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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
管理番号 1170127
審判番号 不服2005-6640  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-14 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 平成 8年特許願第173653号「ナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月23日出願公開、特開平10- 20776〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成8年7月3日に出願したものであって、平成17年3月9日付けで平成16年8月23日付け手続補正が補正却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月16日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成19年7月31日付けで平成17年5月16日付け手続補正を補正却下するとともに最後の拒絶理由を通知したところ、請求人は平成19年10月9日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

第2.平成19年10月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含むものであって、本件補正により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。
<補正前>(平成16年8月23日付け手続補正は原審で、平成17年5月16日付け手続補正は当審で補正却下されたから、補正前とは、平成16年4月28日付け手続補正後のものである。)
「【請求項1】 地図データ上に、現在位置と目的地又は目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記現在位置と前記探索ルートとの距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段により算出された前記距離に応じて、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】 前記地図拡縮表示手段は、前記距離が所定の距離よりも大きい場合に、前記現在位置と前記現在位置から前記距離の所定倍の地点とが前記画面に表示される前記縮尺度を決定して表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】 前記地図拡縮表示手段は、前記距離が所定の距離よりも小さい場合に、前記現在位置と前記探索ルートとが前記画面に表示される縮尺度の範囲内で、前記縮尺度を小さくして表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】 前記地図拡縮表示手段は、前記距離が所定の距離よりも小さい場合に、前記現在位置と前記現在位置から前記距離の所定倍の地点とが前記画面に表示される縮尺度の範囲内で、前記縮尺度を小さくして表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】 地図データ上に、現在位置と目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記探索ルートの表示が前記画面から外れたかを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記探索ルートの表示が前記画面から外れたと判断された場合に、前記現在位置と前記探索ルートとが前記画面に表示される前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】 前記地図拡縮表示手段は、前記現在位置を前記画面の中心に表示する現在位置中心表示モード、或いは前記現在位置を前記画面の中心よりも後側に表示するフロントワイドモードが設定されていることを検出した場合、該現在位置中心表示モード、或いは該フロントワイドモードを強制的に解除してから前記縮尺度を決定して表示することを特徴とする請求項1?請求項5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】 前記地図拡縮表示手段の動作の許可、或いは該動作の禁止を選択する選択手段を備え、
前記選択手段により選択された選択状態に応じて、前記地図拡縮表示手段の動作、或いは該動作の禁止が行われることを特徴とする請求項1?請求項6のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。」

<補正後>
「【請求項1】 地図データ上に、現在位置と目的地又は目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記現在位置と前記探索ルート上の地点との距離を算出する距離算出手段と、
前記現在位置と前記探索ルートとが離れている場合に、前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】 前記地図拡縮表示手段は、前記距離が所定の距離よりも大きい場合に、前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように、前記縮尺度を決定して表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】 前記地図拡縮表示手段は、前記距離が所定の距離よりも小さい場合に、前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示される縮尺度の範囲内で、前記縮尺度を大きくして表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】 前記地図拡縮表示手段は、前記現在位置を前記画面の中心に表示する現在位置中心表示モード、或いは前記現在位置を前記画面の中心よりも後側に表示するフロントワイドモードが設定されていることを検出した場合、該現在位置中心表示モード、或いは該フロントワイドモードを強制的に解除してから前記縮尺度を決定して表示することを特徴とする請求項1?請求項3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】 前記地図拡縮表示手段の動作の許可、或いは該動作の禁止を選択する選択手段を備え、
前記選択手段により選択された選択状態に応じて、前記地図拡縮表示手段の動作、或いは該動作の禁止が行われることを特徴とする請求項1?請求項4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。」

2.補正目的についての検討
補正前後の請求項を比較すると、補正前請求項6、7と、補正後請求項4、5は、引用請求項の記載のみが変更され、その他の記載は何等変更がないから、補正前請求項6、7は、それぞれ補正後請求項4、5に対応している。
補正前請求項5は、「前記探索ルートの表示が前記画面から外れたかを判断する判断手段」との特定事項を有しており、補正後請求項1?5は、いずれも該特定事項を有していないから、補正前請求項5は、削除されたものと認められる。平成19年10月9日付け意見書第3頁第12?14行の「(5)なお、平成19年8月21日発送の補正の却下の決定において増項と判断されました平成17年5月16日付手続補正書の請求項5に対応する発明は、今回の補正後の請求項には含まず削除しておりますので、補正手続による不備も解消されております。」との記載からも、補正前請求項5が削除されたことが裏付けられている。
そこで、残る補正前請求項1?4と補正後請求項1?3との対応関係を以下検討する。
補正前請求項2、4には「前記現在位置と前記現在位置から前記距離の所定倍の地点とが前記画面に表示される」との記載があり、現在位置とともに表示されるもう1つの地点が前記距離の所定倍であることが特定されている。一方、補正後請求項1?3のいずれにも「前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示される」との記載はあるものの、「所定倍」との記載はない。
そうすると、補正前請求項2、4を削除して、補正前請求項1、3に新たな請求項を付け加えて補正後の請求項1?3としたか、補正前請求項2、4の内一方を削除して、残りの請求項の「所定倍」との特定を削除し、補正前請求項1、3と合わせ、補正後の請求項1?3としたと解釈せざるを得ない。
前者のような増項補正と解釈すれば、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的とするものとは到底いえない。後者のような拡張補正と解釈すれば、明りょうでない記載の釈明を除き、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的とするものとはいえない。
当審の平成19年7月31日付け最後の拒絶理由通知では、明細書の不備を指摘しているから、「所定倍」との特定を削除する補正が、18年改正前特許法第17条の2第4項第3号の明りょうでない記載の釈明に該当するか否か検討する。
前記拒絶理由通知での明細書の不備の指摘は、補正前請求項1において、現在地が探索ルートから外れることを前提とした特定がなされていないため、「前記現在位置と前記探索ルートとの距離を算出する」が不明である旨と、補正前請求項3、4の「前記距離が所定の距離よりも小さい場合に・・・縮尺度を小さくして表示する」との記載の大小関係が発明の詳細な説明の項と逆の表現となっている旨を指摘しているだけであり、補正前請求項2、4の「所定倍」についての指摘はしていない。
そうすると、「所定倍」を削除する補正が、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものとはいえない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する事項を目的とするものでなく、該規定に違反するものである。

3.独立特許要件について
上記のように、本件補正は、補正目的に違反しているが、補正前後の請求項1を比較すると、「地図データの縮尺度を決定」する点に関し、補正前の「前記距離算出手段により算出された前記距離に応じて」との規定が「前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように」と補正され、「前記現在位置」と「前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点」が画面に表示されるとの具体的表現となっている部分があるので、念のため、独立特許要件についても検討しておく。

(1)本願補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)を再掲すると、以下の通りである。
「地図データ上に、現在位置と目的地又は目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記現在位置と前記探索ルート上の地点との距離を算出する距離算出手段と、
前記現在位置と前記探索ルートとが離れている場合に、前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

(2)明細書の記載について
上記補正後の請求項1の記載によると「前記現在位置」と「前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点」が特定できないと、地図データの縮尺度が決定できないから、「前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点」が特定できるか否か検討する。
「前記距離(前記現在位置と前記探索ルート上の地点との距離)が最短となる探索ルート上の地点」(以下、「特定地点」という。)は、現在位置が特定できれば、計算によって特定できるといえるが、特定地点から「直線的に求められる」地図上の地点が何を意味しているか不明である。特定地点から直線を引くことによって求められる地図上の地点という意味であるとすると、特定地点から直線は無数に引くことができるから、方向が特定できない。特定地点から現在位置へ直線を引き、その直線上の地図上の地点という意味であるとしても、特定地点から現在位置方向であるか、特定地点から現在位置と反対の方向であるか、やはり方向が特定できない。そうすると、特定地点から直線的に求められる地図上の地点を特定することができず、したがって、両者が画面に表示されるように、地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段を特定することができず、補正後の請求項1の記載は、発明を明確に記載したものとは到底いえず、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)新規性について
前記(2)に記載したように、補正後の請求項1の記載は、明確とはいえないが、本願明細書段落【0017】の「最短距離(L)上にある地点(x3、y3)」との記載、段落【0018】の「ステップS7では、La例えば最短距離(L)の2倍を設定し、更にLa上であって且つ自車位置(x1,y1)から地点(x3,y3)を越えて直線の延長上にある最短距離の2倍の地点(x4,y4)を認識する。」との記載があり、【図4】(A)には、地点(x4,y4)が、自車位置(x1,y1)から探索ルート上の×印の地点(前記(2)の「特定地点」、本願明細書の「地点(x3,y3)」であることは明らか。)を越えて直線の延長上に地点(x4,y4)が示されている。以上の記載を参酌すると、補正後の請求項1の「前記距離が最短となる探索ルート上の地点(特定地点)から直線的に求められる地図上の地点」は、「前記距離が最短となる探索ルート上の地点(特定地点)と現在位置を結び、現在位置から前記特定地点を越えた直線の延長上に求められる地図上の地点」と解釈できるので、このように解して、以下検討する。

(a)引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用された特開平7-332993号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.【0002】
【従来の技術】従来より、自己位置を標定し、その位置を地図上に表して運転者に表示する車載用ナビゲーション装置が知られており、例えば特開平1-156618号公報は、かかるナビゲーション装置として、現在地と目的地とを同一画面上に表示する装置を開示している。
イ.【0010】
【課題を解決するための手段】図1乃至図3は、上記の目的を達成するナビゲーション装置の原理構成図を示す。すなわち、上記の目的は、図1に示すように、自己位置を検出する自己位置検出手段M1を備え、地図データ上に自己位置を表示するナビゲーション装置において、指定された第1及び第2の地点間の推奨ルートを設定するルート設定手段M2と、前記推奨ルート中において詳細な地図が要求されると推定される地点を、第3の地点として設定する第3地点設定手段M3と、該第3の地点と現在位置とが同一の画面上に表示されるように、表示する地図の縮尺を変更する縮尺変更手段M4とを備えるナビゲーション装置により達成される。
ウ.【0082】ところで、ナビゲーション装置の表示に基づいて奨励ルートを走行している場合であっても、その推奨ルートを逸脱する場合がある。この場合、表示装置16には、図12に示す如く奨励ルートから逸脱した位置に現在位置が表示されることとなるが、この場合奨励ルートへの復帰を容易成らしめるためには、現在地と共に奨励ルートの一部が同一画面上に表示されていることが望ましい。
エ.【0083】図13は、かかる点に着目して、奨励ルートからの逸脱時においても常に画面上に奨励ルートの一部を表示し得る縮尺を決定すべく処理装置22が実行するルーチンの一例のフローチャートである。
オ.【0085】一方、上記ステップ302において、現在地が奨励ルート上に存在しないと判別された場合は、ステップ304へ進んで、図14に示す如く、現在地から奨励ルート上の複数の道路までの距離Liを算出し、次にステップ306へ進んでLiの最小値Lmin1、及び2番目に小さい値Lmin2を算出する。
カ.【0086】そして、これらの算出を終えたら、ステップ308に進んでLmin2<d/2 となる縮尺を決定し、ステップ310において、上記縮尺を実現すべく表示の縮尺を変更して今回の処理を終了する。尚、上記dは、表示装置16の画面の高さである。
キ.【0087】この場合、車両が奨励ルートから逸脱しても、表示装置16上には、常に少なくとも奨励ルート上の2点が表示されることとなり、奨励ルートへの復帰を容易に行うために十分な情報が運転者に提供されることとなる。
ク.【図8】、【図10】?【図12】から、表示装置の画面は、横長長方形であり、現在地は、該画面の中央であることが看取できる。
ケ.【図14】から、現在地から奨励ルート上の複数の道路までの距離Liは、現在地から各道路に垂線を降ろし(li、li+1、li+2の場合)、その交点との距離であったり、現在地から垂線を降ろせないとき(li+3の場合)は、道路上の一番近い地点との距離であることが看取できる。(前記交点や一番近い地点、即ち、距離Liを算出する際の道路上の地点を以下、「道路上の算出地点」という。)

上記ア.の「自己位置を標定し、その位置を地図上に表して運転者に表示する車載用ナビゲーション装置が知られており、・・・現在地と目的地とを同一画面上に表示する」との記載、上記イ.の「地図データ上に自己位置を表示する」との記載、上記ウ.の「現在地と共に奨励ルートの一部が同一画面上に表示されている」との記載、更に技術常識から、上記刊行物記載のナビゲーション装置は、現在地と目的地又は目的地迄の奨励ルートを重畳して画面に表示するものであり、上記オ.の記載から、上記刊行物記載のナビゲーション装置は、距離算出手段を備え、上記カ.の記載から、上記刊行物記載のナビゲーション装置は、地図拡縮表示手段を備えているものと認められ、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「地図データ上に、現在地と目的地又は目的地迄の奨励ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記現在地から奨励ルート上の複数の道路までの距離Liを算出する距離算出手段と、
前記推奨ルートを逸脱する場合に、現在地を中央に、更に少なくとも奨励ルート上の2点が表示装置16の横長長方形の画面に表示されるように、前記複数の道路までの距離Liの内、2番目に小さい値Lmin2が、表示装置16の横長長方形の画面の高さdの半分より小さくなる縮尺を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えるナビゲーション装置。」

(b)対比
本願補正発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「現在地」及び「奨励ルート」は、それぞれ本願補正発明の「現在位置」及び「探索ルート」に相当し、刊行物記載の発明の「前記推奨ルートを逸脱する場合に」は、本願補正発明の「前記現在位置と前記探索ルートとが離れている場合に」に相当するから、両者は
「地図データ上に、現在位置と目的地又は目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
距離算出手段と、
前記現在位置と前記探索ルートとが離れている場合に、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えるナビゲーション装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]本願補正発明は、現在位置と探索ルート上の地点との距離を算出する距離算出手段と、前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えるのに対し、刊行物記載の発明は、距離算出手段と地図拡縮表示手段とを備えるものの、本願補正発明のような特定がなされていない点。

(c)判断
刊行物の前記ケ.にあるように、現在地から奨励ルート上の複数の道路までの距離Liを算出する際に、距離算出手段は、現在地と道路上の算出地点との距離を算出しているものであるから、刊行物記載の発明の距離算出手段は、現在位置と探索ルート上の地点との距離を算出する距離算出手段ということができ、本願補正発明の距離算出手段と相違しない。
次に、地図拡縮表示手段について検討する。
前述のように、補正後の請求項1の「前記距離が最短となる探索ルート上の地点(特定地点)から直線的に求められる地図上の地点」は、「前記距離が最短となる探索ルート上の地点(特定地点)と現在位置を結び、現在位置から前記特定地点を越えた直線の延長上に求められる地図上の地点」(以下、「他方の表示地点」という。)と解釈できるが、他方の表示地点が特定地点をどの程度越えるか規定されていない。即ち、他方の表示地点が特定地点を越える程度は僅かで足り、特定地点が画面の縁から離れて表示されている限り、他方の表示地点は画面に表示されることとなる。つまり、本願補正発明の「前記現在位置と、前記距離が最短となる探索ルート上の地点から直線的に求められる地図上の地点とが前記画面に表示されるように、前記地図データの縮尺度を決定して表示する」は、現在位置と、画面の縁から離れた特定地点とが画面に表示されるように、地図データの縮尺度を決定して表示すれば足りるものである。
一方、刊行物記載の発明は、「現在地を中央に、更に少なくとも奨励ルート上の2点が表示装置16の横長長方形の画面に表示されるように、前記複数の道路までの距離Liの内、2番目に小さい値Lmin2が、表示装置16の横長長方形の画面の高さdの半分より小さくなる縮尺を決定して表示する」から、2番目に小さい値Lmin2に対応する道路上の算出地点と、現在地との距離が最短となる最小値Lmin1に対応する道路上の算出地点(本願補正発明の「距離が最短となる探索ルート上の地点」(特定地点)に相当。)が表示されることは明らかである。しかも、最小値Lmin1に対応する道路上の算出地点の方が、中央の現在地に近い位置にあるのだから、画面の縁から離れて表示されることは明らかである。即ち、刊行物記載の発明も、現在位置と、画面の縁から離れた特定地点とが画面に表示されるように、地図データの縮尺度を決定して表示するものといえるから、実質的に本願補正発明と相違するものではない。
よって、上記相違点は、表現上の差異にすぎないものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正却下のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するし、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.平成19年10月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「地図データ上に、現在位置と目的地又は目的地迄の探索ルートを重畳して画面に表示するナビゲーション装置に於いて、
前記現在位置と前記探索ルートとの距離を算出する距離算出手段と、
前記距離算出手段により算出された前記距離に応じて、前記地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段とを備えることを特徴とするナビゲーション装置。」

2.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2.3.(3)(a)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本件補正の趣旨を考慮すると、本願発明は、現在位置が探索ルートから外れることを前提としたものといえるので、刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の距離算出手段は、現在地から奨励ルート上の複数の道路までの距離Liを算出するものであるから、現在位置と探索ルートとの距離を算出する距離算出手段であるといえ、刊行物記載の発明の地図拡縮表示手段は、現在地を中央に、更に少なくとも奨励ルート上の2点が表示装置16の横長長方形の画面に表示されるように、(距離算出手段により算出された)複数の道路までの距離Liの内、2番目に小さい値Lmin2が、表示装置16の横長長方形の画面の高さdの半分より小さくなる縮尺を決定して表示するものであるから、距離算出手段により算出された距離に応じて、地図データの縮尺度を決定して表示する地図拡縮表示手段といえるから、実質的に相違しない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明に同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-05 
結審通知日 2007-11-06 
審決日 2007-11-19 
出願番号 特願平8-173653
審決分類 P 1 8・ 574- WZ (G09B)
P 1 8・ 537- WZ (G09B)
P 1 8・ 113- WZ (G09B)
P 1 8・ 572- WZ (G09B)
P 1 8・ 575- WZ (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅藤 政明
藤井 靖子
発明の名称 ナビゲーション装置  

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