とで構造体を構成する。構造体は、基板9に絶縁膜を介して接合された表面の結晶面が(110)である単結晶シリコンからなるウエハを異方性エッチングすることにより作る。振動体には電極が形成されている。これにより質量体4は固定電極6と、固定電極7との間を変位することが可能な可動電極を構成する。・・・」(段落【0065】)
ウ 「【0069】図2(c)に上記検出回路の一例を示す。AC信号源12と反転増幅器13により固定電極6と、固定電極7とにそれぞれ位相の反転した電圧を加える。・・・質量体4に流れる電流をチャージアンプ15により検出し、これを電圧に変換する。これに後段の同期検波器などからなる復調器16により復調される。この後、LPFなどのフィルタ17を通して質量体4の変位による2つのコンデンサの差動容量変化に比例した電圧信号を出力する。・・・」
エ 「【0070】図3に実施例1の加速度センサの製造方法について説明する。図3において、18および19は酸化膜、20は単結晶シリコンからなり結晶面が(110)面を有するデバイスウエハ、21はエッチング溝、22および23は酸化膜または窒化膜などからなるパッシベーション膜、24はp型またはn型の不純物拡散層、25は加速度を検出するための検出回路IC、26は検出回路IC25を組み込むためのシリコンIC基板、27はボンディングワイヤーである。まず、デバイスウエハ20上に厚さ3μm程度の酸化膜18を堆積した後、半導体リソグラフィー技術を用いて酸化膜18上にパターンを形成する。その後ドライエッチングまたはウエットエッチングにより酸化膜18表面から2μmから3μm程度の深さをもつエッチング溝21を形成する。また、エッチング溝21は完成後の質量体4および梁3を自由に振動させるためのものであるから、基板9上の酸化膜19の上にエッチング溝21を設けてもよい。その後、このデバイスウエハ20と酸化膜19を堆積した基板9を融合接合(ヒュージョンボンディング)技術を用いて両者を接合する(図3(a))。」(段落【0070】)
オ 「【0078】または、上述のように加速度を検出するための検出回路をIC化した検出回路IC25を組み込んだシリコンIC基板26を別に用意するのではなく、デバイスウエハ20にあらかじめ検出回路IC25を組み込んでおくのでもよい。組み込みの方法として、図3(b)工程の終了後デバイスウエハ20の上に検出回路IC25を鏡面化された面に作り込めばよい。または、初めからデバイスウエハ20にIC化された検出回路IC25を組込んでおくのでもよい。・・・」
カ 「【0104】また、基板9がシリコンからなる場合、基板9と下部固定電極48および下部固定電極49との間を絶縁する必要があるため、基板9の表面に酸化膜または窒化膜からなる絶縁膜を堆積し、下部固定電極48および下部固定電極49のパターンを形成後、蒸着またはスパッタなどにより下部固定電極48および下部固定電極49を選択メタライズする。または、下部固定電極48および下部固定電極49のレジストパターンを形成後蒸着またはスパッタを行いリフトオフにより下部固定電極48および下部固定電極49を形成するのでもよい。または、酸化膜または窒化膜などからなる絶縁膜をマスクとして基板9自体にp型またはn型の不純物を拡散させることにより形成される不純物拡散層を下部固定電極48および49としてもよい(図示せず)。この後、デバイスウエハ20と基板9をアライメントし、低温融合接合により両者を接合する。」(段落【0104】)
キ 「【0108】以上の工程により回転運動をする物体の角速度を検出する角速度センサの構造体が完成する。この工程は、前述の直線運動する物体の加速度を検出する加速度センサの製造工程と共通部分が多いので、直線運動する物体の加速度を検出する加速度センサの製造工程を用いて回転運動をする物体の角速度を検出する角速度センサを製造することが可能である。また角速度を検出するための検出回路IC25を基板9に作り込むことも可能である。」(段落【0108】)

上記摘記事項ウにおける「図2(c)に上記検出回路の一例を示す。AC信号源12と反転増幅器13により固定電極6と、固定電極7とにそれぞれ位相の反転した電圧を加える。・・・」の記載、及び、摘記事項オにおける「加速度を検出するための検出回路をIC化した検出回路IC25」の記載から、検出回路IC25は加速度センサを駆動するための回路を含むものであることが読み取れる。
また、上記摘記事項ア、イ、エより、単結晶シリコンからなるデバイスウエハ20には加速度により変位可能な質量体4が形成されること、摘記事項カより、デバイスウエハ20はシリコンからなる基板9に接合されること、摘記事項キより、基板9には角速度を検出するための検出回路IC25を作り込むことも可能であることが読み取れる。
してみれば、刊行物2には、次の技術が記載されていると認める。
「加速度を検出するセンサにおいて、加速度により変位可能な質量体4が形成される単結晶シリコンからなるデバイスウエハ20が接合されるシリコンからなる基板9にセンサを駆動するための回路を含む検出回路IC25を作り込むこと。」

3.対比
本願補正発明1と刊行物1記載の発明を対比する。
後者の「上部ストッパ2」及び「下部ストッパ3」は、これら2つのストッパとセンサ部1とが三重構造をしていて、それぞれの外周部は封止されていることからして(上記摘記事項「2.(1) ア」における段落【0002】を参照。)、前者の「上部封止体」、「下部封止体」にそれぞれに相当する。
また、後者の「半導体加速度センサ」と、前者の「センサ装置と、当該センサ装置を駆動するための集積回路とを備えるセンサシステム」とは、「センサ装置」である限りで一致し、後者の「上部ストッパ2との間にセンサ部1を設けた下部ストッパ3」と、前者の「上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞に前記センサ本体部を収納する下部封止体」とは、「上部封止体との間にセンサ本体部を設けた下部封止体」である限りで一致する。

そうすると、両者は次の一致点及び相違点1ないし4を有している。

<一致点>
「センサ本体部と、センサ本体部と同一材料で形成された上部封止体と、センサ部1と同一材料で形成され、上部封止体との間にセンサ本体部を設けた下部封止体とを備えたセンサ装置。」

<相違点1>
本願補正発明1は、センサ装置と、当該センサ装置を駆動するための集積回路とを備える「センサシステム」であるのに対し、刊行物1記載の発明においては、当該センサ装置を駆動するための集積回路に相当する構成を備えておらず、「センサシステム」ではなく「センサ」である点。

<相違点2>
本願補正発明1においては、下部封止体が上部封止体と接合されることによりその内部に形成される空洞にセンサ本体部を収納するものであり、センサ本体部は上部封止体に固定されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、下部ストッパ3は上部ストッパ2と接合されておらず、センサ部1は上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて重ね合わせて接着されている点。

<相違点3>
本願補正発明1においては、上部封止体が、その外側表面に設けられた実装用電極と、前記センサ本体部と前記実装用電極とを電気的に接続しそれを貫通する金属からなる貫通電路とを備えているのに対し、刊行物1記載の発明においては、実装用電極及び貫通電路に相当する構成を具備していない点。

4.判断
<相違点1について>
刊行物2には、上記摘記事項「2.(2)」で述べたとおり、「加速度を検出するセンサにおいて、加速度により変位可能な質量体4が形成される単結晶シリコンからなるデバイスウエハ20が接合されるシリコンからなる基板9にセンサを駆動するための回路を含む検出回路IC25を作り込むこと。」の技術が記載されている。そして、刊行物1記載の発明と当該刊行物2に記載のセンサとは、シリコンを基材とするセンサ本体部をシリコンを基材とする基板に接合したセンサである点で共通していることからすれば、刊行物1記載の発明に対して上記刊行物2に記載の技術を適用して、刊行物1に記載の「センサ」を、センサを駆動するための回路を含む検出回路ICをも備える「センサシステム」とすることは、当業者が容易に成し得たものである。

<相違点2について>
センサ装置において、シリコンを基材とする2つの部材のうちの一方の部材が他方の部材に接合されることによりこれら2つの部材の内部に空洞を形成し、その空洞にシリコンを基材とするセンサ本体を収納し、且つ、センサ本体部はこれら2つの部材のうちの一方に固定することは、例えば、特開2001-305152号公報(特にその段落【0033】?【0034】、及び図1(b)を参照。)、特開平7-201905号公報(特にその段落【0058】?【0059】、【0063】、及び図18を参照。)、特開平10-19923号公報(特にその段落【0002】?【0007】、及び図13?15を参照。)に記載されるように周知の技術である。そして、刊行物1記載の発明と当該周知の技術とは、シリコンを基材とする2つの部材の間にシリコンを基材とするセンサ本体部を設けた点で共通していることからすれば、刊行物1記載の発明に対して上記周知の技術を適用して上記相違点2に係る特定事項を得ることは、当業者が容易に成し得たものである。

<相違点3について>
刊行物1の上記摘記事項「2.(1) ア」における段落【0002】には、「・・・おもり部分4に加速度が加わったときの振動によって梁部分13に生じるひずみにより加速度を検出するものである。」と記載されている。当該記載事項、及び、上記摘記事項「2.(2) ウ」における、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれてセンサ部1が設けられている構成、並びに、梁部分13に生じるひずみの検出部と外部の回路装置とが電気的に接続されることは技術常識であることからみて、刊行物1記載の発明においては、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間に挟まれて設けられているセンサ部1と、上部ストッパ2と下部ストッパ3との間の空間の外部とを繋ぐ電路、及び、センサ部、上部ストッパ2、下部ストッパ3よりなる加速度センサと外部の回路装置を繋ぐための電極が加速度センサ上に適宜設けられているものとするのが相当である。
そして、積層されているシリコン基板に、その基板を貫通する金属からなる貫通電路を設けることは、例えば、特開2002-158191(特にその段落【0004】、【0018】を参照。)、特開2003-140064号公報(特にその段落【0031】?【0032】を参照。)に記載されるように周知の技術である。してみれば、刊行物1記載の発明に対して上記周知の技術を適用して上記相違点3に係る特定事項を得ることは、当業者が容易に成し得たものである。

<本願補正発明1の作用効果について>
そして、本願補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明、刊行物2に記載の技術及び上記周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本願補正発明1は刊行物1記載の発明、刊行物2に記載の技術及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-23 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願2005-365734(P2005-365734)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 智利  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 岡田 卓弥
上原 徹
発明の名称 センサシステム  
代理人 樋口 次郎  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  

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