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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1170030
審判番号 不服2005-4814  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-18 
確定日 2007-12-28 
事件の表示 特願2000-240693「パチンコゲーム機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62093〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月14日に出願した特願平5-313676号の一部を平成12年8月9日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成17年3月18日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「遊技媒体がはいったときに特定の入賞条件を満たすときに特定の入賞状態とする複数の入賞部と、
前記複数の入賞部に対応して設けられ、前記入賞部が特定の入賞条件を満たすことを示す特定表示として図柄の表示を行なう特定表示部と、
前記特定表示部に対して前記特定表示の表示制御を行なう特定表示制御部とを有し、
前記特定表示制御部は、動作開始信号があると前記特定表示部の各々に図柄を回転表示し、動作停止信号があると停止状態の図柄を表示させるように制御することを特徴とするパチンコゲーム機。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭64-49588号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
▽記載事項1:「遊技盤面に設けた特定入賞口への入賞その他の条件が達成されたとき一定時間遊技者に有利な開成状態となる変動入賞装置を備えたパチンコ遊技機において、前記遊技盤面上の複数の特定入賞領域に対応した位置に表示器を配置し、前記変動入賞装置が前記開成状態となっているとき、前記遊技盤面上に打ち出された遊技球が、前記複数の特定入賞領域のいずれかに対応する表示器が所定の表示動作をしている間に当該特定入賞領域を通った場合には、前記変動入賞装置を所定の条件下で開成する動作の終了後再び該動作を行なうように構成したことを特徴とするパチンコ遊技機。」(特許請求の範囲、請求項1)、
▽記載事項2:「前記複数の特定入賞領域は前記変動入賞装置内に設けられた複数個の入賞口で構成され、前記表示器は該入賞口の各々に対応する位置に配置された複数個の表示素子から成り、各表示素子を所定時間ずつ順次又はランダムに作動させることにより、対応する入賞口が前記変動入賞装置を所定の条件下で開成する動作の終了後再び該動作を行なわせる入賞領域となっていることを表示する特許請求の範囲第1項記載のパチンコ遊技機。」(特許請求の範囲、請求項2)、
▽記載事項3:「本発明のパチンコ遊技機において、変動入賞装置は特定入賞口への入賞等により開成状態となるが、その開成動作には、開き続ける場合(開放)だけでなく、所定時間開いたら次に閉じてまた開くという開閉繰返し動作も含まれる。このような開成動作中、複数の特定入賞領域は、各々に対応する表示器が所定の表示動作をしている間だけVゾーンとなり、それ以外は通常の入賞領域として機能する。換言すれば、変動入賞装置が上記の開成状態となっていて打球が特定入賞領域に入賞しても、対応する表示器が所定の表示動作をしていなければ通常の入賞となり、V継続条件は達成されない。従って、例えば変動入賞装置内に設けた複数の入賞口を適宜Vゾーンとして利用することができる。また、特定入賞領域がVゾーンである間、対応する表示器が所定の表示動作をすることにより、遊技者はVゾーンを認識できる。このようなVゾーンに打球が入賞した場合には、変動入賞装置を上記のように所定の条件下で開成する動作の終了後再び該動作を行なうことにより、V継続状態となる。」(第2頁左欄下段第17行?同頁右欄下段第17行)、
▽記載事項4:「第1図・・・のパチンコ機lの遊技盤面2には、・・・チューリップ3L、3R及び一般の入賞口4L、4Rが・・・配設されると共に、特定入賞口5L、5R及び5Cが・・・配設されている。遊技盤面2・・・には、可変表示装置6及び変動入賞装置7が・・・設けられている。特定入賞口5L、5R及び5Cは可変表示装置6を始動させるためのスタート孔であり、これに打球が入ると、・・・特定入賞球検出器8(第5図)がその打球(特定入賞球)を検出し、可変表示装置6を作動させるようになっている。」(第2頁右欄下段第19行?第3頁左欄上段第12行)、
▽記載事項5:「可変表示装置6は、・・・、第2図に示すように、数字を可変表示する7セグメント発光ダイオード(LED)から成る表示器23L、23Rを配置すると共に、・・・円筒形のリール25を・・・配置することにより構成される。」(第3頁右欄上段第12?20行)、
▽記載事項6:「変動入賞装置7は、第4図に示すように・・・横長長方形の開口32の正面側に、はぼ同形のプレート33を開閉自在に取り付けることで形成された所謂アタッカである。その開口32内の下部には、3つの入賞口34L、34C、34Rが設けられると共に、各入賞口に入った打球を検出する入賞球検出器35L、35C、35Rが配置されている。・・・。一方、3つの入賞口34L、34C、34Rの各々と対応する部位(この場合、各入賞口の真上)には、・・・Vゾーンを表示するために所定時間作動する表示素子として、3個のランプ36L、36C、36Rが配置されている。
プレート33は、・・・、通常は第4図(A)のように閉じて入賞口34を塞いでいるが、・・・アタッカ開成信号により・・・、第4図(A)の閉じた状態から同図(B)のように開いた位置まで回動し、入賞口34への入賞を可能にする。すなわちアタッカを遊技者に有利な開成状態とする。」(第3頁左欄下段第10行?同頁右欄下段第15行)、
▽記載事項7:「可変表示装置6及び変動入賞装置7は、第5図に示す制御手段40によって制御される。この制御手段40は、・・・特定入賞球検出器8、停止スイッチ15、及び変動入賞装置(アタッカ)7の入賞球検出器35からの信号を入力とし、各々の入力信号に応じて、・・・7セグメント表示器23L、23R及び回転リール駆動部26と・・・駆動モータ37の作動を制御する信号を出力する一方、変動入賞装置7のランプ36L、36C、36Rの点灯を制御する信号を出力する機能を有する。
この制御手段40は、次の構成要素から成る。
(1)・・・7セグメント表示器23L、23R及び回転リール駆動部26を始動させ、・・・、特定の表示パターン(・・・)にて停止した時は、アタッカのプレート33を一定時間(例えば20秒間)開くためのアタッカ開成信号と、アタッカのランプ36L、36C、36Rを作動させるための表示指令信号とを出力する可変表示器制御部41、
(2)上記制御部41から出力される表示指令信号に応じてアタッカのランプ36L、36C、36Rをそれぞれ所定時間ずつ順次又はランダムに点灯させる表示素子制御回路42、
(3)上記表示素子制御回路42がランプ36L、36C又は36Rを点灯している間に、対応する入賞球検出器35L、35C又は35Rが検出信号を発生したかどうかを判定し、点灯中のランプに対応する入賞球検出器が検出信号を発生した場合は、アタッカのプレート33を閉成後再び開くためのアタッカ開成信号を出力する判定回路43、
(4)上記判定回路43からのアタッカ開成信号を所定時間遅延させる遅延回路44、
(5)・・・、プレート33を閉じるためのアタッカ閉成信号を出力するカウンタ45、及び
(6)上記可変表示器制御部41又は遅延回路44からのアタッカ開成信号に応じて、プレート33を開く方向にモータ37を駆動する信号を出力する一方、カウンタ45からのアタッ力閉成信号に応じてプレート33を閉じる方向にモータ37を駆動する信号を出力するモータ駆動回路46。」(第3頁右欄下段第19行?第4頁左欄下段第13行)、
▽記載事項8:「表示素子制御回路42は、例えば第6図に示すように、3個のランプ36L、36C、36Rに対し、それぞれ所定の周期(例えば3秒間)で順次点灯と消灯を繰り返す駆動信号を出力する。図では、ランプ36L、36C、36Rをそれぞれランプ1、2、3と表記している。この場合、各ランプ36L、36C、36Rの点灯時間は互いに重複しないように予め設定され(例えば1秒間ずつ)、その点灯時間中、対応する入賞口34L、34C、34Rは・・・V継続条件を与えるVゾーンとなっている。なお、各ランプ36L、36C、36Rの点灯は、周期的且つ一定の順序で行わなくてもよく、それぞれ異なる時間でランダムに点灯させるようにしてもよい。
また、制御手段40において遅延回路44を設けたのは、次の理由による。すなわち、実施例のアタッカでは、プレート33の開放は一定時間経過するか又は3個の入賞口34L、34C、34Rへの入賞球数の合計が一定値に達することにより終了するが、プレート33の開放中にVゾーンとなっている入賞口34L、34C又は34Rに打球が入賞してV継続条件が達成された場合には、プレート33を一旦閉じてから所定時間後に再び開くようにしており、その間の時間は例えば0.8秒に設定される。このため、判定回路43から出力されるV継続のためのアタッカ開成信号を同じ時間(例えば0.8秒)遅延させてモータ駆動回路46に送ることが必要であり、そのための手段として遅延回路44を設けたものである。
制御手段40は上記のように構成されるが、その構成要素41?46はマイクロプロセッサ(CPU)として単一の集積回路(IC)にまとめることができ、上記の特定時間や他の時間はプログラムにより任意に設定することができる。」(第4頁左欄下段第14行?第5頁左欄上段第8行)、
▽記載事項9:「通常の遊技状態では、可変表示器6はその表示を任意の表示パターンに固定しており、他方、変動入賞装置7はプレート33が閉じて入賞口34L、34C及び34Rを塞いでおり、遊技者に不利な状態となっている。
この状態で、特定入賞口5L、5R及び5Cのいずれかに打球が入ると、・・・、7セグメント表示器23L、23R及び回転リール駆動部26を始動させ、可変表示部6の表示窓に現われる数字や図柄が変化する・・・停止スイッチ15が押された時・・・、或は・・・一定時間が経過した時、・・・いずれかの表示パターンに停止する。この停止時の表示態様が特定のパターンである場合には、そのパターンに応じて予め定めた時間だけアタッカを遊技者に有利な状態にするためのアタッカ開成信号が、・・・モータ駆動回路46に送られ、モータ37を駆動してプレート33を第4図(B)のように開く、その結果、打球はアタッカの入賞口34L、34C、34Rのいずれかに入賞することができ、」(第5頁左欄上段第11行?同頁右欄上段第17行)、
▽記載事項10:「アタッカのランプ36L、36C、36Rは、プレート33が開いている間ランプ制御回路42からの出力により、第6図に示すように所定の周期で点灯と消灯を繰り返すが、その点灯中は、対応する入賞口34L、34C又は34RがVゾーンとなっている。従って、いずれかのランプの点灯中に打球が対応する入賞口に入ると、判定回路43はV継続のためのアタッカ開成信号を出力する。この信号は、遅延回路44で所定時間遅延してモータ駆動回路46に送られる。そのため、アタッカプレート33は、開成状態から一旦閉成後再び開成状態となり、遊技者に有利な状態が継続することになる。
上記の開成状態となったアタッカの3個の入賞口34L、34C、34Rに合計で一定個数の打球が入賞し、カウンタ45がカウントアツプした時は、カウンタ45からのアタッカ閉成信号により、・・・、プレート33を第4図(A)の閉成状態に戻す。」(第5頁左欄下段第2行?同頁右欄上段第1行)、
▽記載事項11:「実施例は、アタッカを所定の条件下で開成する動作の終了後再び該動作を行なうV継続条件を与えるため、アタッカ内の複数の入賞口を各々に対応するランプが点灯している時間だけVゾーンに設定することにより、Vゾーンを変化させると共に、Vゾーンになっている入賞口の位置と時間を遊技者が認識できるようにしたものである。
なお、上記実施例では、変動入賞装置の入賞口がVゾーンとなっていることを示す表示器としてランプを用いているが、これに代えて7セグメントLEDを使用してもよい。その場合は、LEDが特定の数字、例えば“7”を表示した時、対応する入賞口がVゾーンとなるようにする。」(第5頁右欄下段第2?15行)、
▽記載事項12:「Vゾーン表示器としては、更に・・・種々の表示手段を用いることができる。
まず、第7図に示すように、Vゾーンとする3つの特定入賞領域に対応する位置(例えば第4図のアタッカの場合、ランプ36L、36C及び36Rの位置)に、それぞれ一対の色違い(例えば赤と青)のランプ51a、51bを配置し、アタッカが開成状態になったときは、2色のランプの一方(例えば赤ランプ51a)を点灯し、各一対のランプに対応する特定入賞領域をVゾーンとするときは、他方のランプ(例えば青ランプ51b)を点灯させる。
そのため、・・・、第5図の表示手段40において表示素子制御回路42の代わりに、各ランプ51a、51bの表示を制御する一対の表示制御回路52a、52bを設ける。・・・。
かくして、アタッカが開成状態になったときは赤ランプ51aが点灯し、各一対のランプに対応する特定入賞領域がVゾーンとなったときは青ランプ51bが点灯し、この点灯中にVゾーンに打球が入賞した時は、入賞球検出器35L、35C又は35Rからの検出信号と青ランプ表示制御回路52bからの出力により、AND素子53L、53C又は53Rが出力するので、、判定回路43でV継続を判定することができる。
また、Vゾーン表示器として使用されるランプやLEDその他の表示素子は、円形やその他任意の形状に多数配置し、それらのうち特定の表示素子を点灯し、或はいくつかの表示素子で所定のパターンを表わすこと等により、Vゾーンを表示することもできる。」(第5頁右欄下段第16行?第6頁右欄上段第13行)、
▽記載事項13:「第8図では、Vゾーン表示器として特定の絵柄を表わした表示板61L、61C及び61Rを遊技盤面に出没自在に配置し、各表示板は通常は遊技盤面から引込んでいるが、対応する特定入賞領域をVゾーンとするときは、遊技盤面に現われるようにする。
そのため、・・・、第5図の・・・表示素子制御回路42の代わりに、各モータ62の駆動を制御するモータ駆動制御回路64L、64C及び64Rを設け、これらの制御回路の出力を第5図の判定回路43に入力するようにする。
かくして、アタッカが開成状態で、特定入賞領域がVゾーンとなったときは、対応する駆動制御回路64L、64C又は64Rからの出力でモータ62を駆動し、表示板61L、61C又は61Rの絵柄を遊技盤面に表わすことにより、Vゾーンを表示する。そして、打球がVゾーンに入賞した時は、入賞球検出器35L、35C又は35Rからの検出信号とモータ駆動制御回路64L、64C又は64Rからの出力により、判定回路43でV継続を判定することができる。」(第6頁右欄上段第14行?同頁左欄下段第17行)、
▽記載事項14:「図示の実施例について・・・、本発明はこれに限られるものではない。
例えば、変動入賞装置を所定の条件下で開成する動作は、上記のようにプレートを開き続ける開放動作に限らず、所定時間開いたら次に閉じてまた開くという開閉繰返し動作であってもよい。
また、Vゾーンとなる特定入賞領域は、変動入賞装置内に設けた入賞口に限らず、遊技盤面上の任意の入賞領域でよい。」(第6頁左欄下段第18行?同頁右欄下段第6行)、
▽記載事項15:「複数の特定入賞領域に対応した位置に表示器を配置し、変動入賞装置が開成状態となっているとき前記特定入賞領域のいずれかに対応する表示器が所定の表示動作をしている間に当該特定入賞領域に入賞することをV継続の条件としたので、遊技者にはV継続の状態が目で見てわかるようにすると共に、Vゾーンの位置が時間と共に変化するという新しい概念のV継続遊技を提供できる。また、表示器の表示態様により、遊技盤面上の既存の入賞領域を適宜Vゾーンに設定することができるので、」(第6頁右欄下段第10?20行)、
との記載が認められ、
また、上記摘記事項および第4、5図等より、遊技盤面上の複数の特定入賞領域に対応した位置に表示器を配置し、変動入賞装置が開成状態となっているとき、前記遊技盤面上に打ち出された遊技球が、前記複数の特定入賞領域のいずれかに対応する表示器が所定の表示動作をしていること(記載事項1)、変動入賞装置7の開口32内の下部には、3つの入賞口34L、34C、34Rが設けられ、その各々と対応する部位(この場合、各入賞口の真上)には、Vゾーンを表示するために所定時間作動する表示素子として、3個のランプ36L、36C、36Rが配置されていること(記載事項6)、V継続条件を与えるため、アタッカ内の複数の入賞口を各々に対応するランプが点灯している時間だけVゾーンに設定し、変動入賞装置の入賞口がVゾーンとなっていることを示す表示器としてランプを用いているが、これに代えて7セグメントLEDを使用してもよく、その場合は、LEDが特定の数字、例えば“7”を表示した時、対応する入賞口がVゾーンとなるようにすること(記載事項11)、Vゾーン表示器としては、種々の表示手段を用いることができ、Vゾーンとする3つの特定入賞領域に対応する位置(例えば第4図のアタッカの場合、ランプ36L、36C及び36Rの位置)に、それぞれ一対の色違い(例えば赤と青)のランプ51a、51bを配置し、アタッカが開成状態になったときは、2色のランプの一方(例えば赤ランプ51a)を点灯し、各一対のランプに対応する特定入賞領域をVゾーンとするときは、他方のランプ(例えば青ランプ51b)を点灯させる。また、Vゾーン表示器として使用されるランプやLEDその他の表示素子は、円形やその他任意の形状に多数配置し、それらのうち特定の表示素子を点灯し、或はいくつかの表示素子で所定のパターンを表わすこと等により、Vゾーンを表示することもできること(記載事項12)、図示の実施例についてこれに限られるものではなく、Vゾーンとなる特定入賞領域は、変動入賞装置内に設けた入賞口に限らず、遊技盤面上の任意の入賞領域でよい。(記載事項14)等から、3個のランプ36L、36C、36Rの配置に代えて、その各々と対応する部位に7セグメントLEDを使用することもでき、7セグメントLEDは、「3個の入賞口34L、34C、34Rに対応して設けられ、前記入賞口34L、34C、34RがV継続条件を与えることを示すVゾーン表示として特定の数字を表示する」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第5、6図等より、数字を可変表示する7セグメント発光ダイオード(LED)から成る表示器23L、23Rを配置していること(記載事項5)、変動入賞装置7は、制御手段40によって制御され、この制御手段40は、変動入賞装置7のランプ36L、36C、36Rの点灯を制御する信号を出力する機能を有する。この制御手段40は、アタッカのランプ36L、36C、36Rを作動させるための表示指令信号とを出力する可変表示器制御部41、表示指令信号に応じてアタッカのランプ36L、36C、36Rをそれぞれ所定時間ずつ順次又はランダムに点灯させる表示素子制御回路42等の構成要素から成ること(記載事項7)、表示素子制御回路42は、例えば、3個のランプ36L、36C、36Rに対し、それぞれ所定の周期(例えば3秒間)で順次点灯と消灯を繰り返す駆動信号を出力し、この場合、各ランプ36L、36C、36Rの点灯時間は互いに重複しないように予め設定され(例えば1秒間ずつ)、その点灯時間中、対応する入賞口34L、34C、34RはV継続条件を与えるVゾーンとなっている。制御手段40の構成要素41?46はマイクロプロセッサ(CPU)として単一の集積回路(IC)にまとめることができ、上記の特定時間や他の時間はプログラムにより任意に設定することができること(記載事項8)、入賞口がVゾーンとなっていることを示す表示器としてランプを用いているが、これに代えて7セグメントLEDを使用してもよい。その場合は、LEDが特定の数字、例えば“7”を表示した時、対応する入賞口がVゾーンとなるようにすること(記載事項11)、Vゾーン表示器としては、種々の表示手段を用いることができ、Vゾーンとする3つの特定入賞領域に対応する位置に、それぞれ一対の色違い(例えば赤と青)のランプ51a、51bを配置し、アタッカが開成状態になったときは、2色のランプの一方(例えば赤ランプ51a)を点灯し、各一対のランプに対応する特定入賞領域をVゾーンとするときは、他方のランプ(例えば青ランプ51b)を点灯させるため、表示素子制御回路42の代わりに、各ランプ51a、51bの表示を制御する一対の表示制御回路52a、52bを設けること、また、Vゾーン表示器として使用されるランプやLEDその他の表示素子は、円形やその他任意の形状に多数配置し、それらのうち特定の表示素子を点灯し、或はいくつかの表示素子で所定のパターンを表わすこと等により、Vゾーンを表示することもできること(記載事項12)、Vゾーン表示器として特定の絵柄を表わした表示板61L、61C及び61Rを遊技盤面に出没自在に配置し、各表示板は通常は遊技盤面から引込んでいるが、対応する特定入賞領域をVゾーンとするときは、遊技盤面に現われるようにする。そのため、表示素子制御回路42の代わりに、各モータ62の駆動を制御するモータ駆動制御回路64L、64C及び64Rを設けること(記載事項13)、図示の実施例についてこれに限られるものではなく、Vゾーンとなる特定入賞領域は、変動入賞装置内に設けた入賞口に限らず、遊技盤面上の任意の入賞領域でよい。(記載事項14)等から、パチンコ機lは、「7セグメントLEDに対してVゾーン表示の表示制御を行なう表示素子制御回路を有し、前記表示素子制御回路は、表示指令信号に応じて前記7セグメントLEDのいずれかに静止状態の特定の数字を表示させるように制御する」ことができるものと認められる。
これらの記載から、引用例1には、

「打球が入賞してV継続条件を与える場合にはプレート33を開成状態から一旦閉成後再び開成状態となる3個の入賞口34L、34C、34Rと、
前記3個の入賞口34L、34C、34Rに対応して設けられ、前記入賞口34L、34C、34RがV継続条件を与えることを示すVゾーン表示として特定の数字を表示する7セグメントLEDと、
前記7セグメントLEDに対して前記Vゾーン表示の表示制御を行なう表示素子制御回路とを有し、
前記表示素子制御回路は、表示指令信号に応じて前記7セグメントLEDのいずれかに静止状態の特定の数字を表示させるように制御するパチンコ機l。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「打球」、「入賞して」、「V継続条件を与える場合には」、「プレート33を開成状態から一旦閉成後再び開成状態となる」、「3個の入賞口34L、34C、34R」、「Vゾーン表示」、「特定の数字を表示する」、「7セグメントLED」、「表示素子制御回路」、「静止状態」および「パチンコ機l」は、本願発明における「遊技媒体」、「はいったときに」、「特定の入賞条件を満たすときに」、「特定の入賞状態とする」、「複数の入賞部」、「特定表示」、「図柄の表示を行なう」、「特定表示部」、「特定表示制御部」、「停止状態」および「パチンコゲーム機」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「表示素子制御回路は、表示指令信号に応じて7セグメントLEDのいずれかに静止状態の特定の数字を表示させるように制御する」と、本願発明の「前記特定表示制御部は、動作開始信号があると前記特定表示部の各々に図柄を回転表示し、動作停止信号があると停止状態の図柄を表示させるように制御する」は、「特定表示制御部は、特定の表示条件で特定表示部に図柄を表示させるように制御する」で共通する。したがって、両者は、

「遊技媒体がはいったときに特定の入賞条件を満たすときに特定の入賞状態とする複数の入賞部と、
前記複数の入賞部に対応して設けられ、前記入賞部が特定の入賞条件を満たすことを示す特定表示として図柄の表示を行なう特定表示部と、
前記特定表示部に対して前記特定表示の表示制御を行なう特定表示制御部とを有し、
前記特定表示制御部は、特定の表示条件で特定表示部に図柄を表示させるように制御するパチンコゲーム機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:特定表示制御部が、特定表示部に図柄を表示させるように制御するための特定の表示条件において、本願発明では、「動作開始信号があると特定表示部の各々に図柄を回転表示し、動作停止信号があると停止状態の図柄を表示させるように制御」しているのに対し、引用例1発明では、「表示指令信号に応じて7セグメントLEDのいずれかに静止状態の特定の数字を表示させるように制御」しており、7セグメントLEDが回転表示するものなのかも明らかでなく、本願発明のような構成となっていない点。

4.判断
上記相違点について検討すると、引用例1には、数字を可変表示する7セグメント発光ダイオード(LED)から成る表示器23L、23R(記載事項5)が記載されており、表示素子としてのランプに代えて7セグメントLEDを使用する(記載事項11)場合は、飽きの来ないV継続遊技を与えるために表示器23L、23Rと同じようなLEDを使用することは技術常識である。さらに、遊技機分野において、一般的に、複数の7セグメントLEDを有する可変表示装置の表示制御手段が、動作開始信号があると7セグメントLEDの各々に数字等の図柄を回転表示し、動作停止信号があると停止状態の図柄を順次表示させるように制御することは、例えば、特開昭61-209679号公報、特開昭62-60577号公報、特開平4-282173号公報に記載されるように従来周知の技術であり、引用例1発明の「表示素子制御回路は、表示指令信号に応じて7セグメントLEDのいずれかに静止状態の特定の数字を表示させるように制御する」構成に代えて、前記周知の技術を採用して、本願発明の前記相違点に係る構成とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項である。なお、前記周知の技術の採用にあたり、本願発明は、特定表示部の各々に動作停止信号があると停止状態の図柄を表示させているのに対して、前記周知の技術は、7セグメントLEDの各々に動作停止信号があると停止状態の図柄等を順次表示させているが、本願発明の「停止状態の図柄を表示させる」ことにおいて、動作停止信号があると、停止状態の図柄を動作停止信号と同時に一斉に表示するのか、信号があると少し遅れて順次表示するのか等の限定がされていないことから、本願発明の「(A)図柄を表示させる」と前記周知の技術の「(B)図柄を順次表示させる」は、(A)⊇(B)の関係にあり、(A)は(B)を包含するものである。すなわち、(A)は(B)の上位概念の表現と認められる。そして、図柄を表示させることについて上位概念の表現とした点に格別の技術的創意工夫を要したともいえない。
また、審判請求書の請求の理由において、
「(4)本願発明と引用文献1に記載の発明との対比
1)本願発明と引用文献1に記載の発明とは、本願発明の構成Aにおける「複数の入賞部」が、引用文献1に記載された「入賞口34L,34C,34R」に相当し得る点では一致していますが、以下の構成において相違しています。
2)先ず、審査官殿は、本願発明の「特定表示部」が、引用文献1に記載された「7セグメントLED」に相当するとご指摘しておりますが、該7セグメントLEDを含む可変表示装置6は、明らかに本願発明の請求項4における「表示部」に相当するものであり、「7セグメントLED」が相当する構成は、本願明細書中における段落0017に記載してある表示部100を構成する左右の表示部101,103に相当することは疑いようもございません。従って、表示部とは全く別の構成である「特定表示部」が、表示部に相当する可変表示装置6の一部である「7セグメントLED」に相当することはあり得ません。
3)次に、本願発明の「特定表示部」を、引用文献1に記載された「ランプ36L,36C,36R」あるいは「表示板61L,61C,61R」と比較したとしても、両者は単に前記複数の入賞部に対応して設けられている点で共通しているに過ぎず、前記表示部(可変表示装置6)と同等に複数種類の図柄を回転表示させる「特定表示部」は、単なる点灯・消灯のみ可能な「ランプ36L,36C,36R」、および表示内容は一切変化することなく出没するだけの「表示板61L,61C,61R」とは、目的および構成が全く異なります。すなわち、引用文献1に記載の発明は、本願発明の構成B,C,Dを有さず、本願発明の作用効果a,b,cを何れも奏することはあり得ません。」と主張している。
これについて検討すると、審査官が認定する「特定表示部に相当する7セグメントLED」は、数字を可変表示する7セグメント発光ダイオード(LED)から成る表示器23L、23Rではなく、引用文献1の第5頁右欄下段第10?15行記載の「変動入賞装置の入賞口がVゾーンとなっていることを示す表示器としてランプを用いているが、これに代えて7セグメントLEDを使用してもよい。その場合は、LEDが特定の数字、例えば“7”を表示した時、対応する入賞口がVゾーンとなるようにする。」(第5頁右欄下段第2?15行)等から、ランプ36L,36C,36Rに代えて、それらに対応する7セグメントLEDとして認定したものである。
したがって、この項の冒頭で検討したように、引用例1発明に前記周知の技術を採用して、本願発明の前記相違点に係る構成とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項である。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および前記周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および前記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、本願は、本願の他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-15 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-07 
出願番号 特願2000-240693(P2000-240693)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 林 晴男
土屋 保光
発明の名称 パチンコゲーム機  
代理人 柏原 健次  

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