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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1170117
審判番号 不服2005-3691  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-03 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 特願2003-164088号「光照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月4日出願公開、特開2004-71544号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成14年7月26日に出願した特願2002-218281号の一部を平成15年6月9日に新たな特許出願としたものであって、その各請求項に係る発明は、平成16年6月23日付けの手続補正書により補正がされた明細書の特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている。

「【請求項1】切頭円錐形状の発光体装着面を有しその発光体装着面上に複数の発光体を装着してなる発光体装着部材と、切頭円錐形状の支持面を有し前記発光体装着部材を保持する保持枠と、可撓性及び柔軟性を有し全体が同一素材により構成された平板状且つ円環状の放熱部材とを備えてなり、当該放熱部材の両面がともに平滑であり、平面状の前記放熱部材を、前記発光体装着面の裏面及びその裏面に対向する前記保持枠の支持面に装着する際に、可撓性及び/又は柔軟性を利用して前記発光体装着面の裏面及び前記保持枠の支持面に沿うように立体形状に変形させ、少なくとも前記放熱部材の一方の面である表面部を発光体装着部材の裏面に突出する発光体のリード線や電子部品等を包み込むように凹ませて前記裏面に密着させるとともに、前記放熱部材の他方の面を前記支持面に密着させていることを特徴とする光照射装置。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

2. 引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2002-83506号公報(以下「刊行物1」という。)、特開2000-91775号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。
(1) 刊行物1の記載内容
(ア) 「多数の発光ダイオード素子2が装着され且つ樹脂保護層3が形成されたフレキシブルプリント回路基板1は、保持板としての機能と放熱板としての機能とを有するハウジング4によって、立体的な円環形状に保持されている。なお、フレキシブルプリント回路基板1とハウジング4との間には、必要に応じて、放熱シート5が形成されている。」(段落【0015】)
(イ) 「フレキシブルプリント回路基板1は、平面状に展開した状態において、一定の幅を有する円弧形状を有する。第1実施形態では、この平面的な円弧形状を有するフレキシブルプリント回路基板1に、多数の発光ダイオード素子2を所定のパターンにしたがって直接装着する。」(段落【0016】)
(ウ) 「次いで、多数の発光ダイオード素子2が装着され且つ樹脂保護層3が形成されたフレキシブルプリント回路基板1を、立体的な円環形状を有するハウジング4によって所望の立体的な円環形状に保持する。こうして、ハウジング4によって保持された状態において、フレキシブルプリント回路基板1は、円錐体の側面をその底面に平行な一対の平面で切り取って得られる立体的な円環形状を呈する。このとき、平面状態において円弧形状を有するフレキシブルプリント回路基板1の両端は、必要に応じて互いに固着される。」(段落【0017】)

ここで、記載事項(イ)によれば、フレキシブルプリント回路基板1は、平面状に展開した状態において、一定の幅を有する円弧形状を有しており、また、記載事項(ウ)によれば、当該フレキシブルプリント回路基板1は、平面状態において円弧形状を有するフレキシブルプリント回路基板1の両端を互いに固着するとともに、立体的な円環形状を有するハウジング4によって所望の立体的な円環形状に保持された状態で、円錐体の側面をその底面に平行な一対の平面で切り取って得られる立体的な円環形状を呈していることから、フレキシブルプリント回路基板1及びハウジング4は、少なくとも、これらの装着完了に伴い、切頭円錐形状を呈することが明らかである。そして、この点については、図1からみても裏付けられることである。
また、図1、2において、フレキシブルプリント回路基板1は、発光ダイオード素子装着面を有し、その発光ダイオード素子装着面上に複数の発光ダイオード素子2を装着するものであること、ハウジング4は、支持面を有し前記フレキシブルプリント回路基板1を保持するものであること、放熱シート5は、その両面がともに平滑であること、この放熱シート5を、発光ダイオード素子装着面の裏面及びその裏面に対向するハウジング4の支持面に装着する際に、前記発光ダイオード素子装着面の裏面及び前記ハウジング4の支持面に沿うようにして、前記放熱シート5の一方の面である表面部を前記フレキシブルプリント回路基板1の裏面に接するように設けるとともに、前記放熱シート5の他方の面を前記ハウジング4の支持面に接するように設けるものであること、が実質的に開示されているといえる。

これら記載事項(ア)?(ウ)及び図1、2に開示された技術的事項によれば、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。
「切頭円錐形状の発光ダイオード素子装着面を有しその発光ダイオード素子装着面上に複数の発光ダイオード素子2を装着してなるフレキシブルプリント回路基板1と、切頭円錐形状の支持面を有し前記フレキシブルプリント回路基板1を保持するハウジング4と、放熱シート5とを備えてなり、当該放熱シート5の両面がともに平滑であり、前記放熱シート5を、前記発光ダイオード素子装着面の裏面及びその裏面に対向する前記ハウジング4の支持面に装着する際に、前記発光ダイオード素子装着面の裏面及び前記ハウジング4の支持面に沿うようにして、前記放熱シート5の一方の面である表面部を前記フレキシブルプリント回路基板1の裏面に接するように設けるとともに、前記放熱シート5の他方の面を前記ハウジング4の支持面に接するように設けている照明装置。」

(2) 刊行物2の記載内容
(エ) 「新たに開発されたマットを組み込むことにより、前記のような機器における損失熱を、特に確実且つ効果的に熱源から機器外壁へ送ることが可能である。熱源は、例えば回路基板上の電子構成部材である。……この中敷きマットは、有利にはプラスチック又はセラミックス、……炭化水素変性樹脂(Guronic-FR)、又は、熱伝導率を更に高めるためにセラミックスが充填された……シリコーン合成薄板(KU-TKC又はKU-TKM)等の合成樹脂等の電気的に絶縁性の材料から成っている。均質な合成樹脂から成るマットは変形可能で曲げやすく、柔軟で粘性の可塑性を有しており、且つ高い電気的絶縁性を有している。」(段落【0009】)

3. 本願発明と引用発明との対比
(1) 両発明の比較
引用発明の「発光ダイオード素子装着面」は、本願発明の「発光体装着面」に相当する。同様に、「発光ダイオード素子2」は「発光体」に、「フレキシブルプリント回路基板1」は「発光体装着部材」に、「ハウジング4」は「保持枠」に、「放熱シート5」は「放熱部材」に、「照明装置」は「光照射装置」にそれぞれ相当する。
すると、両発明の一致点、相違点は、次のとおりである。

(2) 一致点
「切頭円錐形状の発光体装着面を有しその発光体装着面上に複数の発光体を装着してなる発光体装着部材と、切頭円錐形状の支持面を有し前記発光体装着部材を保持する保持枠と、放熱部材とを備えてなり、当該放熱部材の両面がともに平滑であり、前記放熱部材を、前記発光体装着面の裏面及びその裏面に対向する前記保持枠の支持面に装着する際に、前記発光体装着面の裏面及び前記保持枠の支持面に沿うようにして、前記放熱部材の一方の面である表面部を発光体装着部材の裏面に接するように設けるとともに、前記放熱部材の他方の面を前記支持面に接するように設けている光照射装置。」

(3) 相違点
放熱部材に関し、本願発明のものは、「可撓性及び柔軟性を有し全体が同一素材により構成された平板状且つ円環状の放熱部材」であって、その放熱部材を、発光体装着面の裏面及びその裏面に対向する保持枠の支持面に装着する際に、「可撓性及び/又は柔軟性を利用して発光体装着面の裏面及び保持枠の支持面に沿うように立体形状に変形させ、少なくとも前記放熱部材の一方の面である表面部を発光体装着部材の裏面に突出する発光体のリード線や電子部品等を包み込むように凹ませて前記裏面に密着させるとともに、前記放熱部材の他方の面を前記支持面に密着させている」のに対して、引用発明のものは、その構成が明確でない放熱部材を、発光体装着面(発光ダイオード素子装着面)の裏面及び前記保持枠(ハウジング4)の支持面に沿うようにして、前記放熱部材(放熱シート5)の一方の面である表面部を前記発光体装着部材(フレキシブルプリント回路基板1)の裏面に接するように設けるとともに、前記放熱部材(放熱シート5)の他方の面を前記保持枠(ハウジング4)の支持面に接するように設けている点。

4. 容易推考性の検討
(1) 相違点についての判断
刊行物2には、放熱部材に相当する「マット」に関し、変形可能で曲げやすく、柔軟で粘性の可塑性を有し、全体がシリコーン合成薄板のような同一素材により構成されたものが開示されている。また、放熱部材の形状自体としては、その放熱すべき部材の形状に即した形状とするのが通常であって、平板状且つ円環状のものも、従来知られた形状である(例えば、特開2001-68609号公報の「放熱シート本体1」について参照)。
これらによれば、放熱部材について、可撓性且つ柔軟性を有し全体を同一素材により構成するとともに、その形状を、平板状且つ円環状などの所望の形状とすること自体は、格別のことではない。
また、放熱部材に関し、シリコーン系の柔軟性をもつ材質などで構成することにより、他の接合部材間との密着性を高めるようにすることは、従来周知の技術事項である(例えば、実願平2-96933号(実開平4-55156号)のマイクロフィルム(特に、明細書第6頁第4?11行及び第4図の「間隙部材5」に関する記載を参照)、特開平9-199040号公報(特に、【0052】及び図5の「シリコーンシート7」に関する記載を参照)。ここで、例えば、上記実願平2-96933号(実開平4-55156号)のマイクロフィルムに記載の間隙部材5は、ヒートシンク2の凸曲面に密着させるものであるが、この間隙部材の材質がシリコーンゴムなどであることからすれば、この記載に接した当業者は、この間隙部材を平板状のものとして構成しておき、これを立体的に変形させて、その凸曲面に沿わせるようにすることが可能であると容易に理解するはずである。
そして同様に、シリコーンゴムなどの可撓性又は柔軟性を有する平面状の放熱部材によれば、リード線などを包み込むように凹ませて、その面に密着させることも、その材質からみて可能である(この点については、さらに、刊行物2の、特に【0013】(ここでは、「突きささった状態」と表現されているが、これは程度問題であって、リード線の長さ等によっては包み込むように凹むということにもなる。)及び図4の記載、特開2000-116063号公報の「・・・ブラケット15,16に凹凸があっても弾性を有しており密着する」【0013】との記載参照)ということが当業者に容易に理解されるはずである。
そうすると、引用発明において、その放熱シートを、可撓性及び柔軟性を有し全体が同一素材により構成された平板状且つ円環状としておき、その放熱シートを、発光体装着面の裏面及びハウジングの支持面に沿うように立体形状に変形させ、放熱シートの一方の面である表面部を発光ダイオード素子の装着部材の裏面に突出するべき発光ダイオード素子のリード線等を包み込むように凹ませて裏面に密着させるとともに、放熱シートの他方の面を支持面に密着させるように構成し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(2) 総合判断
本願発明の効果は、従来周知の技術事項等を考慮することにより、刊行物1、2に記載された発明から、当業者が予測できる範囲のものである。
すると、本願発明は、従来周知の技術事項等を考慮することにより、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

5. むすび
以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-24 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願2003-164088(P2003-164088)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 真一渋谷 善弘  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柿崎 拓
平瀬 知明
発明の名称 光照射装置  
代理人 赤澤 一博  
代理人 井上 敬子  

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