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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1170057
審判番号 不服2004-10271  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-17 
確定日 2007-12-26 
事件の表示 特願2001-524109「マイクロファブリケーション・デバイスの運動の磁気センシング」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月22日国際公開、WO01/20616、平成15年 3月11日国内公表、特表2003-509702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、2000年9月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年9月10日、欧州共同体)を国際出願日とする出願であって、平成16年3月9日付け(発送日同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年5月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成16年1月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、次のとおりのものである。
「マイクロデバイスの可動部分(10)と固定部分(12)の間の変位を測定するための磁気センシング・ユニットであって、
磁場を有する磁気要素(1)と、
磁気センサ(2)
を備え、
前記磁気要素(1)が前記可動部分(10)上に、前記磁気センサ(2)が前記固定部分(12)上に位置し、または前記磁気センサ(2)が前記可動部分(10)上に、前記磁気要素(1)が前記固定部分(12)上に位置し、
前記磁気センサ(2)または前記磁気要素(1)、あるいはその両方が前記マイクロデバイスの一体部分であり、
前記可動部分(10)が変位したときに前記磁気センサ(2)のところの磁場の変化を前記磁気センサ(2)を使用して検出できるよう、前記磁気要素(1)と前記磁気センサ(2)が互いに関連して配置され
前記磁気要素(1)および前記磁気センサ(2)が前記マイクロデバイスの内部で、前記磁気センシング・ユニットの感度が機械的増幅によって増大するように配置された
磁気センシング・ユニット。」

2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成5年8月24日に頒布された特開平5-215544号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a 「【0012】本発明による原子間力顕微鏡用プローブは、針状チップ1を支持する可撓性プレート2に、導電性材料をループ状に配置したコイル部4を有している。可撓性プレート2は、一端に先端の鋭利な針状チップが設けられ、他端を固定された片持ちバネとなっている。固定される他端には、固定用の部材として本体3a、3bを有することも可能である。
【0013】針状チップ1は、先端部が測定すべき試料に接近すると、試料表面と先端部との距離に依存した引力または斥力の原子間力を受ける。可撓性プレート2は、針状チップ1が受けた原子間力に応じて、撓みを生じる。周知のように、これらの針状チップ1と可撓性プレート2は、薄膜製造技術を用いて容易に任意の形状に製作することが可能である。
【0014】コイル4は、導電性材料をプレート2上に任意のループ形状に、任意の巻き数で形成することにより設けられる。コイル4を磁界中に配置した場合、可撓性プレート2の撓み量が変化すると、コイル4を貫く磁束数が変化するので、コイル4と磁界の間に電磁誘導が生じる。この電磁誘導を検出することにより、可撓性プレート2の撓み量を検出でき、これにより原子間力を検出できる。電磁誘導の検出量としては、コイルに流れる電流の強度、周波数、位相、波形や、磁界の強度の変化等を用いることができる。
【0015】磁界としては、一様磁界または交番磁界を用いることができる。一様磁界の発生手段としては、永久磁石を、また、交番磁界の発生手段としては、電磁石を用いることができる。磁界の方向は、磁束がコイル4を貫く方向であれば良いが、特に、磁束が可撓性プレート2と平行な場合に、プレート2が撓んだ時にコイル4を貫く磁束数の変化率が多く、検出感度を高くすることができる。一様磁界を用いる場合には、ピエゾ素子等の発振体により、プローブを該可撓プレート2の共振周波数近傍で振動させる。」(段落【0012】?【0015】)

b 「【0020】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明の一実施例の原子間力顕微鏡およびプローブについて図1、図3を用いて具体的に説明する。
【0021】本実施例のプローブは、図1に示すように、可撓性プレート2と、プレート2の一端の下面に設けられた針状チップ1と、プレート2の上面に形成されたコイル4と、プレート2の他端の上面に固定されたシリコン本体上部3aおよび下面側に固定されたシリコン本体下部3bを備えて構成される。
【0022】プローブの製造方法を説明する。まず、プローブ本体下部3bとなる、100面方位シリコン単結晶上に、可撓プレート2および針状チップ1として窒化珪素膜を化学気相成長法により形成した。つぎに、窒化珪素膜をリソグラフィ法により、図1の可撓性のプレート2の形状にパターニングした。可撓性のプレート2上に、アルミニウム膜を積層し、1ループの三角形のコイル状にパターニングして、コイル4を形成した。さらに、可撓性のプレート2の針状チップ1と反対側の端部に、ガラス製のプローブ本体上部3aを陽極接合した。シリコン単結晶をアルカリエッチング溶液に浸漬し、プローブ本体下部3bの形状にエッチングして、プローブを完成させた。本実施例では、可撓性プレート2の長さが100から300μmの範囲の数種のプローブを形成した。
【0023】つぎに、上述のプローブを用いて観察を行う原子間力顕微鏡を、図3を用いて説明する。原子間力顕微鏡は、プローブの本体3a、3bを保持するプローブホルダ52と、プローブのプレート2の面方向に約1万ガウスの磁束密度の磁界を発生する磁界発生手段である永久磁石45を備えている。プローブホルダ52には、プローブがセットされると、プローブのコイル4と配線53とを接続する電気接点59が設けられている。顕微鏡の支柱51には、XY方向にプローブを駆動するピエゾ素子47が取り付けられている。XY方向に駆動用ピエゾ素子47には、さらにZ方向にプローブを駆動するピエゾ素子46が取り付けられている。ピエゾ素子46および47は、プローブをXYZ方向に、駆動する駆動部を構成している。ピエゾ素子46および47は、プローブホルダ52に連結している。
【0024】また、支柱51には、プローブのコイル4に流れる交流電流を配線53を介して受け取り、その振幅を検出し、増幅する増幅器48と、増幅器48の増幅した振幅を用いて、その振幅が一定になるように、ピエゾ素子46をフィードバック制御する制御回路49が固定されている。また、支柱51には、試料58を載置するための試料台56と、試料台56を粗移動するステージ57が設けられている。
【0025】つぎに、本実施例の原子間力顕微鏡およびプローブを用いた試料58の表面の凹凸の測定手順および原子間力顕微鏡の動作を説明する。まず、プローブのプレート2の面方向と、永久磁石45の磁界の方向が一致するように、プローブをプローブホルダ52にセットする。このセットにより同時に、プローブのコイル4は、電気接点59および信号配線53により電気的に増幅器48と接続される。つぎにプローブをピエゾ素子46により、振動数10kHz?100kHz、振幅量(ピエゾ素子)1?10オングストロームで、Z方向に強制励振させる。これにより、磁界中でコイル4が振動し、コイル4を貫く磁束数が変化するので、増幅器48では、コイル4から交流の誘導電流の振幅が得られる。
【0026】この状態で、ピエゾ素子47によりプローブをZ方向に駆動し、針状チップ1を試料に近づけると、針状チップ1の先端と試料58との距離に応じた原子間力により、可撓プレート2の振動数、振動振幅および振動位相が変化し、増幅器48により得られる誘導電流の振幅も変化する。制御回路49は、この振幅が一定になるように、ピエゾ素子46をフィードバック制御し、針状チップ1と試料58との距離を一定に保つ。さらに、ピエゾ素子47により、プローブを試料58の表面(X-Y面)で走査しながら、ピエゾ素子46のZ方向の移動量を出力すると、試料58表面の2次元凹凸イメージを得ることができる。」(段落【0020】?【0026】)

c 「【0038】また、実施例1、実施例2では、永久磁石45または電磁石の磁界発生手段を原子間力顕微鏡のプローブホルダ52側に設置したが、プローブの上部本体3a、24の位置に配置し、磁界発生手段付きプローブとしても良い。また、コイル4、23は、絶縁層を間に挟み複数のループを有するコイルにしても良い。コイル形状は、円形、楕円、多角形状でもよい。」(段落【0038】)

したがって、上記a?cの記載事項によると、引用例には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認める。
「原子間力顕微鏡用プローブの、長さが100から300μmの可撓性プレート2とシリコン本体3aの間の変位を測定するための永久磁石45とコイル4であって、
磁界発生手段としての永久磁石45と、
コイル4
を備え、
前記永久磁石45が前記シリコン本体3a上に、前記コイル4が前記可撓性プレート2上に位置し、
前記コイル4が可撓性プレートの上にパターニングにより形成されており、
前記可撓性プレート2の撓み量が変化すると、前記コイル4を貫く磁束数が変化するので、前記コイル4と磁界の間に電磁誘導が生じ、この電磁誘導を検出できるように、前記コイル4を磁界中に配置した
永久磁石45とコイル4。」

3 対比
本願第1発明と引用例発明とを対比する。
a 引用例発明の「可撓性プレート2」、「シリコン本体3a」、「磁界発生手段としての永久磁石45」、「コイル4」は、それぞれ本願第1発明の「可動部分(10)」、「固定部分(12)」、「磁場を有する磁気要素(1)」、「磁気センサ(2)」に相当する。
b 引用例発明の「原子間力顕微鏡用プローブ」は、可撓性プレート2の長さが100から300μmであることからみて、本願第1発明の「マイクロデバイス」に相当する。
c 引用例発明の「前記コイル4が可撓性プレートの上にパターニングにより形成されており」は、構造からみて、本願第1発明の「磁気センサ(2)がマイクロデバイスの一体部分であり」に相当する。
d 引用例発明の「前記可撓性プレート2の撓み量が変化すると、前記コイル4を貫く磁束数が変化するので、前記コイル4と磁界の間に電磁誘導が生じ、この電磁誘導を検出できるように、前記コイル4を磁界中に配置した」は、その測定原理から、本願第1発明の「前記磁気要素(1)が前記可動部分(10)上に、前記磁気センサ(2)が前記固定部分(12)上に位置し、または前記磁気センサ(2)が前記可動部分(10)上に、前記磁気要素(1)が前記固定部分(12)上に位置し」に相当する。
e 引用例発明の「永久磁石45とコイル4」は、機能からみて、本願第1発明の「磁気センシング・ユニット」に相当する。

したがって、両者は、
【一致点】
「マイクロデバイスの可動部分(10)と固定部分(12)の間の変位を測定するための磁気センシング・ユニットであって、
磁場を有する磁気要素(1)と、
磁気センサ(2)
を備え、
前記磁気要素(1)が前記可動部分(10)上に、前記磁気センサ(2)が前記固定部分(12)上に位置し、または前記磁気センサ(2)が前記可動部分(10)上に、前記磁気要素(1)が前記固定部分(12)上に位置し、
前記磁気センサ(2)または前記磁気要素(1)、あるいはその両方が前記マイクロデバイスの一体部分であり、
前記可動部分(10)が変位したときに前記磁気センサ(2)のところの磁場の変化を前記磁気センサ(2)を使用して検出できるよう、前記磁気要素(1)と前記磁気センサ(2)が互いに関連して配置された
磁気センシング・ユニット。」
である点で一致し、次の点で相違する。

【相違点】
本願第1発明では、前記磁気要素(1)および前記磁気センサ(2)が前記マイクロデバイスの内部で、前記磁気センシング・ユニットの感度が機械的増幅によって増大するように配置されているのに対し、引用例発明は、そのようなものではない点。

4 当審の判断
上記【相違点】について検討する。
原査定の拒絶の理由で指摘したように、いわゆるてこの原理を利用し、測定した変位量を機械的に拡大・増幅する技術は、例えば、
a 特開平1?262403号公報(「第3図にはもう一つのプローブの形状を示す。本構造の場合は、回転軸6を支点として、構造全体や回転する機構を有している。このため、針状チツプ5が原子間力をうけた時にプレート1は、たわむことなく回転軸6を中心として回転する構造となる。また、STMの針部3はプレート後部1′の変位に追従して一定の距離を保つことによってサンプルの形状を精度良くトレースすることができる。トンネリングチツプ3とプレート1′の距離を一定に保つ方法としては、トンネル電流を検出して、その値を一定に保つように、ピエゾ素子等でトンネリングチツプ3を変位させる方法が考えられる。なお、第3図に示す構造のプローブであれば、プレート部1と1′の長さ比を変化させることによつて微細な形状を拡大としてトレースすることも可能である。
なおプローブの動きを測定する方法として、上述のトンネリングチツプを用いる手段の他に、該プレート1′に対向して平板電極を設け、その間の静電容量の変化を検出する方法や、該プレート1′にレーザ光を斜入射させて、その反射光の角度変化をみる方法が考えられる。」(第3頁左上欄第14行?右上欄第15行))、
b 特開平8-68800号公報(「【0018】カンチレバー37の上記動作において、図4に示すように、プローブ11側の先端部が例えばd1の距離だけ上方に移動すると、後端側の可動電極39における対向領域の中心部は下方に距離d2だけ移動する。この場合に、カンチレバー37における捩じれ変形部38の位置は、前述の通りカンチレバー37の中央部から先部側に設定されているために、図4に示すように距離L1,L2(L1<L2)すると、距離d2はd1・(L2/L1)として拡大した移動距離となり、プローブ11の変位が拡大される。従って、距離L1,L2を上記のように選択することにより、プローブ11の位置変化による距離は拡大され、可動電極と固定電極の間に生じる静電容量の変化が大きくなるので、カンチレバー37の変位の検出が容易になり、かつ検出感度が高くなる。静電容量の変化を大きくすることができるので、検出出力を大きくすることができ、安定した検出動作を行うことができる。なお倍率(L2/L1)としては、例えば2倍程度である。」(段落【0018】)、
c 特開昭61-65109号公報(「次に、第1図の非接触型変位計の動作を第2図を参照しながら説明する。この非接触型変位計においては、変位測定プローブ5に一定圧力のエアーを供給し、測定圧印加機構10からの測定圧と釣合せる。これにより、変位測定プローブ5と被測定物4との距離が常時一定値に保たれる。ここで、被測定物の位置が4から4aに変化したものとすると、変位測定プローブ5は、被測定物4との空気間隔を同じに保ったまま被測定物4の位置が変化した分だけ押し上げられる。この押し上げられた量は、テコの原理によって自由支点7からの距離の比率分を掛けた量として可動電極8を移動させる。したがって、固定電極9と可動電極8の間の静電容量が変化し、この静電容量の変化を公知の手法で電気的に測定することにより、被測定物4の位置変化を計測することができる。
なお、ここで、変位測定プローブ5の被測定物4との接触点からレバー6の静圧空気軸受け7による支持点までの長さと、この支持点から可動電極8までの長さとの比は、自由に設定することができるが、この比を1以上に設定すれば、被測定物4の変位を拡大することができる。」(第2頁左下欄第5行?右下欄第6行))に記載されているごとく各種変位計における周知の技術である。
したがって、引用例発明の可撓性プレート2とコイル4とに、上記周知の機械的増幅技術を適用して、上記【相違点】に係る本願第1発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願第1発明の奏する作用効果も、引用例の記載事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5 むすび
以上のとおり、本願第1発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2?13に係る発明について検討するまでなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-26 
結審通知日 2007-07-31 
審決日 2007-08-16 
出願番号 特願2001-524109(P2001-524109)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福田 裕司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 岡田 卓弥
居島 一仁
発明の名称 マイクロファブリケーション・デバイスの運動の磁気センシング  
代理人 ポレール特許業務法人  
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