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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01P
管理番号 1170134
審判番号 不服2005-10626  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-09 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 特願2003-409009「タイヤに影響する車両状態をモニタするためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004-101540〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月24日(パリ条約による優先権主張1999年12月3日、米国)にした出願の一部を平成15年12月8日に新たな特許出願としたものであって、平成17年3月8日付け(発送日:同年3月11日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月11日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年7月11日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年7月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容・補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の
「車輪の少なくとも車輪回転速度をモニタするためのシステムにおいて、前記車輪の少なくとも半径方向加速度を検知して加速度信号を提供するセンサと、車両コントローラと、前記車輪回転速度を示す0?25Hz範囲の半径方向の信号周波数を前記車両コントローラに送信するトランシーバとからなることを特徴とするモニタ・システム。」から、補正後の
「車輪の少なくとも車輪回転速度をモニタするためのシステムにおいて、前記車輪の少なくとも半径方向加速度を検知して加速度信号を提供するセンサであって、0?25Hz範囲の周波数範囲の検知された半径方向加速度が前記車輪回転速度を示している、センサと、車両コントローラと、前記車輪回転速度を示す0?25Hz範囲の前記加速信号を前記車両コントローラに送信するトランシーバとからなることを特徴とするモニタ・システム。」に補正する補正事項を含むものである。
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「センサ」について「0?25Hz範囲の周波数範囲の検知された半径方向加速度が前記車輪回転速度を示している」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。
(2)引用例記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第98/56606号パンフレット」(1998年12月17日 国際公開)(以下「引用例」という。)は、「加速度測定値によるタイヤのモニタリング」(発明の名称)に関するもので、図面とともに以下の記載がある。以下において、引用例記載中のフランス語アルファベットのアクセント符号は省略している。また、訳文は引用例の翻訳文である特表2002-511812号公報の記載を参照している。
a.「L'invention concerne la surveillance en service de l'etat d'un pneumatique d'une roue d'un vehicule.」(1頁4?5行)
(訳文:本発明は、車両の車輪のタイヤの状態を使用中にモニタリングすることに関する。)
・記載a.から、「車輪のタイヤをモニタするシステム」が読み取れる。
b.「Le circuit electronique d'ensemble du mode de realisation actuellement prefere apparait sur la figure 3, avec des details d'implantation en figure 4. Sur la figure 3, la partie situee agauche du traittirete long est sur le vehicule ; celle de droite est sur la roue, plus precisementdans le pneumatique.
L'accelerometre 4 est associe a un microcircuit electronique 5. Celui-ci peut etre alimente de diverses manieres : pile, recuperation d'energie mecanique, notamment.」(3頁26?35行)
(訳文:図3には、好適な実施の形態による電子回路アセンブリが示されており、図4に実装形態の詳細が示されている。図3では、長寸の破線の左側に位置する部分は車両上にあり、右側部分は車輪上、より正確にはタイヤ内にある。
加速度計4は、小型電子回路5と連関する。小型電子回路5は種々の方法、詳細には電池や、機械的エネルギーの回収により駆動される。)
c.「On decrira maintenant le transfert des mesures. La sortie du circuit de traitement 5 est une tension de frequence F2 modulee, et appliquee a travers un diviseur capacitif d'accord 91-92 a une boucle BRF2 du pneu. Cote vehicule, une boucle BVF2 est munie de deux condensateurs 111-112 d'accord. Ceux-ci fournissent une sortie asymetrique, appliquee a un circuit de reception et traitement 120. Outre la voie V1 provenant du pneumatique considere, ce circuit 120 peut recevoir trois autres voies V2, V3 et V4 venant des autres pneumatiques. L'emission a partir des voies Vl, V2, V3 etV4 vers le circuit de reception 120 peut se faire separement ou en parallele. Un organe de visualisation 130 lui est associe, ou mieux le transfert de l'information se fait par l'intermediaire du calculateur de bord relie a unevisualisation integree.」(4頁29行?5頁4行)
(訳文:ここで測定値の伝送を説明する。処理回路5からの出力は、変調された周波数F2の電圧であり、それは容量性同調用デバイダ91,92を介して、タイヤのループBRF2に加えられる。車両側では、ループBVF2に、2つの同調用コンデンサ111,112が設けられている。同調用コンデンサは、非対称の出力を送出し、それは受信/処理回路120に加えられる。この回路120は、考察中のタイヤから発信されるチャネルV1に加えて、他のタイヤからの3つの他のチャネルV2、V3及びV4を受信することができる。受信回路120に向かうチャネルV1、V2、V3及びV4からの放出は、別々にあるいは並列に生成される。ディスプレイ部材130がその回路と連関するか、あるいはさらに情報の伝送が一体型のディスプレイに接続される搭載コンピュータを介して行われる。)
・前記記載b.、c.及びFig.3、Fig.4から、「加速度計4からの信号は小型電子回路(処理回路)により周波数F2に変調され、容量性同調用デバイダ91,92を介してタイヤのループBRF2に加えられ、車両側のループBVF2を経て車両側の受信/処理回路120に送信される」ことが読み取れる。
d.「Sur la figure 5, un pneu de rayon R est anime d'une vitesse peripherique V. En charge, une zone BC de ce pneu, de longueur L, est au contact du sol.
Au point A, l'acceleration radiale centrifuge est V2/R. La Demanderesse a observe qu'entre lespoints B et C, par contre, l'acceleration radiale centrifuge est sensiblement nulle, la vitesse differentielle du pneu par rapport au sol etant sensiblement nulle (sauf en cas de patinage, ce quin'est pas un fonctionnement normal).
Par l'implantation d'un accelerometre miniature dans le pneu, on peut donc detecter la zone BC. Le passage de l'acceleration radiale - ou centrifuge, normale au sol - a une valeur sensiblement nulle, permet d'identifier temporellement l'ensemble de la zone BC. (Les pointsB et C pourraient egalement tre detectes en s'interessant a des discontinuites de l'acceleration tangentielle, dans le plan du sol. Il serait concevable d'utiliser en partie au moins cet effet).
On prefere actuellement traiter seulement l'acceleration radiale, dont l'allure est donnee sur la figure 6. Pour differentes vitessesV1, V2 et V3, on obtient des accelerations ν1, ν2 etν3. L'acceleration est quasi nulle pendant l'intervalle de temps TL, qui correspond au trajet de l'accelerometre entre les points B et C. Elle est forte le reste du temps, des que le vehicule atteint une vitesse de quelques kilometres/heure. La periode Tp de rotation du pneu est egalement donnee par les mesures. On en deduira aisement la vitesse du vehicule, le diametre de la roue etant connu (habituellement a mieux que 1%).」(6頁19行?7頁11行)
(訳文:図5では、半径Rのタイヤに周速度Vが与えられる。負荷がかけられた状態で、このタイヤの領域BCは長さLからなり、地面に接触する。
点Aにおいて、遠心半径方向加速度はV2/Rである。本出願人は、一方で、点BとCとの間において、遠心半径方向加速度が概ね0であり、地面に対するタイヤの差速も概ね0である(正常な動作ではない横滑りの場合を除く)ことを確認している。
小型加速度計をタイヤ内に埋め込むことにより、領域BCを検出することが可能になる。半径方向、すなわち地面に対して通常の遠心方向の加速度が概ね0値になることにより、全BC領域を一時的に識別することができる(点B及びCは、地面の平面において、接線加速度の不連続を調べることにより検出されることもできる。少なくとも部分的にはこの作用を用いることも考えられるであろう)。
ここでは、半径方向加速度のみを処理することが好ましく、そのプロファイルが図6に与えられる。種々の速度V1、V2及びV3に対して、加速度ν1、ν2及びν3が得られる。点B,C間での加速度計の行程に対応する時間的間隔TLでは、加速度は概ね0である。車両が数Km/hの速度に達した直後に、その時間の残り部分で加速度が高まる。また、タイヤの回転の周期Tpも測定値により与えられる。車輪の直径がわかれば(通常1%より下の値までが好ましい)、車両の速度はこれから容易に推定される。)
・記載d.及びFig.5、Fig.6から、「タイヤ内に埋め込まれた加速度計は半径方向加速度を検知するものであり、半径方向加速度についての測定値からタイヤの回転周期が得られる」ことが読み取れる。
以上を勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
(引用例に記載された発明)
「タイヤの回転周期をモニタするシステムにおいて、前記タイヤの半径方向加速度を検知して加速度信号を提供する加速度計4であって、検知された半径方向加速度が前記タイヤの回転周期を示している、加速度計4と、車両側の受信/処理回路120と、前記タイヤの回転周期を示す加速度信号を前記車両側の受信/処理回路120に送信する小型電子回路(処理回路)5、容量性同調用デバイダ91,92、ループBRF2と、からなるモニタ・システム」(以下「引用例記載の発明」という。)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明における、
「タイヤ」、「回転周期」、「加速度計」、「車両側の受信/処理回路」、「小型電子回路(処理回路)、容量性同調用デバイダ、ループBRF2」は、それぞれ、本願補正発明における、
「車輪」、「回転速度」、「センサ」、「車両コントローラ」、「トランシーバ」に相当する。ここで、一般に、回転周期Tと回転速度Rとの間には、T・R=一定の関係があるから、両者は回転状態を表す物理量として同等なものである。
したがって、両者は、
(一致点)
「車輪の少なくとも車輪回転速度をモニタするためのシステムにおいて、前記車輪の少なくとも半径方向加速度を検知して加速度信号を提供するセンサであって、検知された半径方向加速度が前記車輪回転速度を示している、センサと、車両コントローラと、前記車輪回転速度を示す前記加速信号を前記車両コントローラに送信するトランシーバとからなることを特徴とするモニタ・システム。」
で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
検知すべき半径方向加速度信号について、
本願補正発明では、0?25Hzの周波数範囲のものとしているのに対し、引用例記載の発明では、検知すべき半径方向加速度信号の周波数範囲についての記載がない点。

(4)当審の判断
本願補正発明において、半径方向加速度信号から車輪の回転速度が求まるのは、その作用・原理からして引用例記載の発明と同様、加速度センサが設けられた車輪(タイヤ)部分が地面に接触する毎に半径方向加速度がゼロになることを利用したものと認められる。
ところで、一般の車両(例えば乗用車)には略60cm?70cmの外径を有するタイヤが多く用いられているが、ここでタイヤの外径を略64cmとして、このタイヤの回転速度が25回/秒の場合の車両の走行速度は略180Km/hである。
してみると、本願補正発明において半径方向加速度信号として0?25Hzの周波数範囲のものを選択したのは、車両の走行速度としての0?180Km/hに対応させたもの、ということができる。そして、この対応付けをすることは、時速0?180Km/hの範囲が一般の車両(例えば乗用車)の走行速度として一般的なものであるから、車両の走行速度、タイヤの回転速度及びタイヤ外径等に関する技術常識からすれば当業者ならば容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明の効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年7月11日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年2月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「車輪の少なくとも車輪回転速度をモニタするためのシステムにおいて、前記車輪の少なくとも半径方向加速度を検知して加速度信号を提供するセンサと、車両コントローラと、前記車輪回転速度を示す0?25Hz範囲の半径方向の信号周波数を前記車両コントローラに送信するトランシーバとからなることを特徴とするモニタ・システム。」(以下、「本願発明」という。)。
(1)引用例記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の発明・事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「センサ」についての限定事項である「0?25Hz範囲の周波数範囲の検知された半径方向加速度が前記車輪回転速度を示している」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-10 
結審通知日 2007-08-14 
審決日 2007-08-27 
出願番号 特願2003-409009(P2003-409009)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01P)
P 1 8・ 121- Z (G01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 居島 一仁
上原 徹
発明の名称 タイヤに影響する車両状態をモニタするためのシステム及び方法  
代理人 千葉 昭男  
代理人 増井 忠弐  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 大塚 住江  

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