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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B41N 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B41N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41N |
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管理番号 | 1170153 |
審判番号 | 不服2005-17571 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-14 |
確定日 | 2008-01-04 |
事件の表示 | 特願2001-395028「パターン形成体およびパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月25日出願公開、特開2002-274077〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、出願日が平成10年6月12日(優先権主張平成9年8月8日、平成9年10月31日、平成9年11月14日、平成10年3月31日)である特願平10-165392号の一部を平成13年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成17年7月22日付け手続補正書が平成17年8月10日付けで補正の却下がなされると共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月14日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年10月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容及び目的 本願に係る手続補正は、平成16年2月23日付けの審査請求時におけるもの、平成16年10月4日付け拒絶理由通知書に対する平成16年12月10日付けのもの、平成17年5月16日付け拒絶理由通知書に対する平成17年7月22日付けのもの、及び本件補正とが存在するが、いずれの手続補正も特許請求の範囲の補正を行うのみで、発明の詳細な説明について補正を行うところはない(よって、本願に係る特許請求の範囲以外の明細書には、出願当初以来補正がないので、これを以下、「本願明細書」という。)。 前記のように、平成17年7月22日付け手続補正書は補正の却下がなされたことから、本件補正に先立つ手続補正は、平成16年12月10日付けのものである。 そこで、当該平成16年12月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲記載と、本件補正に係る特許請求の範囲記載とを対比して、本件補正の内容及び目的の適否について以下検討する。 本件補正は、平成16年12月10日付け手続補正書に記載される特許請求の範囲 「【請求項1】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項2】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてアミノ基を含有したシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項3】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてエポキシ基を含有したシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項4】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項5】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項6】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項7】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、シランカップリング剤、クロロシラン、およびアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項8】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項9】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてアミノ基を含有したシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項10】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてエポキシ基を含有したシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項11】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項12】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項13】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンの含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項14】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、シランカップリング剤、クロロシラン、およびアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を含有する層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項15】 前記光触媒含有層が可視およびその他の波長に感受性を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。 【請求項16】 前記光触媒含有層に金属イオンがドープされていることを特徴とする請求項15記載のパターン形成体。 【請求項17】 前記光触媒含有層に蛍光物質が添加されていることを特徴とする請求項15記載のパターン形成体。 【請求項18】 前記光触媒含有層に感光性色素が添加されていることを特徴とする請求項15記載のパターン形成体。 【請求項19】 パターン形成体が印刷版原版であることを特徴とする請求項1から請求項18までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。」 を、 「【請求項1】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項2】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてアミノ基を含有したシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項3】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてエポキシ基を含有したシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成されることを特徴とするパターン形成体。 【請求項4】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成されることを特徴とするパターン形成体。 【請求項5】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項6】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項7】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、シランカップリング剤、クロロシラン、およびアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成されることを特徴とするパターン形成体。 【請求項8】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項9】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてアミノ基を含有したシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項10】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてエポキシ基を含有したシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項11】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項12】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項13】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリt-ブトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮物であるシリコーンを光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する含有層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項14】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層上に、シランカップリング剤、クロロシラン、およびアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を、光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有する層を有することを特徴とするパターン形成体。 【請求項15】 前記光触媒含有層が可視およびその他の波長に感受性を有するものであることを特徴とする請求項1から請求項14までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。 【請求項16】 前記光触媒含有層に蛍光物質が添加されていることを特徴とする請求項15記載のパターン形成体。 【請求項17】 パターン形成体が印刷版原版であることを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれかの請求項に記載のパターン形成体。」 と補正するものである。 本件補正前後の特許請求の範囲を対比すると、本件補正では補正前の請求項16及び18が削除されているので、本件補正は、請求項の削除を目的とするものを含むものである。 そして、本件補正前後の【請求項1】の記載を比較すると、本件補正前の【請求項1】における「光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンを結着剤として含有すること」なる特定を、本件補正後の【請求項1】では、「光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、ケイ素原子に結合したオルガノ基としてビニル基を含有したシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有すること」なる特定とすることで、前記結着剤であるシリコーンについて「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」であることを限定したものと認められる。 また、当該結着剤であるシリコーンについて「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」であることを限定する補正は、若干表現上の差があるものの、請求項2?14についても同様になされている。 さらに、本件補正前後の【請求項4】の記載を比較すると、本件補正前の【請求項4】では、「シリコーンを結着剤として含有する」なる特定を、本件補正後の【請求項4】では、「シリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」なる特定とすることで、前記請求項1に係る結着剤であるシリコーンについての限定に加えて、「パターン形成体」が「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成されるもの」であることを限定したものと認められる。 よって、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むものである。 なお、この結着剤であるシリコーンが、「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」であることは、本願の出願当初明細書において、段落【0011】「また、本発明者等は、このような問題点を解決するために、光触媒の作用によって濡れ性が変化する物質を用いてパターンを形成するパターン形成体およびパターン形成方法を既に、特願平9-214845号として提案しているが、本発明は、このような光触媒を用いたパターン形成体および形成方法において、特性のより優れたパターン形成体およびパターン形成方法を提供するものである。」との記載があることに照らして、本件補正後の請求項に係る発明にも充当するものであることから、前記限定を加えることは、本願の出願当初明細書の記載事項の範囲内における補正であって、新規事項を含むものとはいえない。 2.補正発明の認定 本件補正後の請求項4に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項4】に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項4】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤であり、かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成されることを特徴とするパターン形成体」 3.補正発明の独立特許要件の判断 以下、補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかを検討する。 3-1 先願明細書記載の発明 原査定の平成17年5月16日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由2.に引用された、本願の出願の日前の平成8年7月19日の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平8-221640号(特開平10-35131号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が図示とともに記載されている。 ア.特許請求の範囲 「【請求項1】シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換されたシリコーン樹脂、シリカ、アルミナ、シリケート、アルミノシリケートから選ばれた少なくとも1種からなる表面層を有する部材であって;前記表面層は、疎水性ガスの吸着に応じて疎水性を呈し、かつ前記疎水性ガスの吸着面への紫外線照射に応じて親水性を回復するようになることを特徴とする表面が親水-疎水変換性能を有する部材。 【請求項2】前記表面層には、さらに結晶性金属酸化物からなる光触媒が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の表面が親水-疎水変換性能を有する部材。 【請求項3】前記疎水性ガスは、フッ素含有ガスであることを特徴とする請求項1に記載の表面が親水-疎水変換性能を有する部材。 【請求項4】前記紫外線照射するための手段は、コロナ放電灯であることを特徴とする請求項1、2に記載の表面が親水-疎水変換性能を有する部材。 【請求項5】請求項1?4のいずれか1つの部材と、前記部材表面へ疎水性ガスを吹き付ける手段と、前記部材表面へ紫外線を照射する手段を備えた装置。」 イ.段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、印刷、複写、ホワイトボード等の技術に適用可能な表面が親水-疎水変換性能を有する部材に関する。」 ウ.段落【0002】 「【従来の技術】印刷原板では、油性インクを載せる部分を疎水性に、油性インクを載せない部分を親水性にすることで、特定の画像を印刷紙に転写できる。逆に、水性インクを載せる部分を親水性に、水性インクを載せない部分を疎水性にしても、原理的には特定の画像、文字情報等を印刷紙に転写可能である。」 エ.段落【0003】 「【発明が解決しようとする課題】ここで、印刷原板にある特定の操作を与えるだけで原板上の任意の位置を状況に応じて疎水性にしたり、親水性にできたりすれば、印刷原板を半恒久的に使用できるようになるので便利である。さらに疎水化、親水化を比較的短時間で行えるようにすると、1つの印刷原板を用いて種々の画像、文字情報等を短時間で転写できるようになるので、生産性が向上する。本発明の目的は、特定の操作を与えるだけで基材上の任意の位置を状況に応じて疎水性にしたり、親水性にできたりする部材を提供することである。本発明の他の目的は、上記疎水化、親水化を速やかに行うことのできる部材を提供することである。」 オ.段落【0009】 「【発明の実施の形態】以下に本発明の構成要素について説明する。本発明における親水性とは、油や油性インクよりも、水や水性インクがなじみやすい程度の水濡れ性を呈する状態をいい、水との接触角に換算して50゜以下、好ましくは30゜以下、より好ましくは10゜以下程度の状態をいう。」 カ.段落【0010】 「本発明における疎水性とは、水や水性インクよりも、油や油性インクがなじみやすい程度の水濡れ性を呈する状態をいい、水との接触角に換算して50゜以上、好ましくは70゜以上、より好ましくは80゜以上程度の状態をいう。」 キ.段落【0011】 「本発明において使用される部材は、部材の少なくとも表面に、コーティング或いは表面改質等の方法により、シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換されたシリコーン樹脂、シリカ、アルミナ、シリケート、アルミノシリケートから選ばれた少なくとも1種からなる表面層を有する部材であり、表面層以外の部位の材質は問わない。例えば、金属、セラミック、プラスチック、木、石、ガラス、コンクリート、塗装板、積層フィルム板、フィルム等何でもよい。」 ク.段落【0012】 「シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換されたシリコーン樹脂は、シリコーン樹脂に、・・・光触媒を接触させながら前記光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する工程等により作製できる。ここで・・・できる。光触媒を接触させながら前記光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する工程は、以下2つの方法により行うことができる。第一の方法は、表面にシリコーン樹脂と光触媒からなる層を形成し、光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する。第二の方法は、表面にシリコーン樹脂層を形成し、その表面層を光触媒ゾルに接触させながら光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する。いずれの方法においても、光触媒の価電子帯の電子が励起されて、伝導電子と正孔を生成し、おそらくはさらに伝導電子と正孔が雰囲気中の酸素種と反応して、活性酸素を生成し、この活性酸素がシリコーン中のシリコン原子に結合した有機基に作用して、シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換される。上記方法の中では、光触媒を接触させながら前記光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する工程を用いるのが最も好ましい。この方法によれば、シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換された後に、さらに光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射すると、生成した伝導電子と正孔によりおそらくは表面の極性が増し、吸着水層が形成されるようになるので、より高度に親水化される。ここで用いられるシリコーン樹脂とは、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その脱水縮重合物の少なくとも1種を含む塗膜形成要素の加水分解、脱水縮重合或いは架橋重合により形成される樹脂をさす。ここでオルガノアルコキシシランとしては、・・・、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、・・・、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、・・・等が好適に使用できる。」 前記イ記載にあるように、先願明細書には、印刷の技術に適用可能な表面が親水-疎水変換性能を有する部材が記載されており、同ウ記載にあるように、従来技術として存在する、油性インクを載せない部分を親水性にすることで、あるいは逆に、水性インクを載せる部分を親水性に、水性インクを載せない部分を疎水性にすることで、いずれも、特定の画像を印刷紙に転写できる印刷原版を対象とする発明が記載されている。 そして、前記エ記載にあるように、先願明細書に記載される発明の目的は、特定の操作を与えるだけで基材上の任意の位置を状況に応じて疎水性にしたり、親水性にできたりする部材を提供することにあり、また、前記疎水化、親水化を速やかに行うことのできる部材を提供することにある。 また、前記オ、カ記載にあるように、疎水化するか、親水化するかは、使用するインク特性に応じて適宜選択されるものであることが把握できる。 そして、前記ク記載にあるように、表面にシリコーン樹脂と光触媒からなる層を形成し、光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する表面改質方法によって作成されるものが含まれていることが把握できる。 また、前記ク記載には、シリコーン樹脂に関し、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その脱水縮重合物の少なくとも1種を含む塗膜形成要素の加水分解、脱水縮重合或いは架橋重合により形成される樹脂を用いることが記載されており、オルガノアルコキシシランとして前記のものが例示されている。 してみれば、先願明細書には、以下の発明が記載されているといえる。 「部材の表面にシリコーン樹脂と光触媒からなる層を形成し、シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換されたシリコーン樹脂からなる表面層を有する部材。 ここで、シリコーン樹脂は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その脱水縮重合物の少なくとも1種を含む塗膜形成要素の加水分解、脱水縮重合或いは架橋重合により形成される樹脂を指す。 オルガノアルコキシシランとしては、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン等が上げられる。」(以下、「先願発明」という。) 3-2 補正発明と引用発明との対比 補正発明と先願発明を対比すると、先願発明の「部材の表面」に形成される「シリコーン樹脂と光触媒からなる層」と、補正発明の「基材」上にある「光触媒含有層」とは、いずれも部材上に設けられるものである点で共通しており、また、これらの層は、いずれも光触媒作用により表面の改質を行うことが想定されたものである点においても共通している。 また、先願発明の「部材」は、印刷原版として使用されることが想定されているものであって、印刷原版に特定の画像、文字情報を光学的に記録すること、すなわち光触媒作用を用いることは従来から慣用されていることであるから、先願発明の「部材」は、補正発明の「光学的にパターンを形成するパターン形成体」に相当するものといえる。 さらに、先願発明の「シリコーン樹脂」は、オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その脱水縮重合物の少なくとも1種を含む塗膜形成要素の加水分解、脱水縮重合或いは架橋重合により形成される樹脂であって、前記のように例示される樹脂は、補正発明の「光触媒含有層」を構成する「結着剤」としてのシリコーンに例示されるものと共通している。 してみれば、両者は、 「光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有するパターン形成体。」 である点で一致するものの、 以下の点において一応相違する。 <相違点1> 補正発明では光触媒含有層に関し、「フェニルトリクロルシラン、・・・、およびフェニルメチルジエトキシシラン」からなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有」すると特定されているのに対して、 先願発明では、例示される「フェニルトリクロルシラン、・・・、フェニルメチルジエトキシシラン等」の「オルガノアルコキシシラン、その加水分解物、その脱水縮重合物の少なくとも1種を含む塗膜形成要素の加水分解、脱水縮重合或いは架橋重合により形成される樹脂」と光触媒からなる、との特定であって、シリコーン樹脂として「2種以上を含む」との特定を有しない点。 <相違点2> 補正発明では光触媒含有層に関し、前記相違点1に係るシリコーンを結着剤とするなる特定に加え、「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」と特定されているのに対して、 先願発明では、当該加えられた特定が明示的にない点。 3-3 相違点に係る判断 (1)相違点1について 補正発明に係る「フェニルトリクロルシラン、・・・、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む」なる特定においては、1種のみならず2種以上を選択することも可能であることを意味するものであって、1種のみであることを含む。 すると、先願発明では、「フェニルトリクロルシラン、・・・、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種を含む」とあるように、補正発明の選択表現を充足しているのであるから、相違点1は実質的な相違とはいえない。 (2)相違点2について 当該相違点2は、光触媒含有層に関し、前記相違点1に係るシリコーンが結着剤であるに加えて「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」であること(前者)と、 パターン形成体が「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」ものであること(後者)を含むものである。 ここで、前者である「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」は、既に「1.本件補正の内容及び目的」で触れたように、補正発明に限らず本願明細書記載において明言されているように、本願明細書に記載される発明の備える前提事項というべきものである。 他方、前記の先願明細書の段落【0012】によれば、先願発明である部材を構成するに際して予定されている「光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射する工程」で採用されている方法により、「シリコーン中のシリコン原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基に置換された後に、さらに光触媒を励起させうるエネルギーを有する光子を含む光を照射すると、生成した伝導電子と正孔によりおそらくは表面の極性が増し、吸着水層が形成されるようになるので、より高度に親水化される。」と記載されているように、先願発明におけるシリコーン樹脂と光触媒からなる層は、まさに、「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」により構成されているものといえる。 よって、この前者である「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質」に関して、補正発明と先願発明とが物の発明として実質的な差異があるものとはいえない。 次に、後者である「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」の特定について検討する。 この点に関して、請求人は、前記本願明細書の段落【0080】記載を参照して、 「具体的にいえば、本発明は、本願明細書の(0080)段落の記載、「・・・」にあるように、紫外線の照射等のパターン露光による光触媒の作用により、パターン形成部のシリコーン化合物のエポキシ基(上記記載ではアルキル鎖)をOH基とすることにより親水化し、親水領域のパターンが形成されたパターン形成体なのであります。 ここで、本発明の特徴は、露光により容易に親水領域のパターンが形成できる点にあります。」(平成17年12月22日付け審判請求書についての手続補正書2頁下から18?5行)と主張する。 そして、請求人は、「本発明の発明特定事項のC2、すなわち光触媒含有層が「光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有」されている点に関しては、先願明細書には記載されていません。」(同3頁6?8行)とも主張する。 なるほど、請求人が主張するように、当該図1(A)?(C)を参照した記載では、パターン形成にあたり、紫外線の照射等のパターン露光そのものによって、濡れ性を変化させる記録が行われることは認める。 しかしながら、本願に係る手続補正は、先に指摘しているように、特許請求の範囲を補正するに過ぎず、発明の詳細な説明に係る補正は何ら行われておらず、当該図1(A)?(C)を参照した記載における発明のみとした解釈を行うことは、無為に特許請求の範囲を限定的に解釈することとなり妥当でない。 すなわち、発明の詳細な説明には、その他にも各種の光触媒作用により行われる形態が記載されており、請求人が主張するように、前記図1(A)?(C)を参照した記載にあるものに限定した解釈をすべきものではない。 補正発明に係る前記後者の「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」なる特定は、「光触媒含有組成層」に係る修飾であるとするものとはいえず、パターン形成体に係る修飾であると解し得る。 よって、パターン形成体に記録を行うに際して、どのような記録方法が用いられるかを説明するものと解することが妥当である。 他方、本願明細書には、前記図1(A)?(C)により示されるもの以外に、図2(A)?(C)、および図3(A)?(C)も示されており、いずれにおいても、露光したパターンに応じてパターン形成体の表面に濡れ性の異なる部位を形成して、パターン情報を記録するものとして表現されている。 してみれば、これら図2(A)?(C)、および図3(A)?(C)に示されたものも、前記「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」なる特定に包含されているものと解するべきである。 なるほど、図2(A)?(C)および図3(A)?(C)に示される形態においては、これらを参照した段落【0081】、【0085】の記載によれば、基材2の上に光触媒含有組成層を形成し、さらにその上に光触媒の作用によって濡れ性が変化する濡れ性変化物質層あるいは光触媒の作用によって分解除去される物質層が形成されており、パターンを用いた露光により影響を受けるのは前記光触媒含有組成層ではなく、さらにその上に形成された前記濡れ性変化物質層あるいは分解除去される物質層であり、これらの層が濡れ性を変化したかあるいは除去されたことで、予め全面にわたって濡れ性がある、ここでは親水性の部位とされた光触媒含有組成層が、いわば露出させられることで記録が行われるものといえる。 よって、パターン露光により光触媒作用によって濡れ性が変化あるいは分解除去される物質層が、光触媒含有層そのものであることが明確に特定された場合には、これら図2(A)?(C)および図3(A)?(C)に示される形態が包含されるものとはいえないこととなる。 しかしながら、前記のように補正発明における前記「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」なる特定では、「光触媒含有組成層」に係る修飾であることが明らかにされていない以上、前記解釈は請求項の記載に基づかない制限的なものとなるので採用できない。 以上のとおりであり、補正発明に係る前記「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」なる特定は「パターン形成体」に係る修飾とする解釈が自然であって、これが直ちに「光触媒含有層」を修飾するものと解することは妥当でないし、この場合に当該特定は記録方法をいうものと解すべきで、物の発明である補正発明の特定を行うものと解すべきではないから、当該特定をもって、先願発明との明確な差異が生じるものとは解し得ない。 したがって、相違点1乃至相違点2はいずれも先願発明との実質的な差異を形成するものでない以上、補正発明と先願発明とは同一と解さざるを得ない。 3-4 まとめ 以上のとおり、補正発明は、特許法第29条の2の規定により特許をすることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正前の請求項4を限定的に減縮した補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年12月10日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項4】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項4】 光学的にパターンを形成するパターン形成体において、基材上に、光触媒含有層を有し、前記光触媒含有層は、フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt-ブトキシシラン;ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、およびフェニルメチルジエトキシシランからなる群から選択される1種もしくは2種以上を含む化合物の加水分解縮合物または共加水分解縮合物であるシリコーンを結着剤として含有することを特徴とするパターン形成体。」 2.本願発明と先願発明との対比・判断 (1)先願明細書記載の発明 原査定の前記拒絶の理由2.に引用された先願明細書には、前記「第2 補正の却下の決定」における「3-1」に摘記した記載があり、これから前記先願発明が認定できる。 (2)対比・判断 本願発明は、「第2 補正の却下の決定」における「2.」で認定した補正発明から 「シリコーン」についての「かつ光触媒の作用により濡れ性が変化する物質として含有し、」なる限定事項を省き、また、「パターン露光に伴う前記光触媒の作用により表面に濡れ性が異なるパターンが形成される」との限定事項を省いたものである。 そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」における「3-3」に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であるから、本願発明は、先願発明と実質的に同一であるということができる。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前の出願であって、その出願後に出願公開された先願明細書に記載された先願発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-26 |
結審通知日 | 2007-10-30 |
審決日 | 2007-11-20 |
出願番号 | 特願2001-395028(P2001-395028) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(B41N)
P 1 8・ 161- Z (B41N) P 1 8・ 575- Z (B41N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 裕美子、亀田 宏之 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
坂田 誠 尾崎 俊彦 |
発明の名称 | パターン形成体およびパターン形成方法 |
代理人 | 山下 昭彦 |